113年前の上弦   作:白澄星火

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番外編
番外編:上弦集結


第壱節:無限城(猗窩座視点)

 

享和2年 12月14日(西暦:1803/01/07)──────

 

べんっという音がしたと思えば、和風な部屋が継ぎ接ぎ状に連なる異質な空間が広がっていた。

 

遠くを見渡せば果てが無く、正に"無限"。

そして、玉壺、半天狗、さらには黒死牟が視界に映る。

 

上弦の鬼が集うなど、まさに異常事態。

一体何があったのか?

 

(まさか・・・上弦が・・・)

 

その言葉の続きが頭に浮かぶ前に、ぞわりと不快な感覚が背筋に走る。

後ろを振り向けば、見たくもない顔が否応にも目に飛び込んできた。

 

「おお~っ猗窩座殿では無いか!久しぶりだなあ!元気かい?」

 

「・・・」

 

「またそうやって無視をする。俺は心配したんだぜ?上弦が集められるなんて、それこそ理由は決まっているからなあ」

 

そう述べられた童磨の言葉。

こいつのことは嫌いだがおそらく俺と考えていることは同じだろう。

・・・心底不愉快だが。

 

そんな中、甲高い声が響いた。

 

「ヒョヒョッ!まだ顔を見せていない上弦・・・暴瀉(ぼうしゃ)はどうしたんでしょうかねえ」

 

玉壺は両の目の位置にある二つの口を楽し気に歪ませ、疑問を呈した。

さらに玉壺は続ける。

 

「私の壺を馬鹿にし、理解が出来ない食事方法をとるあの者とは馬が合いませんでしたからねえ~。このまま一生現れなければ良いのですが・・・」

 

「ヒイイイ・・・無惨様が気に入っていた玉壺の壺を、馬鹿にすることは恐れ多いことじゃ。暴瀉は罰が与えられたのじゃ。恐ろしい恐ろしい」

 

「玉壺殿の壺の価値を分からないなんて、暴瀉殿は可哀そうだねえ」

 

既に暴瀉が死んだ前提で話が進められ、この場に居ない者の話で盛り上がっている。

そんな中で突如として、押しつぶされそうな重圧がのしかかった。

 

(・・・ッ!)

 

それは他の上弦たちも同様で、ピタリと話をやめた。

そして、静寂が広がった後、黒死牟の声が響き渡る。

 

「無惨様が・・・お見えだ」

 

その言葉と共に俺は、内臓を冷たい手でわし掴みされているかと錯覚するほどの悪寒と、内から込み上げる本能的な恐怖を覚えた。

 

御出でになるのだ。

・・・我ら(鬼)の王が。

 

 

第弐節:鬼舞辻無惨

 

無限城に顕現した、長羽織を身にまとい薬の調合をする男。

一見、ただ黙々と手を動かしているように見える。

しかし、彼の赤い瞳の奥には強い不安と怒りが宿り、まるで何かに追われ、何かにすがっているように見えた。

 

そして、少し離れた場所に男が四人と女が一人。

彼らは一言も発することなく、薬の調合をする男の言葉を待つ。

 

すると、男はおもむろに口を開く。

 

「暴瀉が死んだ。上弦の月が欠けた」

 

淡々と述べられたその言葉は重々しくその場を支配した。

そして薬の調合を続けたまま、男は続ける。

 

「暴瀉はいずれ排除するつもりだった。奴は上弦にもかかわらず彼岸花の捜索そっちのけで、ただ獣のように快楽を貪っていた。だから、奴を下弦の鬼に食わせるのが良いと考えていた」

 

「左様でございますか!であれば、妓夫太郎をぜひとも上弦の陸へお願い出来ないしょうか?暴瀉を食わせることは出来なかったとはいえ、既に上弦に名を連ねても差し支えないかと。あの者はあなた様の力にきっとなるでしょう!」

 

「黙れ、貴様に言われなくともそのつもりだ。大体、これは見せしめのためでもあった。貴様らがもたもたとしていると、同じ目に合わせるとな」

 

男の言葉に怒気がこもるとともに、指先に力が入り筆が折れる。

そして、本来無限に空間が広がっている筈の無限城に、もはやどこにも逃げ場が無いと言わんばかりに、冷たい空気が満たされる。

 

「引き続き彼岸花の捜索と産屋敷の根絶やしに尽力しろ。私はそれほど気は長くないぞ」

 

その言葉が言い放たれた後、琵琶の音とともに男は姿を消した。

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