遊戯王 ビルドモンスターズ   作:最近の虫野郎

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Standby Phase-04 「『拳』対『砲』」

――選出されたステージは……高層ビル群の立ち並ぶ『ホンコン・シティ』であった。

 

 Zガンダムの劇中に置いて、カミーユ・ビダン搭乗のガンダムマークⅡと、強化人間フォウ・ムラサメが駆る、『MA』サイコガンダムが激戦を繰り広げた地――ただし。

 今回戦う相手はサイコガンダムではなく。その一世代前、一年戦争時のモビルアーマーであるが……しかしながら、単純な出力であればそのサイコガンダムにすら匹敵するレベルの大型MAだ。

 

「あれは――大型強襲MA、アプサラスⅢ……っ!」

「僚機は……グフ・フライトタイプが2機。どうやら、お顔に違わずいぶし銀な作品がお好きな様ね」

 

 空に浮かぶは――鉄の要塞。

 巨人の上半身だけを飛ばしたかのような歪なシルエットの中心に備えられしは、MS一機にも相当するレベルの大型の砲口。

 文字通り、連邦の大隊を真正面から薙ぎ払う程の圧倒的な火力を見せつけ、更に長時間の空中を移動できる能力も持ち合わせる――ジオン驚異のメカニズムの極致の様なMA。

 

「でけぇ……っ!」

「あないデカブツと撃ち合いなんてしたら、こっちはひとたまりも無いですよ!」

 

 迎え撃つは――ヤサカ・マオが世界大会に備えて組み上げた切り札、新造形となった背後の大型ウィングが特徴的な、ガンダムX魔王。

 両腕の長距離砲による遠距離戦を得意とするイオリ・セイの新作ガンプラ、ビルドガンダムMk-II。搭乗者はレイジ。

 

 そして……ブースターを吹かしながら飛翔して先行する二つのガンプラを――無数に並ぶビルの上を『走りながら』追跡するする影が一つ。

 しなやかな細さのその脚で、大地を駆けるかの様に、真っ直ぐに力強く。常識外れの圧倒的な『体捌き』は、正しく技術の極たる『MF』の特権――兜に輝く赤の宝玉、脚に履いた深緑のハイヒールは、その美麗なる武闘を飾るアクセサリー。

 

 しかしながら、美麗なだけではない――ミヤノ・メイが駆るは、影鬼改め『ドラゴンガンダム・屍鬼(グール)』。双腕に縦三眼たる異形の頭蓋を備えし、深緑のガンプラ。

 

「とはいえ……向こうは、『マトモ』に撃ち合うつもりは無い様だけど」

 

 その紅い瞳が映し出すのは……その全身から威圧感を撒き散らしながら飛行するアプサラスⅢ。そのモノアイが、自らの敵の姿を認めたのか。

 意気軒昂、グポン、という独特の鈍い起動音と共に一際強く光輝いたのが見えた。

 

『――ミヤノ・メイ……そのガンプラ諸共、貴様の尊厳を焼き尽くしてやる……っ!』

 

 ……先行して接近している二機など目にも留めず。

 アプサラスⅢの操縦者たる『灼熱の辰』が視界に捉えるのは……『屍鬼』のみ。

 

「――こっちを無視するとは、良い度胸じゃねぇか!!」

 

 当然、そんな無礼をかましたならば。

 レイジが、その紅い髪の如く烈火に燃えないわけもなく――早速、その両手のムーバブルシールドにマウントされたビームライフルが、アプサラスに向けて火を噴いた。

 

 真っすぐに飛翔する光の弾丸。高エネルギーが込められた一撃は、如何にアプサラスⅢが大型のMAとはいえ、その装甲を貫くのに何ら支障はないレベルの威力――の、筈だった。

 

――ぱしゅんっ

 

「……なにぃっ!?」

 

 しかし、アプサラスの装甲に衝突したそのビームは……まるで降りしきる雨粒の様にプラ材の上で力なく弾けて、虚空に散っていってしまう。

 

「ビームを弾いたやとぉ……!」

「アプサラスⅢにはそんな機能はない筈……!?」

「プラフスキー粒子を変異させての粒子偏向――流石は世界大会に出場していただけはあるわね。あのガンプラ」

 

 眼の前で起きた出来事に思わず唸るマオ。動揺を隠す事が出来ないセイ。そこへ、一歩遅れてメイの影鬼が並ぶ。

 

 セイの作ったMk-IIの出来栄えに問題がある訳ではない。寧ろ、生中な小細工であれば性能差でゴリ押せてしまうレベルの出来栄えだとすら思う――それだけ、相手のガンプラの仕上がりも高レベルであるという証だった。

 

 目の前のガンプラたちに、自分を突破するだけの火力はない。そう判断したのだろう。

ビームライフルの一射を受け、その動きを止めていたアプサラスⅢが、再び……ゆっくりと前進を再開する。狙いはたった一点。

 

『――お前ら、他のガキ共に邪魔をさせるな。『アレ』を上手く使えよ!』

『『了解!』』

 

 響き渡る辰三の檄に、その脇を固めていたグフ・フライトタイプ達が呼応する。

 それぞれのカスタムは……活動時間延長の為の大型プロペラントタンク。恐らくは単純に火力を増強する為だろうか、バックに増設された二門のガトリング砲。

 

 加えて、それぞれが陣取る側に合わせて、まるで鏡写しかの様に、互いに反対の腰へとマウントされた――

 

「あれって……!?」

「セイはん、レイジはん、来ますよっ!」

「ちぃっ!」

 

『『喰らえぇっ!!』』

 

 ――特殊兵装『ウミヘビ』。

 

 左右のブースターによって射出される、文字通り蛇の様な頭をした弾頭が。真っすぐX魔王とMk-2へとに襲い掛かる。

 絡みつけば、高圧電流が一瞬で機体の自由を奪う。『機動戦士Zガンダム』本編にて、可変型のMS『ハンブラビ』が使用し、アーガマクルーを苦戦させたトリッキーな装備。

 

 ビームサーベル、ビームライフルと言ったような、『慣れた動き』ではない初見殺しの要素の含まれた装備である。それ故に強者たる二人であっても、ほんの一手だけ対応が遅れてしまい――やむを得ず、機体を後退させる事となった。

 

「ちぃっ……!」

「あかん、狙いは初めっからっ……!」

「ミヤノさんっ!」

 

 結果として、チーム『竹家』側の三機は見事に分断される形となってしまい。

 向こうの目論見通り――曇天が重く伸し掛かるホンコン・シティの空の下で。敵のエースたる巨大MAとMFは、正面切って向かい合う事となる。

 

 互いの装甲を、雨が伝う。

 一つは――モノアイの飛ばす不気味な光の中を、弧を描いて落ちていく。

 一つは――ツインアイの煌めきに一筋の流星となり、宝珠の如き涙と降る。

 

 此方を睨む灼熱の復讐者に向けて。黒鉄に彩られた指先が、腕が、ゆるりと残滓と共に弧を描き……ゆっくりと腰を落とし。その鋭い爪先で一点にて立ち姿を取る。

 半身に構え、指先を水平に突き出すそれは、『(ドラゴン)』というよりも『(マスター)』の如く。堂々不敵に、天に浮かぶ要塞を睨みつけた。

 

『――覚悟は出来たか、小娘』

 

 憤怒を纏った言の葉が、ビルのコンクリートを震わせる。

 粒子を通しても伝わる、その激情の威圧を――メイは、鼻先で笑い飛ばした。

 

「出来てるわよ――勝つために、無茶をする覚悟は、ね」

『……ほざけっ!!』

 

 再びの怒号と共に、光り輝く砲口より放たれる、蒼い電流迸る輝きの群れ――短時間チャージからの砲塔の速射。威力こそ低いが、広範囲を叩けるショットガン染みた灼熱の雨。物量による、逃げ場のない筈の面の一撃を――されども。

 

「――温い」

 

 瞬間!

 

 弾けて宙に散るは、高層ビルの最上階。

 

『ぬぅっ……!?』

 

 しかしながら……空に飛び散るのは、無惨に砕けた礫ばかり。

 気が付けば。アプサラスの大砲の火線から、深緑の姿は影も形も残さず消え失せていた。

 

 アプサラスⅢは、そのモノアイをしばし周りに巡らせ……その姿を漸く捉えたか。

 砕けたビルから八つも先の空に、黒と緑に斑な弁髪刀をゆるりと靡かせ、深緑の影はこうして悠然と立っている――ツインアイの灯りともに屍鬼は今だに健在だ。

 

 そもそも。

モノアイの眼下にあった天辺は、かの光の散弾によって砕かれたのか……否!

 それよりも、瞬き一つ程に僅かに前。鈍く重たい粉砕音と共に、ガラスの破片と礫は無惨にも四方に飛び散っていた――たった一足の『踏み込み』によって。

 

 轟音! 神速! 疾風迅雷!

 

 雨の間をいちいち縫う様にして躱すなど惰弱。MFの極まった体術であれば――その程度の火砲を、はるか先のビルの屋上まで『跳ぶ』事も容易い。震脚にも等しい強烈な踏み込みからの豪快な急加速は。容易に、光の弾丸を置き去りにした!

 

「欠伸が出そうね」

 

 そして。その索敵の一瞬の間に――大弓は既に、引き絞られている。

 

 腰を深く落とし、半身を引いて、腰だめに拳を構え。リアスカートが僅かな飛沫と共に翻る、その最中。重低音と共に屋上のコンクリートを打ち鳴らした踵に、ぎゅるり、と屋上を濡らす雨が渦を巻き――ツインアイが、一瞬の闘志に灼熱と燃える!!

 

「――墳ッ!!」

 

 再び踏み込む、一足!

 天へと伸びる摩天楼を砕く程の剛脚と共に、深緑の機影は雨の幕を引き裂く一条の玄の砲丸と化し。弾く飛沫を軌条として、ただ一直線にひた走る。

 

 咄嗟にアプサラスⅢ側もメガ粒子砲の収束を始めたが、余りに遅い。既に緋色の線を薄闇に刻みながら、弾丸と化した屍鬼は既に目の前に。

 固く握りしめられ、一点目指して突き出された鉄の拳が、異形を形どる重甲の曲面を打つ――瞬間!

 

「破ァッ!!!」

 

――ゴウンッ!!

 

『う゛ぉおおオ゛っ!?』

 

 曇天に響き渡るは、轟音。

 

 直後、弾かれた独楽の如くにはるか後方へと押し出されるのは、アプサラスⅢの巨体。裂帛の気合いと共に放たれた屍鬼の剛拳は、自らの三倍はあろう巨体を容易に吹き飛ばして見せた。

 

 殴り飛ばした反動に乗って――屍鬼は再び、別のビルの屋上へと降り立ち。

 二度、三度と、握った拳を、開いて、股閉じてを繰り返してから……その視線を、ゆっくりと、先程拳を振り切った、その彼方へと向ける。

 

「……流石に、世界クラスのガンプラ、か」

 

 拳に、確かな手応えがあった――間違いなく、クリーンヒットと言って良い。

しかしながら……肝心要の『相手の装甲を砕いた』という感触がしなかった。

自分のガンプラだ。自分の手で作り、自分の手で操って来た。並大抵の相手であれば、今の『アタリ』で間違いなくその身体を粉砕している筈。しかしながら……拳から伝わって来た、あの手応えは。

 

『……流石は、ミヤノ・マイの娘だ。一発で目を覚まさせられた』

 

 ……未だ、悠然と空に浮かぶ巨影に目を向ける。

 

 拳を叩き込んだ部分の装甲が、ほんの少し歪んでいるだろうか。しかしながら。大きな有効打になっている様には、到底見えず――アプサラスⅢのモノアイに滾る焔は、未だに陰る様子を見せない。

 

「……対打撃用の積層装甲かしら」

『ご名答! ビーム兵器に対する備えだけでは渡っていけん、実体兵器にもある程度は対策する必要があったからな……大型の実体剣による斬撃ならば、流石に耐えかねるかもしれないが!』

 

 そして再び。その砲口へと光が宿る――否、吹き飛ばされていた時には、既にチャージを始めていたのだろうか。既に、『必殺』の装填は終わっていた。

 

『次は――此方の番だっ!!』

 

 ぽっかりと開いた暗がりに、閃光が瞬き。

その直後、屍鬼の身体はビルの屋上を蹴って、宙へ。

 

 剛の一撃とは正反対の軽やかな身のこなし。暗雲の下でくるりと舞い、その姿が天地を逆さにした瞬間に――眼下のビルが『ずぱん』と。

頭から股下まで、唐竹に『裂けた』。

 

「――」

 

 空中で、ほんの僅かに『半身』程、体をくねらせたまま。一瞬、彼女は自らの背後へと視線を送る。自分が立っていた直線上に立ち並ぶビルは悉く、縦一文字にカチ割られ――その直後、火山の噴火の如き爆炎が、天を焦がす様に吹き上がる。

 

 鼻先を伝う冷や汗と共に、五つほど隣のビルに着地し――目の前の難敵へと、再び拳を構え直す。アレを受けられる道理は、無い。

 

 ……降りしきる雨の中。

 立ち上る水蒸気の靄に包まれたアプサラスⅢから零れるのは――獲物へと牙を剥くケダモノの、『愉悦』の唸り。

 

『くくくっ……見たか小娘、これが世界を席巻した、俺のガンプラだ!!』

 

 操縦者のその高揚に応えるが如く、ジェネレータが昂りの声を上げ、再び砲口に破壊の光が灯る。天より此方を見下す巨兵へと――ツインアイを通し、メイは真っ直ぐな視線を向けたまま、一つ、呼吸を入れた。

 

 ちらりと片腕に備えられた縦三つの宝珠へと視線を向ける。

 ここからである。自分のビルダーとしての『技』が、ファイターとしての『力』が、世界へと通じるのか。それを試すのは――!!

 




書いてる最中に見直してたんですが、ビルドファイターズやっぱ神作やなって……
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