遊戯王 ビルドモンスターズ   作:最近の虫野郎

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6ターン目 「ガンプラ選定」

「……」

 

 ちら、と黒板の方を眺める。先生が数式を書いているのが見えた。ノートの方へと視線を向けて、再びシャーペンを走らせる。

 建てられた教科書の裏、置かれたノートに粛々とシャーペンで書き込んでいくのは、目の前の黒板に書かれた数学の板書――ではなく、『ガンプラ』に関する沢山のアイデアだ。

 

 イオリ先生には『ちゃんと書き出してみるのも大切』とアドバイスをもらったので、こうして色々書き出してみているのだ。俺が今まで狂った様に積み上げて来たもの。そしてここ最近、狂う位に頭に詰め込んだモノ……それぞれから、色々と。

 何をモチーフにするのか、どんな機体を改造するするのか、……ここ最近、相手の妨害を突破する為の展開ルートよりも考える事が増えた、そんな『ガンプラ』についての事をつらつらと――

 

「――おい、マリク」

「あっ……」

 

 考えすぎた結果。先生が物凄い顔で、授業に集中していない馬鹿者を睨みつけている事にも気が付かなかった。まぁその馬鹿者とは、俺の事なんだけれども。

 

「随分と集中しているな?」

「い、いやー……あははは」

 

 苦笑いをしながら視線を逸らすと……盛大なジト目でこっちを見つめる委員長の姿が目に入った。

 

 ばーか。

 声に出さずとも。口の動きで、そう叱咤されたのが分かる。ため息一つ吐いて、肩を落とした。残念ながら、今日は学校の先生にキツいお言葉を浴びる日になりそうだった……

 

 

 

 

 

 

「うーっす……お、やってんな。戦況どう?」

 

 部屋に入って、真っ先に目についたのは、テーブルを挟んで向かい合った二人。

 リュウザキは相変わらずのレッドアイズ。そして……目の前で向かい合ったイオリ先生が使っているのは、E・HEROデッキである。

 

「……見て分かるやろ、俺が不利やで」

「マリク先輩、お疲れ様。どう? 考え纏まった?」

「あぁ、十分だよイオリ先生。しかし、ホントあっという間に上手くなったなー……」

「まぁ、休憩時間に二人に仕込まれたからね……あ、それダメ。うらら使うよ」

「アカーン!!!」

 

 あぁ、起死回生のサーチが潰された。コレは駄目そうですね……イオリ先生のフィールドのモンスターの打点は十分、確実に削り切られるだろう。

 後ろで上がる、リュウザキの『なんでやぁああああ!』という断末魔を聞き流しつつ、勉強机に鞄を置いて。それから、床の上に倒れた敗北者の隣に腰を下ろす。ここ最近、ガンプラ勝負の合間合間に地道に布教して来たのが効いたのだろう……ふふ、こういう地道な布教活動も必要だろう。

 

 幸い、イオリ先生は遊戯王の複雑な複雑さにもあっさりと付いて来た。ガンプラ作りでギミックを仕込んだりする時の発想力は、遊戯王においても大きなアドバンテージとなって……まぁそれは兎も角。

 

「……あークソ! 負けや負け! 次は勝つかんな先生!」

「うん、またやろうね」

「後で俺ともやってくれや。前回の借りを返したいんでな……さて!」

 

 緩い男子同士のデュエルでの交流はここまでだ

 リュウザキが体を起こす。イオリ先生の表情がとてもきりっとしたモノに変わる。今日ここに集まったのは、他でもない……ここ最近頑張っていたその努力を、形にする為だ。

 

 ちらり、と壁際を見る。最初に作り上げたエグゾディア、その横に並ぶ――緑色のガンプラ『ザク』、誰もが知っているトリコロールカラー、『初代ガンダム』。

他にも、シャープな顔のラインが特徴の『Zガンダム』、正直一番カッコいいと思う『キュベレイ』、そして他のガンプラと一線を画す特異なデザインの『ガザC』が三体……全てHGと呼ばれるモデルのもの。

 

 自分達で組み立てから塗装……そして、ディティールの仕上げもきっちりやった、自信作である。そう、自分で、あのガンプラを、仕上げたのだ。

 

 今日に至るまで。徹底的にガンプラの作成の実践、実践、実践を繰り返した。短期のバイトで『良いカードをまとめ買いする為に』と思ってため込んでいた金をほぼ全額リリースする事で、人が最低でも半年をかけてやるであろう実地経験を無理矢理積んだ。

 

 今や、俺達は自分の手で、動画で見たような『迫力』のあるガンプラを作成できる段階まで、上り詰めた――当然、イオリ先生のサポート付きで、という前提はあるが。しかしながらそれでも……ド素人が、遂にそのレベルにまで上り詰めたのだ。

 

「――これより第二回、マイガンプラ作成会議を開始したいと思う!」

 

 今日、取り行うのは……改造するガンプラについてである。

 

 先日、ビルダーとしての腕が一定ラインに乗ったという事で開かれた第一回、そこで決められた『コンセプト』に従って、今日までに俺達は、自分達で使いたいガンプラの選定を行って来る事になっている

 

 ……俺達は、ガンプラバトルについて、素人も良い所だ。故に、どんな物を作りたいかというのを自分達の中で決定していないと、取っ散らかってしまいかねない。アドリブと、ヒラメキでガンプラを作れるのは、本物の超一流だろう、という事で。

 まるでコンペでもするみたく、クソ真面目にコンセプトを決めて……そこから始める事にしたわけで。

 

『えっと……一応確認するけど、ガンプラバトルをしたご経験は』

『『ないっす』』

『じゃあ遠距離向けの機体かなぁ……』

 

 そして会議はほぼ一瞬で終わった。イオリ先生曰く、近距離を得意とする機体、及び遠近両方を熟せる万能機は、ガンプラバトルなんざやった事もない初心者にはまぁ向いていないという事で。自然と、遠距離から弾バラまけばもしかしたら当たるかも……くらいの差ではあるが、遠距離機体の方がド初心者の俺達には向いている、との結論に至った。

 

「それで……どのガンプラにする?」

「あー、すまんの先生、俺まだ終わってへんわ……どうにも二機から搾り切れんでな」

「そっかぁ……分かるよ。どれを改造するかって、迷うよね……!」

 

 後ろの方を手で掻きながら、一つ頭を下げるリュウザキに、うんうんと何度も頷くイオリ先生……なのだが。多分リュウザキは如何にして『レッドアイズを再現するか』に凝って迷っているだけだと思うので、イオリ先生のそれとは全然掠りもしていないと思う。

 思うが……しかし、それを言い出すと話がこじれそうなのでスルーする。

 

 んで。

 俺はと言えば。

 

「俺はもう決まったぜ」

「おー」

 

 リュウザキと違い、俺は初めっからをラーを再現すんのは無理だって悟っていたのだ。ならば……改造するにも組み立てるにも、取り敢えず、やる気の出そうなやつを選んで来た。要するに好みに従ったという奴だ。

 

「えっと……イオリ先生おすすめの、『∀ガンダム』から、だったかな」

「あ、見てくれたんだ!」

「ガンダム、Zガンダム、ZZと逆襲のシャアは見たからなぁ。そりゃあ、他の作品も見たくなるよ」

 

 当然、機動戦士ガンダムシリーズのアニメを視聴して、その活躍もチェック済みであり……どんな機体かも確認済みだ。

 

 イオリ先生から、ガンダムと言うアニメに出てくるロボットをキット化したのがガンプラなのだから、その理解を深めるなら、ちゃんとアニメも見た方がいいとのアドバイスを受けて。

 ガンダム、Zガンダムはそれぞれの映画版三作を、ZZに関してはアニメの重要な部分をイオリ先生に教えてもらいつつかいつまんで。逆襲のシャアは全部見て。

 

 そして……此度、ガンプラを組み上げるにあたり、逆襲のシャアまでを見た俺達向けに、イオリ先生がおすすめ(なお、おすすめと言う名の残りの全作品のレビューだった)してくれたガンダムの中で、俺はひときわ異彩を放つ『∀ガンダム』を選んで視聴したのだ。

 

「それで、どれかな」

「えっと……コイツ」

 

 そして、その劇中に出てくるとある一機の『キワモノ』ぶりと雰囲気に、惚れた。

 遊戯王の機械族として、そのままにカード化しても全く違和感のない、ともすれば『モンスター』とすら形容できる程にアンバランスな身体、独特のデザインが初めての改造をするならコイツだな、とビビっと来たのである

 という事で、画面に映ったソイツを、そのまま端末で撮影して来た。机の上に乗せてスライドさせてから、目の前のイオリ先生に端末を渡す。

 

「――ウォドム!?」

「そうそう」

 

 ∀ガンダムの中で、ディアナカウンター……だったよな、うん。そいつ等が使ってた主力モビルスーツ。他に比べても図体が一回りデカいし、頭から放つビーム攻撃もド派手だったしで、デカい一つの目のようなセンサーとかも、印象にも残ってる機体だった。

 

 決して主役級のモビルスーツ……じゃなくて、モビルドールだったか。やられ役の機体ではあるのだが、しかし。ガンダムのマニアと言う訳でもない俺だからこそ、こういう初めて見て、ビビっと来た感覚で選ぶのも悪くないのではないか……

 

「ウォドムかぁ」

「一応確認するけど、キットにはなってる、よな?」

「ああいや、大丈夫。ここ最近の『デストロイガンダム』とかの大型MAのキット化の流れで、ウォドムもちゃんとキット化されてるよ。元から、HGサイズの試作品は展示されてたみたいだし、それをリメイクした感じだね」

 

 成程、という事でであれば問題もない。

一応、ちょっとマイナーな機体だったから、キット化されてるって所だけが不安だったんだが……こういう時、ガンプラについて素人なのが困る。キット化されているかどうかすら分からないんだからなぁ。

 

「でも、ウォドムは結構癖も強いし、結構完成された機体だし、ここから改造するとなると……ちょっと難しいかもしれない。プランはある?」

 

 とはいえ。問題ないと思っているのは俺だけらしく。端末から視線を上げて此方を見てくる視線は、何処か不安そうだ。

 まぁガンプラ初心者の俺だ。最初は初心者向けのキットとかそう言うのから始めた方が良いんじゃないか、と思うの仕方ない事だろうが。

 

 しかし……ただ印象で選んだ、と言う訳でもない。俺がウォドムを選んだのは、自分の中にちゃんと作りたいガンプラ像があって、その素体としてピッタリだと思ったからだ。寧ろこれ以外は選べないまである。

 

「ふふーん。リュウザキと一緒にしないでくださいよ」

「おいコラ、それどういう意味や」

「コイツを選んだ時……もうとっくに、どういう風な改造するかは思いついてます。任せてくださいよ!」

 

 俺の頭に思い浮かぶのは……ウォドムと同じ、頭に武器を備えた、有名なモンスターの姿である。黒鉄によって出来た体、攻撃的な効果。

 

 鋼鉄の砲塔。軋む金属の奏でる咆哮。無慈悲な確率の破壊。

 俺はガンプラによって……アイツを、現実世界に呼び覚ますのだ。

 




ウォドムキット化されてるかな、と思って探したら、オリジナルのウォドムは商品化されてませんけど、試作品作られてたしセーフという事で。
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