オーバーロード 竜の降臨   作:読み物好き

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前回までのあらすじ

漆黒の剣との出会い
ゴブリン君の災難


蜥蜴人

 

(森の賢王…のう)

口の中で言葉を転がす。

気にはなった。正直期待はしていないが、何かしら…

世界の異変を知っているのではないか。

 

他の世界から転移するような大事件は概ね神や竜、或いは神獣──

神に近い力を持った者が引き起こす事がある。

意図していなくとも何かの副次的な影響という事もある。

 

そして長寿の魔獣や魔物は様々な知識や知恵を持つ事が多い。

原因までは分からなくとも何かしら情報を持つのではないかとの期待である。

 

「とはいえ、このだだっ広い森から一匹の獣を見つけるのかや…」

 

はぁ…

ため息が出る。当然だ。森は思った以上に広く、厚く、広大だ。

気配で探そうにも生き物が多すぎる。

それにこれといった強大な力は感じられない。

実際には森の賢王は森の中では十分に強いのだが──彼女の物差しが広すぎる。

気配が察知できない地点で大分期待が出来なくなっていたが、今は他にあてもない。

 

「賢王というくらいだ、良い所に住んでおろう。目立つ所は…」

 

一つの巨大な湖が目に留まる。

瓢箪をひっくり返したような形の湖だ。

 

ふむ、水は生命には必須、であれば近場に居ろうか?

であれば、と考え湖の近くへ。

近寄るにつれ、何かが蠢いている事に気づく。

 

(集落かや?)

 

彼女に気づいた地上の生き物は何か騒ぎ立てている。

そんな中、一つの家の中から一回り大きな個体が現れ、拳をこちらに掲げて何か喋っている。

彼女の興味を引くには十分だった。

 

──ふわり

舞い降りる。

周りの蜥蜴人(リザードマン)達は警戒の視線と槍を構えている。

一回り大きな個体が前に出る。

 

「おう、俺は竜牙(ドラゴンタスク)のゼンベル・ググーだ。お前は何だ?何しに来たんだ?」

 

「此方こそ、『六竜』が一人!フェディエルぞ!」

 

「竜?には見えねぇが?」

 

後ろを覗き込むように首を伸ばしている。

 

「この姿はヒトの形を取ったモノ。竜に見えては意味がなかろ?」

 

「ほー、それで?その竜とやらが俺達に何の用なんだ?」

 

「何、大事ではない。探し物のついでに目についたゆえ」

 

「幾つか聞きたい事があるのだが──」

 

「あー、待て!そういう頭を使うような話はしたくねぇ」

 

筋肉で異常なほど太い腕を振るい、話を聞く気はないとアピールしている。

 

「俺達竜牙(ドラゴンタスク)は強さこそ全てだ、

 お前が竜だか何だか知らんが俺らが信じるのは強者のみだ。

 聞きたい事があるなら俺に勝ってみろ!そしたら何でも答えてやる」

 

「此方と勝負とな?」

 

想像してすらいない台詞に首を傾げる

 

「俺は戦士だ、相手の強さくらいはわかる。

 だがお前からは何の強さも…気配も感じねぇ

 これは一体どういう事だ?」

 

「だからこそ試す!どんな奴かも一番分かりやすいからな!」

 

「面白いやつよな!嫌いではないぞや!」

 

「お前ら!もし俺が殺されても何もするな!

 こいつに従えよ!」

 

ゼンベルがそう叫ぶと周りに居る蜥蜴人(リザードマン)達は顔を見合わせる。

怪訝そうな表情──尤も彼女には蜥蜴人(リザードマン)の表情なんぞ分かるわけもなかったが──を浮かべ、頷き了解の意を示す。

彼らも困惑していたのだ。彼女からは強さが感じられない。

しかしそんな存在が空からぽっと湧き出るはずがない。

 

実際、彼女は認識阻害を応用したような物を己に掛けている。

当然と言えば当然である。

世界に干渉するような力がそのまま顕現しようものなら大騒ぎでは済まない事くらいは彼女自身もわかっている。

 

「安心せよ、悪戯に殺すような真似はせぬ。

 安心してかかってくるがよいぞ!」

 

「そりゃあお優しいこって──いくぞ!<アイアン・ナチュラル・ウェポン>!」

 

地面を蹴り進む。力強い脚はあっという間に距離を詰める。

巨大な拳が振り下ろされる。直撃だ。

 

「…どういう手品だ?」

 

「良い踏み込みだ、それに良い拳よな」

 

その小さな掌で己の拳が止まるという事に驚愕の表情を浮かべる。

が、即座に闘志を燃やす。

 

「うむうむ!戦士の目…という奴かや?

 特異点達の仲間に似た良い目ぞ!」

 

「うおら!」

 

蹴り、拳、肘と連打が続く──

が、全ていとも簡単にいなされてしまう。

 

「そろそろこちらもいくぞ?そいっ!」

 

「う、うおおお!?<アイアン・スキン>!!」

 

恐ろしく早い動きで拳に拳を合わせる形でフェルディルの手が近づき、形作る。

中指と親指で形作られたそれ──デコピンだ。

が、その威力はデコピンでは済まされない。

例えるなら拳を巨大なハンマーで殴られたような感覚か。

一般人の拳なら無残に拉げ吹き飛び、運が悪ければ死んでいただろうか。

ゼンベルは盛大に後方に吹き飛ばされ──

 

「…俺の負けだ、もう腕が痺れて動かねぇ…」

 

鍛え上げられたゼンベルの腕は拉げる事はなかったものの

戦闘不能には十分だった。

 

「いやぁ…参ったぜ…指一本なんて…な…」

 

何か遠くを見ているような瞳。

周りを取り囲んでいた蜥蜴人(リザードマン)達は自分達が何を見ていたのか…。

理解が追いつかないのか、呆然としている。

沈黙を破ったのはゼンベルだ。

 

「いや、失礼した!あー…もう一度名前を教えてくれ」

 

「よかろう、此方こそが『六竜』が一人!フェディエルぞ!」

 

「聞いたなお前ら!フェディエルを歓迎だ!飲むぞ!準備しろ!」

 

はっ!と現実に引き戻された彼らはゼンベルの意図を直ぐに理解する。

強さこそが全ての戦を好む部族の彼らだからこそだろうか。

周りの蜥蜴人(リザードマン)達は一斉に宴の準備に入る。

 

「難しい話は酒の席に限る!勿論飲めるんだろ?」

 

 

 

 

 

 

最初はおっかなびっくりだった蜥蜴人(リザードマン)達だが、フェディエルの性格も相まって宴が進むにつれ打ち解けていた。

 

「じゃあお前本当に竜なのか?」

 

「最初にそう言うたであろう?」

 

「そりゃそうだが、はいそうですかと信じる奴なんか居ないだろ」

 

ガハハと笑うゼンベルはご機嫌だ。

フェディエルも蜥蜴人(リザードマン)の子供や番を見て非常に満足といった具合である。

 

「それで──森の賢王だったか?

 俺達はあんまり遠くまで行かねぇからな…

 わりぃ、何処に居るかはわからねぇな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気持ちの良い連中ではないか」

 

酔い潰れた蜥蜴人(リザードマン)集落から少し離れ夜風に当たる。

 

────ポツ

 

雨か。そう思い彼女は空を見上げ──小さな人影が見える。

銀色の髪をした、幼い愛らしい顔つき。

羽衣のような服を纏い、目は美しい青。耳には羽のような物が付いている。

身長1メートルもなさそうな、10歳にも満たなく見える幼い女の子が大きな傘を持ちこちらを見ている。

 

「ディーエ?」

 

彼女がポツリと呟いた。

 

「…!」

 

言葉が先か、体が先か。彼女のもとに跳ねる。

フェルディルの事をディーエと呼ぶ子──

 

「何故ここに居るのかや!?

 というより、どうやってここに来た!?」

 

「ワムが知りたい。早くもどらないと。楔が欠けると空がヤバなので」

 

自分をワムと呼ぶ子──『ワムデュス』水を司る六竜の『(へき)』である

 

「それはわかっておるが──」

 

「…ディーエは自分でここに来たんじゃないの?」

 

「此方は気づいた時にはここに居ったぞ!

 それよりどうやってここにきたのかや?」

 

「…思ったよりヤバいじょうきょう」

 

聞けば、フェディエルが消えたので皆で探し回っていたらしいが

最後に居たであろうフェディエルの部屋に入ったところ、小さくなっていく黒い塊のような物があり──

触れたのが間違いだったらしく、目を覚ますと湖の中に居たそうだ。

 

「つまり、ワムはひがいしゃ」

 

「此方のせいかえ!?」

 

その後、二人で話し合った結論としては

この世界に呼ばれた──否、連れてこられた。

来れたのだから帰る方法もあるだろう。

時空に好きなように歪みを作れる竜や神といわれる存在がこの世界に居るのかもしれない。

探して二度と同じような事を起こさぬようお仕置きして帰してもらおう。

という形で一度纏まった。

 

「時に空は此方が消えて何か起こったかえ?」

 

「楔が欠けてるからもちろんヤバい。不安定になってる」

 

「…どの程度持ちそうぞ?」

 

「たぶん1000年くらいで大変な事になる。ワムも抜けたからも少し早くこわれるかも」

 

「瞬きの間ではないかや!!!」

 

──彼女達の時間間隔は少し、人類とはズレている。

彼女達は「はぁ…」と溜息を一つ吐き出した。

 

 

 

 

 

 

「いらん心配だろうが気を付けてな!ワムもな!」

 

「うむ!馳走になったぞ。また縁があれば会おうぞ!」

 

「ありがとう。魚おいしかった。またね」

 

「おう!何時でも来いよ!歓迎してやるぜ!」

 

 

ワムデュスを連れて蜥蜴人(リザードマン)の集落に戻り、結局数日もてなして貰っていた。

と、いうのもワムデュスを怪しんでいたゼンベルだったが──

自分の倍以上小さいワムデュスに軽く投げ飛ばされて気絶していた。

 

体格差もあり流石に少し自信を無くしたようだったが、何かに吹っ切れたようでもあった。

改めて話を聞くが──やはり蜥蜴人(リザードマン)は閉鎖的な社会という事もあり、神や竜の情報も持っていなかった。

 

例外はゼンベルであり、彼は旅をしていた経験からのアドバイスとして

人間やドワーフ…俗に言う人型種の都市や街での情報収集が良いのではないか

という話になったのだ。

 

結論──まずは情報収集。

その為にはやはり、人間が良いだろうという話になっていた。

彼女たちの知る彼ら──人間は知能が高く、社会性も高く、多くの情報を持っている。

特に友好的な人間が多いと認識している。彼女たちの世界では──だが。

という結論に達した為だ。

幸いにもガゼフや漆黒の剣との邂逅で、近くにリ・エスティーゼ王国という国は存在していると知っている。

国というからには一つや二つ何か神や竜といった情報…逸話等も持っている…かもしれない。

という考えの下、ゼンベル達蜥蜴人(リザードマン)に別れを告げ、彼女達はリ・エスティーゼ王国領へ向かう。

 

 

 

「そういえばディーエ、角は?」

 

「どうやらこの国の人間は怯えるようぞ

 その耳…羽か?それも隠しておくとよいぞ」

 

「わりと気に入ってたのに…ショック」

 

 





本当は一人旅の予定でした。
彼女の性格を考えると、誰か相方が居ないと私にはムリでした。クソァ


森の賢王、巣穴で熟睡により遭遇を華麗に回避

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