遊戯王 ビルドモンスターズ 作:最近の虫野郎
……さて。遊戯王をガンプラで復権しよう、は良いんだが。
「何から始める?」
「いやぁ……なにからと言われても」
「だよなぁ」
我ら遊戯王復権同盟は早速、俺の家の自分の部屋に集まった。のだが。部屋の中心に胡坐かいて頭突き合わせ、早くも会議は怪しい雰囲気を纏いつつある。我が姉ちゃんに睨まれて肩身が狭いとかは無い。
そもそも俺たちはガンプラどころか、プラモデルにすら無知無知なニュービーだ。そもそも一体どうすればガンプラが動くのかも知らん。というか、そもそも俺たちはガンダムすらロクに知らんのである。
遊戯王の事であれば、小一時間どころか一日中語れるし、何なら展開ルートを肴にポテチ三袋くらいは開けられるのだが……いや流石に脂っこいな。無理だ。
「……ここは敵情視察からか? ガンダムとか見てみる?」
「いや、その前にまずプラモデルの事を知るのが先だろ。俺たちはガンダム、じゃなくてガンプラについて詳しくなりたいんだから」
「そ、それもそうか」
遊戯王の事は、遊戯王アニメを見てもあんまり分からない(ここ重要)。 実際にやってみるのが一番で。ならばガンプラも、ガンダムを見るより、プラモデルの事から知っていくのが一番だろう。城野の鋭い意見、思わず腕組んで唸ってしまう程だ。
……しかし、プラモデルか。
「城、とかから始めるのか?」
「い、いやぁ……城のプラモデルかぁ」
リュウザキが頭を抱えるのも分かる。うん。やる気にならん。
何が悲しゅうて、この若い情熱を熊本城やら姫路城やら大阪城やらを組み立てるのに使わにゃならんのか。逆にプラモデルが嫌いになりそうまであるんだが?
「でもよー、最初っからガンプラとかに挑んでも話は変わらんぜ。ガンダムにも俺らそこまで興味ない訳だし」
「そりゃあ、まぁせやけど……」
そもそも、プラモデルというのはやるだけならそこまで敷居は高くない、が……好きになるには意外と苦労するのではなかろうか。流石に俺らだって、プラモデルを組み立てるのには根気と時間がいる事くらいは分かるし。
そう言う作業が苦にならない『とっかかり』が必要なのだ。
だが、そのとっかかりが……んぁああ見えん! なんも見えん! 怪しい雰囲気どころか暗礁に乗り上げてる! 会議が! 俺も頭抱える!
「うごごご……どうすれば」
「せめて美少女のプラモデルとかあれば、ギリギリスケベ根性で……」
「ゲスぅ」
リュウザキの男心が止まらない。まぁコイツ彼女持ちだし、童貞ちゃうし。そう言う所がお盛んになるのは仕方ないと思う。嫉妬? いや、コイツらお似合いのカップルだし、素直に祝福するが。なにより、彼は決闘者。同じ決闘者の幸福は祝うのが普通だろう。
とはいえ、リュウザキの言う言葉も間違ってはいない。確かに、ここからプラモデルに入るのであれば、遊戯王の様に興味を持てるくらいのとっかかりが……
「……いや、待てよ」
美少女。プラモデル。遊戯王。
その三つのモンスターを脳味噌の中で融合! すると……俺の脳内カードデータベースに一つの項目がヒット。確か、アレは新カードパックのネット予約をしていた時の事だった気がする。
「ちょっと待て、有るかもしれんぞ」
「なにっ」
「しかも、俺ら向けのが」
立ち上がって、俺の机の前の椅子に。
スイッチを入れてパソコンを起動。ブラウザを立ち上げて、何でも教えてくれる先生に、あるキーワードを入力。打ち込んだのは――『遊戯王 プラモデル』の二つ。
すると……
「――コレだ」
「お、おぉおおおおおおおっ!?」
出て来た。
机の上のノートパソコンの前、カラカラとホイールを回し、そのページを上下しながら眺めてみる。種類は少ないが、しかしプラモデル、というのは想像以上に懐の深いモノらしい。あったぞ――『遊戯王のプラモデル』が!!!
「すげぇっ、ブルーアイズに、エクゾディア……ブラックマジシャンガール!」
「流石にラーとレッドアイズは無いが……ブルーアイズ買うか?」
「買う!!! オレ! ブルーアイズ! スキ!!」
リュウザキがガッツポーズしながら叫んでいる。俺も叫びたい。
プラモデルに興味を持ちたいなら、先ずは俺達の興味のある物と重ねてみるのが良いのかもしれない。そう思った時、思い出したのだ。ブラックマジシャンガールのプラモデルが販売開始された、という見出しを。
例え初めてのプラモデルでも、こと遊戯王関連であるならば、丸一日熱中していられる自信があるぞ俺たちは。という事で。
「ここからって訳だ。入門編は」
「あぁ。ここでプラモデルについて向き合って、それからガンプラやで!」
迷わず、俺たちは購入の手続きに進んだ。
「……うーむ」
「こりゃあ……えらいこっちゃ……」
数日後。俺たちは再び頭を突き合わせ部屋の中心(今回は城野の部屋。こっちは和風のテイストである)に胡坐をかいていた。そ
して、俺たちのその間で。
早速届いた『青眼の白竜』と『封印されしエクゾディア』の二つのプラモの箱を開けて。その中に入っていたパーツ達の繋がったランナー(数日中に色々プラモデルについて勉強した。板の名前らしい)見つめ、俺たちは唸っていた。
俺の前には、エクゾディア。
リュウザキの前には、ブルーアイズ。
それぞれのランナーが、山と積みあがっている。
「せ、専用のニッパーとか用意したり、切り離す時のコツなんか動画で見たりとかして、勉強したんやけど……こ、コレは」
「その戦力じゃ頼りなくなってくる……なんだこりゃあ、まるで満足民の組み立てる変態コンボ並みの迷宮ぶりじゃねぇか……!」
流石に、多い。これら全部を、一つ一つ切り離して行ったら、一体どれだけ細かいパーツが並ぶのか……想像するだにゾッとしてくるのだが。
マズい。やる気がなくなる、どころか気圧されている。コレが遊戯王の立体物であるというブースターが無ければ、この数の圧倒的な戦力に恐れおののいて、迷わずサレンダーを選んでいたかもしれない。
「……」
「……どないする?」
「どうするも何も、やるしかねぇだろ。俺たちの前に、エクゾディアとブルーアイズを降臨させるんだよ……!」
覚悟完了。
ニッパーを持って、取り敢えず、手近なランナーを手に持って……ちらりとパーツを見てみる。そうすると……分かる。アニメとかを見てると、エクゾディアの全身とかを見た事があるのだが。
パーツ一つ一つが、エクゾディアのパーツだって、分かるんだ。
「うわ、スゲェ。パーツからでも分かるこの細やかさ……」
「俺も分かる。ブルーアイズの翼膜って分かる。よく出来てるわ!」
コレが組み合わさって、エクゾディアになっていくと考えると、なんだろう。なんか燃えて来た気がする。
「見ろよ、これとか。口の辺りのパーツやないか?」
「ホントだ。ブルーアイズの牙そのものじゃん」
「あ、ちょい待ち、そのランナーに着いてるのって、鎖か!?」
「ホントだ。鎖だ。うわぁ、まるっとしてんな……あ、それとか――」
――等と、色々話しながらやっていった結果。
「あれ? もう終わった?」
「あ、あぁ……」
はたと気が付いた時には、俺たちは目の前に、互いにエクゾディアとブルーアイズを召喚してしまっていた。
「す、すげぇ。エクゾディアだ。えげつないくらいマッシヴぅ」
「ブルーアイズ、なんて美しい肌……! 社長が夢中になるのも当然やな……!」
正直、綺麗にニッパーで切れた訳でも無いし、勢いで組んでいたけど……意外と綺麗に出来てしまった。巨人とドラゴンのプラモデルが、堂々とそこに鎮座している。
し、信じられん。コレが俺たちの才能……!? 遊戯王であれば、俺たちはプラモデルでもやってのけられるとは!!
「……スゲェなプラモデルって」
「うん。オレらみたいな素人でもこんなに綺麗に出来るなんてなぁ」
とまぁそんなわけないのは流石に俺達みたいな遊戯王馬鹿でも分かる訳なんですけれどもね皆さま。説明書も丁寧、ランナーも一回もやった事の無い俺達でも凄い切りやすい工夫がされてて、色分けも細かいと来た。
なので、ただパーツを切り分けて、説明書通りに組み立てる、それだけで、こうして目の前に、プロが組んだのかな、って思う位の仕上がりのフィギュアが完成させられた。
何が凄いって、フィギュアとして、こう、違和感を感じないというのが。
できの悪いフィギュアっていうのは、やっぱりパッと見ただけでも、何処か『コレジャナイ感』ってもんを見つけてしまう。こういう所で人間っていうのは無駄に高性能らしい。
そんな無駄に高性能な人間の感覚でも素人が組み立てただけの人形が『カッコいい』と思えるのはマジで、凄い、感動すらする。
だが……
「やっぱ、なんか違うな」
「ん~……確かになぁ」
しかし我ら、一応プラモデルに真剣に向き合おうとしている民。目の前に屹立する遊戯王のキャラクター達を、頑固おやじみたく座禅に腕組みで覗き込んでいると、幾つか気になる部分がある――動画サイトに上がってる、プラモデルの組み立て動画なんかを思い出してみると。
「迫力、っていうか……なんだろうな」
「うん。やっぱ、『プラスチック感』が否めん。いや、このブルーアイズに不満点がある訳じゃないんやけど」
そうなのだ。どうしても、ちゃちに見えてしまう。
いや、別にフィギュアとしての完成度が、という訳じゃない。
目の前の組みあがったプラモデルは、あくまで『素人仕事』として見たならば、信じられないレベルの仕上がりだと思う。
しかしガチのプラモデル強者でガンプラの識者が、熱意全力で組み上げた動画の向こうの『作品』と比べてしまうと……いやそもそもプラモの種類の違いとかはあったけど……それにしても、違いがある。
重厚感と言えばいいのか。
プラモデルなのに、玩具なのに、似姿なのに……あくまで。だけども『マジ』の迫力があった。正直な話『えっ? どっかの企業がガチモノ作った?』と思うような……単眼の斧構えたウォーリアー……ザク、と言うらしいガンプラが、そこに立っていたのだ。
「うーん……何が違うんだろうか」
「ん゛~~~~~~~~~~~む」
城野のつぶやきに、喉をぶっ壊す勢いのレベルで唸り声を漏らした。それは寧ろ俺が知りたかった。
俺達は、プラモデルのプロではなくとも、遊戯王の重度のオタクである。
それなりに出来て、わ~~~い……と、なれたら良かった。マジで。それで納得出来たら楽だったのだが。もっと行ける、と知ってしまった以上、その先を目指さないのは失礼にあたるのではないだろうか、とオタク魂が、疼く。
じーっと目の前のプラモデルを見つめる俺達。
ふと、城野がはぁ、と気の抜けたため息を漏らした。
「……んー、このテカリとか、凄いこう、生物的なんだけど、若干光りすぎっちゅうか……なぁ?」
「何贅沢言ってんだよ。そんなに気に入らなきゃお前が色塗れっていう――」
リュウザキの愚痴にボヤキを返した、その時。
俺の頭脳に、サンダーボルトが上から降り。ハーピィの羽箒が靄のかかった思考をクリアにして。ライトニングストームが右から左へと回答を刻印した。
そうだ。それだ。
「色だ! 色!」
「色ぉ? 一体何の……いや……色……色ォ!!」
俺の言葉に、初めは怪訝な顔をしていたリュウザキの頭にも、黒炎弾が降り注ぎ、ひらめきの焔を灯してくれたのだろう。ハッとした顔になったのを見て、ウンウンと頷いた。
そうだ。
あの斧持ったプラモデルの色。やすっちいみどりいろ、ではなく。金属っぽい重さのある塗装だった。汚れもそうだし、各パーツの至る所には、黒いライン的なモノが走っていて目に映る情報を増やしていた。
「色塗りや、このプラモデルとの違いは、色塗りなんや!」
「そ、そっか。そりゃあ色を塗り替えれば印象も変わる……素で完成度が高いから、この色を変えるっていう発想に至らなかった!」
いや、単純な話ではあるのだが。俺達にとっては天啓にも等しい発想。自分達で文字通りその場所に実際に存在しているかのような迫力を出す為に、完成されているはずの品物を自分色に染め上げる、等と。
「く、クリエイティ……!」
「なんて奴らだプラモデラー……俺達、カードの色変えるとか全然無理だもんな」
「全くやで……!」
デュエリストという俺達との視座の違いに、脱帽。価値を……否、理想のブツを自分達で作りだすという発想は、そもそも存在しなかった。いや、存在はしていたが、そうしようとは思えなかったのだ。
コレだ。ガンプラのプロの様な奴らに近づくための第一歩は、ココにあった。
即ちは、プラモデルの塗装!!
「となれば、早速!」
「おう!!!」
我ら、情熱だけはあるオタク二人組。
希望さえ見出せば、更なる先へ踏み込めるはず!
そうとなれば、と先ず俺達は。
「「――小学校の頃の水彩絵の具セット!」」
機材を探す事にした。
小さい頃は塗装は絵の具で出来ると思っていました。