遊戯王 ビルドモンスターズ   作:最近の虫野郎

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30ターン目 「目指せ、WWF優勝」

「なっ……!?」

「な、なんやなんやっ!?」

 

 周りから溢れだす熱気――これは、俺達も良く知っている。

 大会に臨む選手たちの鬨の声。遊戯王大会でも、熱の入ったオッサン方が上げてるアレである。参加特典とか優勝賞品のカードがファンサがたっぷりな感じだとそれが顕著になるのは何時もの事だ。

 でも、ちょっと待ってくれ。

 

「今じゃ、ねぇだろ……っ!?」

 

 目の前の奴がどんだけこっちの事を虚仮にした言い方してんのか分かってるのかこいつ等は。だのに、腹を立てる処か……こういう奴らって、自分に舐めた口を叩かれるのなんざ許さないみたいな我の強いのしかいないんじゃないのか!?

 

 そう思っても、周りの奴らは壇上へとブーイングを飛ばすどころか……寧ろ、獰猛な笑みを浮かべて意気軒昂。もうちょっとしたお祭り騒ぎだよもうこれ。

 周りの熱狂に、困惑する事しか出来ない――それはリュウザキも同じようで。周りを見回しながら、眉間には深い皴が刻まれている。

 

「どないなっとんねん……!?」

「――成程な」

 

 ……得心したとばかり、渋い顔で頷いているのは、『大佐』一人だけだった。

 

「何がですか!?」

「公平な勝負を望むのは、普通のガンプラバトルの大会であれば当たり前の事――しかしながら、ここは『WWF』。悪党共の潰し合いの場でもある……奴らにとっては、最後にお行儀の良いトーナメントを控えるよりも、余程肌に合うやり方だろうよ」

 

 ――そう言われ、はっとする。

 

 そうか。またも俺達の常識でモノを考えていた。

 ここに参加する裏の人間たちは、自分以外は敵というのがあり得る様な所で生きて来た奴らだ。寧ろ、こいつ等にとってはこのバトル・ロワイアルによる『自分以外全てが敵』の潰し合いの方が慣れている、と。

自分達のホームでの戦い方で大会を開いてくれるというのだから……初めから有利に事を進められる。

 

 一対一、正々堂々なんて勝負に最後持ち込まれる前に、勝利の栄光をかっさらってしまえば、どでかいチャンスが転がってくる訳だ。なんなら……同じ仲間同士で組んで、後は仲間内で一番強い奴を送り出せば、その分チャンスを掴む確率は大きくなるまである。

 

「……運営め、遂にこの大会出場の一般参加者を見限る方向に舵を切ったか……!」

 

 だがそれは……この辺りにいる一般参加者が不利を背負う事と表裏一体だ。

 普通は、こういう大会に出場するのは『個人』なのが原則である。当然だ。組んで出場できちゃったら八百長なんてし放題である。けれど……この大会は違う。そういう良くない真似をする奴らが出場し放題だ。

 今回の一件は……そう言った奴らに有利に働く状況を作り上げてしまった。

 

 『大佐』が顔を顰めていたのも漸く納得がいった。参加層の多い方面に多少配慮する事が悪い事とは言わないが、相手が相手な上、露骨に過ぎる。

 最低限、『誰にでもチャンスがある』レベルに保つ事を、その為の責任がある運営の方から半ば放棄したようなもんである。

 

「――っかぁ~っ……こら前途多難やなぁ!?」

「あぁ……俺達も、少なくとも誰かと組まねぇとキツイぞ……!」

 

 状況は猛確定したんだ。文句言っても仕方ない。

 こちとら遊戯王出身、運営の調整ミスかって言わんばかりのクソ環境には慣れたもの。寧ろ、その環境に適応してこそ、歴戦の遊戯王プレイヤーってもんだ。

 

 先ず最低限、他の奴らから袋叩きに会う事だけは流石に避けたい。と成れば……他の一般参加の人とある程度連携を取って自衛の一つでもしたい所だが。

 さっき確認した通り、他の一般参加者達も一癖も二癖もありそうな屈強な兵ばかりだ。俺達みたいなパンピーと組んでくれるかどうか――

 

「――それなら……私が旗印となろう」

 

 ……そこで。

 

 ぽん、と肩に手が置かれる。

 顔を上げれば――『大佐』が、壇上の運営の男へと鋭い視線を向けている。

 

でも……全然、違う。さっきの、チンピラ共への一睨みなんざ、まるっきり甘噛みみたいなもんだった――今、目の前で睨みを利かせるこの人は、まるで牙を剥いた猟犬だ。目の前で迂闊な事をしようもんなら、首を食いちぎられんじゃねぇかっ……!?

 

……いや、そもそもだけど。

 

「お、俺達と……組んでくれるのか!?」

「先ほど面倒を見てやると言ったろう――それに私も、ヨーロッパの古豪たる、『ヨーツンヘイム』の一員としてのプライドがある。このような横暴なやり方に屈するなど我慢ならん。貴様らにも力を貸してもらうぞ、ひよっこ共」

「「は、はいっ!? 喜んでっ!」」

 

 此方まで射殺さんばかりのド迫力の眼光。チンピラ一人位だったら目で殺せんじゃねぇかってレベルのメンチに、抵抗する気もなく了承してしまう。

 いやまぁ、俺達としてもありがたい限りではあるんですけれども……怖いっ、怖いっす大佐っ! もう俺達の方が泣きそうですっ! 流石に分かりやすすぎる。間違いなく、大佐はお冠だ。

 

「よし、良い返事だ――これから私は骨のある一般からの参加者にも声をかけて、このトーナメント対策として即席の『ファイター連合』を組織する。お前達も、これと思う者が居たら参加を呼び掛けろ。良いな」

「え゛っ!? お、俺らの英語ってそんな器用な真似が出来るようなもんじゃ……」

「馬鹿者っ! ボディランゲージでも何でも使って連れてこいっ!!」

「「はっ、はいぃっ!!」」

 

 駆け足っ!という怒号じみた一言と共に会場へと走り出す。流石にこんなクソ情けない英語しか出来ない様なバカ二人が分かれても効率最悪だと思うので、リュウザキとコンビのままで。

 ……し、しかし。なんともとんでもない事になった。

 

「ガンプラバトルだよなぁ、コレ……」

「ホンマ、本選出場するだけでこないにエラい事態になってまうとはなぁ……」

 

 突如として全員参加の潰し合い。大戦前からガン不利な状況で、何とか事を五分に持っていくために、他の強豪参加者の皆様と強制コミュニケーションに向かう事に。

今日は大会の概要を聞いて対策立てるか――くらいの気持ちだったのが、どうしてこうなってしまったのか。

 

 ……思わず、口元から笑いだって零れてくるってもんだ。

 

「――まるで遊戯王のアニメ、やんな」

「本当にバトルシティ編だなこりゃ」

 

 物語の流れも、場所も、状況も……正直、何も全てが違う。けれども。

 常識を覆すような大会――その中に潜む、日常から一歩踏み込んだ場所にある悪意。そこへと身一つ……じゃないし、臆してない訳でも無いけれど。それでもまぁ、立ち向かう訳である、ここから。

 その先に待ち受ける運命なんて分からない。でも困難ばかりの険しい道だって事は分かる。それこそ、一生脳に刻んで忘れられない様な一時になるだろう。

 

 ――胸が熱い。

 

 狂ったようにドラマチックで、ルナティックじゃねぇか――世界を巻き込む、とは言わないが、世界大会に影響を与える様な、とんでもない鉄火場になった。

 

 楽しむ余裕があるか少し怪しくなって来たのは、多分そうだと思うが……その代わりにとんでもないモチベーションが生えて来た。

 もし、もしもだ。俺達二人が、こんな修羅場を見事に潜り抜けて、その上で……俺達が『WWF』優勝という栄光を勝ち取れたとするなら、どうなる?

 

 そんなの決まってる――確約される様なもんじゃねぇか。

 

「俺達のガンプラが――遊戯王への愛が、世界に通じるってよぉ!!」

「当たり前や……楽しなって来たで。決闘者二人の勝負度胸、見せたろうやないか!」

「おうさぁ!」

 

 先ず、頭に思い浮かぶのは……あの烈火の様な炎を宿した少年とその仲間達。きっと、めちゃくちゃ心強い味方になってくれる筈。

 

 脚が弾む ――踏み出すこの一歩、一歩が。確かに野望へと繋がっている。

 

 そう分かってしまった今。この歩みはもう、止まりそうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……これで例年以上に派手な潰し合いになるのは確定か。ここまで掻き回せば、先方も満足いく結果となる筈だが――っと?」

 

 ピッ

 

「噂をすればという奴か……『バスク』です。これはどうも『タッカー』さん。まさか其方からご連絡頂けるとは思ってませんでしたよ。如何でしょう、今回の大会は。何時も以上に渾沌として、苛烈なバトルになること請け合いですよ――其方の御所望通りに、ね」

 

「それで、件の『Gシステム』の方は如何でしょうか。成程、『今の所は』万事好調そのものと……それは何よりかと。そちら側の手駒のダークモビル同盟の選手の皆様方が勝ち残る事を、出来るだけお祈り申し上げますよ」

 

「……『倫理委員会』の方は、今回はチーム・ネメシス――というより、フラナ機関の方へと関心が言っています。問題はありません。態々リークしたのだから、効果を発揮してもらわねば困りますがね」

 

「はっ、それでは」

 

 ピッ ツー ツー ツー……

 




次回:『ミヤノ・メイと海』
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