リーシュ妃がサドに目覚めたら   作:記憶破損

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猫猫が里帰り中の出来事です。


梨花妃とお茶会

 

 梨花(リファ)妃がいる水晶宮。そこに二人の来訪者が訪れる。普段から淡々と接していた相手から茶会の申し出がきて数刻後…迷った末に受け入れることにした。

 

「お邪魔します。今回は申し出を受けてくれてありがとう、梨花妃」

 

 歳相応の笑顔を浮かべ、この笑顔に騙された輩は何人いるのかと内心思いながら返事を返す。

 

「ええ、互いに茶会を楽しみましょう、里樹妃」

 

 返事をしてふと気づく。リーシュ妃の付人が変わっている。彼女は元々多人数の侍女を召し使うキライがある。リファ妃もまた多くの侍女を仕えさせているが、阿多妃(アードゥオ)に次ぐ人数を召し使う程ではない。

 

「ああ、侍女頭はちょっと頼み事で外してるの」

 

「頼み事?」

 

「ふふ、新しいお友達が好きそうな物をね」

 

 裏があるかを第一に考えてしまうのが後宮にいる者の宿命か、目の前の少女だからこそか。

 

 話をそこそこに中に入り、簡素な客間に通される。茶会をするには聊か物足りない部屋だが掃除は行き届いており、話すだけなら問題は無いだろう。

 リーシュ妃はリファ妃の内心を察した。あくまでお話を聞くだけだと、長居は無用だと相手側に理解させたのだ。リファ妃らしいハッキリしていると感心した。

 

「梨花妃は一段と皇帝から通りがいいそうで、羨ましいですわ」

 

 席について早々、リーシュ妃から茶会の雰囲気を壊すような発言が飛び出す。リファ妃の侍女たちは遠くからざわめき出す中、落ち着いた様子で会話を続ける。

 このような事で動揺していたら、この者と付き合いなんてできないと自覚している…させられた身として内心ため息を吐いた。

 

「助言を貰ったから、実戦しただけよ」

 

 若干顔を赤くし、あの薬師の子からの技を皇帝に披露した事を思いだした。

 

 …リーシュ妃は顔には出さないが、リファ妃の強調されたふくよかな部分を見て謎の敗北感を感じた。

 

「そう。いい助言を進言したようね、猫猫は」

 

 やや声が低くなったリーシュ妃に違和感を感じたリファ妃だったが、マオマオの名が出た方に思考を割いた。

 

「あの子の事を知っているの?」

 

「最近お友達になりましたの」

 

「玉葉妃から何か言われてないかしら」

 

「あら、お友達に理由なんていりませんわ」

 

 そんなことは無い。妃と侍女が接点を持つことに主が気にしない訳ないのだ。特に少数精鋭のギョクヨウ妃のところなら尚更だろう。

 

(あの子も好かれるわね)

 

 猫の如く留まる事を嫌い、愛着を振りまいていく存在に少し嫉妬心が湧いた。そこで気が付いた、自然とあの子の話題で盛り上がろうとしている自分に。

 

「あの子の事で聞きたい事でもあるのかしら」

 

 今回の茶会の目的はそれだろうと察した。付き人を変え、自分に気づかせた時点で話題をあの子にする伏線だったのだろう。実に回りくどいと感じ、同時にこういった手を覚えなければ不安定な立場を盤石にできないのだと、どこか哀れにも感じた。

 

「猫猫が体調を崩していた貴方にしていた事、全部知りたいの」

 

 リファ妃は白粉によって自身も子も一度失い、マオマオの治療によって復帰した過去がある。その時の事を聞くために来たのかと、一瞬新しいお友達について知りたい衝動から出た発作のようなものと考えたが…気づいた。

 

「…何でここに来たのがあの子だと知っているの?」

 

 当然ながら妃の様態が崩れた情報には規制が入る。勿論、外から見れば大まかな事情も察する事はできるが、内部の情報を知る方法は限られる。

 

「猫猫から聞きました」

 

「嘘ね。あの子は口が堅いのを知ってるでしょ?」

 

「ふふ、流石は簪を送るぐらい好いていますね。私も渡せばよかった」

 

「話をそらさないで答えなさい」

 

 一瞬考えたような素振りをしてから喋り出す。

 

「状況証拠を重ねて行った結果ですわ。下女から聞いたところ、当時は荒れていたようですね?玉葉妃から白粉の忠告を無視したとか」

 

「…ええ」

 

「その時点で違和感を感じました。玉葉妃は好学な側面をお持ちですが、侍女たちが白粉に興味が出ていた時期にそのことを発さなかった。あのお優しい方が、梨花妃だけに忠告するとは少々考えられません」

 

 白粉についてマオマオがジンシ経由でギョクヨウ妃と接触して間もない頃である。そんな事まで調べたのかと、リファ妃は改めてリーシュ妃の隅々まで調べ上げるしあんに戦慄を覚えた。

 

「次に、まあこれは説明不要かもしれませんが、梨花妃である貴方が送った簪やお話の中で特別視しているのを感じ取ったので。加えるなら、体調が悪い妃に壬氏であるあの方が何もしない訳が無いとでも言っておきます。どうでしょうか?」

 

 今までの会話も答え合わせの一つだった。物的証拠こそ無いが…あえて言っていない可能性もあるが、リファ妃はもう十分堪能したようだ。

 

「はぁ…相変わらず可愛げがないわね、あなた」

 

「これでも見た目には気を使ってるのですが?」

 

「他者の目を気にしなさい。まあ、理解した上でやっているのでしょうけど」

 

 飽きれた眼差しで見られたリーシュ妃は、どこか嬉しそうにしていた。

 

「うふふ、私にこう言ってくれるのは梨花妃ぐらいですわ。何故か他の妃の方々から避けられてしまって」

 

「…最近、官職の塒に黒い鳥が入ったそうよ」

 

「それは、それは…不吉な事でもありそうですわ」

 

 夜な夜な暗い夜に限って、黒い烏が後宮を舞っている。妃に知られている噂なら、すぐに噂を消すべきと思考する。

 

「そういうところよ。壬氏の苦労を増やしているのは嫌がらせかしら?皇帝も来たくなくなるでしょうね」

 

 軽い気持ちで言葉にしたが…聞いたリーシュ妃は真剣に考えだし、予想外な反応に動揺した。

 

「…賢い女は嫌われますか?」

 

「本気で言ってる?」

 

「ふふ、どうでしょう」

 

 呆気に取られるような笑顔見せ、殺伐とした雰囲気も無くなり、普通の茶会としてやっと始まった。

 

 リファ妃が合図を送ると、侍女が菓子や茶を用意して去っていく…その侍女はどこかリファ妃に似ていた。

 

(今の匂い…いい趣味ね)

 

 一瞬、嗅いだことがある香油の匂いにある花を思い浮かべる。皇帝の通りがいい時期にこの匂いを出すとは実に可愛らしいと感じた。

 

「ねえ、梨花妃。黄胡蝶(オオゴチョウ)ってお花を知ってるかしら?観賞用で飾られる事もあるのだけど」

 

「黄胡蝶?いいえ、知らないわね」

 

 自然な流し目で先ほどの侍女の方を見ると、その瞬間だけ体を震えていた。

 

「綺麗な花よ、梨花妃も興味が出たら調べてみて」

 

 違和感を感じながらも、歳相応に会話を始めたリーシュ妃を見て、自分も茶会を楽しむことにした。

 

  

 





 こういった、オリジナル話を今後入れます。よい方は今後もよろしくお願いします。
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