遊戯王 ビルドモンスターズ   作:最近の虫野郎

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8ターン目 「鋼の竜の咆哮」

 ミヤノ・メイ。

 

 俺達が呼ぶあだ名は……委員長。

 本来は委員長、っていう訳でもないのだが……クラス委員で、基本的にクラスの纏め役だからそう呼んでいる。真面目で実直、不正は許さない。という事で、違法に持ち込まれた俺達の遊戯王デッキはいっつも没収対象である。

 

 じゃあ此度、彼女に挑むのはその時の恨みからか……と言えばそれは違う。というかいっつも追い回されてるから恨みを晴らすためにとか、逆恨みにも程がある。

 俺達がガンプラバトルを始めるにあたり……ガンプラ作成やら、ガンダムの知識やら、なんもかんもゼロな状況下、たった一つだけ明確に決まっている事があった。

 

 それは……『ファイターとしてどの程度のレベル』を目指すのか。

 当然、当時の俺達がガンプラバトルについて詳しい訳ではない。だがしかし……たった一つだけ、ガンプラバトルに置いては、確かな指標があったのだ。

 

『――優勝は、ミヤノ・メイ!』

 

 皆に祝福されて、でこっぱちにライトを浴びて、普段の鉄面皮が嘘みたいににこにこ笑う委員長の表情が、今でも目に焼き付いて離れない。

 

 中学上りたての俺達が見に行った……幼馴染の出場したガンプラバトルの大会。地方でやってた大会だったが。少なくとも、遊戯王しか興味の無かった俺らに――『ガンプラバトル』と言うモノを印象付けて、『ガンダムにも種類が居るんだな』位の僅かな知識を植え付けるきっかけとなる位には、凄い大会だった。

 

 優勝者、ミヤノ・メイが駆るガンプラの名は、『ドラゴンガンダム影鬼』。

 俺達が『ガンプラは単純なカスタム機でも優勝できる』という考えを培った、その原因の機体である―

 

「――イセタ・マリク……『ウォドム・リボルヴ』!!」

「――ミヤノ・メイ、『ドラゴンガンダム影鬼』」

 

「「出る!!」」

 

 

 

 

 

 

 ――目の前に広がったのは、本物かと思う程にリアルな青空。

 

 何時もながら、正に遊戯王のソリッドビジョンに匹敵するんじゃないかっていう立体映像だ。何時かこんな中で、遊戯王が出来たらいいな……なんて思いつつ、地面に着地。

 操縦した時の感覚は悪くない。

 

 さて……周辺を確認。どうやら、グランドキャニオンにも似た荒野のステージらしい。そしてバトルステージの周辺確認がてら、周囲の皆さんの反応も確認する。

 

『――な、なんだアレ!? ウォドム……か!?』

『い、いや……頭の特徴的なドームは何処行った!? っていうかなんだ!? なんで頭に『マグナム』が付いてるんだよ!?』

 

 聞こえてくる、困惑交じりの声。悲鳴染みた疑問の叫び。まぁカッコいい、とかの反応がないのは不満だが……印象には残ったと見える。取り敢えずひとまずは成功と言っていいだろう。

 どうやら周りの反応も上々の模様だ。最初にコイツを選んだのは間違いなかったと言えるだろう。

 

 遊戯王で、もっとも有名なモンスターは『ブラック・マジシャン』か、『ブラックマジシャンガール』、または『ブルーアイズ・ホワイトドラゴン』の何れかである。それは間違いない……だがしかし。

 

 『ガンプラ化して映えるか』となると、実はバリバリナマモノな三体ではかなり難しいというのが、ガンプラの技術を学んで出した結論だった。やっぱりどうしても違和感が出てしまう……ガンダムの世界に、馴染みにくいと言えば良いのか。

 まだガンプラ初心者の俺が作っても、違和感なく、ガンプラとして戦えそうで、印象に残るモンスター……という事で、選んだのが、コイツだ。

 

「そりゃあそうだろうよ。コイツは、『リボルバー・ドラゴン』を元に作ったガンプラなんだぜ。頭どころか、両腕までバッチリマグナムだってんだよ」

 

 軽く手元で操作してやれば――まるで、歯車の軋みの如く。

 シリンダー下の牙と顎、そして――()()()()()()()()()()()()を左右に広げ、我がガンプラは咆哮する。

 

『『うわぁっ!?』』

『きゃっ……!?』

『ぬぅ、何と禍々しい咆哮か……!』

 

 うーん。良い悲鳴。

 このギミック仕込んでよかった……あれ、聞きなれたオッサンの声がしたような……気のせいか?

 まあいい。これで、観客の印象には残ったろう、

 

『どや、マリク。調子は』

 

 今回、サポート、というか、オペレーター役として後ろについてくれているリュウザキが軽い感じで語り掛けてくる。緊張していないという事を示すためにサムズアップで返す。

 

「完璧だ。やっぱ出力ある素体選んでよかった。ウォドムの細長いボディも、『リボルバー・ドラゴン』とマッチしてて、結構再現率高いしな」

 

 リボルバー・ドラゴン。

 

 機械族の大型モンスターで、最大の特徴はその見た目。

 おとぎ話のドラゴンのようなスタイルながら、全身は鋼、頭と両腕がマグナムになっている、という外連味たっぷりながら、男の子のハートを擽る鋼鉄のモンスター。

 

 ガンプラのカッコよさは、男の子大歓喜の無機質なカッコよさが多い。それとマッチする可能性が最も高いのはコイツだろう、と。 

 

 そして、リボルバー・ドラゴンを作るにあたり、最も素体として適していたのが……意外とスリム体型であることが判明したウォドム君であると思う。

 ずんぐりむっくりな印象なのは結構な割合でデカい頭のせいで、アレを取っ払うと、実は意外とひょろい体形をしている。更に、尻尾を組み込めそうなパーツまで腰についているとなれば文句ない。

 

 取っ払ったそのドーム部分の代わりに……据え付けたのは、特大の『リボルバー』をモデルにした、機械的な『ドラゴン』の頭部。

 撃鉄部分をトサカのようにアレンジ、瞳に当たる部分にはシリンダーの穴が開いている。当然、このシリンダーは回転するように改造済みだ。そしてシリンダー下部の顎の中には……元のウォドムのセンサーを仕込んである。顎兼センサーカバーと言う訳だ。

 

『こ、これは……ガンプラ……いや、モンスター……!?』

 

 ……ユウキ先輩の驚愕染みた声に、思わずしてニヤリとしてしまう。流石は学園のアイドル、良く分かっていらっしゃる。

 ウォドム君を基準に改造したコイツは、『ガンプラであり』、そして『遊戯王モンスターでもある』という、正しく完璧な融合を果たした。

 

「――リュウザキ、どうだ?」

『順調やね。ええ感じに、かっこええで』

「へへ、そうかそうか……オーライ!」

 

 その言葉に……思わず笑いを浮かべて、レバーはフルスロットルのまま。

 一歩、また一歩……ううん、∀ガンダムの中でもやっぱこの歩行するしっかりとした歩き方……スモーとかとは違う、重厚感がある。そう言った質感と『ドラゴン』と言う属性は相性がいい。

 

 元のウォドムから若干前傾姿勢……ドラゴンが闊歩するかのようなモーションに変更しているので、余計に迫力も増しているだろう。周りからの息を呑むような声で分かる。刻みこまれているだろう、彼らの頭脳に。コイツの動く姿が。

 

「――とはいったモノの、歩いているだけじゃだめだよなぁ……」

『せやね……っし、マリク。着いたで。そっからなら、ステージ端まで全部纏めて『ウォドムの射程圏内』や。周りも開けて、岩陰に潜むんも無理……不意打ちもむずいで』

「おーけー、そんじゃ……行きますか!」

 

 ……まぁ当然ながら、見せびらかす為に歩いている訳ではないけど。

 こっからだ。コイツの性能を見せるのは――という事で、一つ。こっちからアクションを起こして、藪を突く……いや、藪諸共吹き飛ばしてやるとしよう。

 

 俺が、コイツを選んだ理由はもう一つある……ウォドム君のコンセプトだ。

 ウォドム君は、その武装の多くを頭に積み込んだ機体だ。故にこそ、頭部に重心が偏重気味になっていても普通に戦えるくらいに、下半身がガッチリとしている。

 それ即ち、安定性が高く、高出力の武装を取り回しても決して崩れたりはしない……リボルバー・ドラゴンを元にした、超巨大リボルバー・カノンを積んだとしても、問題ないという事だ。

 

「――ほんじゃ一発……派手にいってみようかぁ!!」

 

 手元のコンソールを操作。

 頭部のリボルバーが唸り声をがなりたてて――目の前に広がる、岩ばかりの荒れ果てた大地、その水平線の向こう側を火砲諸共に睨みつけた。

 何処を狙う訳でもない。あくまで、コイツは挑発と共に、示威行為だ。

 

「リボルバー・ドラゴン……いや、ウォドム・リボルヴによる攻撃……」

 

 撃鉄を起こす。シリンダーが一つ、がこん、と回る。足の裏のスパイクが地面に向けてしっかりと突き立てられる。射撃準備、完了。

 コイツを相手に、遠距離で様子を伺うのがどれだけの愚行になるのか。一つ、思い知らせてやるとしよう――堪え切れない、笑いと共に……引き金を、引いた。

 

「ガン・ショット・ファイア!!」

 

 ご う ん !!

 

 耳に響く轟音と共に、焔を纏った弾丸が蒼天を切り裂き、飛んでいく。

その動きを視認できたのは、ほんの僅か一瞬……紅い線のような軌跡を青い空に刻みながらそのまま、弾丸は地平線の彼方へと消えていき――

 

 ――爆ぜた。

 

 巻き上る、焦げ臭い爆炎と、突風。そして散らばる……砕けた大地の欠片。

 そして……しばし後、爆炎が晴れた所に残るのは……モビルスーツが()()()()()()()()であろうサイズの、特大のクレーター。

 

 大爆発、大爆発、大爆発である。

 リボルバー・ドラゴンを忠実に再現した結果、コイツの火砲はどれも、バズーカなんざ鼻で笑い……どんなガンプラでも余裕で粉砕できるくらいの大火力を有する事になった。

 そして、ウォドムのボディは、この大火力の反動であろうとも容易に受け止めて……この巨大火砲を運用する事、実に容易い!

 

 鋼鉄製の竜が咆哮し、この火力の砲台を向けてくる……インパクトは相当な物だろうと思う。

 

『――へへへ、マリク。見ろや、周りの奴の顔……ビビり上がっとるで』

「周りの奴ビビらせても仕方ねぇだろうよ。お相手が反応してくれないとなぁ」

 

 ……まぁ、余人なら、普通に怯んでくれるレベルだとは思う。正直言えば見た目からカラーリングまで、ガンメタルとディープパープルで塗装された鉄の竜と来た。割と威圧的な姿してるとは思う。

 

「――派手じゃない。随分と」

「――っ!?」

 

 ……が。

 相手がコレで怯んでくれるようなら、そもそも目標にしていない訳で。

 

 ぐるり、と背後に向けて振り返った。不意打ちなんて出来る訳もない、開けた場所だって言ってんのに……何時の間にか、そのガンプラは不敵に腕を組んで、後ろに佇んでいた。

 だが……驚きはしない。納得は出来てしまう。

 

「相も変わらず……影から滲むみたいに現れるなぁ、オイ」

「ま、でもこんな隙だらけなら、不意打ちし放題だけど?」

「はっ、アドバイスどーも……お嬢さん」

 

 資料よりも、大分細身、というか。女性的なスタイルだ。

 機体のカラーは緑を基調にして、色の濃い順に、胴体、四肢、顔に塗り分けられ……各部の装飾には赤を、差し色として入れている。両腕の竜は、まるで俺達とおそろいかのように、ガンメタルで黒く染め上げられて。

 

 そして最も特徴的なのは……元の資料より、更に長い。さながらサソリの尻尾のようなリーチを持った、頭の後ろから伸びるおさげにも似たパーツ。

 鎌首をもたげ、此方を睨むその姿は、蛇の如き印象を抱く。

 

 ドラゴンガンダム影鬼。

 『影より滲んで一撃にて勝負を決める』……そう称された、ミヤノ・メイのガンプラである。コイツはこの機体で……地方の大会を勝ち切ったのだ。

 




いやー、これだけ強そうやし、勝つんやろなぁ……アレ?(最後)
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