遊戯王 ビルドモンスターズ 作:最近の虫野郎
「――世界大会では戦えへんやとォアッッッ!?」
「こわいこわい顔近いてマオはん……」
余りの勢いに開眼&某二重人格墓守フェイスと化したヤサカ君BB。リュウザキが泣きそうになっているのも分かるとんでもない迫力……なのだが、しかし。そんな顔になるのも分からないでもない。
二人の決着はついた……とはいえ、突発的な勝負だった上に、自分は本気のガンプラではなかった。リュウザキの理想を形にしたガンプラと……強者と認めたビルダーと、今度は自分の本気のガンプラで戦いたい。
リュウザキなら世界大会にも十分通じる。本当の決着は、そこで。
とまぁ。
勝負終わりの握手の後、ヤサカ君はそんな再戦の約束を俺達に申し出てくれた。世界大会にも通じるビルダーからそのお言葉は、大変光栄だったのだがしかしながら……俺達は申し訳なさから、揃って視線を彼から反らすしか出来なかった。
リュウザキとの再戦は、今回の世界大会ではできない、と。馬鹿正直に言う事しか出来なかった。結果、ヤサカ君は装備カードをもりもりに盛った殺意マシマシのマリンセスの如き阿修羅と化した。
「大変申し訳ねぇ……リュウザキは、その……俺と組んで大会に出る予定で……」
「せや。マリクのガンプラの調整やらを、俺がやる予定やねん……」
「ぐぬぬぬぬぬぅぅうっ!」
「ま、マオ君、落ち着いて!」
今にも掴みかからんとする勢いの彼を羽交い絞めにして、イオリ先生も抑えてくれているが、その爆発するような感情は全く収まる様子を見せていない。
いやまぁ、アレだけの熱いバトル繰り広げた後でそれはないだろうという気持ちも分からんではないのだが……
「な、何も世界大会にでぇへん訳ちゃうし! な! マオはん!」
「やるのはおのれのガンプラやのうてそこの褐色の兄さんのガンプラやろがい! それで納得せぇっちゅうのは可笑しいやろ!!」
「いやそれはそうなんですけれども……」
……いや、ここで他人事、みたいになっていてはいけない。
これは俺達の……否、リュウザキには非はない、俺のワガママだ。それでマオ君には非常にもどかしい思いをさせているのだ。であれば、ここで納得させるのは、リュウザキではなく、俺だろう。
「……ヤサカ君」
「あぁん?」
「すまねぇ。だけど、俺達も世界大会を勝ち抜きたいと本気で思ってる――だから取れる手段は、全部取りたい。これはその為の選択なんだ」
こっちを睨む少年と目を合わせて。彼が今度こそ、本気のガンプラバトルをしたいと思ったのと同じくらいに……こっちの覚悟も本物なのだって事を、伝えにゃあならん。
「コイツの代わりにゃなれんが……もし君と当たる事になったなら……RⅡ以上のガンプラと、俺達二人の力全てを賭けて挑ませてもらう。それじゃ、不足か」
今の俺達が尽くせる礼の全てを賭けて。言葉を紡ぐ。
戦ったリュウザキではなく。外野の俺のセリフだ。何処まで彼の心に響くなんざ分からんが。それでもなんも言わんまま、うやむやにするよりはまぁマシだろう、と。
むすーっと口をとがらせたままのヤサカ君と視線を合わせ、しばし睨み合う。実際ガン飛ばし合ってる訳ではないが、それ位のつもりで、絶対に視線は逸らさない。
……先に、仕方ないとでも言いたげに、深い溜息を吐いたのはヤサカ君の方だった。
「はー……ほんで、んなもん関係ないなんて言うたら、なんやワイがワガママ言うとるガキみたいやないですか。ズルいわぁ」
「へへっ、火力バカではあるが、搦め手も得意なのさ。デュエリストだからな」
「なんですのそれ……まぁええわ!」
額に浮かんでいた青筋は、何時の間にか消えている。何とか怒りを収めてくれたようで、ほっと一安心……ただし。
「世界大会や。そこでリュウザキはんと、アンタ……褐色の兄さん、名前は」
「え? あ、マリク。イセタ・マリクだけど」
「マリクはんな。覚えたで……アンタら二人のチーム、捻じ伏せて――そっからや! その後改めて、今日の一件の決着付ける!! 楽しみが増えた思うことにします!!」
まぁ、世界大会への意欲とかに着火剤撒いて火を付けてしまった事に関しては、もう仕方ないと思う事にしよう。糸目ながらも『これは猛獣だ』って分かる獰猛な笑顔だとか見てると、『それにしてもちょっと着火剤撒き過ぎたかなぁ』と、一抹以上の不安が過るけれども。
「ええですかリュウザキはん! ワイとやる前に負けたりしたら承知せぇへんで!」
「分かった! 分かった! やからそんな詰めんといてや!」
「ほんま頼むわ……それはそれとしてぇ。なぁなぁ、そのRⅡガンダム、ちょぉっとワイに見せて欲しいんやけど♪」
「えっ表情変わり過ぎちゃうどないしたん……?」
……まぁとりあえず、雨降って地固まる。終わりよければ全てよし。リュウザキとマオ君もどうやら仲良くなれそうなので、そこを喜んでおくとする。デュエルを通して遊戯王を布教するチャンスにもなるだろう。今のリュウザキ君がそれを覚えているかと言えばちょっと微妙かもしれないけど。
だって、俺自身……今、ちょっと布教とか考えられない位に、ちょっとした感慨に浸ってしまっているのだから。リン子さんが出してくれたお茶請けを前に、机の上に両肘をついた両の掌を組んだ姿勢、ちょっと赤くなりながら、両手はぷるぷる震えている。
「……負けたとはいえ、ほぼ分けみたいなもんだったな」
「そうね」
零す様な俺の言葉に、委員長が肯定の言葉を零す。
それは、俺のとある事実の確認への、実質的なYESの返事でもあった。一つ。大きく息を吐き出して、ゆっくり。天井を仰ぎ見るように……腹の底から昇って来る、その感動に、ぎゅうっとした気持ちになった。
「通じるんだな、俺達のガンプラは……世界に……!」
「……そうね。取り敢えず、おめでとう」
委員長が認める程の屈強な『ファイター』相手に、俺達の『ビルダー』としての細工が通じたのだ。
これは、大きな一歩だ。
ガンプラバトルの世界大会へ進むだけのビルダーとしての力を、俺達は身に着けたという、これ以上の無い証左だ。
イオリ先生に基礎を教わり、委員長と共に応用を仕上げた。その成果が遂に実を結んだとなれば、そりゃあ……素直に、嬉しい。
「ま、アンタというかリュウザキの、だけどね」
「まぁな。でも……相棒の事だからな。我が事のように嬉しいし……相棒だからこそ、必ずアイツに追いつくって『決めてる』。だから、通じるのさ、俺達のガンプラは」
初めてイオリ先生に教わった時から考えたら、余りにも大きな進歩だ。塗装すら分からず、素組で感動していた頃から……今じゃデザインナイフに、複数種類の紙やすりから金属のやすり、スプレーや絵筆まで使い分け、ガンプラを作成できるようになった。
「自信になったよ。旅立つ前の、さ」
「……もうそろそろ、よね」
そう言って、委員長はチラ、と背後のリュウザキを見る。マオ君に鼻高々にガンプラの解説をしていた所に、何時の間にか目をキラキラさせたイオリ先生も加わって、ガンプラ好き三人の無邪気なガンプラ自慢大会が始まっていた。
俺達が出場するWWFの開催時期は、世界大会の予選の中でも最も遅いタイミングとなっている。出場者が予選大会の中で最も多く、最も混沌とした大会故に、準備は念入りに行われるからなのだという。
俺とリュウザキは、予選が終わって一段落しているイオリ先生やマオ君と違って、ここからが大一番だ。
「前に見た時は結構進捗ダメそうだったけど、大丈夫なの?」
「……リュウザキのRⅡが『たたき台』になってくれたからな。俺達が『組み上げて』きたガンプラノウハウの集大成だって太鼓判を押せる。他の誰にも、見劣りはしない。そんな仕上がりになる……」
リュウザキのRⅡガンダムは、対世界の為のガンプラの『試作品』でもあるのだ。
RⅡのガンプラ作成、及び完成までの過程で得たデータは全て、俺の本番用のガンプラへと流用、転用、応用されており……その完成度を高める為の一助となっている。
機体のコンセプトと……それに沿った素体の改良は順調に進み、凡そ完成の見通しも立っている……状態だったのだが。
「なる、けど……まぁ……アレだ……えっと、端的に言うと」
「課題が増えた?」
「……よくお分かりで」
リュウザキのガンプラは、少なくとも俺の今現状作っているガンプラに容易に比肩しうる性能を誇っていた。俺達のどちらが出場するか、と言うのは現状のファイターとしての腕前を鑑みての選出だ。
故に……俺のガンプラが間に合わなければ……本当に、本当に、断腸の思いで……リュウザキのRⅡを更に改良し、クオリティや、武装面を調整したいわばRⅡ後期型、またはRⅡリメイクにての出場も視野に入れていたのだが……
「今日の実戦から考えるとなぁ……」
下手したらそれでも不足かもしれん。
通用するのは、分かった。パイロットの技量差がある状態でも何とか拮抗できたのは、ガンプラの性能が不足していない証ではある。
しかし、それでも尚、勝つには至らなかった。
先ずは、諸々の不利な条件を覆して見せた、ファイターたるマオ君の腕を褒めるべきだとは思うが、それ以上に……多分だが、RⅡでも『足りない』のだ。
あのビルドストライクガンダムを目標に、ウォドム・リボルヴでの反省点や、リュウザキの遊戯王愛から生まれた作り込みを盛りに盛った、今の俺達の最高到達点と言ってもいい、RⅡですら。
「更に詰めにゃならんか……課題がアレからさらに増えるとはこのマリクの目をもってしても想像も出来なかったわ」
「……どうする? 間に合わせられる?」
「取り敢えず、ギリギリまでブリーフィングと改良を重ねる。重ねるけど……いやぁ、どうしたもんかねぇコレは」
はっきりと言おう。
世界大会で『戦う』事ならRⅡでも行ける。間違いない。機体の出来から、プラフスキー粒子の応用まで、そんじょそこらのガンプラ相手に負ける道理は、ない。ファイターとしての腕がある程度伴えば、かなり良い所まで行けるんじゃないかとは思う。
だがしかし……本当に、本当に……悔しいが。
世界大会で『勝つ』には、一歩足りない。
あと一歩、何か、決定的な決め手が俺達のガンプラには、欠けている――
ガンダムブレイカー4たーのしー!!!
でもチームのみんながほぼが全員ガンダムフェイスで、モノアイ派ワイ無事轟沈。味方になってくれそうなのがリンちゃんだけかと思ってたけど、彼女も元々ガンダムフェイスだった……例の商店街のホープちゃんだけが儂の味方や……(ネタバレ配慮)