オーバーロード 竜の降臨   作:読み物好き

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前回のあらすじ

こきゅー:楽シカッタ
あうら :胃が痛いんだけど?
るぷ  :常識持ってると苦労するっすね
文章量はジルクニフもデミえもんといい勝負してます。


対話

 

蜥蜴人(リザードマン)達の集落を後にした彼女達は帝国に戻っていた。

少し大変そうだが彼等なら強く生きるであろう。

 

「うーむ。何処で聞いたんであったかや」

 

森から聞こえたアインズという単語を口で転がし考える。

恐らく人名であろうが。そう細かい事を覚えていない。

あの執事に聞こうかと尋ねてみたが、引き払われ空き家となっていた。

 

帝国に来てから幾度となくジルクニフに呼び出されている。

その度に様々なよくわからない質問等を受けている。

そして顔を癒してやったレイナースとやら。身命を賭してお仕え致しますと参ったが。

いらぬと伝えたら妙に落ち込んでおった。何故かや。

此方の祝福を受ける人間等珍しいというに。落ち込む必要等ないであろう。

その意気は受け取ろう。が、ジルとやらにやるがよいと伝えると少し考え深く頭を下げていた。

人の考える事は相変わらずイマイチわからん。

 

皇帝に一度稽古を付けてほしいと頼まれ四騎士とやらと手合わせしたが──。

その時の顔は中々愉快だった。

帝国に仕えないかと聞かれた事もある。面倒なので断ったが。

 

「…もしかしたらその間に聞いたのであろうかや?」

 

一度聞いてみるか。

何とも色々な事を知っている人間だ。

彼なら知っているかもしれない。

まぁ、竜や神の伝承等の知りたい事はありふれた噂や伝説程度しか知らなかったのだが。

 

しかし気になる事も出来た。

竜が統べるという評議国。

ハーフが統べるという竜王国。

北の山には霜の竜の王(フロスト・ドラゴン・ロード)なる者も居るらしい。

アインズとやらが一段落したら何処へ向かってみるか。

そんな事を考え道を歩いている。

 

「黒碧のお二人でお間違いはありませんか」

 

深くフードを被った男から声をかけられる。

 

「そだよ」

 

ワムデュスが答えると一つの封蝋がされた手紙を懐から男は手渡した。

 

「詳しくは申し上げられませんが、どうか皇帝へ」

「ジル?なんで?」

 

その疑問に答える事はなく男は離れていく。

 

「ディーエ、どうする?」

「聞いてみたい事もある。ついでに持っていくかや」

 

 

 

 

 

 

蜥蜴人(リザードマン)達との戦闘後、暫くの後の事。

コキュートス、アウラ、ルプスレギナには待機命令が出ていた。

困惑している中、長く自室に籠っていた主人からの呼び出しを受ける。

それを受け、酷く緊張しながらも3人は玉座の間に歩を進める。

 

本来であれば帰還後に聞くはずだったが、アインズは既に限界だった。

少しの間アルベドに任せる。そう告げ自室へと歩みを進めるアインズにもこんな事ではダメだと頭では十分にわかっていた。しかし何度抑制されても波の様に。降り積もる砂の様に。少しずつ確実に積みあがっていく自分自身への嫌悪、悲しみ、やり場のない怒りがアインズを引き籠らせていた。

確かに蜥蜴人(リザードマン)の回収は許可した。

許可してしまった。当時は特に何も感じなかったし、森の中だ。人の被害もないだろうと。

 

何故彼女達が居たのかも理解した。セバスの報告を受けて。

死の騎士(デス・ナイト)が消滅した理由も納得した。

だが気付いてしまった。己の行ったそれに。

そして…何故コキュートスが交戦したのか。それを理解できずにいた。

 

昔の自分と今の自分を重ね合わせて。

ゲヘナでの彼女達と敵対するデミウルゴスを思い出して。

彼女達を傷つけたと報告をしたシャルティアを思い出して。

 

俺は一体どうしたらいいんだ。何が悪かったんだ。

どうしてこうなってしまったんだ。

その気持ちが彼を長く自室へ引き籠らせた。

 

召集された彼らの表情は青く、固まっている。

主人の表情…は変わりようがないのだが、その纏う雰囲気が伝えている。

何か意にそぐわない事をしてしまったと。

アインズは当時の状況を軽く確認し、改めて確認を行っていく。

 

「…もう一度聞く。何故交戦した…。何故…何故なんだ…聞かせてくれ…」

 

暫くの沈黙の後にコキュートスが口を開く。

 

「アインズ様ノ至高ナル死の騎士(デス・ナイト)ヲ撃破サレマシタ。敵対行動ト判断シ応戦致シマシタ。

 アインズ様ノ作ラレシ至高ナルアンデッド死の騎士(デス・ナイト)。ソレヲ倒サレ逃ゲル等戦士ニ在ラズ」

 

「ソシテ、情報ヲ得ルタメデモアリマシタ。子供ノ戦闘力ガ判明シマシタ。アレハ…強イ」

 

(これは…俺のせいなのか…?)

 

アインズは頭を抱える。俺の言葉が足りなかったのか?

情報…情報とは確かに重要だ。ただ俺は手を出すなって…。

そんな攻撃されたからやり返しましたって…。

その感情が、深いため息となり口を出て行く。

 

「手を…手を出すな…そう言ったではないか…」

 

「アインズ様ガ作リ出サレタ至高ナルアンデッド死の騎士(デス・ナイト)

 コレ即チ、ナザリックヘノ敵対行動ト判断イタシマシタ」

 

「ソシテ、アインズ様ノオ手ヲ煩ワス事ハナイカト」

 

「そう…か。そう…。そう…考えたのか」

 

アインズは力なく項垂れる。

守護者達の表情は青──それを通り越して白い。

自分達の取った行動が間違っていたのかと。

絶対者の普段と全く違うその姿を目にして。

 

「状況は…わかった…。アウラ、お前は戦闘を避けたと聞いた」

「も、申し訳ございません!あ、あたしもコキュートスを援護すべきでした!」

 

アウラは深く頭を下げる。

コキュートスが危機に陥れば勿論助ける気ではあったが。

己の中の小さな疑惑。そして今戦う必要はないであろうと判断し潜伏していた。

それに失望されたのであろうと。

 

「…違う…謝る必要はない…。…考えが聞きたかったのだ。顔を上げてくれ」

「その…」

 

己の主人である絶対者に何時もの覇気がない。

あたしが戦闘に参加しなかった事を失望されているのか。お怒りなのかと。

 

「…どうしたのだアウラ」

「い、いえ!あたし如きが不敬な考えを懐いたせいです!ど、どうか!お、お許しください!」

 

暫くの間を空け、アインズが口を開く。

 

 

「…コキュートス。ルプスレギナ。他の者も下がれ」

 

 

アウラの顔には絶望と恐怖がある。己の間違っていたであろう行動に。

勝手な判断でコキュートスと共に参戦しなかった自分に。

 

「アウラ、これでこの会話を聞くのは私だけだ。

 どんな無礼を口にしようと我が名に誓い許そう。

 話してくれ。その時お前は何を考え、何を思ったのかを」

 

主人がそう告げる。

アウラは顔を上げる事無く小さく震えている。彼女には自分でも明確にわかっていなかった。

デミウルゴスの言は恐らく正しいのだろう。ただ何かが、何かが違う気がする。そんな小さな疑問に身を任せた愚かな自分。そんな気持ちが震えとなり外へと出ていく。

 

「…頼む。…教えてくれ…」

 

呟くように、消えゆく様に己の主人から出た言葉。

まるで消えてしまいそうに儚げに。

それを受け長い沈黙の後にポツリ、ポツリとアウラが口を開く。

 

「アインズ様は…あの…」

 

「アインズ様は、何を求められてるんでしょうか」

「…何?」

 

「あたし…本当に…これでいいのかな…って…思って…その…」

 

「あの、あたしは…モモンで居たアインズ様が…楽しそうに見えたんです」

 

「ただ、ゲヘナの後のアインズ様は…何だか元気がないように感じて…」

 

アインズは衝撃を受けていた。

まさか守護者からこんな言葉が出るとは思ってもみなかった。

 

「…何故…そう…思ったのだ」

 

聞かなければ。

どうしてそう思ってくれたのかと。

誰にも相談できず、空回りしている自分に心底疲れた。

ミスや失敗を気付けない自分に心底嫌悪した。

誰でもいい。助けてほしい。話を聞いてほしい。助言が欲しい。

そんな小さな希望と期待がその問いを口に出させた。

 

「お茶会が…」

「お茶会?」

 

 

「ぶくぶく茶釜様のお茶会です。至高の御方々はとても楽しそうにしておられました」

 

 

アインズは古い記憶の中に落ちていく。

そうだ、あの頃は本当に楽しかった。

日々の辛い労働も、あの時ばかりは忘れられて。

 

「アインズ様も、ぶくぶく茶釜様も、皆様とても、とても楽しそうに」

 

赤く光る眼を細めアウラを見る。

その小さな震える体にかつての友を重ねながら。

 

「アインズ様は優しくて…最後まで残ってくださりました。

 多くの御方々がお隠れになられても。

 でも、あの頃より少しだけ寂しそうに…その…見えました」

 

「トブの大森林でお見かけしたアインズ様は…あの…。

 昔のように、楽しそうに…あたしには見えたんです…だから…」

 

 

「でも、最近のアインズ様は──寂しそうです」

 

 

「あたしはアルベドやデミウルゴスみたいに賢くありません。

 だから…わからないんです。アインズ様が、何をお求めになられているのかが」

 

どうか。何でも構いません。

あたし如きにおこがましいかもしれません。

何か、何かアインズ様のお役に立てる事はないのでしょうか。

 

そう言いきったアウラには後悔と恐怖の感情が渦巻いていた。

とんでもない事を口にしてしまった自分への嫌悪。

考えろと言われているにもかかわらず答えを求めてしまった情けなさ。

主人の意を理解できない己の愚かさ。

自分自身へのどうしようもない感情が目頭を熱くする。

 

何も言わずに沈黙を保っている主人が怖い。

愛想をつかしてナザリックから追放されるのではないか。

失望して他の方々のようにお隠れになってしまうのではないのか。

そんな事態になろうものなら死んで詫びれるような事ではない。

 

長い、とても長い静粛だった。

 

 

 

──アウラ。私は…。俺は…彼女達と…友達……に…なりたかったんだ…。

 

 

 

そう語り始めた主人の声は、とてもか細く震えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都にその日を終える事を伝えるように夜のとばりが落ち始める。

 

ジルクニフは宮殿の会議室にて皆と今後の帝国について議論していた。

フールーダやロウネ、四騎士…レイナースを外した三騎士達と共に。

 

ジルクニフは目を閉じ提案された内容を考える。

王国を攻めるなら今だ。

ヤルダバオトで疲弊し、勅命による強制捜査、犯罪の撲滅運動に一部を除く大部分の貴族は王家に大きく反発。第一王子バルブロが視察と称しボウロロープ侯領へ向かったとの情報。

放置すれば王国が二つに割れるのは確実。誰が見ても分かる不安定な情勢。

この機を逃さず四軍を動かし普段通りの戦に見せ、秘密裏に二軍を後詰めとする。

事前に間者を潜り込ませ民兵の士気も地に落とす。

内通する貴族を使えば難しくもないであろう。

六軍を持ってエ・ランテルを攻める…か。

…悪くはない。が、バジウッドにしては頭を使ったな…?

 

そして魔法詠唱者(マジックキャスター)と飛空兵を持って絨毯爆撃を起こし敵戦列を粉砕する…。

低位魔法詠唱者(マジックキャスター)には浮遊板(フローティング・ボード)を使用させ、敵上部から投擲を行う。

浮遊板(フローティング・ボード)は画期的な良い案だ。が、武器や落下物に毒物を使うだと?馬鹿な。

確かに敵を減らすだけと考えれば上々の案だ。

だが事故による自軍の被害や風評をも考えれば出るはずのない案だろう。

ニンブル…それにナザミの奴、何か悪い物でも食べたか?

 

ヤルダバオトを信仰する危険の排除の為にロウネに命じた例の件。

邪神を信仰する者を調べ上げリスト化。遅々としているが仕方がない。

気になるのは…一部貴族や邪神徒が帝都に少しずつ集まっているだと?

何だ?何か企みがあるというのか?

俺が何かを見落としている…?

 

じいからは以前から黒碧に何らかの依頼をし、更に実力を確かめる提案をしていたな。

実力なら稽古と称して見ただろうに。耄碌するには早いぞ、じい。

だが実際、トブの大森林近くに妖巨人(トロール)動死体(ゾンビ)の群れが突如現れたと聞く。

ただでさえ面倒な妖巨人(トロール)のアンデッドとはな。

急ぎ討伐に黒碧を利用し動かすべき…か。

これも悪くはないが…。何か妙だ。森からアンデッドだと?

深い森ならば…あり得る…のか?わからん。

じい…何か急いでいる気もするが。

何だ?この引っ掛かりは。

 

ここ数日何か見落としている。そんな予感。

そんな時、扉がノックされる。

 

「陛下、お時間よろしいでしょうか」

 

レイナースの声が響く。呼んだ覚えはない。つまり…ああ…。

目と顎で散らばる書類を隠すようロウネ達に告げる。

ジルクニフの意図を察し、書類を隠したのを確認し入室を許可する。

 

「ジル。やっほー」

「参ったぞ!」

「陛下に御用との事でしたので」

 

ジルクニフはレイナースを睨みつける。

レイナースは目を逸らす。勝手に連れてくるのはこれが初めてではない。

会議から外しておいてやはり正解だった。とジルクニフは少し疲れを感じため息をつく。この場に参加していれば、見聞きした事をこの二人に話すに違いないだろうと。

一度心の中で深呼吸し、ジルクニフは口を開く。

 

「よくぞ来られた…歓迎するよ。何用かな?」

「少々聞きたい事ができたのでな」

「…何か足りない情報があったかな?」

 

以前の竜や神の話だろうと思いロウネをチラリと見る。

 

「アインズと言う名、ここで聞いた気がしたのでな?」

 

何?と口から出なかったのはジルクニフだからこそであろうか。

想定外の言葉に少し戸惑いながらも面には出さない。

 

「──確かに以前話したが。何かあるのかな?」

「色々あって気になったのでな?」

 

ジルクニフは思案する。

探りか?いや、それはない。何度も会話の場を設けそう結論付けた。

 

「陛下。よい機会かと」

 

フールーダがそう小声で告げる。

ジルクニフもその意図を察して小さく頷く。

では…一つこれを利用して遠出も兼ねて働いてもらうとしよう。

 

「なるほど…では…どうだろう。一つ依頼を受けて貰いたい。

 実はトブの大森林付近で妖巨人(トロール)動死体(ゾンビ)の群れが確認された。

 帝国に被害が出る前に急ぎ討伐して貰えないかな?」

 

「報酬は勿論出す。それに加えてアインズ・ウール・ゴウンの情報も提供しよう。如何かな?」

 

情報と言ってもカルネ村でガゼフを救った程度だがな。

と心の中で付け加える。

こう何度も断りもなく会議中に入ってこられてたまるか。

 

それに遊ばせるには惜しい力だ。確かによい機会だ。

暫く相談していた二人は承諾した。

詳しくは近郊の都市で聞く様にと伝えると二人は部屋を後にしていく。

これで暫く帝都は静かだろう。

部屋から出たのを確認するとニンブル達と距離を取りレイナースを呼び寄せる。

 

「レイナース!何度言えばわかる!?勝手に連れてくるなと言っているだろう!」

「あの御方がお会いしたいと申されたので」

 

こいつ…本当に…あの女の言う事なら何でも聞く気か…。

あの女に何か言われたらしく、今のレイナースは恐ろしくジルクニフへの忠誠心が高い。

以前と違い、その身に危険が及ぶ任務でも躊躇いなく実行するだろう。

それに関してはジルクニフはフェディエルに感謝している。

が、その忠誠のはるか上の優先順位にあの女が居る。

違う意味で嫌いな女のランキングが入れ替わりそうだ。

ジルクニフは胃に少しの痛みを感じつつ下がるよう伝える。

 

「そうでしたわ陛下。お二人がこちらの手紙を陛下へと」

「何?二人からか?字が読めたのか?」

「誰かに頼まれたのだとか…詳しくは存じません」

 

そこの小箱に入れておけ。そう伝えレイナースに下がるよう命じる。

全くこの大事な時に。

 

──ふと、違和感を覚える。

誰だか知らぬが私に書状…はまだ分かる。だが、何故あの二人に渡すよう頼んだ?

届けるだけならば幾らでも確実な方法はあるはずだ。

あの自由奔放な二人に渡せば…届かぬ可能性もあるのではないか?

それをあえて何故、あの二人に…?

討伐に向かわせた日に…手紙だと?タイミングが良すぎる。

考えすぎか。あれは私が依頼した…。

いや…違う。…あれはじいの…。じいは以前から事あるごとに依頼をと…。

まるで帝都から遠ざけるように…。考えすぎか?

 

「レイナース」

 

無意味な事になるかもしれん。

そう思いながらも、何でしょうと振り返るレイナースに周りに聞こえないよう小声で告げる。

 

「お前に重要な事を頼みたい。何も言わずに従ってくれ」

「先の依頼は撤回だ。あの二人は秘密裏に暫く貴様の家でも何処でもいいから隠せ。

 奴らが帝都を出た後にだ。秘密裏に行え。他言無用だ」

 

怪訝な顔をしながらもレイナースが小さく顎を引いたのを確認して会議へ戻る。

 

「さて、では続けよう。お前達、大丈夫か?数日前から少し様子がおかしいぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

アウラは混乱と困惑の中に居た。

主の語ったそれを聞いて。

 

「──だから、俺は…どうしたらいいのか…もう、わからないんだ」

 

アインズが吐き出すように語る。

どうしたらいいのかわからない。そんな気持ちを。

 

全てを聞いたアウラは何を言えばいいのかがわからなかった。

敬愛すべき主人は世界征服等そもそも企んでいなかった事。

同僚達が敵対した二人と本来は友となりたかった事。

皆に失望されるのが怖かった。だからわかったふりをした事。

 

ゲヘナで多くが死に、恐ろしかった事。

悪い事はしないと約束した事。結果的にそれを破ってしまった事。

仲間達の残した、皆が思う像を壊すことが怖かった事。

蜥蜴人(リザードマン)の集落での遭遇もセバスが彼女達に伝えたから。

だが、主人はそれすらを許し、むしろその行動に喜んだ事。

今までアインズが抱えていた事を全て知ってしまった。

 

そして今まであたし達がやってきた事は…全て結果的に主人を苦しめていた。

その事実と衝撃に何も考える事ができなかった。

 

「…俺は…どうしたらいいんだ」

 

消えゆくような己の主人からの言葉に、どうしたらいいかわからない。

だが何か。何か言わなくては。今。今動けなかったら──

この敬愛すべき主人も居なくなってしまうのではないか。

その気持ちがアウラから言葉を引き出した。

 

「そ、その…あたし…あたしはそんなに頭がよくないです…」

「でも、今アインズ様のお気持ちを、直接聞けて、その」

「アインズ様が何を求めていたのかを、少しでも理解できたと…思います」

 

主人からの反応はない。

しかし今こそ自ら考え動くべき時。その気持ちが口を出て行く。

 

「あ、あたしもシャルティアと喧嘩する事がよくあります。

 …大体はシャルティアが突っ掛かってくるんですけど…

 でも、謝れば仲直りはできます。シャルティアにあたしが謝った事はあんまりないですけど…」

 

「え、ええと…後はマーレに頼んだ事が…上手く伝わってなかったりする事もたまにあります。

 でもちゃんと話せば伝わります。ちゃんと話せば…きっと仲直りだってできると思うんです」

 

「だから、アインズ様も、その…ちゃんと…話してみるのがいいと思うんです…」

 

自分に思いつく精一杯を主人に告げる。

あたし達は、アインズ様が残ってくださった。それだけで幸せなんです。

だから、あたし達の為に辛い思いをされないでください。

アインズ様がされたい事をされてください。

その為ならばあたしは何でも致します。

 

長らく沈黙を保っていた主人が口を開いた。

 

「そうか…。そうだな…。ありがとう。アウラ」

 

「…彼女達に真実を…全てを打ち明けてみるよ。そして…まずは謝ろうと思う」

 

許してくれるかはわからないが…と恐らく苦笑しているであろう主人。

そんな主人にアウラはほんの少しだけ安堵する。

今度こそ己の行動が間違っていなかったのであろうと。

 

「それに…アルベドやデミウルゴス達とも話をしなくてはな」

 

その言葉にアウラはハッと顔を上げる。

 

「アインズ様!デミウルゴスを止めないと不味いです!今頃帝都で…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「流石帝都は広い。少し手間でしたね。が、問題はありませんね?」

 

月に照らされ帝都の上空に、一人の悪魔とその後ろに続く者の姿がある。

側に控える魔将の一人が深く頭を下げ答える。

 

「はい。ご命令頂ければ何時でも帝都全域における伝言(メッセージ)や感知系魔法の類の遮断が可能です。

 これで連絡を取り合う事も、外に助けを呼ぶ事も、外から感知も不可能です」

「事前に二重の影(ドッペルゲンガー)には指示を伝えてあるのだろうね?」

「勿論ですデミウルゴス様。抜かりございません」

 

「重ねて確認するが、伝言(メッセージ)が使えないのは我らも同じ事。

 実験も兼ねた初めてのケースだ。皆作戦は普段以上に頭に全て入っているね?」

「はい。作戦参加の守護者の皆様、二重の影(ドッペルゲンガー)、その他のしもべ達全てに再三周知しております。

 影の悪魔(シャドウ・デーモン)も先ほど帝都の監視に入りました。」

 

「よろしい。人間達が連絡を取り合うのは面倒だからね。

 最も、あまり使用はされないようだが。念には念を入れなくては。

 あの二人も帝都に居ないのだろうね?」

 

「あの老人は数日前、妖巨人(トロール)動死体(ゾンビ)の討伐依頼を急ぎ皇帝が行ったと申しておりました。帝都を出る姿も確認されております」

 

「それが真実であれば今度は邪魔は入らないというわけだ」

 

それを受け魔将の一人が口を開く。

 

「あの老人はデミウルゴス様に心より忠誠を誓っている様子。

 念の為、記憶自体も記憶操作(コントロール・アムネジア)で確認致しました。

 その後帝都で目撃情報もございません。二重の影(ドッペルゲンガー)もその現場を確認しています」

 

「計画と同時に伝言(メッセージ)も使えず感知系でも感知できない状況です。問題ないかと思われます」

 

それを受けデミウルゴスは満足そうに頷く。

 

「デミウルゴス様、老人は今のうちに助命致しますか?」

「不要だよ。生き残ればそれもよし。死んだら上位アンデッドの実験体に丁度いい。後から必要になったら蘇生でもいい。捕まった所で問題も起こらない。何も大した情報は伝えていないからね」

 

悪魔らしい笑顔を浮かべた男が語る。

 

「セバスの返却物がこうも便利に使えるとはね。戦闘能力はないに等しいが…使いようだね」

「では六大神とやらの、神の復活といきましょう。これより輝く夜計画を実行する。これでナザリック大墳墓建国の布石は成る。失敗は許されない。速やかに帝都の遮断を行ってください」

 

 

 

 

ジルクニフは薄暗い会議室で思考の海に漕ぎ出していた。

部屋を暗くし蝋燭の火を見つめ、感じた何かを模索する。

どうにも何かおかしい。何かが妙だ。

じい、バジウッド…ニンブル…ナザミ。

レイナース…はある意味正常だ。アレに違和感はない。

じいは…何か様子が変だ。上の空というか…。

だがそれ以上に問題なのは四騎士のうち3人だ…。ここ最近の献策内容。まるで別人のような──

戦に備えて気が張り詰めて…?いや、そう繊細な奴らでもあるまい。

 

「わからん。何かあったか?」

 

軽くため息をつき、部屋の隅の小箱にふと目をやる。

最近少々忙しく忘れていた。

差出人不明の手紙か。

 

「一体誰が何の用だというのだ」

 

独り言のように呟き、箱を開け封蝋を解き手紙を開く。

そこから香る微かな一つの香り。

花の香り。…イモーテルか?

 

その文字は恐らく教養ある女性の物。

イモーテル…花言葉は確か…不滅、太陽……黄金。

眉間に皺を寄せながらも目を通す。

 

 

目を上から下へ走らせる。

それを何度も繰り返す。

 

 

何だこれは。一体何のために送ってきた。

何かの暗号か?そうは見えん。お遊びか?くだらん。余程暇だと見える。

そう吐き捨てると机を照らす蝋燭の炎に手紙を近寄せ──手を止める。

 

あの女がこんな無意味な事をするか?

それにあの女は神を信仰等するか?

 

そんな考えがジルクニフの手を止め、今一度手紙に目を落とす。

…馬鹿な…くだらん。攪乱か?もう少し考えて文を書け。

そんな物、子供に聞かせる御伽噺に出てくる悪魔くらいのものだ。

…御伽噺の悪魔だと…?王都を襲ったと聞く炎の壁…ヤルダバオト。

正にその話は御伽噺の世界の悪魔。

 

──この書状の内容、全く心当たりがないわけではない。

 

では何故知らせる?

いや違う。今はこれが事実だという前提で考えろ。

もし──そうだとしたら。

バラバラだったジルクニフの思考のピースが組みあがっていく。

それと共に顔が青く染まっていく。

 

「四騎士を…いや、レイナースを呼べ!武装を整えてくるよう伝えろ!

 そして大至急レイナースに奴らにも来るよう伝えろ!

 言えばわかる!それ以外は部屋に入れるな!誰であってもだ!」

 

怒鳴るように護衛に伝えると駆けていく。

その姿を見送り己の考えが間違っていてくれと祈りを込める。

こんな想像が現実であるはずがない。そう言い聞かせるように。

そして今一度睨むように書状に目を落とす。

 

『小鳥が隣のお庭の話を歌っています。

 邪が集まる時。そこでも災いが起こるでしょう。

 払うにはこの手紙を持った者でなければ難しいでしょう。

 最も信頼できる者を信じてはいけません。

 信頼の皮を借りたそれは、全てを失う前兆でしょう。

 そして生き残れたならば、お忘れなきよう。

 この手紙で拾ったその全て。私に借りがある事を。

 竜神様の加護がありますように』

 

 

 




めいど  :てーこくがさー
らなー  :成程、そういう事ね。(デミえもん風)
くらいむ :お手紙ですか?
らなー  :そうよ!どちらに転んでもいいの!

ももんが :どの計画書だよ!?物騒なタイトルは弾いたぞ!!
デミえもん:(ナザリックが)輝く↑夜↑↑作戦↑我ながら中々のネーミングセンス↑↑
ぱんどら :タイトル見て判子押すのやめません?
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