オーバーロード 竜の降臨   作:読み物好き

19 / 22
前回のあらすじ

デミえもん:では↑参りましょう↑↑
ももんが :やめてくれよ…(震え声)



皇帝

「神の忠実なる僕である私を呼んでくれた事に感謝するよ」

 

多くの人々が集まる帝都墓地地下に人知れず作られた一室。

そこに居る者は皆、一糸纏わず生まれたままの姿を晒している。

老齢の男から若い女まで。様々な者達がひれ伏している。

 

「神は…神はついに我々を見つけ出してくださったのですね?」

 

一人の男が口を開く。

 

「勿論だよ──我らが神は君達の信仰を大いに喜んでくださるだろう」

 

貴族の様な優雅な動きで仮面の男は語る。

始まりは少し前。生贄の儀式にて。捧げものの子供に剣を突き刺したその時の事。

悪魔──ヤルダバオトと名乗る者がそこに降臨した。

 

──神は舞い降りる。その為に準備を。今こそ信仰を捧げ従え。その時こそ望みは叶うだろう

 

「わ、我らの願いが…ふ、不老不死が叶うと?」

 

声が上がる。

心に響くような甘く、親近感を覚えるような声が響く。

 

「神は全てを統べる。諸君等の今までの行いを無下にする事はないだろう」

 

どよめきと歓喜の声が上がる。

貴族も混ざっていたせいか、王国でのヤルダバオトの力と目的を知っていた彼らは確信する。

本当に神が降臨される!我々の悲願が今叶う!

 

「神よ!神の使いよ!我々を導いてください!」

 

仮面の悪魔は告げる。

 

──全ての力を持ってこの地を強襲せよ。大地を血と炎で汚すのです。大いなる神はそれを持って降臨なされる。

 

歓喜の叫び声と共に駆ける彼らを仮面の下で目を細め見つめる。

 

──本当に自分に都合の良い事には盲目的な生き物ですね

 

 

 

・

 

 

 

「ひーまーぞー」

「そだね」

 

帝都のとある屋敷の一室で大きな声を上げている一人とそれに軽く付き合う一人の姿。

大きくため息を吐き出す。

 

事は何日か前。ジルクニフから依頼を受け、では行くか。と帝都を出た後の事。

少し進んだ所で馬で駆けてきたレイナースが戻るようにと告げたのだ。

何でも先の依頼は中断とさせてほしいとの事。

 

どうか目立たぬようにと告げたレイナース。

頭にクエスチョンマークを出しながらも

頭を深く下げるレイナースについて行く…までは良かった。

 

が、その後この家からどうか出ないでほしいと頼み込まれた。

暫くはこっそり蜥蜴人(リザードマン)に会いに行く等で暇を潰していたがそろそろ限界だ。

 

「のう、そろそろ出んかや?」

「お世話になったから、勝手に行くのはちょっと気まずい」

 

「ちょいと眠るかや」

「ダメ。起きないでしょ」

 

バレていたか。数年(少し)眠ろうかと思ったが。

 

「しかしこうも長く留まるとは。それも狭い所に居るのはいい加減飽きるぞ」

 

「そういえばあの雑貨屋の店主は面白い者であったな?」

「知り合いじゃないの?」

「知らぬ」

「ディーエ見て気絶してたけど」

 

何故であろうな?と首を傾げる。

何処かで会ったかや?

話題も尽きた。居るのも飽きた。

 

そんな中、扉が勢いよく開かれる。

 

余程急いだのか、少し息を荒げた兵士が告げる。

大至急宮殿会議室へ。ジルクニフが呼んでいると告げられる。

レイナースは既に同じく向かっているとの事だった。

 

「急ぎだそうぞ?」

「そだね」

「嫌味の一つも言ってやらねばのう」

 

兵に今から行くと告げて。一つ指を振る。

空間に現れたインクを垂らしたような黒い空間に二人は消えていく。

 

 

 

・

 

 

 

一人会議室で両手を頭に付ける男性。ジルクニフ。

今出来る事。考える事。あの女(ラナー)からの書状に書かれたそれを。

隣の庭の話を歌う…帝国を指しているのだろう。

邪が集まる時。そこでも災いが起こる…

そこでも災い。そこでも…。

あの悪魔ヤルダバオトが帝都にも現れると言いたいのか?

 

信じる皮…皮…御伽噺に聞く皮を被る悪魔…人に化けた悪魔…?

 

そんな御伽噺の様な話が…だが、確かに違和感はある。

妙だった。引っ掛かる。小さな違和感が積み上げられていく。

 

一体何時からだ?誰が味方だ?

一体どうやって?帝国に何が起ころうとしている?

 

生まれた疑念は疑惑となり、坂を転がる雪玉のように大きくなっていく。

まずは確証を得る事。それが第一だ。その為には…

扉がノックされ現実へと戻される。

 

「陛下。お呼びと伺いましたわ」

 

扉がノックされレイナースの声がする。

許可を出し部屋へと招き入れる。

 

「あの二人は何処だ?一緒ではないのか?」

「家に居て貰っていますので。後ほど来られるかと」

 

そうかと答えレイナースを見据える。

何か、今は一つでも確証を得なくては。

 

「レイナース。一つ質問する。深く考えずに答えろ」

「お前と私の契約…いや。お前には婚約者が居たな?元気か?」

 

「はい?」

 

何を言っているんだこの男は。そういった表情をしている。

そして表情に感じるは少しの不快感と苛立ち。

 

「どうした。言いたくなければ仕方がないが。上手くいっていないのか?」

「陛下、私の昔の事情はご存知のはず。何を仰っているのです?」

「以前私にだけ話してくれたではないか。それをも受け入れてくれた婚約者の話を。

 呪いも解けたのだ。その後どうかと思ってね」

「陛下と言えどそのような妄言、不愉快ですわ」

 

よどみなく答えるその姿を受けジルクニフは確信する。

表情、声色、そして何より長年の付き合いからも感じる。

こいつは…レイナースだ。

 

「悪かった。確証が欲しかったのだ。

 続けて聞く。お前から見た四騎士、じい…フールーダに最近何か違和感はないか?」

 

眉をひそめているレイナースに続けて問う。

 

「何でも構わない。何時もと違う。違和感。会話のすれ違い。何もないか?」

 

続けて意味がわからぬ問いを投げられ、暫く沈黙を保っていたレイナース。

しかしその問いをしてきたジルクニフの表情は真剣そのもの。

少し考え口を開く。

 

「…不動と激風が疲れているとかで予定を忘れていたくらいでしょうか。

 大事な要件でしたので忘れるはずがないのですが」

 

「後は雷光が忙しいとかで家に帰っていませんね。

 普段なら時間を見つけて帰るでしょう」

 

それを受けジルクニフは力なく一枚の書状を渡す。

目を通した彼女は暫く思考し、何かに辿り着いたのか固まった。

 

「陛下、まさかこのような物を信じると?」

「御伽噺に人の皮を被り、人に成りきる悪魔が居ると聞く」

 

それは子供向けの──とレイナースは口を開きかけ、閉じる。

先ほどの突拍子のない質問。私を疑っていた?

陛下はまさかこのような書状を信じて…?

 

だが確かにここ数日、彼らはおかしい。

個人的な予定を忘れていたり、少し性格が──ほんの少し考え方が変わったように感じられる。

だがまさかそんな事が…そんな事はありえない。

そう思う。そう思いたい。が、ジルクニフの表情がそれを否定する。

そんな二人の正面に黒い塊が現れそこから二人の姿が現れる。

 

「やっほー。何のよう?」

「何用かや?つまらぬ用ではなかろうな?」

 

「…驚いた。転移という奴か?」

「似たような物かや?して?用とは?」

 

そんな中、扉が力強く開かれ二つの影が現れる。

 

「陛下、失礼しま…」

 

入ってきたニンブルとバジウッドが固まっている。

その視線の先には二人の女性の姿がある。

 

「どうした?ニンブル、バジウッド。誰も入れるなと護衛に命じたはずだが?」

 

ジルクニフの言葉にも反応せずに固まっている。

 

「どうしたと聞いているのだ」

 

少しの沈黙の後に何方ともなく口を開く。

 

「何故その二人がここに…?」

「それを答える必要があるのか?それより何の用だ?」

「い、いえ…て、帝都で暴動が…。──我らが鎮圧して参ります」

 

暴動…。このタイミングで暴動だと?

部屋を出ようとする二人に声をかける。

 

「待て、お前達。詳細を説明していけ」

「し、しかし急がねば被害が拡大しますので…」

 

「被害を拡大させない為の報告だろう。お前達らしくもない」

「で、では報告は私から。バジウッドは鎮圧に向かわせましょう」

「…そうですぜ陛下。早く鎮圧に行かねぇと」

 

やはりこの二人の様子がおかしい。

ジルクニフはゆっくりと一度目を閉じ開く。そして問う。

 

「バジウッド。答えろ。貴様妻は何人だ?」

「な、何です陛下?今はそれどころじゃないでしょう?」

「答えろ。何人だ?」

「…陛下?」

「答えられんのか?」

 

レイナースに目をやる。彼女に見えるのは迷いと疑問の色。

しかしジルクニフと目が合った時、意図を理解し目を閉じ腰を深く落とす。

 

「もう一度だけ聞く。何人だ?答えろ」

 

少しの沈黙の後にバジウッドが口を開く。

 

「…5人ですが」

「そうか…5人か…」

 

バジウッドの妻は1人。愛人が4人。皆仲良く暮らしている。

聞いてもいないがたまに勝手に話してくるからよく知っている。

そうか。バジウッド。お前は…。

 

「──レイナース」

 

冷たく呟いたその意図を察し金色の髪がなびく。

その優れた運動能力から武技を伴い繰り出される槍がバジウッドの首を狙う。

突然のその動きに硬直したバジウッドの首に深々と槍が突き刺さる。

 

「何で…」

 

そう呟いたバジウッド…だった者。

異質な物に形を変えたバジウッドだったそれはぐにょりと形を変え崩れ落ちた。

それを目にしたニンブルは窓へ向かって駆ける。

 

「逃がすな!」

 

ジルクニフがそう叫びレイナースが飛ぶように駆ける。

ニンブルは窓に辿り着くが、深々と背に槍が突き立てられる。

 

バジウッドのようにニンブルだった者はぐにょりと異質な形の物に姿を変えた。

そして空へ向かって魔法を放つ。一本の雷のような魔法を。

 

「バジウッド、ニンブル…」

 

転がった二人だった者に囁くように声をかける。

 

「これはどういう状況かや?」

 

後ろから飛ぶ疑問に答える力も沸かなかったが、これだけは伝えねば。

 

「…今こそ力を借りたい。恐らく帝都にヤルダバオトが現れる」

 

 

 

・

 

 

 

「どうしました?影の悪魔(シャドウ・デーモン)」

 

帝都を監視している影の悪魔(シャドウ・デーモン)の一体からの報告を受け、仮面男──デミウルゴスの眉間に皺が寄る。

 

──宮殿から空へ向け雷…。問題発生。しかし一本。作戦行動には支障なし。

 

…宮殿から?

 

大きな問題が起これば3本上げるよう指示した。しかし一本。問題なのは宮殿から。

──三本上げる事ができなかった可能性がある。何らの邪魔が入ったか。

正体が気付かれ始末された…元々偽装工作用の低位の者だったのが災いしましたか…。

化けた相手も所詮人間。この国では強い存在らしいがあり得ない事はない。

 

だとすれば誰が見破った?あの皇帝か?

確かに中途半端に賢いが、事前情報もなく二重の影(ドッペルゲンガー)を見破るとは。

仮に見破ったところで…腹心を躊躇なく始末できるものですか。人間にしてはどうして中々。

状況が確認したいが…人間同士の連絡を阻害し、外に出ている二人組との連絡を絶つために伝言(メッセージ)を帝都全域で阻害したのが仇となるとは皮肉な話ですね。

 

「──仕方ありません。想定外の事が発生していると判断し、計画を大きく動かします。影の悪魔(シャドウ・デーモン)。宮殿の様子を確認してきてください」

「あ、あの。何かあったんですか?」

 

側に控えた二人のうち、闇妖精(ダークエルフ)が問いかける。

 

「何か起こっている事は間違いないようだね」

「え、えっと。し、失敗なんでしょうか?」

 

「邪神を信じる者達がまず暴れる。人間が事を起こす。

 そこが大切だったんだよマーレ。それが成った今、失敗はないさ」

 

「本来であれば二重の影(ドッペルゲンガー)が皇帝を引っ張り出してくるはずだったんだがね」

 

「え、えっと。じゃ、じゃあどうすれば?」

「皇帝が居ないのは残念だが仕方がない。

 君が居てくれて本当に助かったよマーレ。それでは合図を頼むよ」

 

「は、はい!え、えっと。準備はいいですか?」

「勿論ですぞ。我輩の力をアインズ様の為に揮える時が来るとは。全身全霊を持ってアインズ様、ナザリックの栄光の為。存分に力を揮ってみせましょうぞ」

「が、がんばりましょう!」

 

「これから召還される悪魔は無差別に暴れるからね。

 外を出歩いてはいけないよ。特に恐怖公。君はね」

 

えいえいおーと声を上げる二人にそう告げデミウルゴスは地下を後にする。

地上に出ると飛び上がり夜空を高く、空高くと飛んでいく。

そして火の手が上がる地表を見下ろし苦笑する。

 

「全く。不意の暴動でもこの程度の被害しか起こせぬとは。帝国が優秀なのか。彼等が役に立たないのか」

「まぁよいでしょう。まずはヤルダバオトの降臨と参りましょう」

 

その言葉を待っていたように大きな地震が起こる。

 

「…これを使うのは正に今でしょう。多少の問題程度は圧し潰す最大の花火を上げなくては」

 

名残惜しそうに手にした悪魔を模った像を眺める。

 

「ウルベルト様、今こそ栄光あるナザリックの為に。アインズ様の為に。そのお力をお貸しください」

 

 

 

 

 

「何だ…あれは…」

 

先ほど起こった地震、──そして大きな爆発音。

黒いローブを羽織った暴徒達も鎮圧していた衛兵達も手が止まる。

 

「炎の…柱?…あれ…は…悪魔…」

 

巨大な炎の柱が巻き起こり、そこから巨大な体を持つ悪魔が姿を見せた。

炎の柱はその身に吸い込まれるよう消えていく。

その顔は憤怒を湛える恐ろしい顔つき。

巨体で太い豪腕には鋭い爪を備えた燃え上がる拳。

蛇のように長い尻尾の先と、バサリと広がる翼に炎を纏っている。

 

「──人間達よ。私の為によく働いた。神の降臨は近い」

 

重く太い声が大地に響く。

それを受け歓喜の声を上げる邪神徒達。

 

「お前達の働きで我が門は開かれた。行け、全てを食らえ」

 

言葉の意味を理解できずに唖然とする者達に向け、悪魔の群れが押し寄せる。

そして大量の黒い蟲の群れ。

大地と夜空を覆うように広がるソレは正に世の終わりを思わせる。

響く悲鳴と怒号の声を笑うその姿は正に悪魔のそれだった。

 

 

 

・

 

 

 

「何だ今の地震は…」

 

偽りの腹心、暴動、そして地震とジルクニフの顔色は悪い。

 

「ヤルダバオトのう。王国に出たあれかや」

「そうだ。恐らく今の地震も無関係ではないはずだ」

 

フェディエルは少し考え口にする。

 

「守ってほしいと申すかや?」

「…頼む。どうか帝都を守ってくれ」

 

「風や灯は何時かは止もう?それが理ぞ。此方の利はなんぞ?」

 

ジルクニフは口を閉じそう告げた女を睨む。

王国は守ったと聞く。だが利益が無ければ帝国は守らないというのか。

そんな気持ちから少しの怒りを覚える。

 

いや待て、落ち着け。今までのこの二人の言動を考えろ。

利益で動く奴らか?そうは思えん。

そしてこいつらの言動。まるで人ではないような…

では何を求めてそう口にした。

…まさか何も求めていないのか?

 

考えろ。今私に出来る事は考える事。

思い出せ、全ての情報を。

無垢のような言動。皇帝を前にしても物怖じしない…違う。

全ての相手に同様に接していた。男女に、身分に関わらず。

生命…特に番…新たな生命に興味を示すその言動。

そして訓練と称して確認した圧倒的な力の片鱗。

ジルクニフの頭に手紙の一文が思い起こされる。

 

『竜神様の加護がありますように』

 

…まさか、こいつ等が神だと?

馬鹿な…。そんな事は…御伽噺…の…。

 

転がる腹心だったモノが目に入る。

御伽噺の人に化ける悪魔…ヤルダバオト…。

神が人に求める物…。

俺は今まで様々な陰謀謀略を乗り越えた。

ならばするべき事は一つ。己の考えを信じる事。

 

一つ息を吐き、フェディエルを正面を見据える。

 

「私はバハルス帝国を導く皇帝。多くの民をこの命を持って守り、導く義務がある。その為に、どうか力を貸してほしい」

 

求める事は私の可能な限り何でも行おう。

そう言い切り深く頭を下げる。

 

「如何にもな言葉を宣うものよ。嫌いではないぞや」

「ディーエ、いじわるはよくない」

 

「まぁそう言うでない。よかろ。行くかや。災害みたいなものであろ?」

「うん、ルール守ってるからセーフ。…セーフ?」

 

賭けに勝った…ジルクニフは心から安堵する。

 

「何でもするかや──ヒトの子が灯を継ぐ儀式は目にした事がない。それでも見せてもらうかや」

「は?」

 

妙な声が出てしまった。

この女今…何かとんでもない事を呟いていた気がする。

 

「それはどういう──」

 

言いかけると扉から兵が飛び込んでくる。

 

「陛下!!城下に!帝都に悪魔が!!!」

 

「さて行くかや」

「レイはジル守ってね」

 

そう言い残し彼女達は窓から飛ぶ。

炎と無数の悪魔が群れる帝都へ向けて。

 




じる   :何か凄いセクハラされた気がする
れいなーす:おまいう
あうら  :R15なので!ダメ!です!
黒竜   :ひどぅい!

恐怖公  :出番ですぞ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。