里帰りから戻った
「応接室で待ってるぞ」
それから簪について根掘り葉掘り聞かれ、何故か身元保証人にしていた武官、
ある程度時間を置き、執務室まで同行する事になった時には普段通りに回復していた。ジンシは一息入れ、聞いてもいないのに毒殺騒ぎの進行を聞かされた。
「狙われた人物だと思われるのは…徳妃だ。
「根拠はどこから」
「…徳妃本人からだ。今も聞き取りを行っている最中だが、内部犯の可能性は高い。徳妃が苦手とする物を毒に使用するなど外部では知り得ない事柄も絡んでいる」
(いいように使われてるだけでは?)
マオマオが推理になっていない報告を聞かされて、徳妃の掌の上で踊らされているようにしか聞こえなかった。
ジト目でジンシを見ると、ジンシは目をそらし話し出す。
「確かに切っ掛けは徳妃だ。だが狙われる候補者が多すぎる…捜査範囲を絞るのはそう悪い話じゃない」
うつ伏せになりながら話すジンシを尻目にマオマオは今回の事件を考える。
個人に毒物を混入したらまだしも、出される品全体に毒を混入させた今回の事件。料理人、仲居、食事を提供するまでの過程で関与した者達は真っ先に疑われた。しかし、肝心の毒物に関わる物が発見できなかった。
(口にする前に毒物を混入できるとしたら仲居だが、どっちにしろ候補が多いな)
後宮で食事を運ぶ仲居は各妃の侍女達が務める。毒物が混入していた食材を取り扱った者達に限定すれば候補も絞れるはずだ。
(毒物を扱った包など物的証拠があれば別だが処分されているだろう。その場合、理由を後付けで済まされたら終わりだ)
後宮で下女の命程軽い物はない。犯人に近づけば、代理を出される可能性も捨てきれない。
「…そもそも、徳妃が狙われた理由は?」
「知らん。それも調査中だ!」
(何も教えられなかったと)
「まあ、内部犯というのは本当だと思いますよ」
マオマオの一言にジンシ達は耳を傾ける。
「なぜそう思う」
「今回使用された毒が麻痺毒だからです。確実に殺したいなら私なら別な毒を使います」
「すぐに効果がでたら肝心の相手を狙えないからでは?」
「遅効性の毒なら症状の出ない物もあります。徳妃が苦手とするのは魚介類、特に魚でしょうか?」
「ああ、蕁麻疹が出るとか」
「私も蕎麦を食べたら吐き気が起こります。少量なら大丈夫ですが、大量に摂取すれば最悪死にます。毒として摂取するなら尚更です、強いて言えば汁物に混入していたので体内に浸透しやすい状態で、万が一徳妃が少量でも摂取していれば助からなかったでしょう」
死。その言葉を聞いたジンシ達は改めて気を引き締めた。
「偶然という可能性も捨てきれませんが、園遊会という場において皇帝を含む上級妃の命を狙うにしては確実性が足りない毒を使用したと思います」
(結局、徳妃の思惑通りに動くしか方法が無い。これを見越して壬氏様に伝えたんだろう)
「薬屋から見て、徳妃が狙われる理由は何だと思う?」
知るか…と言葉にしようとしたが、真剣に聞いてくるジンシを見て考えながら答えた。
「…可能性とするなら徳妃である
「なぜ前皇帝の時代なんだ、今も…いや、今の方が怨みを買ってると思うが?」
思念も混ざりつつ話すジンシに飽きれながら続けた。
「少なからず、苦手な物を知るぐらいには近い関係だった人物が怪しいというだけです。これも結局、徳妃の証言からの考察でしかないですが」
(徳妃が話せば楽なんだがな…)
考えるような素振りをしながらジンシはガオシュンに指示を出し、そのまま外に出て行こうとする。
「参考になった。過去の文献も調べてみる…一度、医者のところに行ってみろ」
医者?何で…マオマオの頭に性格以外は仕事もできないやぶ医者を思い浮かべ、何故今の話の流れで医者が出て来るのか疑問だった。
言われた通り、やぶ医者のところに行くと…出会って早々、泣き崩れながら迫って来るやぶ医者の相手をした。
「嬢ちゃんが来てくれて助かったよ」
「どうしたんですか」
薬棚の方へ半端連行されるように移動する。そこには、マオマオにとって桃源郷が広がっていた。
(ハクモクレン、ニッケイ、アケビまである!この瓶にはロクショウグサレキンまで!?)
「えへへ、しゅごい」
「嬢ちゃん、涎、涎」
やぶ医者はマオマオに猫耳を幻視したが、それほどまでに今のマオマオの迫力が凄かった。
「壬氏様から突然大量に送られてきてね、全てを精査し」
「しましょう!今すぐ!」
「ちょ」
マオマオの周りに毒花が舞う様に咲き乱れる幻想が次の朝日が昇るまで続いたという。
原作と違い、猫猫組は指紋では判別できない状態な為、考察の域を出ない状態で物語が進む。