第壱節:救助(ながれ視点)
急いで、生存者の救助に向かう。
自身の、戦いの負傷や疲労を気にする前に、身体は動いていた。
血眼になって、茂みを進む。
するとそこには。
十代半ばの男の子が、樹木によりかかっていた。
腹部からは大量の血がにじんでいるが、意識はあるようで、青息吐息ながらも私の方を見ている。
「あの子は・・・無事でしょうか?」
と、少年は言った。
(自分が死にかけているというのに、他人の心配か・・・)
その時私の感情は、感心半分、呆れ半分といったものだった。
だが、それを態度に出すこと無く、私は膝をついて彼の瞳を直視した。
「・・・ごめんね。あの女の子は、間に合わなかったよ」
私がそう答えると、少年は唇を強く噛んだ。
(・・・悔しいんだね。分かるよ。私もそんなんばっかりだ)
私は少年の容態を脇目で確認しながらも、体勢を変えて背中を向け、彼の身体を背負い込む。
「移動しながら話そうか・・・」
隠の元までは、私が運んだ方が早いと判断した。
背負いこんだまま立ち上がり、森の中を足早に歩き始めた。
◇
第弐節:憧れ(新吾視点)
俺を助けに来てくれた人は、鱗滝様だった。
彼女の噂は聞いている。
齢十五にして、柱になった天才少女。
柱昇格の契機となった下弦の弐、
正直、無理をしすぎだと思う。
でも、そのおかげでこうして俺の命が繋がったのだから、何も言えない。
俺はふと、あの時守れなかった女の子のことを思い出した。
あの時隣にいたのが、俺でなく、鱗滝様だったら。
そんな、"もしも"を考えていると。
鱗滝様が、俺の名前を呼んだ。
「あなたが、新吾殿?」
「・・・はい」
「あなたの武勇は、私も聞き及んでいるよ。・・・よく生きていてくれたね、ありがとう」
「・・・っ!」
思わず涙が出そうになる。
俺はそれを必死に堪えながら、「ありがとうございます・・・」と返すのが精一杯だった。
それからは、しばらく沈黙が続いた。
だけども、聞きたいことが無かったわけじゃない。
でも、怖かった。口に出そうとして、何度も引っ込めた。
──────この任務で何人生き残ったか?なんて台詞は。
そんな俺の心中を、彼女は見透かしたのだろうか?
「ほら、見てごらん。君が、守り通した人たちだ」
鱗滝さんが向ける視線の先。
──────隊士が四人。
(そうか・・・俺たちの後は、誰も犠牲になっていないのか)
俺の視界は、涙で滲んだ。
冷え切っていた心に、少しだけ熱を帯びたような気がした。
灰と水、完。
灰と水編 完結です。
ちなみに、ナレ死している下弦の弐、
(十二鬼月は番号通りの実力なので当たり前っちゃあ当たり前ですが・・・)
ただ、今回の敵であった下弦の参、
(さらに言えば、乱波の血鬼術は、厭蟻の斥力操作にメタれる、というのもあります)
乱波の血鬼術はシンプルかつ強力で、
「
→高速移動
「
→空気を歩いたり、蹴ったりできる
の二つを用いて立体的に戦います。
元・忍なので、鬼になる前から強かったタイプです。