つあれ :お魚取れましたぁ↑↑
ぜんべる:なかなか筋がいいじゃねぇか…
「ほいよ。ビールとミルク、それにパンとベーコンのセットね」
「つまみに干し肉もどうだい?絶品だよ!」
「ほう!持って参るがよいぞ!」
「ダメ。これはワムのお金」
「小さなお嬢ちゃんには干した果実はどうだい?ミルクに付けて食べるとより旨いよ!」
「それはきになる」
そんな会話をしながら、王都のとある酒場に彼女達は居る。
誰ぞ曰く、情報は酒場に集まる。だそうだ。
王都の冒険者組合に顔を出すという選択肢もあったのだが──気乗りがしなかった。
この城下に興味が湧かず、関わりたくなかったというのもある。
聞き耳を立てていると、聞こえてくるのは愚痴ばかりだ。
はぁ…と溜息を立てる。
「おーおー辛気臭いじゃねぇか!ここ、空いてるか?」
大柄な体系の…恐らく女性が回答を待つもなく椅子に座る。
「ほー…なかなかよな」
「あ?なんだ?俺はそっち系じゃねぇぞ」
「私は構わない。むしろ、お願いします」
いつの間にか現れ、フェディエルの足に頬ずりしていたスラリとした女性の頭に拳骨を打ち込む大柄な女性。
相当痛かったのかうずくまり唸っている。
「おい筋肉。何しに来たと思ってる」
仮面をつけた少女が現れ、これまた特に断りもなく席に着く。
「よいよい、愉快な奴らよ。此方は嫌いではないぞや!」
「そりゃあいいやな。流石オリハルコン級冒険者ってとこか?」
「ふん「無垢」と「奔放」だったか?寒気がするような二つ名だ」
「無垢?奔放?なんぞや?」
「おお…そのお面かっこいい。ワムにも貸してほしい」
こいつら…いや、待て落ち着け。イビルアイは自分に言い聞かせる。
思ったよりやるじゃないか。嫌味を思いっきりスルーされた事に少しの苛立ちと、自分の中で評価を上げる。
「おいおいイビルアイ、俺達は喧嘩しに来たんじゃないんだぜ?」
「そう、お姉さまと親交を深めに来た。私はいつでも──」
フェディエル胸元に指を添わせながら耳元で呟く彼女に再度拳が振り下ろされる。
今度は転がっているあたり先ほどより強烈な一撃だったようだ。
「して?何か用があるのかや?」
「ああ、そうだ…まずは…自己…紹…介…おい!このガキを何とかしろ!」
先ほどからイビルアイの仮面に手を伸ばすワムデュスの姿が見える。
「いいじゃねぇかイビルアイ、それくらい貸してやれよ」
「馬鹿を言うな!!おい筋肉!お前をコレをなんとかしろ!!」
腹を抱えながら笑っているフェディエル。ガガーランに持ち上げられても手をこちらに伸ばしているワムデュスを見てイビルアイは一つの事を確信する。こいつら…素だ…。二つ名通りだ…。
「ちっこいの!俺の膝の上にいろや。少し硬いだろうけどよ。後で仮面なら貸してやるからよ」
「ほんとう?わかった」
「おい!!筋肉!!余計な事を言うな!そして信じるな!!」
「二人とも、何しに来たかを忘れすぎ」
「お前がっ!!!言うな!!!!!」
そんなコントみたいな場面を延々と見せられ、フェディエルは思う。
枯れて腐った大地にもしっかりと互いを支えあう良き風も吹くものよ。
「…では改めて自己紹介させて貰おう。私はイビルアイ。アダマンタイト級冒険者、蒼の薔薇の一員だ」
「同じく、ガガーランだ。こっちのはティナ」
「此方は黒のフェディエルぞ」
「ワムだよ」
「…黒碧は本当に二人組なのか?しかもそっちのガキ…本当にオリハルコン級か?」
「おいイビルアイ。そりゃ流石に失礼だろ。なぁガキンチョ」
「ワムは別に気にしない。それよりガガーラン、でっかいね」
「チビッ子、お前もちゃんと食って鍛えりゃこうなるぜ」
「それは聞き捨てならない。幼く麗しく可愛らしい子に余計な事を吹き込まないでほしい」
あ?拳を握りこむガガーランとサッと頭をガードするティナの姿。
こいつら本当に何しに来たんだ…イビルアイは頭を抱えるのであった。
「まぁ、俺にビビらないあたりお前にゃ見込みあんぜチビッ子。先輩の俺が保証してやる」
「おおー。先輩。ガガーランはあったかくてかっこいい」
見る目あるぜと大笑いしているガガーランを横目に…イビルアイは考えるのを止めた。
・
少しの間何も考えず二人を観察する。
何ともまぁ。チビガキは本当に純粋無垢というか。もしこれが演技だとしたら超一級…貴族でもびっくりだろうよ。
対してデカい女の方は何というか…。掴みどころがないというか…。
ラキュースも連れてくるべきだったか…。
はぁ…と大きなため息をつきながらも、暫くは平和な光景を眺めていた。
気が付くとガガーランがティナとワムデュスと向こうで何かしている。本当に何しに来たんだ私達は…そんな時、正面の女が呟くように口を開いた。
「ところで其方、この世界では二人目ぞ」
「は?何の話だ?」
「其方、生ある者ではなかろうや?」
──ぞわり。背筋に冷たい物が走った。こいつ…まさか。
「何を言っている」
「ああ、隠しとるのかや?だから面というわけか。よいよい、ならば踏み入るまいぞ」
コイツ…!私の正体に気付いている!?馬鹿な!
いや待て、コイツ今"二人目"と言ったか?
「おい、二人目とはどういう事だ」
「何ぞ気になるのかや?そうか…生無き者同士が風を紡ぐか…興味深い事よな」
何かブツブツ言っている。教える気はないという事か?だが不味い。こいつ等はオリハルコン級。そんな奴らが私の正体を…もし、もし言いふらそうものなら…。
様々な考えが頭を巡る。もう、蒼の薔薇として──皆と居れなくなってしまうかもしれない。
そんな不安が混じりながら──口から出ていた。
「…今の話は内密にしてほしい」
「ん?そう心配するでない。此方とて支えあい輝く灯をむざむざ消すような無粋な事はせぬ」
「おめぇら、何辛気臭い顔してんだ?さっさと要件の話ししようぜ」
「イビルアイは何時もそう」
「ガガーランは力もち」
ガガーランの二の腕にぶらーんとぶら下がるワムデュス達がいつの間にかこちらを見ている。
「お前らあああぁぁぁあ!!!!!」
その後も深夜まで永遠と進まぬ話し合いに笑い声と怒号が木霊するのだった。
・
「黄金の姫のう」
王城へ向かう馬車の中で先日の話を振り替える。
内密にとある依頼を受けてほしい。との話だ。
内容は直接聞いてほしい。依頼主は──第三王女。
黄金と呼ばれる者に興味があった。
黄金の放つ光は富と権力、繁栄の象徴。
そして──人を堕落させる魔の光。そう言っていたのは誰であったか。
特に予定もなく、興味も沸いたので食事代金を蒼の薔薇が受け持つという事で承諾した。
請求金額を見たイビルアイが頭を抱えていたのはまた別の話だ。
彼女としては、この世界の王族という者を見てみたかったという事もある。
以前であれば興味もなかったが、長く関わるうちに少し人間に毒されたかや?と思いながらも。
「こちらです」
銀色の鎧を着た青年に案内される。
「黒碧のお二人をお連れしました」
扉が開き中へ通される。
そこには黄金と呼ばれる美しい顔立ちの女性と、同じく魅力的な金髪の女性。
そしてイビルアイが座っている。
簡単な自己紹介を終え、メイドを下がらせ話に入る。
「あの者は主の従者であろ?何故下がらせるのかや?」
「聞かれると不味い話というものもあるんだ。それくらい察しろ」
「イビルアイ!失礼でしょう!」
「よい。なるほどのう、しかしこれらはいいのかや?」
周りに指を振る
ラキュースやイビルアイ、護衛の事を指しているのだろう。
「はい。蒼の薔薇の方々は信頼していますし、クライムも私は信頼しているので!」
クライムと呼んだ護衛にニコリとほほ笑む。
すこし顔を赤くし視線を逸らす。ああ、本当に可愛い。本当に。
「いや、そうではなくてな"アレやソレ"の事よ」
皆顔に疑問を浮かべる。
彼女が指を指しているのはラナーとラキュースの落とす影だ。
わからんか?と彼女が席を立ち──拳を振り上げる。
瞬間、ラナーとラキュースの影に拳が振り下ろされる。
「き、貴様!何を!?」
イビルアイが、ラキュースが。続いてラナーを庇うようにクライムが剣に手をかけ──啞然とする。
拳が振るわれた二人の影がグニャリと形を変え、──その黄色い瞳が苦痛に歪み、消えていく。
「最近見かけなかったが、こうも近くに居ると鬱陶しいでな」
「ディーエは最近ちょっとらんぼう」
「こ、これは…!まさか悪魔の類でしょうか!?」
「全く気付かなかったぞ…まさか…今までもずっとか!?」
「ティナもティアも気付かなかった…って事?…そんな悪魔なんて……!」
「まさか八本指が使役している…?いや流石にそれは考えすぎか…」
突如として現れた影の様な"ソレ"に困惑と畏怖の表情を口にする3人。
口々に推測や考えを口にしている。皆恐怖と混乱の表情を浮かべているが…
それを冷静に見つめるラナーの心境は最も穏やかでなかった。
──これは不味い。
ラナーは知っている。これはあのスーツを着た、全てと引き換えに私の望みを叶えてくれる。
そんな悪魔が残していった
少し話しただけで彼女は理解していた。
あの悪魔はとても優しく理知的だ。だがそれは、身内に対してのもの。
そんな彼の残した悪魔を…この女は殺した。
どうする?どうしたらいい?事故だと伝えるか?
それで納得して許してもらえるか?否。あの悪魔は恐らくそんなに甘くない。
しかし私の事は高く評価している…はずだ。ならばまだ切り捨てられはしないか?
いや、切り捨てられる前提で考えなければ。
ではどうする?この女を手駒にするか?この女なら彼らと渡り合えるのか?
それは難しいだろう…どうしよう。あの悪魔が敵対したと認識したら…詰んでいる。
自分でも気が付かないうちに顔から血の気が引いていく。
──ナー?
「ラナー?大丈夫?ラナー!?」
金髪が煩い。こんな事ならこんな連中呼ぶべきじゃなかっ…
…過ぎた事を考えても仕方がない。新しい計画を考えなくては…
私とクライムだけでも生き残れる方法を…
「…ごめんなさいラキュース。ちょっと怖くなってしまって」
「私こそ…気付けなかったなんて恥ずかしいわ。
フェディエルさん。本当にありがとうございます。
アダマンタイト級だ何て名乗っておきながら…恥ずかしい限りです」
よいよいと手をヒラヒラさせているフェディエルに視線を移す。
「…ありがとうございました。では…早速ですがお話をさせて頂きますね」
元々用意していた八本指の拠点襲撃の依頼の話を始める。
その間も二人の様子をつぶさに観察する。
この二人はあまり賢そうではない。
民の為になる。悪い奴らをやっつけると、幼児にも分かりやすいよう噛み砕いて話を続ける。
噂のお人好しの二人ならまず承諾するだろう。
それよりも調べるべきは、この二人の思想だ。
使えるかは別として、まずは味方に付けなくては。
そんなラナーに想定外の返答が…想定外の方から出る。
「それは受けれない。やってはダメなこと」
「えっ?」
思わず素が出そうになる。
周りも同じだったようで皆が少女を見る。
「ワムはニニャから、冒険者は国のもんだいに関わっちゃダメってきいた」
「偉くても、強くても、ルールは守らないとダメ。そうしないと世界が壊れる」
「そ、それは…」
「しかし!今何とかしなければこの国は…!」
「…二人共諦めろ。そのチビが言った事は正しい。本来私達が手を貸す事の方がルール違反だ」
イビルアイがそう告げ、ラキュースは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。
「仰る事はその通りです。しかし今こそが最初で最後のチャンスかもしれないのです」
「此方達の利はなんぞ?決め事を破れというのであろ?」
「え?」
ラナーは少し想定外の質問に考える。
利益…自己利益で動くのか?そうは見えなかったが。
金であれば用意できる。個人資産もある。
「そ、そうですね、これは私個人の依頼ですので、大きな金額はお出しできません。
ですが、私の個人的な──」
「そういう話ではない」
「此方達の力を借りて何とかした所で何も変わらんだろうぞ?」
「お前…それは、どういう事だ?」
「…?わからんのかや?」
イビルアイの言葉に不思議そうに返す。
皆の視線がその言葉を発した元へと集まる。
「獣に襲われた。事故にあった。天災に恐れた。そういった事で消えてしまう灯や風は…此方達が守れば、そのまま本来の輝きを発するであろうよ」
「しかし国とは違うであろ?この地のヒトの子は希望を持たず、灯を弱め、歩む事を避けておる」
「本来であれば自由に輝き、己の生きた灯を継がせ、安寧を受ける。そうは言ってもか弱き者には難しかろう。そんな弱き者達を導き、進むべき方向を示し、灯を守るのが国と呼ばれる物、そして主らのする事であろうや?」
「少なくとも此方の知る国なる物を治めておった者達はそう在ろうとしておった」
「しかしこの国では弱き者達は虐げられ、灯りを弱め、力有る者達は欲望に歪み、風を腐らせて灯を消して回っておる」
「この国からは灯を感じぬ。感じるのは絶望。
そんな所に干渉した所で何も変わらんであろうや?
此方が番を目にする機会も増えまいて」
沈黙が場を支配しする。
皆様々な考えが頭を巡っているのだ。
そんな中で幼い少女がラナーを見据え、一つの疑問を口にする。
「王女さま。皆のこと、すき?」
「…?もちろん国民の皆さんも、ここに居る皆も大好きですよ」
何時もの、会心の笑顔を浮かべる。
「そうは見えない」
「え?」
そうは見えない?今この子はそう言ったか?
目を真ん丸にしながらラナーは幼子を見つめる。
そんなラナーをジッと見ていたフェディエルが口を開いた。
「…確かに、歪んでおるかや。これ程の輝きと強き風は珍しい。それすらも歪み吹く地か。黄金の姫とか言うたかや?人にしては珍しくも確かに黄金よ。さて、此方達はもう帰るかや」
「うーん…わかった」
そう言い残し扉を後にした彼女達の背を、残された4人は呆然と眺める。
民を導く事をしない国に未来はない。
ある者はそう言い残した彼女の言葉を思い起こし。
ある者はその物言いに複雑な思いと、正しいと思ってしまう自分に迷い。
そしてラナーは…自分の事を、少し交わした会話で見抜いた彼女達に──
少しの恐怖、驚愕、そして…興味。
彼女達の語るそれは、人のそれではないのかもしれない。
彼女の頭の中に様々な可能性や考えが高速で駆け巡る。
──これなら、まだ詰みには早い。
暫くの沈黙の後に、ラナーが口を開く
「…黒碧のお二人のご協力が得られないのは残念です。
ですが、レエブン候が他の冒険者の皆様への声掛けと私兵をお貸ししてくださいます」
「…そうね。ねぇ、ラナー」
「何?ラキュース」
「八本指を何とか出来れば、この国は…良くなるわよね?」
それに答える声はなく、部屋には沈黙が流れていた。
・
「では世話になったな、ガゼフよ」
「ここはまだ治安が良いとは言えもう夕刻だ。
ワムデュス殿も居る。朝まで待った方がいいのではないか?」
彼女達は世話になっている間に聞いた竜王国へ向かう事を決めていた。
「いや、此方はこの地に少し長く留まり過ぎたであろうよ」
「俺は王城に居る事も多い。手伝いの老夫婦も喜んでいたし、まだ居てくれても構わないが」
「そういう事ではないぞや」
「ディーエはえいきょう受けやすい。ワムもだけど」
「影響?」
「ワム達は世界とお互いに影響しあうから」
民の為に王は在るあるのか、王の為に民は在るのか。
昔そんな話をしていたのは誰だったであろうか。
少し遠くを眺め、自分の中に生まれた何かと対話する。
以前の自分にはなかったであろう感情。これもこの世界の影響なのかや。
「それに、あんまり良い所じゃないから」
「良い所じゃないか…」
国王と貴族の姿がガゼフの脳裏に浮かぶ。
民たちの為に苦悩し、優しすぎるが故に決断しきれぬ王。
多くの民を道具として私腹を肥やす貴族。
蔓延る犯罪組織…いい国…とは言えぬか。
夕暮れに照らされ、小さくなっていく二人を──ガゼフは少し寂しく思いつつも見送った。
・
「しかし酷い所であったかや」
「生きてる命、皆がんばってたけど。あそこはワム達が手を入れないと、多分もうダメ」
王都を後にしながら言葉を交わす。
「ルオが居なくてよかった。きっとルオが居たら大変」
「確かにのう。一度無くして生み出すくらいの事はしそうぞ」
「そこまではしない。…たぶん。…しない?」
世界に干渉する必要はない。
そう確信出来るほど、元居た世界は輝いていたというのに。
この世界には世界の理を保つ楔がないのかもしれない。
小さな助けであれば手を差し伸べもしよう。
災害や、不慮の何かであれば。しかし灯を継ぐは彼ら自身で行う事であろう。
それに古き風は闇に溶ける。それが世界の理か。
そんな中でも抗い、必死で灯を灯そうとしていた。少数の眩しい程の輝きが…惜しい。
そう思ったからからだろうか。
「…ディーエ?」
気が付けば彼女は足を止め、振り返る。
もはや影すら見えない王都に、何かを感じて。
・
亜人…か。腐った貴族よりよっぽどまともではないか。
少し静かになった自宅で、酒を口に含みながらガゼフは彼女達の事を振り返る。
また、何時か会えるだろうか。そんな気持ちを胸に、窓から空を見上げ──目を見開く。
そこには、夜だというのに明るく照らされた空。
巨大な炎の壁──そして、無数の黒い影が、王都を見下ろしていた。
デミえもん:では↑これより全↑国↑↑混↑沌↑大作戦を行う↑↑
あうら :全国混沌大作戦!?
しゃる :おやつは3人まででありんすか?
あるべど :一人3000人までよー
こきゅー :シオリ、欲シイ人、アツマレー
まーれ :わぁい