オーバーロード 竜の降臨   作:読み物好き

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前回までのあらすじ

せばす  :ツアレ…ツアレ…
デミえもん:私はやっぱり仲間に優しい↑↑



ツアレニーニャ

 

喉が焼けるように痛い。

脚が動かない。暗い。怖い。

 

どうして。ここは何処?セバス様は何処?

 

遠くから何かを叩く音が聞こえる。笑い声も。

何度も何度も何度も何度も聞いた、二度と聞きたくない音。

扉が開く音がする。セバス様?私はここです。

 

 

「ア…アアウアア…」

 

 

傷む喉から声を振り絞る。声が出ない。

 

 

──まさか新品でまた楽しめるとはなぁ!

 

 

聞きなれた声が聞こえる…

優しい声ではなく、二度と聞きたくないと思っていた、脳裏にこびりついた声が──

 

 

 

 

 

 

「しっかし、何だって戻ってきたんだ?」

「俺が知るかよ」

 

薄暗い部屋でテーブルを囲む4人は口々に先日の事を話す。

夜も更けた頃、店の外で音がした。

何かが落ちる音。警戒して外に出てみると、”商品”が落ちていた。

 

例の老人に奪われた商品だ。それも傷だらけだったものが──新品で。

それもご丁寧に脚の健と喉が潰された状態で。

 

後日例の屋敷の様子を見ると引き払われていた。

何でも火急の用で帝国へと向かったとの事だ。

役人(スタッファン)は烈火の如く怒り狂っていた。

何とか”商品”に出来ないかと狙っていた令嬢(ソリュシャン)が逃げたのだと聞いて。

まぁ戻ってきた商品を見て手の平を返したのだが──

 

「しっかし、居なくなって新品で帰ってくるなら爺さん様様だ」

「ああ、一度全商品持ってってくれたらよかったのにな。ボスもご機嫌だぜ?」

 

笑い声が部屋に木霊する。

ビールを喉に流し込みながら目を細める。

後で俺も楽しませて貰いてぇなぁ。そんな事を考えながら。

 

 

──ガァン!

 

 

その音の発生源に皆が目を向ける。

それは──妙な光景だった。

鉄の扉の中央あたりから何かがこちらに生えている。

あれは手だ。鉄の扉を貫通した”手が”そこにある。

 

バキン。

 

手が扉を抱え、木の板でも持つように分厚い鉄の扉が外される。

 

「ここかや?」

 

長身の女性が分厚い鉄の扉を軽々と持ち上げる。

その冗談のような光景に皆呆然とする。

物音で奥から何人かこちらに駆けてきたようだが、それを目にすると皆同じように唖然と固まっている。

 

そんな所を意に介さず女性は歩き進む。

室内をぐるりと見渡し、独り言のように呟く。

 

「…見当たらぬ。しかし此方が惚けておらぬなら、ここであろ?…地下でもあるんかや?」

竜人(竜もどき)の残り香というのは朧気すぎやせんかや」

 

「そこな者」

「は、はい?い、いらっしゃ…いませ?」

 

近場の一人に声をかけ、かけられた者は状況を全く理解できずに口を開く

 

「ここに地下はあるかや?」

「は、あの…」

 

「何なのよぉ…今の音ぉ…?え!何よこれ!」

 

奥から二人の男が姿を見せる。

一人はなよなよした男性だ。

その背後に居る男は目つきが鋭く瘦せこけ、ダブついた服を着ている。

 

「ちょっと!その扉どうしたのよ!ん?あんた誰よ?」

 

頭の先からつま先まで舐めるように見渡し、顔を歪ませる。

 

「あら~…これは凄い特上じゃなぁい!あんた達!なにぼーっとしてるのよ!さっさと捕まえちゃいなさい!」

 

現実離れした光景に唖然としていた男達が現実に引き戻される。

ボスの命令だ。俺達はボスに従ってればいい。

そう──考える事を放棄し従う事。そうすれば間違いない。

女性を取り囲み目を見開く。

極上の女だ。その辺の貴族の令嬢なんて比べ物にならない。

邪な感情が瞳に沸き上がり、舌なめずりをする者も居る。

 

「…本当にこの国の風は不愉快よな。先に告げておく。此方は今機嫌が悪い」

 

ポツリと意味不明な事を口にする。

しかし今はどうでもいい。どうしてやろうか。その考えだけが頭を巡った一人の男が手を伸ばす──

 

──なんだ?水?暖かい…

 

手を伸ばした男が力なく床へ崩れ落ちた。

思わず目をやると、胴体の上にあるモノがない。

 

へ?

 

それが彼の発した最後の言葉だった。

 

 

 

 

「なな、なん、な、何なのよ…あんた」

 

腰を抜かし、股間に暖かい物を感じながら叫ぶように声を出す。

気が付いたら手下達が転がっていた。

護衛として雇った六腕と呼ばれる男が剣を抜いたが同じように転がった。

何が起こってるのか理解ができない。

震えながら声を出す事しか彼──コッコドールには出来なかった。

 

「ここに地下はあるのかや?」

 

──地下。その意味を理解する。

よく見ればその首には冒険者を表すプレートが見える。

コッコドールは高速で思案する。一体誰がこいつに依頼を?第三王女(クソ女)が?

そういえばヒルマ(同僚)の畑も焼かれたと聞いた。まさか…

いや、待て、あの女はここまで大胆な行動は起こさないだろう。では誰が?

 

違う!今考える事はそこじゃない!皆殺されたが自分はまだ死んでいない。

今考える事は生き残る事。嘘は不味い。何故かわからないが──長年の経験からか、闇を生き抜いてきた自分の勘がそう告げている。

震える指を突き出し、声を振り絞る

 

「そ、そこの扉の先に、隠し階段があるわ」

 

「そうかや」

 

そう言い残すと彼女は部屋へと消えていく。

少しの間震えながら、生きている事に安堵の息を吐き出し…落ち着きを取り戻す。

この場から逃げなくては…脚が笑うのを何とか制し、顧客リストを手に走る。

圧倒的な死の気配。未だに走馬灯のように様々な記憶が頭を巡る。貴様には何時か天罰が下るだろう!死に際にそんな事を言っていた、知恵も力も無かった者も居た気がする。アレは──誰だったか。

 

「な、何が六腕よ!役に立たないじゃない!てて、天罰ですって!?ふざけないで頂戴!」

 

走りながらも彼の頭が勝手に思考を続けてしまう。もし──もしも、アレがまた来たら。

後に奴隷部門の長が金品をかき集め、王都から行方を晦ませた。

 

 

 

 

 

 

「何だ?もう終わりか?おいおい聞いてんのか?おい!」

 

振るわれた拳に虚ろな目をしながら彼女──ツアレは思い出す。

助けてくれた老紳士の事を。もう少し我慢すれば、また助けてくれるんじゃないか。

あの扉を開いて、私の元に来てくれるんじゃないだろうか。

そんな、ほんの少しの期待が彼女を生かしていた。

 

「本当はあの金髪の女を…ぐしゃぐしゃにしたら、どれだけ気持ちよかったんだろうなぁ!」

 

何度も殴打した拳とツアレを見ながらスタッファンは思い返す。

先日急に屋敷を引き払った女主人の高慢な顔が浮かぶ。

あんな上物を己の拳で殴り殺せたら…そんな想像をしながら拳を振り上げ──

ガチャリという音と共に、扉が開いた。

 

「な!?」

 

驚きの声を上げ後ろを振り替える。

そこには見た事もないような背の高い美女が──こちらを見ていた。

誰だ?どこの女だ?いや、そんな事はどうでもいい!

あの顔!あの体!最高だ!こんな玩具(ツアレ)はもうどうでもいい!

 

「おい!そこの女!コッコドールの贈り物か?さっさと服を脱いでそこに跪け!」

 

「聞こえないのか!?私が誰かわかってるのか!今から私がお前のご主人様だ!安心しろ!たっぷり可愛がってやる!わかったらさっさと脱いで──」

 

 

「醜い上に不愉快極まるぞ」

 

 

スタッファンだった肉の塊にそう告げ、虚ろな目をしたツアレに歩み寄る。

全裸にされ、顔、腹、腕、脚と殴られ続けたのか、目を背けたくなるように全身の皮膚は裂け、血が滲み、内出血で赤黒く染まっている。

 

「お主、あの執事の番であろ?答えずともよい。あれを感じる」

 

ぼんやりとした視界に女性が居る。そして今まで私を殴っていた醜い男が死んでいる。

何があったんだろうか。──わからない。からだがいたい。こわい。つらい。

わたしはどうなるんだろう。ツアレには自分が生きているのかすら、分かっていなかった。

 

「由来異なる風が重なり合うは稀に見る事ぞ。…しかしこれでは長くもなかろう。安寧が欲しいかや?」

 

何を言っているのかよくわからない。

でも一つは分かった。安らぎが欲しいか。欲しい。

 

もう疲れた。ゆっくりと休みたい。心からそう思う。

 

──だけど…脳裏に浮かぶのは二人の姿。私を救ってくれた、素敵な御方。

そしてもう一人は、故郷に残してきた妹の姿。

涙を流して馬車を追いかけてきた、そんな幼い妹の姿。

もう一度、もう一度だけでもあの二人に──

 

何も無かった彼女の虚ろな瞳には、とても、とても小さな光が戻っていた。

 

 

──まだ灯を失わぬのかや。安寧はまだ要らぬのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えい…え…えいのひたり?」

「ワムデュス殿、それは 英雄の一人 と書いてあるのだ」

「むずかしい」

 

「十三英雄の旅」と書かれた本を開いてワムデュスは眉間に皺を寄せる。

ガゼフの好意で時間がある時に彼の家でこの国の文字を教わっている。

 

「しかしフェディエル殿に比べワムデュス殿の覚えの速さは凄まじいぞ」

「ディーエと比べられても、あんまりうれしくない」

 

そんな話をしていると空中に──黒いインクを垂らしたような、黒くぽっかりと空いた穴のような物が現れる。

ガゼフが剣を取るが──そこからフェディエルが現れた事で剣を収める。

 

「フェディエル殿!?一体どうやって…!これは…魔法なのか?…!?その方は?」

 

その手には瀕死の傷を負った女性が抱えられている。

一目見て重傷だと分かるとガゼフは顔を顰め、ポーションを取ってくると言い残し部屋の外へ走り出す。

 

「だれ?」

「あの執事の番ぞ」

 

ピーンと来た。王都に来た時にお菓子を助けてくれた老人の姿が浮かぶ。

それと同時にお礼をしていない事も。

 

「ひどいケガ。長くはもちそーにない」

「ヒトの子は脆いでな。で、どうかや?」

 

その意図を察して溜息を一つ吐き出す。

傷付いたその体に小さな手が触れると徐々に血が止まり、赤黒く変色した皮膚は本来の色へ変わっていく。

裂けた皮膚の下から薄い膜の様な物が現れ、その痛々しい傷を包んでいく。

戻ってきたガゼフはその光景を目に呆然と立ちつくし──手に持ったポーションは床を転がった。

 

 

 

 

「そんじゃ、あの娼館襲撃事件はまだ犯人がわかんねぇのかよ」

 

王城の一室で大柄な女性が見た目通りな豪快な声で疑問を投げかける。

──先日、娼館の一つが襲撃されるという事件があったという。

犯人は不明。従業員の生き残りなし。客として来ていた一部の貴族や役人も死亡。

複数の"接客"をしていた女性が死亡。生き残りは保護された。

身内を殺された一部の貴族が怒りを示したが──

場所が場所だけに身内の恥として声を上げる者は居なかった。

 

「そうなのです。場所が場所だけに、時間も深夜だったようで、目撃者も居なかったようです」

 

美しい顔立ちをした王国の第三王女が困ったような笑顔で補足する。

 

「八本指の拠点だと知ってて襲ったなら狂ってるか馬鹿」

「知らなかったのなら本当の馬鹿か王国外の人間」

 

瓜二つの双子が口を開く。それに続き、仮面を被った少女が口を開く。

 

「その八本指の六腕と呼ばれる一人も死体となって見つかっているとの事だ」

「まぁ!アダマンタイト級とも呼ばれる六腕の一人がですか?」

 

王女は驚いた表情を浮かべる。

 

「そう、だから一部では大騒ぎになってるのよラナー」

 

王女をラナーと呼ぶ、整った顔立ちをした女性が続ける。

 

「ティアとティナに調べて貰った所、戦った痕跡がないのよ。まるで剣を抜いた途端に殺された。そうよね?」

 

ティアと呼ばれた双子の一人が小さく頷く。

 

「あれは戦って死んだんじゃない。それは間違いない」

「おいおい、アダマンタイト級の奴が剣を抜いた…って事はそいつにとっての敵が居たんだろ?そんな奴を瞬殺なんてできんのか?」

「筋肉、戦いは力だけじゃない。例えば魅了(チャーム)を使えば戦いにならない」

 

「おい、聞いてるのか筋肉…おい。…ガガーラン!」

 

「あー聞いてるぜイビルアイ。アダマンタイト級に魅了(チャーム)なんてそう簡単にかけれねぇだろ?」

 

まぁそれはそうなんだが…とガガーランと呼ばれる大柄な女性…女性とイビルアイと呼ばれた仮面の少女は首を傾げながらも話し合う。

 

魅了(チャーム)はないと思う。血の跡を見るに、円陣のように従業員が死んだ。何か。誰かかも。を囲んでた」

「そんな状況で魅了(チャーム)なんか使ってる暇ない…か」

「そうは言ってもよ、場所からして荒事に慣れた連中だろ?そんな奴らに囲まれて全員瞬殺して六腕を殺せる奴なんかいんのかよ?」

 

「そのような状況だと、やはりガガーランさんでも難しいのでしょうか」

 

ラナーの後ろに立っていた青年が口を開く。

その目には好奇心の色が伺える。

 

「あたりめぇだろ。俺だったら囲まれた所でぶちのめせる。だが能力もロクにわからねぇ六腕を動く前に殺すなんて芸当は無理だ」

「他に考えられるのは暗殺。中央に何か気を引くものを置いてその間に部下を殺す。そして六腕も暗殺すればいい」

 

「できんのかよ。そんな事」

「まず無理」

 

答えの出ない謎に皆が首を捻っている。

 

「他にも気になる点があるのよね。娼館の顧客リストが見つかっていないの」

 

これには全員が暗い顔をする。

顧客リストがあれば八本指と繋がりのある貴族や役人を一気に把握できるのだ。

 

「盗まれた?」

「もしかして八本指内の抗争…という事は考えられないかしら」

 

「わからないけれど、八本指の拠点の一つを誰かが潰して、六腕を一人倒したのは間違いないのでしょう?この期は逃せません」

 

ラナー王女が言葉を紡ぐ。

 

「抗争、襲撃、復讐。理由はわかりませんが、八本指の勢力が弱まっています。今動かなければ彼らは瞬く間に盛り返してきます」

「だからわざわざ俺らを全員呼んだってわけか」

「はい!」

 

「ラナー、その気持ちはわかるわ。でも、私達だけじゃ難しいのは分かってるでしょう?」

「はい!なので冒険者の方達の力を借ります!」

「そうは言っても無理よ。私達は冒険者でもかなり異質。本来国の揉め事になんて彼らは関わらないわ」

「大丈夫です!とっても優しい冒険者が居るって耳にしました!」

「おい、ラキュース。コレ、ついに壊れたんじゃないか」

「まぁ!コレとは酷いです!皆さんは聞いた事ありませんか?「黒碧」と呼ばれるチームのお話を!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椅子にもたれかかり天井を見上げる。あ、虫。

あんなでも必死に生きておるんであろうな。

この城下の多くのヒトの子よりも必死に生きておるわ。

 

この国は居心地も悪く、退屈だ。中には眩しい程の灯を持つ者もいる。

だがそれを覆い隠してしまう程度には酷いと感じていた。

 

本来ならばさっさと出て行きたいが、一応情報集めの名目で来ているし、何より今は想定外の者がいる。

ふぅーと息を吐き出し横目で見る。

服の裾を強く握って震えている、ツアレと名乗った番の片割れ。

 

「のう、いい加減離してくれんかや」

 

「ご、ごめ…ごめん…なさい。こ、こわ…怖くて…」

 

意識が戻ってからずっとこの調子だ。

変わった組み合わせの番だという事、無理やり引き離される番を見て少し不快に思った事、そして少しの気まぐれ。少し現状にイラついていた。そんな理由で助けたものの、こんなに面倒な事になるとは。

どうせなら、あの時あの執事にも一言声をかけておくべきだったか。

面白い話が聞けるかと思っていたが、ろくに会話も成り立たんとは。

 

「主の番は帝国とやらに向かったそうぞ。行かんのかや?」

 

ふるふると首を横に振る。

曰く、外に出るのは恐ろしい。人間は恐ろしい。セバスには会いたいが、とてもそんな移動は無理だと言うのだ。

ツアレが心を許しているのは現状、フェディエルとワムデュス。彼女達が助けたという事はぼんやりとだが理解しているらしい。

だが、お手伝いの老夫婦にすら恐怖を覚え、ガゼフが視界に入ろうものなら悲鳴を上げ泣き崩れてしまう。

もう一度、チラリと目をやり溜息を吐き出す。疲れた。

 

「人間は信用できず怖い…かや」

 

確かにセバスは竜人であるし、彼女達は竜である。

人間ではない者が助けた。それを感じ取っているのであろうか?

 

「うーむ、しかしこう常にベッタリされては此方も困るぞや」

「ごめ…ご、ごめん…なさい」

 

謝りつつも手に込める力は緩まない。

一応彼女も救ったのだから面倒になったら捨てる。というほど薄情ではなかった。

 

ワムデュスに助けを求める目線を送るが目を逸らされる。薄情者め。

深くため息をつく。何ならもう国ごと終焉としてしまおうか。

怖がる対象が居なければ恐怖も湧くまい。

と、物騒な事も頭をよぎるが軽く頭を振り考えを追い出していく。

 

「同種に襲われればそう思うものなのかや」

「同種、同種のう…」

 

「ワムデュスよ」

「いや」

 

苦笑してしまう。数日前にあれこれと理由をつけて外に出た。

二日ほど空けて戻ってみれば、人形のように抱き着かれゲッソリとしたワムデュスが居たわけだ。

ずっと会話にならず泣きながら寝る時すら抱かれていたそうだ。

それから物凄く冷たい目で見られたので…なけなしの金をガセフに渡し、菓子を買ってもらうよう頼みその菓子で何とか和解はしたが。

 

「そうではなくてな…主、たまに森のあれらにこっそり会いに行ってるであろ?」

「あれ、知ってた?ちょっとおどろき」

「魚臭いでな。あれらに預けられんかや?」

「うーん、どうだろ。わかんない」

 

「物は試しぞ。ツアレよ、出かけるでな」

「…え?」

「主も行くぞや。人は怖いんであろ?」

「あ…の…」

 

ワムデュスが指を一振りすると空中に青い渦のようなような物が現れる。

有無を言わさず彼女達は共にそこへと消えてゆく。

 

 

 

 

ツアレはカチコチに固まっていた。

気が付けば周りは大森林、遠くに湖がある。不思議な所。

巨大な蜥蜴人間が徘徊している。後に蜥蜴人(リザードマン)という種族だと知った。

腕の大きな個体と彼女達が時折こちらを指さしながら会話している。

一通り会話が終わったのか、腕の大きな個体がこちらに来る。

 

「おう!俺はゼンベルってんだ!おめぇ酒は飲めんのか?」

「え?あ…あ…の…」

 

ジロジロとこちらを見ている。

食べられちゃうのかな…。でも、それでもいいかもしれない。

そんな事を考える。

 

「おう!おめぇら!何見てやがる!折角久々にフェディエルが来たんだ!飲むぞ!準備しろ!」

 

その一言を聞いて和気あいあいと蜥蜴人(リザードマン)が動き出す。

大きな魚を運ぶ蜥蜴人(リザードマン)の後ろを蜥蜴人(リザードマン)の友達が楽しそうに駆け回っている。

 

「よく見たらおめぇガリガリじゃねぇか!ちゃんと食ってんのか?魚食えるか?」

 

 

 

 

その後の事はそこまで多く覚えていない。

出された食事を食べ、初めてお酒を飲んだ。

あまりに緊張と恐怖していたからか、味も覚えていない。

話を聞かせろと言われ、酔ったのもあって、少しずつ、少しずつ話した。

話を聞いていた彼らはそれが雄のやる事かと、我が身の如く怒り狂っていた。

蜥蜴人(リザードマン)の女性…が、辛かったでしょうねと言ってくれた。

ただ、そんな状況で反抗できないほど弱い貴女も悪いと怒られた。

不思議な気持ちだったけど、何だかとても暖かかった。

 

夜が明けると彼女達はここで暮らすと良いといっていた。

たまに様子を見に来るからと。

 

正直不安だし彼女達と離れたくなかったけど、それが彼女達にとって迷惑なのはわかっていた。

だから何も言えなかった。

 

「おめぇも色々あったんだろうけどよ!ここではおめぇを虐める奴もいねぇし、異種族に欲情するような変態もいねぇから安心しろよ!」

 

まぁ慣れたら勿論働いて貰うけどな、ガハハと笑い背中を叩かれて、痛かったけど、以前のような痛みじゃなかった。

その笑った顔は、鋭い牙と恐ろしい形相だったのに、不思議と恐怖は感じなかった。

遠くから小さな子達がおっかなびっくり近寄ってきてくれた。

 

そして気付いた。ここに来てから彼女達二人の服を握っていなかった。

だから、私はもう一度だけ頑張れる気がした。

手を振って消えていく彼女達にありがとうと告げて。

 

何時までも今までのままじゃダメな事は、私にもわかっていたから。

集まってきた蜥蜴人(リザードマン)の皆さんに振り返る。

 

「ツアレニーニャです。よろしくお願いします」

 

 

 





黒竜  :あいつ面倒見て
ぜんべる:あいつを?
わむ  :ぜんべるは優しいからだいじょうぶ
ぜんべる:しょうが↑ねぇなぁ↑↑

旅人である彼がトップで良かったね!
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