ニグン兄貴真実の部屋行き。
ボロボロガゼフ兄貴。
地表を目指しながら彼女は思い出す。
最初に出会い、恐怖の表情を見せた人間たちの事を。
『…亜人の者よ、ここで何をしている』
(ドラフはおらんのかえ?)
ドラフ、空の世界では人間たちと共に暮らす種族だ
頭に2本の角が生えた種族。
男性は筋骨隆々で身長2mを越す大柄になり、体格からくる膂力は言わずもがな。
女性は総じて身長が低い。年を取っても外見は非常に若く、母と娘が並ぶと姉妹にしか見えない。
ミニマムな外見に反して筋力も男性に見劣りすることもない。
尤も、その男女の違いを完全に理解できていないフェディエルは身長2mのドラフ女性という少しチグハグな外見を作り出しているのだが。
(この世界で人間を観察するならば角は邪魔かや?)
そんな事をぼんやり考えながら飛んでいる。
すると遠くから何かが聞こえる。
──そ!多す──!!
───であ─!
遠くからの怒号のような声を耳にする
見るとそこには森から少し離れた平原を駆ける4人の人間達が巨人に追われる姿がある
巨大な体に木で出来た棍棒のような物を持った巨人、
そして醜悪な顔をした小人のような生き物、
(丁度よい!この世界の事はこの世界の者に聞くのが一番だろうぞ!が、一応角は隠しておくか)
「
「くそ!何だって今日はこんなに居やがる!多すぎるだろ!!」
「やはり森に踏み入ったのは失敗である!」
「コロセ!」
そんなモンスターとの命のやり取り─否、
追いつかれたら、死ぬ。そんな状況に似つかわしくない声が響く。
「そこなヒトの子よ、少し聞きたい事があるぞよ」
──は?
余りにも似つかわしくないセリフと落ち着いた声がする方に視線を向ける。
そこには銀色の髪を靡かせた美しい人がいる。
──綺麗だ。
魅入られた。とでもいうのだろうか。
そんな状況ではない事は彼らが一番分かっている。
だが彼らはそう思ってしまった。
生命の危機だというのに、女神のように空に佇むその冗談のような光景に
一瞬惚けて脚を止めてしまう程度には──
「クライヤガレ!!」
「──あっ!!」
「っ!ニニャ!!!」
しまった!!
馬鹿か私は!!綺麗。そんな事考えてる時じゃない!!
黄色い歯をむき出しにした醜悪な顔が獲物を仕留めたとニヤリと笑う。
「??ア?」
「え?」
アレ?ナンデ?オレ、ウイテル?
人差し指と親指でつまんでいるのだ。
「此方は少しこの者達に用があるぞよ、手を引くがよい」
「─グギャ!?」
ポイと投げた…ように見えたが、その力は凄まじかったようで
後ろに迫っていた
「なんと脆い…脆すぎんかや?」
「ナンダアイツハ!!」
「イケ!コロセ!!」
「手を引けと言うたであろうよ」
「ギャアアアアアアア!?」
悲鳴と共に巨大な棍棒と共に
「ナンナンダアイツ!!」
「ニゲロ!バケモノダ!」
数匹
彼らだって好き好んで死にたいわけではない。
目の前で同族が投げられただけでミンチになり、
あとは蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「あ、あの!!あ、ありがとうございました!!!」
「ん?よいよい!それよりも聞きたい事があるでな!」
・
「改めまして、私が『漆黒の剣』のリーダー、ペテル・モークです!
仲間を助けて頂き、本当にありがとうございました!!」
「本当に助かったのである!」
「ありがとうございました!」
「助かりました!」
漆黒の剣と名乗る4人組は口々に彼女に感謝を述べる。
「よいよい!気にするでないぞ!」
「ところで…お名前を頂いてもよろしいでしょうか?」
「うむ!此方こそは─」
ふと、最初に会った兵士達を思い出す。
名乗った後に更に恐怖に顔を引き攣らせていた…気がする。
やはり人間に名乗りを上げるのは少し不味いのではないか?
一瞬思考するが…今は角もないしそう問題なかろう。
「此方こそ、『六竜』が一人!フェディエルぞ!」
「…六竜」
ぽかんとした顔をした4人はお互いに顔を見合わせ
何かを解釈したように納得し、目に輝きを宿す。
「なるほど!確かにあの力!ドラゴンと名乗るも名前負けしないのである!!」
「確かにな!
一体どんな武技を使われたのです!?」
「六竜という事はお仲間もおられるのでしょうか!」
「おいおい、フェディエルさんみたいな人がそんなポンポンいるかよ」
「六竜の二つ名やこのように強い人物の噂など聞いた事がないのである!!
更に褐色の肌に銀の髪とは余り目にしない姿!遠くから来られたのであるか?」
「待て待て、此方からも聞きたい事があるぞよ!」
暫しの間、お互いの質疑応答が続く
彼らは冒険者と呼ばれる者で、モンスターを狩る仕事をしていたものの
平原にはあまり見えず普段は避けている森に足を踏み入れた所、集団で移動していた
「…気が付いたらこの辺に…かぁ…」
「妙な事もあるものである!しかしそのお陰で助かったとも言えるである!」
「それに空を飛ぶ島…なんてのは見た事も聞いた事もないですね」
「きくうてい…でしたか?人が乗り込み
空を飛ぶ船…なんてのも聞いた事ないですね…」
「角のある、『どらふ』種族…亜人ですか?も聞いた事もないです」
フェディエルは指を顎へ添わせ教えて貰った情報を整理する。
(リ・エスティーゼ王国、バハルス帝国、スレイン法国、どれも聞いた事もない
ん?いや、リ・エスティーゼ王国とやらはガゼフとやらが言っておったか?
それに先に見た所、この地は地続きであった。これほど広い島もあるまいて。
ふーむ、やはり異なる世界か)
「あ、でも亜人でしたら『アベリオン丘陵』に生息している…という噂は聞いた事がありますよ!」
「アベリオン丘陵か…確かに噂は耳にするな。色々居るって。」
「亜人とは違うが、『トブの大森林』には『森の賢王』って魔獣が居るって聞くぜ」
「森の賢王とな?」
「伝説の魔獣であるな!」
「何時か俺達もそういう魔獣を討ち取って名を轟かせたいもんだ!」
仲が良い…というより正に信頼しあっているのだろう。
弱き小さきものが共に集まり、手を取りあう。
生命の輝きとはどの世界でも眩しく好ましい。
なればこそ…と、そこで何時もの疑問が口を出る。
「ところで、ここに番はおらんのかや?」
「「「「つがい?」」」」
頭の上に?が見えるような表情を浮かべる4人…否、3人。
ニニャには意味がわかってしまった。
「うむうむ!これだけの輝きぞ!その
「と、と、ところで!! フェディエルさんはこれからどうなさるのでしょうか!!!」
大声でフェディエルの言葉に重ねる。
ニニャは性別として女性だ。
それを隠している。が、彼女は何かで見破られたのだと勘違いしているのだ。
それも番…パートナーは誰なのだ?などと聞かれてはたまったものではない。
大声に驚いた3人だったが、そんな中で
「俺達にパートナーは居ません!
ところでフェディエルさん!俺とお付き合いを─」
普段であれば苦笑するところだが、これ幸いと口を出す。
「命の恩人に何を言ってるんですか!!」
そ、そんなに怖い顔しなくてもいいだろ…
とでも言いたげに見てくるが…助かった。
仲間達も時と場があるだろうとニニャに続いている。
話題自体は終えられたか。
しかし…見抜かれたのは解せない。女性の勘という奴だろうか?
それとも何かボロを出してしまったか…。
機会を見て教えて貰おう。と心のメモ帳にニニャはメモをする。
急な爆弾発言をかました本人はと言えば
番はおらんのかや…と露骨に残念そうな顔をしている。
何とも言えない空気になってしまった。
数秒の沈黙の後、リーダーのペテルが口を開く。
「フェディエルさん、俺達はこれからエ・ランテルへ戻ります
ご一緒に如何ですか?命を救ってもらったのです!是非ともお礼をさせてください!」
「おお!それは良いのである!恩人にはしっかりと恩を返すのである!」
「よいよい、気にするでない!此方は少し森を見てみようと思っているでな!」
「森を…ですか?」
「うむ、森の賢王なる魔獣に興味が湧いた!
また縁があれば会おうぞ!ヒトの子よ!」
「え、いやちょっと!」
ひらひらと手を振り、彼女は空へと駆ける。
「…行ってしまわれた」
「…
はっと4人は顔を見合わせる
「…そういえばフェディエル…さんは空から現れたな」
「それにあの力…
「まさか本当にドラゴン…だったりして…」
「俺にはドラゴンというか女神に見えたぜ…」
「あの服も凄かったもんな。何というかこう、見た事ないような高級品だったしよ」
「マジックアイテム…でしょうか?」
「なるほど…あの強さならば
マジックアイテムを持って…納得もいくのである!
女神というのも言い得て妙であるな!」
「世界は広い…ってか」
エ・ランテルへ彼らは向かう。
命を救ってくれた謎だらけの女神のような人の話をしながら。
補足
今作のフェディエルは、グラブルのゲームからこの世界へ転移したというよりは
実際に空の世界が存在し、そこからこの世界へ転移した。という妄想です。
ですので立ち位置としてはモモンガ兄貴に似ています。
モモンガ兄貴の実験や検証で森が大パニック
ゴブリン君:森に化け物が出たよォ…集まって逃げるか
:お、人間やんけ食ったろ!
:草原にも化け物がいるよォ…
ゴブリン君かわいそう