遊戯王 ビルドモンスターズ   作:最近の虫野郎

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18ターン目 「リュウザキスペシャル」

 レイダーガンダム。

 ガンダムSEEDという作品に登場した――可変型のモビルスーツだ。

その名の通り、MSとして人型のまま戦うのは当然ながら。両腕を畳み足を縮め、背中のウィングを広げれば、そのまま戦闘機のような形に姿を変え、空を舞い空中戦闘を熟す事も可能である。

 

レッドアイズというバリバリの生物をを再現するにあたり――リュウザキが目を付けたのが、このガンプラだった。

 

「行くでぇ!」

 

 本来、両腕両足は変形した際、動かなくなるように固定されるはずなのだが……しかし、リュウザキの改造はレイダーと言う機体の変形を、大きく模様替えさせた。戦闘機から。両腕両足が自由に動き、通常のレイダーよりも長くなった胴体から、スムーズにつながる尻尾を持つ、ドラゴンへと。

 

 かなり大型なレイダーの肩アーマーも……クロー搭載のアタッチメントとして、両の腕にスライドして合体する仕組みに変わっている。

 両腕を掲げ突進すれば、合わせて六本の爪がヤサカ少年のDXを、縦に引き裂かんと襲い掛かる。元のレイダーもお得意としていた、掟破り、変形時での近接攻撃である――!

 

「な――めんなやぁ!」

 

 ――DXに爪の跡は、刻まれず。

 

 バチィ! と激しい音を立て、ヤサカ少年が咄嗟に引き抜いた巨大なビームソードが六本の爪を受け止める。エネルギータイプの近距離装備を受け止める為に、対ビーム対策を施した実体三連クローだ。流石にビームソードにも競り負けていない。

 

「ええ反応してんのう」

「冗談やないですわ! こんな初見殺しに引っ掛かって負けるやなんて――師匠にどやされますわ!」

「ほーん、ほんなら――もう一発、初見殺し喰らって貰おうかいな!!」

 

 しかし。防いだけではもはや遅い。レイダーならば警戒するべきものを、ヤサカ少年はこの禍々しい見た目と、想像を超えた出鱈目な攻撃に目を奪われて、すっかりと忘れてしまっている。

 リュウザキがレイダーを選んだのは――単純明快。

 

「何を……っ!?」

 

 そう。

 レイダーガンダムは、至近距離でも顔面のエネルギー砲、ツォーンが脅威になる。それと同じようにRⅡガンダムの変型時は――飾りではない、ドラゴンヘッドが、MSに噛みつかんと襲い掛かるのだ。

 

 まるで嘴のように尖ったレッドアイズの特徴的な顎が、ガンダムDXの肩を噛みちぎらんと伸びてくる。

 ヤサカ少年の信じられない、というのが良く分かる声にならない叫びと共に――

 

「っぶなぁっ!?」

 

 唾競り合いから何とか抜け出すように、RⅡを蹴っ飛ばし、DXが飛び下がる。

 レッドアイズの牙は、獲物の身体を食いちぎる事なく、虚しく噛み鳴らされるだけとなった。

 

「……で、出鱈目過ぎます……!」

「はっ、レッドアイズは可能性の竜や。出鱈目な進化もお手のもんやで」

 

 ……ヤサカ少年の愚痴じみた台詞は、そう言う意味ではないだろうとは思う。実際、MSを相手にするのに『噛みつき』を警戒する事になるとは思っても見なかっただろう。噛みつきなんてするメカが出てくるのは、あらゆるガンダムの常識を投げ捨てる事になる作品、Gガンダム位な物だろうし。

 

「す、凄い……ドラゴンの形状っていう利点を、これ以上なく生かした戦い方だ!」

「うむ、接近戦に置いて、鍔迫り合いの状態からの、意識の外からの噛みつき――ヤサカ少年で無ければ、反応は間に合わなかっただろう」

 

 お二人の考察、半分正解。

 レッドアイズのたまらない所は――ここからだ。

 

「ほなもう一発や!」

「――はぁっ!?」

 

 一歩、距離を取ったDXに向けられた、レッドアイズの牙の間に……再び、黒い炎が溢れだす。聞こえてくる僅かなどよめき。

 そう。絶望的な話なのだが。黒炎弾と言う技は、ツインサテライトキャノンのようなタメの必要な大技、と言う訳ではなく……連発の効くレッドアイズの得意技なのだ。

 

 聞こえてくるのはヤサカ少年の引きつった悲鳴。

 

「黒 炎 弾!!」

「あかん、回避運動ッ……!?」

 

 再び口から吐き出された黒い火球は、先ほどよりも大分サイズは劣る。

だが、それでもさっきの破壊の威力を見ていれば直撃は避けたいだろう代物。咄嗟にブースターを吹かし、回り込む様に機動したDXを……しかし、リュウザキの瞳は、RⅡの紅いアイカメラは、逃がしていない。

 

 ぐるり、と。回り込むその動きを、レッドアイズの首が追いかけて――再び口に貯められる黒い焔。狙うは更なる追撃――

 

「それ以上は、させへん!!」

 

 そこに、一瞬早く、今度はDXの方から仕掛けて来た。

貯めに入った時点でブースターを吹かしていたのだろう、勢いそのままにハイパービームソードを大上段に構え、レッドアイズに振り下ろさんと迫ってくる――流石に、リュウザキも舌打ち一つだけ落としてから、RⅡの翼を広げ、上へと飛び上がって回避。

 

 咄嗟にヤサカ少年、DX専用のバスターライフルをマウントしていた腰から引き抜いてこれを追撃するが……一歩遅かった、リュウザキ操るRⅡガンダムは既にデブリの間を縫うようにして加速し、DXの周りを大回りに旋回し始めている。

 

「へへっ、仕切り直し~っ!」

「――逃がさへんわ!」

 

 そのまま、リュウザキが様子見に一旦入る――と思ったが、しかし。

 DXガンダムが、両腕にバスターライフルを構えた。射撃がブレないようにするための狙撃態勢か、どうやらヤサカ少年、攻勢を緩めるつもりは無い。

 レッドアイズは十分加速をつけて飛び回っている。狙撃なんざ無理――そう言い切りたいがしかし。委員長と戦った俺としては、そう言い切れない。

 

 僅か。何方も黙りこくる一瞬の間。ゆらりと虚空を滑るバスターライフルの銃口が。ぴたりとある一点で、止まった。

 

「……捉えました!」

 

 バスターライフルが、火を噴く。

 直線状、そのライフルの弾道は――間違いなく、レッドアイズの飛行軌道線をドンピシャで打ち抜いている。

 

「単調に飛びすぎや! 貰いましたわ!」

「はっ――そりゃあ、ファイターとしての腕はまだまだなもんでなぁ……!」

 

 ヤサカ少年が取った、と言わんばかりに弾んだ声で口を開き……しかしながらリュウザキは、そのままRⅡガンダムを、真っすぐに飛ばし続ける。このままでは、直撃は免れないだろう、その動きに、チナちゃんが口元に手を当てて、心配そうに見つめている。

 うーん、優しい子だ。リュウザキのガンプラが悲しい事になるのを機にかけてくれているのだろうか。知り合いって訳でもないのに……でも、大丈夫だ。

 

「――機体の性能で、そこはカバーさせてもらうで!」

 

 リュウザキの言葉に応えるように――機体の色が、変わる。

艶消しブラックの濃い色だったのが、突如として光沢を湛えた、黒いメタルボディに。全員が何事かと視線を向けるその中で。向かっていったエネルギーの弾丸は。

その装甲に直撃し――飛沫の如く、弾けて散った。

 

「なんやとぉ!?」

「ビームを、弾き散らした!?」

「――なんと!? まさか、アレはアニメでのレッドアイズお得意の……!」

 

 くくくっ、イオリ先生、ラルさん、そして……誰よりも、ヤサカ少年の、度肝を抜かれたような声が、実に心地いい。いろいろ相談に乗った甲斐があるというものである。

 ……というか、ラルさんはそっちに驚いてくれるのね。カードじゃなくてキッチリアニメまで見てるじゃないですか。嬉しいけど。

 

「これぞ『メタル化・魔法反射装甲』ならぬ、『メタル化・ビーム反射装甲』や!」

 

 そう。

 遊戯王のアニメに置いて、レッドアイズの窮地を幾度も救った罠カードである。魔法効果を一切受け付けなくなるという割とトンデモ効果をアニメでは持っていた。OCG化された後の事は、まぁおいておくとして。

 リュウザキはその『魔法』を、ガンダムにおけるビームと位置づけ。ガンダムSEEDにおけるアカツキから着想を得て、この機能を組み込んだのだ。

 

ビーム無効化。厄介極まりないその能力を見せつけられた、ヤサカ少年の一瞬の驚愕に乗っかる様に――RⅡがその向きを変える。DXに向けて一直線に向かうそのコースへ、尖った顎の先端を、サイト代わりに合わせ。

 

「レッドアイズに生中なビーム兵器は効かん! この通りのう!」

 

 突撃、開始。

全身のスラスターをバリバリに吹かし、デンドロビウムか、はたまた某Dホイールと合体する爺さんかと言わんばかりの速度で、DXへと、一直線。

 大口を開けて、これ見よがしに噛みついてやると見せつけるように。

 

「ええい、せやったら……これでぇっ!」

 

 バスターライフルでの遠距離狙撃は最早意味を成さない。そう判断したヤサカ少年は再び、腰からビームソードを抜き放って、突きの構えを取る。

リュウザキではこの突進中にサーベルを避けるのは無理、であるならばリーチを生かして此方に到達する前に貫く――そう判断したのだろうか。

実に判断が早い。流石は歴戦のガンプラファイターか。

 

「――こいやぁ!」

「おう、ええで――ただし!」

 

 そう、だからこそ――見誤る。

 

「こっちの形態で相手するやなんて――誰も言っとらんわぁ!!」

 

 瞬間。

 がこん! と、竜の首が、根元から前方に『飛び出した』。

 

「はぁっ!?」

 

 同時に、腕に装備されていたクローが両腕を滑り肩へと再び収まったかと思えば。自由になった片腕が突き出されて、長い首の根本へと向かう。

 ドラゴンのヘッドが外れた事で露になったレイダーの頭部。それが収納されていた空間に、今度は肘から先が納まって――連結!

 

 同時に、股間部から『追加されていた胴体部』が外れ、背後へと急速スライド。広がっていた股の幅が縮まって行って――あっという間に、ドラゴンの形をしていたRⅡは。本来のMSの人型へとその姿を変えていき。

 黒一色のカラーから。ジェットパックの翼にそって銀色が。各関節には赤の色が。体をなぞる銀色のラインが。黒の中から滲む様に顕れていく。

 

「空中機動からスタンド変形だと!?」

「まさかアレは――!!」

 

 そして。ドラゴン形態での高速移動中に、いきなりこの複雑な変形。スピードに乗っていた機体の軌道は――無理矢理、ズレる。

 変形の反動で、とんでもない奇襲を行うこの技の原点は……OOガンダム!

 

「ぐ、グラハムスペシャルやとぉ!?」

「人呼んでぇ! リュウザキスペシャルやぁああああ!!!」

 

 咄嗟の反射で突きだした、ビームソードの切っ先は――僅かにRⅡの股下を潜り抜けてしまう。無防備な隙を晒したDXに……変形完了したRⅡのドラゴンアームと化した左腕が、真っすぐ突き出さんと構えられる。

 

「いてもうたるわぁ!!」

「――っぉおおおおおおおっ!!!」

 

 ――が。

 突如として、その必殺のドラゴンアームを構えたレイダーの動きが、止まる。

 

「あだだだだだっ!?」

 

 と言うより、激しく揺らされて、次の一手に移れなかったという方が正しい。その一瞬を狙って、DXが一旦間合いを取る事に成功。その胸元からは、白煙があがっているのが見えた。

 あの一瞬、胸元のマシンキャノンを咄嗟に乱射、ドラゴンアームでの攻撃を阻害して見せたのだろう。とはいえ。

 

「……やっぱ、『フェイズシフト装甲』かいな!」

「はっ、トランスフェイズ装甲みたいな変わり種、俺みたいな初心者に扱えへんわ! やっぱ若葉マークのPS(フェイズシフト)装甲やろ!!」

 

 弾丸を浴びても尚、RⅡの装甲は――貫通せず。

 

 レイダーガンダムは、元からコクピット部分付近に、『トランスフェイズ』という実弾に高い耐性を誇る装甲を備えているのだが。

 RⅡガンダムには、トランスフェイズ装甲ではなく、その前身である『フェイズシフト装甲』を採用してある。改良型の前者よりもエネルギーが必要な大食らいではあるが、その分、防御性能は前者を上回るのだ。

 

 幾ら火力のあるDXのマシンキャノンとはいえ、それだけでPS(フェイズシフト)装甲持ちのRⅡガンダムに致命傷を与える事は出来なかった。

 

「言うやないですか……そんなゲテモノ極まった機体で!」

「安心せいや――自覚は、ある!」

 

 そして。

 変形を完了し宇宙に佇むは――左腕に竜の頭、背後には竜の尻尾を備える異形の機体。体の各所に走る銀色のラインと、関節部に入る赤い色が――とある騎士を彷彿とさせる。

 紅いカメラアイを輝かせながら、竜と人が歪に混ざり合ったMS。

 

「さぁて、第二ラウンドや……覚悟せぇ!」

 

 悪い笑みを浮かべているのが想像しやすい、リュウザキの高らかな宣言と共に。

 片腕の竜頭に、赤黒い焔が再び灯る。戦いの勢いは――僅かに、リュウザキに傾いているように見えた。

 




好きな事をやれて満足(恍惚)



追記:別の匿名で投稿してるFateの続きを間違って投稿しました。混乱させて申し訳ありません。クソみたいな凡ミスする作者ですが、温かい目で見守っていただければと思います……
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