第壱節:反撃(ながれ視点)
再び鬼は見えない力を指先に集め始めた。
「鬼血術──────護輪・跳撃!」
鬼は高密度の力の塊を放つ。
しかし、私は素早くそれを避けた。
力の塊は樹木に命中し、木の皮が爆ぜると同時にミシリと大きく音を立て軋む。
すると動揺の表れか、鬼が一瞬だけ、ピクリと眉を動かしたのが見えた。
その仕草一つで私は、徐々に天秤が傾いていくのを肌で感じた。
そして、それは敵も同様だったようだ。
「血鬼術──────
今度は見えない力で私は体勢を崩してしまう。
畳みかけるように、鬼は続けて「これで詰み、じゃ。」
と言って、指先を弾く。
放たれた力の塊は、不安定な体勢の中、迫っていた。
当たれば一溜まりもないだろう。
だが、二度も食らうものか。
「ねじれ渦・流流!」
私は剣技によって力の塊を巧みに逸らし、その一撃は背後に立ち並ぶ樹木に命中した。
鬼は驚愕の表情を浮かべ、私にかけていた血鬼術を解いた。
「ウム…まぐれか?吾輩の取っておきの血鬼術を二度もしのぐとは…」
「さぁ、どうだろうね」
そう言って、私は鬼を見据えながら、静かな殺意を刀に込め、再び構える。
そして、一気に踏み込み鬼との距離を詰め、刃を振るう。
刀身は曲線を描きながら光の軌跡を残し、鬼の首へと迫っていった。
しかし、鬼の首を守る見えない力が再び攻撃を遮る。
「クカカッ!おぬしの剣術では吾輩の血鬼術には敵わぬ!」
鬼は得意げに笑みを浮かべ、挑発しているが、その表情にはかすかに焦りが見え隠れしている。
そして、鬼は背後に飛ぶと、見えない力を放つため首に手を添える。
しかし私はその瞬間を見逃さなかった。
「させないよ」
私は身を乗り出しながら下から上へと刀を振り上げると、血飛沫を舞いながら、鬼の右手が地に落ちる。
「クソッ!小娘が…!」
今度は、鬼の左手が私を斬り裂こうとする。
しかし、私の間合いであれば、対処は容易い。
私は返す刀で上段から振り下ろし、もう片方の鬼の腕も奪う。
矢継ぎ早に、私は刀を握り直すと、刀身を勢いよく鬼の首へと叩きつける。
すると鬼の首はくの字に曲がり、刃は深く食い込んでいる。
「こ…むすめ…」
鬼は怨嗟の表情で私を見つめながら、最期の言葉を呟いた。
私はそのまま刀を振り切り、鬼の首を一刀両断にした。
「多少は首に斥力を残していたようだが、柱の前では微力過ぎたな」
私がそうつぶやくと、鬼の体は重々しく地に倒れ、森に静寂が戻った。
私は一呼吸おきながら、ボロボロと崩れている灰を眺め、鬼の敗北を確認した。