オーバーロード 竜の降臨   作:読み物好き

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前回までのあらすじ

なるほど、そういう事ですか…お↑任せ↑ください↑↑アインズ様↑↑↑
デミえもんが出ると会話が長くて困る。



王都リ・エスティーゼ

 

「こちら、報酬の銀貨1枚、銅貨4枚となります」

「おおー。ろーどーの重み。大切に使う」

「よし!何か食べに行こうぞ?」

「ダメ。前全部ディーエが勝手に使った。これはワムの」

 

にこにこしながら報酬を大切そうに巾着にしまう姿につい微笑んでしまう。

 

長い事受付嬢をしているが、ここ最近は本当に変わった事が多い。

あのアンデッド騒動で大活躍を果たした漆黒(しっこく)の二人組、と一匹。

そして黒碧(こくへき)と呼ばれるこの二人組。

 

漆黒は本当にすごい。

ゴブリン部族連合の殲滅、ギガント・バジリスクの討伐、アンデッド師団の殲滅、上げれば他にもキリがないほどの活躍を見せ、あっという間にアダマンタイトまで登りあがった。

この町でも英雄視されている。正に人類の剣と呼ばれるにふさわしい存在だ。

その活動を嫉んでいる者も少なからずいるが、ほんの少数だ。

 

でも、私個人としてはオリハルコン級の黒碧(こくへき)の方が好きだ。

彼女達も素晴らしい活躍を見せている。

 

アンデッド騒動での活躍は当然として、森から来た妖巨人(トロール)の群れの殲滅、突如現れた巨大なアンデッドの撃破、街の影に潜んでいた魔物を撃破とこちらも上げればキリがない。

彼女達に助けられた人達からは「女神」と称えられている。

 

特に影に潜む魔物には震え上がった。組合で急に拳を組合長の影に振るったのだ。

皆彼女が錯乱したのかと思った。そうしたら組合長の影が形を変え、崩れ落ちたのだ。

アレは何だったんだろう。彼女は"こそこそと鬱陶しいから"と言っていたが。

そういった潜んだ脅威の排除など、貢献してきた事はたくさんある。

彼女達も十分にアダマンタイト級だと言われているし、本来そうなるはずだった。

 

…あの事件がなければ。

 

まぁ、私や市民達、冒険者の皆もそうかもしれない。が、彼女達に好意を向けている原因の一つかもしれない。

一つは彼女達は仕事を選ばない。「穀物の刈り取り…の護衛」と銘打った実質雑用のような物から

貴族の護衛、モンスターの調査。近村までの護衛等、オリハルコン級には無縁の仕事でも受けている。

 

その中の貴族の護衛…これがまずかった。

 

不遜にも思い上がった貴族が馬車で不埒な行為に及ぼうとしたのだ。

殴り飛ばされた貴族は歯が無くなり、顔も大きく歪んだらしい。

この件が伝わるや否や庶民たちからは歓喜と歓声が絶えなかったが、貴族に手を上げた者に最高位を名乗らせる事は難しいとの判断でオリハルコン級止まりなのだ。

 

アインザック組合長が頭を掻きむしりながら悲鳴を上げていた事は記憶にも新しい。

 

そして良くも悪くも平等に接してくれる彼女達の心地よさもある。

ワムデュスがたまに依頼を受けに来るときに焼き菓子を買ってきてくれる。

こんな冒険者見た事も聞いた事もない。ただ、驚きとその無垢な行為に心が洗われる。

 

街中でも貴族から市民まで、態度を変えずに接しているのだ。

礼儀一つ持ち合わせない蛮族等という者も確かに居る。特に貴族は。

そんなワムデュスについた二つ名が「無垢」、そしてその相方のフェディエルは「奔放」や「剛腕」等と呼ばれている。

どちらも好意的に呼ばれているが、私は無垢と奔放の方が好きだ。

 

そんな彼女達の背を見送る。

彼女達は神や竜の情報を探しているとの事だった。

この街にはそういった噂が残念ながら、あまり多くはない。

王都に行くらしい。少し寂しいが仕方がない。冒険者には自由があるのだ。

また戻ってきてくれたら嬉しい。そんな気持ちで言葉を口に出す。

 

「行ってらっしゃいませ」

 

 

 

王都行の馬車の前に3人の姿が見える。

ナーベラルは別件で外している。

 

「これ、モモにあげる」

「うん?パン?」

「ワムが焼いたの。教えてもらった」

「それは嬉しいな!後で頂くとするよ」

 

「形はさて置き、中々に良い出来だったぞや!」

「それは楽しみです!フェディエルさんもお気をつけて」

 

アインズは共に行きたいという言葉を引っ込める。

流石にそれは冒険者としての立場、そして──報告書は斜め読みしていたものの、長くナザリックを空けている身としても許されなかった。

 

「…では、少し寂しいが。達者でな」

 

「何を後生の別れのように申しておる!

 其方が風を吹かせている限り、何時かまた巡り合おうぞ?」

「うん。またね、モモ」

 

「ああ…またな」

 

馬車に揺られて行く彼女達を見送るアインズには複雑な感情が生まれていた。

彼女達と長く過ごしたからか、至高の41人(仲間達)をよく思い出していたからか。

深く沈んでいた鈴木悟としての感情が、水に出来る波紋のように、静かに、確実に広がっていた。

 

「…パンか」

 

手渡された歪な形のパンに視線を向ける。

 

──食べられたら、どんな味がするんだろうな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが王都かや?思ったのと違うぞや。

 アルビオン(空の世界の都市)みたいなのを想像しておったが」

「何だか、やなかんじ。みんな楽しくなさそう」

「それには同意ぞ。この町の風は澱んでおるよな。余り好ましくは思わぬ」

 

人混みの中をあてもなく進む。

途中見つけた店でお菓子を買い込み、今夜の宿を探して。

人の多さだけはなかなかのものだ。

夕時というのもあり、買い物帰りや仕事帰りの人も多い。

 

──ドン

 

「おわー」

 

急ぎ足の人にぶつかり転びそうになるワムデュスだったが、抱き上げられた。

 

「大丈夫ですか?ここは人が多い、お気を付けくださ──」

 

執事服に身を包んだ、気品の漂う老人が目を見開いてこちらを見ている。

 

「ありがと、おかげでおかしは無事」

 

「・・・」

 

「ん?如何したかや?」

 

老人──セバスの心中は穏やかではなかった。

スクロールを購入し、帰りの道で大きな袋を持った転びそうな子供を助けた。

それはいい。だが問題なのは対象だ。

手を出すなと主人から命じられ、デミウルゴス(同僚)から受けた報告では、情報収集に放った影の悪魔(シャドウ・デーモン)を何匹も消されていると聞いている。

接触を避けるように言われていた要注意人物。

それに対して意図せず自ら接触してしまったのだ。

どうするべきなのか──思考がグルグルと周り、硬直する。

 

「もうだいじょうぶ。おろして。ちょっと痛い」

 

ハッと意識が戻る。

抱え上げたまま固まってしまっていた。

 

「大変失礼致しました。とても愛らしいお顔に見惚れてしまいました。

 そのプレート、噂の黒碧のお二人ですね。お会いできて光栄です」

 

「んん?…其方…」

 

「これお礼。おかし。ありがとう」

「ありがとうございます。気持ちだけ頂きます。では私は急ぎますのでこれにて失礼いたします」

「そっか。こんど何かおれいする」

 

裏通りへと向かう彼の背を見送りながら呟く。

 

「純粋な竜…ではないな?」

「うん、違うと思う。竜人(ハーフ)?」

「わからぬ。が、興味があるのう。異なる風が重なり合うのは珍しい事ぞ!」

「そだね。それより宿さがそ。雨が降るよ」

 

何かが起こる前兆のように

暗く分厚い雲が王都を包んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…クソっ」

 

雨の降りしきる中、走る一人の男性がいた。

王城での事を思い出し、気が付くと口を出ている。

 

吐きかけられた貴族の言葉が頭に浮かぶ。

 

『国内に強大な亜人?戦士長殿はお疲れなのではないですかな?』

『然り。もしやその法国の件も戦士長殿の幻覚ではないのですか?おっと、失礼。幻覚では怪我のしようがないですな』

『そのような亜人が居れば会ってみたいものです。最も、噂にすらなっていないのですから、存在しないでしょうな。いや、戦士長殿を疑うわけではないのですぞ。事実を述べているのです。ハハハ』

『であれば先のアインズ・ウール・ゴウンでしたか?その魔法詠唱者(マジックキャスター)も存在するか怪しいものですな』

『陛下も陛下ですぞ。このような言を信じているとは思いませんが、身近な者がこれでは』

 

心の中で拳を振り下ろす。

しかし彼、ガゼフ・ストロノーフにはどうしようもない。

口で貴族に勝てるわけもなし、事実を報告しないわけにもいかない。

蒸し返すように何度も何度も挙げられる議題。

雨の中を駆けながら深くため息を吐き出し首を振る。

 

「…今日は酒でも飲むか」

 

──ん?

 

「…お嬢ちゃん、こんな雨の中どうした。親はどこだ?」

 

袋を抱えた幼い子が一人ポツンと空を眺めていた。

 

「宿、ぜんぶ満室だった。ショック」

「親はどうしたんだ?」

「んー…ワムにはいない」

 

親が居ないのか…しかしなぜこんな所に。と考えていると首にかかるプレートに目が入る。

冒険者…それもオリハルコンだと!?こんな幼い子が…

とは言えど、このような子を雨の降る夜に街中に放置するのは彼にはできなかった。

 

「よければうちに来ないか。ここにいるより良いだろう」

「おじさんの家?」

「ああ。安心してほしい。俺はガゼフ・ストロノーフ。この国の王国戦士長だ。怪しい者ではない」

「いいの?たすかる、ありがとう。もう一人いるけどだいじょうぶ?」

「ん?連れがいるのか。勿論いいぞ」

「ありがとう、そのうち戻ってくるとおもう」

 

ペコリと頭を下げる。

 

彼女の言う連れを待ちながらガゼフは思考する。

しかしオリハルコン級の冒険者か…そういえば噂を聞いた事があるな。

貴族に手を上げた野蛮な冒険者「黒碧」確か幼い子と長身の女性。

まさかこの子がそうか?噂のような粗野な者には見えないが。

それどころかこの子は礼儀正しい。やはり噂等当てにはならないか…。

とぼんやり考える。と遠くから水溜りを駆ける足音が近寄ってくる。

 

「だめぞ!あっちも全て満室ぞ!」

 

「お、お前は…!!!」

 

絶対に忘れる事はない。

草原で出会った、恐ろしい力を持つであろう亜人。

その姿が彼の前に再び現れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「少し味付けが薄いかや?」

「ワムはすき。そざいあじ」

「・・・・」

 

結果的に家に招く形になったガゼフは二人を観察する。

美味しそうに頬張る少女と、例の亜人…に瓜二つの長身の女。

 

「…一つ聞きたい。貴女はフェディエル…殿で間違いないか」

「ん?此方を知っておるか?どこかで会ったかや?」

「…覚えておらんか」

 

隠す気はないらしい。

現状は敵意も感じられない。

ならば聞くことは一つだ。元々口が上手い方ではない。

 

「聞きたい。フェディエル殿は人間ではないな?」

 

「んぐっ!」

 

胸をドンドン叩き食べ物を飲み込む。

 

「こ、お、此方が人間でないと?どこがや?見よ!角もないではないか!」

「…やはりあの時の亜人であったか」

「ディーエ、たんじゅん」

「となると、君も人間ではないのか?」

「うん、ワムは人間じゃないよ」

 

深く息を吐き出す。

 

「聞きたい。何をしにこの国に居られるのか。

 私はこの国の王国戦士長。もしも我が国に害をなす気ならば、見逃すわけにはいかない」

 

「ワム、わるい事してないよ。ちゃんとルールまもってる」

「此方もしておらぬよ」

 

耳に入っている「黒碧」の噂を思い出す。

確かに大きな問題は──一件を除き起こしていない。

エ・ランテルで起こったアンデット事件でも多くの人々を助け、女神とも称えられている。

 

「貴族に手を上げたと聞く」

「貴族?なんぞや?」

「依頼を受けた貴族に手を上げたと聞いている」

 

「ディーエ、ほら。あのふとった人」

「ああ!あの此方を番にとした者かや?仕方あるまい。ああも気持ち悪く寄ってきてはのう」

 

カラカラと笑う彼女には悪意の欠片もない。

そう言われ──女性として見れば、確かに黄金と呼ばれるラナー王女とも負ける事はないだろう。

健康的な肌、大きく魅力的な胸、筋肉だけではなく、女性としても魅力的に引き締まった腹。

であれば不埒な行いをする貴族の一人や二人いてもおかしくない。

 

「そういう事だったか…失礼した。この国の王国戦士長としてもお詫び申し上げる」

「よいよい、アレで懲りたであろうぞ」

 

亜人だから──そう決めてかかった自分に恥じ入る。

嘘はついていない。確証はないがそう感じる。

嫌と言うほど貴族を見てきた自分の勘が、そう伝えている。

 

話を聞けば、帰る為の方法を探しているとの事だ。

それと何の関係があるのかは知らないが、神や竜の伝承等を探しているとの事。

今までの冒険者としての仕事を聞き、彼女達自身を見ていると複雑な気持ちが沸き上がる。

…このように民を助けてくれる者が国に、貴族に一人でも居てくれたならば──

頭を軽く振り、ふぅと一つ息を吐き出す。

 

「ごちそうさま。おいしかった」

「ちと薄味だったが馳走になった!」

「いや、こちらこそ失礼した」

「ところで、此方は主とは何処かで会ったのかや?」

 

「…本当に覚えていないのだな」

 

それはそうか。あの時の気配は俺が何人いてもどうにもできないだろう。

弱い者をいちいち覚えてはいない。そういう事か。

…世界は広いな。俺は──まだまだ弱い。

 

──改めて自己紹介しよう。俺は王国戦士長ガゼフ・ストロノーフだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし何とも暗い国よな」

 

ガゼフの家を宿代わりに使ってほしいとの彼の提案でそこを拠点とした黒碧。

その片割れのフェディエルは一人で王都をブラついていた。

この国は好きではない。何というか、灯がない。

人々の顔にはあまり笑顔がなく、道を一本それればそこは荒廃した家々と力尽きたように転がる人々。

特に目につくのは虚ろな瞳をして微笑んでいる人々だ。

ガゼフが言うには「黒粉」と呼ばれる麻薬を使用しているのだろうとの事だ。

 

「本来自由である風が道に迷い、己の灯すら失い、最後に頼るは薬とは」

「国とは迷う人々を導く灯ではなかったのかや」

 

自分の知る国との差に何とも言えない気持ちになる。

あまり良い気分ではない。

やれやれと首を振り、何かせめて面白い物はないかと周りを見渡すと、老紳士が目に入る。

 

「あれは…確か…」

 

──面白そうぞ!

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りました」

 

「…?」

 

「ツアレ?」

 

屋敷は驚くほど静まり返っている。

セバスはその中を速足で駆ける。

 

「ツアレ!!居ないのですか!?ツアレ!?」

 

一部屋、また一部屋と扉を開き彼女を探す。

まさか攫われたというのか?

屋敷にはソリュシャンも居たはず。

しかしソリュシャンは彼女を良く思っていない。

攫われる現場を見逃したのではないか。

様々な考えが脳裏を走り部屋を空け続ける。

杞憂であってくれると信じて。

 

「ツアレ!?」

「やあ、遅かったね。セバス」

 

そこに居たのはセバスの求めたツアレと呼ばれる人物ではなく──

スーツ姿の尾の生えた悪魔と、メイドが2名。

そして青く輝く体をした巨大な昆虫。愛くるしい顔をした赤い瞳の少女。

 

「デミウルゴス様、何故このような所に」

「ソリュシャンから報告を受けてね。些細な報告は私かアルベドへとアインズ様は仰っていただろう?」

 

「報告を受けて驚いたよ。ペットを飼いだしたと聞いているよ?可愛らしいペットだね」

「ツアレは今どこに?」

 

「言う必要があるのかね。おっと、コキュートス、シャルティア、構える必要はないよ

 私はセバスを信用しているからね?」

 

デミウルゴスの口がニヤリと開く。

 

「どうしたんだいセバス。凄い汗だね。ハンカチを使うかね?」

 

セバスからは滝のように汗が出ている。

コキュートス、シャルティアからはっきりとした殺意と敵意がそこにはある。

 

「…デミウルゴス様、こちらに来られたご用件をお聞きしてもよろしいでしょうか」

「様はいらないよセバス。さて、今回来た理由は簡単だ。君には明日帝国へ発ってもらう」

 

「…何故です?」

「この国の調査は充分だ。八本指なる組織も確認が完了した。なかなか便利そうだったね。近いうちに利用させて貰おうと思っているよ」

「新たな計画の第二段階に進むためにも、帝国の情報が必要だ。アインズ様にも帝国の情報収集の許可は得ている。理解したかね?」

 

「…承知しました。では私からも質問を。ツアレはどこです?」

「君のペットかね?まだ生きているよ。何故報告をしなかったんだい?」

 

「…偽装工作の一環としてです。このような広い屋敷に使用人が私一人では不自然ですから。偽装工作一つにご判断を仰ぐのは自主性に欠けると判断しました」

 

「なるほど!確かにそうだねセバス。しかし事後報告くらいはするべきじゃないのかね?」

「仰る通りです。デミウルゴス。些細な事だと思いましたので…私の判断ミスでした」

 

「帝国へ参る事は承知しました。帝国でも偽装工作は必要でしょう。ツアレはどこでしょうか」

「それなら安心したまえ。二重の影(ドッペルゲンガー)を用意するよう提案しよう。栄光あるナザリックの者であれば、まかり間違っても情報を漏らすような真似はしないだろうからね」

「それはツアレとて同じで──」

「黙りたまえ!既にあの人間を拾ったせいで情報収集に支障が出ている事を私が知らないと思っているのか!」

 

何時ものデミウルゴスの口調が少し変わり、宝石のような目が見開かれる。

その表情には、はっきりと怒りの色が見える。

 

「…君が拾ったペットのせいで役人に目を付けられ、人間にたかられている事も知っている。どうするつもりだったんだい?ああ、答える必要はないよ。重要なのはそこではないからね。アインズ様が命じられた命令はペットを拾えではない。目立たず溶け込み、秘密裏に情報を収集せよだ。違うかい?」

 

「……それに関しては…私に全面的に非があります。…しかし殺す必要はないはずです。」

「残念だよセバス。非常に残念だ。ペットにそこまで感情移入してしまうとは」

 

「今はまだ生きている。私の牧場に居るよ。意識はまだ戻っていないだろうね。戻ったら食事と掃除係の担当予定となっているよ」

「何を!?あなたの言う牧場とは!!そんなところで働かせろと!?」

 

「そんな所?そんな所と言ったのかい?あの牧場はナザリック、アインズ様への貢献をするために生み出された所だ。本来ならば人間如きが働ける場所ではない。が、君のペットだからこそ、それを許したんだよ?」

 

「この事は!!アインズ様はご存知なのですか!」

「勿論存じ上げてないよ。先ほど君自身が言っただろう?"些細な事"だと判断したので私が決定したのだよ。"些細な事"はアインズ様から私とアルベドで判断せよと仰せつかっているからね」

 

「ア、アルベドは…」

 

「むしろ私が助命したと言っていいと思うがね。君がペットと遊んでいるのを彼女はとても怒っていたよ。本来ならもう既に死んでいるくらいだ」

「そういうわけだ。何か問題はあるかい?」

 

──ツアレは…

 

「何だいセバス?」

「ツアレは私の保護下に入っております。そう宣言致しました。そう易々と死ぬとわかっている場所に置いておく事などできません」

 

デミウルゴスはやれやれと首を振る。

その表情は分かりやすく悪魔と呼べるだろう。

 

「つまり、アインズ様が指名された私とアルベドの命令には従えない。そういう事かい?」

 

 

 

 

「わかったよ、セバス。残念だ。本当に残念だ。コキュートス、シャルティア」

 

守護者としての、本気の殺意がセバスに突き刺さる。

コキュートスは4本の剣を、シャルティアは槍を持ちセバスを見据える。

後ろに立つ二人のメイドは顔を引き攣らせ固まっている。

 

──たっち・みー様、申し訳ありません。

 

セバスはそう心で呟き、目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に頑固だね、君は」

 

…?死んでいない。

目を開くとコキュートスもシャルティアも武器を収めている。

 

「我々に許された権限はあくまでも些細な事への対処。守護者である君を排除できるはずないだろう?」

 

「さて、セバス。この事は勿論アインズ様へ報告させて頂くよ。ただ、一つ聞かせてほしいね。どうしたら私とアルベドの命令に従ってくれるんだい?」

 

「アインズ様は力を合わせろと仰られた。困るんだよ。個人の意思で動かれては」

「…ツアレを牧場から解放して頂きたい」

 

「あのペットを解放すれば私達のいう事を聞くのかい?」

「元はと言えば私のミス。今後二度とこのような事は致しません」

 

 

「とは言ってもね、もう決定されているんだよ」

 

 

「だがまぁ、私は君の事が好きではないからね。その感情が入っていないとも言い切れない」

「だからこそ、公平を期すために4人を連れてきたんだよセバス」

 

「どういう事です?デミウルゴス」

 

「私の判断はあくまで保留とするよ。以前アインズ様が仰っていた。至高なる御方はいつでも合議制を取られていたとね」

「…と言いますと?」

 

「この4人の意見を聞こう。その中で一つでも反対意見があれば考えを改めようじゃないか」

「どうだい?これ以上の譲歩はないと思うが?」

「…承知しました」

 

「では早速だがシャルティア、君なら今回のケースはどのようにする?」

「わらわであれば殺しますえ。あ、いや。苦労してるみたいだしソリュシャンにやろうかえ?ねぇソリュシャン?」

 

後ろに立つ一人のメイドがニコリと笑い軽く頭を下げる。

 

「ありがとうシャルティア。ではコキュートス、君はどうだい?」

「私ニハ、デミウルゴスノ様ナ知恵ハナイ。デミウルゴスノ意見ニ従オウ」

 

「ありがとうコキュートス。ただ、知恵がないと思ったとしても次回から自分で考えるのを止めてはいけないよ。ではソリュシャン、君はどうするね?」

「元々私は人間のメイドに反対でした。シャルティア様に頂けるのであれば数日かけてゆっくりと私の中で溶かしてあげようと思います。存在した証拠も残りません」

 

「ありがとうソリュシャン。では最後に、忙しい所すまなかったね。空いているのが君しか居なかったんだ。ユリ。君ならどうする?」

 

「ボ…し、失礼しました…私は…」

 

全員の目線がユリと呼ばれたメイドに突き刺さる。

何を迷っている?という視線、何か考えが?という視線

何を言い淀んでいる?という視線

 

そして──セバスの悲痛な視線。

デミウルゴスが口を開く

 

 

「ユリ、君ならどう判断するかという話だよ。どのような判断がナザリック大墳墓に利益をもたらすか、どう考えているんだい?」

 

 

 

「わ、私は…人間一人程度で…あ、あれば……逃しても、構わないのではないかと…」

「詳しく聞きたいね」

 

「セ、セバス様は偽装工作の為に…との事でした。我々の情報も…何一つ知らないのであれば、も、元居た所に戻す程度でよろしいかと…」

「ユリ、それ本気で言ってるんでありんすか?」

「ユリ姉様、それは危険な考えです。何も知らないとはいえセバス様や私の顔は知っています」

「そうでありんすえ、何より疑わしきは滅せよというじゃありんせんか」

「シャルティア、それをいうなら罰せよだね。ユリ、それが君の答えでいいのかい?」

 

「い、いえ。懸念があるならば──」

 

「デミウルゴス、ソレハ不敬ダ」

「どういう事だい?コキュートス」

 

「ユリハ既ニ考エヲ述ベタ。ソレガ意見デアルハズダ」

 

「…その通りだね。コキュートス。ありがとうユリ。

 決まりだよセバス。彼女は元居た所へ戻す。良いね?」

 

「…わかりました」

 

「ではシャルティア。すまないが頼むよ。足の健を切って路地に捨てておけばいい。何も知らないだろうが、何であれ情報が洩れても困る。死なない程度に喉も潰しておきたまえ」

 

「ちょっと難しいでありんすが、了解でありんす」

「…シャルティア様、よろしければ私が喉をゆっくりと時間をかけて溶かしましょう」

「それは面白そうでありんすね!」

 

「あまり時間をかけて貰っては困るよシャルティア。計画はすでに動き出しているんだからね」

 

「では失礼するよセバス。君は明日帝都へ発ちたまえ」

 

シャルティアが転移門(ゲート)を開くと5人の姿はそこに消えていく。

残されたセバスには、膝をつき床を眺める事しか出来なかった。

 

 

──そして、その場から離れていく一つの影に気づいた者も誰も居なかった。

 

 




気配遮断SS+

ゆり :こ、こわ、こわわわ・・・
そりゅ:ゆりねぇさま↑やさスィ↑
るぷ :何の話しっスか?うわ、ユリ姉の頭が取れてるっす!白目向いてるっす!
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