113年前の上弦   作:白澄星火

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短編・猗窩座戦
第壱話:鳴柱 常磐(ときわ)宗丸


第壱節:最速の剣士

 

鬼殺隊が結成されてから百年以上が経った現在。

 

初の上弦撃破や、早すぎる下弦の入れ替わりなど、際立った功績を残している当代の柱たち。

 

中でも主力とされていたのは、故人や現役引退者も含めれば

岩柱──────善覚

水柱──────ながれ

炎柱──────隆寿郎(りゅうじゅろう)

羽柱──────弥源次(やげんじ)

の四人である。

 

始まりの剣士の代を例外として、上記で列挙した剣士たちの実力は歴代でも上位に位置していた。

 

そんな彼らの中においても、"最速"と呼ばれる剣士が一人。

名は常磐(ときわ)宗丸。

 

齢十三で鬼殺隊に入隊し、一年後に鳴柱になった天才。

若さゆえの経験不足が目立つが、数年後には間違いなく善覚やながれに並ぶであろう人物である。

 

 

第弐節:下弦の壱 剽鼠(ひょうそ)

 

享和2年 12月24日(西暦:1803/01/17)──────

 

下弦の鬼と上弦の鬼──────。

同じ十二鬼月であっても、その差は天と地ほどある。

 

さらに、前代未聞の上弦討伐が起きた際の動揺の大きさの違いから、両者の違いは実力だけではないことが伺える。

 

上弦の鬼は鬼舞辻無惨からの発破により、一層精力的に動いた。

しかし、下弦の鬼の活動は、柱との遭遇を避けるかのように、消極的なっていた。

 

それは、下弦の壱である剽鼠(ひょうそ)でさえも例外ではなかった。

 

「俺は運が悪い・・・なんで鬼狩りが俺なんかのところに来たんだ・・・俺は繰り上がっただけなんだよ・・・」

 

ぶつぶつと独り()ちるその鬼の姿は、見る人間によっては"楽に対処できそう"と感じてしまうだろう。

中肉中背で、それほど高くない身長は、猫背な姿勢により、一層小さく見えた。

 

──────だがしかし。

 

鬼の足元には、(おびただ)しいほどの隊士の死体が転がっていた。

その光景が、男が十二鬼月であるなによりの証拠であった。

 

隊士の体は真っ二つに切り裂かれていたが、その切傷は鋭利な得物によるものというより、目の粗いやすりで削ったようなものであった。

 

そして何よりも異様なのは、鬼の周囲に、ぎりぎり肉眼で捉えられるくらいの大きさで、血のように赤黒い粒子が漂っていることだ。

 

「柱が来たら終わりだ・・・すぐにこの場所を離れて・・・」

 

そう言って、剽鼠は隊士の死体を粗雑に踏みながら、その場を後にしようとする。

 

しかし。

 

「お~い、どこ行くのさ?」

 

どこか刺々しい子供の声色が響くと、剽鼠の肩がビクリと動く。

 

そんな鬼の様子を気にもかけず、少年は続けた。

 

「このまま帰すわけないでしょう。私の大事な隊士をこんなに殺して。それと何?さっきの」

 

"さっきの"とは恐らく、剽鼠が隊士の死体を足蹴にしたことだろう。

それは彼自身も理解しているようで、すぐさま少年の方に身体を向け、跪いた。

 

「頼む・・・許してくれ!もうしないから!」

 

「良いよ。その首を差し出したら許してあげる」

 

「勘弁してくれ・・・命だけは・・・まだ死にたくないんだ!」

 

みっともなく、地面に額を押し付ける剽鼠。

そんな彼を、少年は冷たく見下ろした。

 

「ああもう、うるさいな・・・もうこr」

 

少年は、言葉を言い切る前に、突如として上に飛んだ。

 

「ちょっと・・・話してる途中でしょうが」

 

「くそっ・・・なんで今のが当たらないんだ・・・!?」

 

どうやら剽鼠は、少年の背後から攻撃を仕掛けたようだ。

もちろん、鬼と少年は向き合った状態であったため、背後からの攻撃は剽鼠の血鬼術、もしくは第三者によるもの。

真相はすぐに分かった。

 

「俺の血鬼術を簡単に・・・そうか、お前柱だな・・・!?」

 

「よく分かったね。あ、言っとくけど名前は名乗らないよ」

 

そう言って、少年は木の枝に掴まると、得意げに言葉を続けた。

 

「お前の血鬼術は、細かい粒が高速で循環する刃を生成、操作するものだろ?確かに当たれば一溜まりもないだろうね。でも、発動時の空気の動きや音が、"今から攻撃しますよ"ってくらい分かりやすいよ?」

 

「つまり何が言いたいんだよ・・・!?俺頭悪いからもう少し分かりやすくしてくれ!」

 

鬼の台詞に対して、少年は不敵に嗤った。

 

「私の"最速"の前では、"無意味"だって言ってんの」

 

いつの間にか、刀を抜いた状態で鬼の背後で立っていた少年はそう言ってのけた。

そして、鬼の首が胴から落ちる瞬間を一瞥(いちべつ)すらせず、ゆっくりと刀身を鞘に戻した。




今回敵として出てきた下弦の壱 剽鼠(ひょうそ)は元々、下弦の参だったのですが、乱波が死んで空位になった下弦の弐に繰り上がり、その後の妓夫太郎&堕姫の上弦昇格により下弦の壱まで繰り上がりました。


当初は実力も位相応に高く、期待株だったのですが、半年前に突然人間が食えなくなりました。
(響凱みたいに)

それと、盲点だったのは頭が悪いこと。
血鬼術は強力なのに勿体ない・・・

それでも十二鬼月に残り続けているのは、下弦のレベルが低いからです。

剽鼠の血鬼術は以下の通りです。
砂刃(さじん)
→砂を高速で循環させたブレードを生成、操作する

砂削進(ささくしん)
→砂を高速で循環させたドリルを生成、操作する
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