第壱節:襲来
灰のように崩れ落ちる
そして、既に息のない隊士たちの元へ歩いていき、片膝立ちの姿勢になる。
少年は、一人一人の隊士の顔を見た後、俯きがちに手を合わせた。
そんな彼の表情は、年相応のものが浮かんでいた。
悲嘆にくれる少年。
だが、水を差すように、突如として、
──────ズドン!
まるで、隕石でも落ちたかのような衝撃と、轟音が響いた。
◇
第弐節:上弦の参
舞い上がる砂埃。
それも、徐々に収まっていく。
そんな中で、"何か"が落ちた場所の中心地には人影らしきものが見えた。
対する少年の表情は張りつめる。
まるで、その人影がなんであるかを本能的に理解しているかのように。
完全に砂埃が晴れると、そこには死体のような青白い肌をした男が屈んでいた。
鍛え抜かれた彫刻のような肉体の上に、罪人の入れ墨が走るその姿は、見るものを畏怖させる。
少年も例外ではなく、じわりと汗をにじませながら男を睨めつける。
向かい合う両者の間は、沈黙が支配していたが、それを払うかのように最初に口を開いたのは入れ墨の男だった。
「俺の名は
そう言って立ち上がった入れ墨の男──────猗窩座は右に上弦、左に参と刻まれた瞳を見開く。
それに対し、少年は唾を飲み込んだ後、絞り出すように口を開いた。
「・・・私は鳴柱、
「まだ子供なのだから、強がるのはよせ宗丸。俺と戦っても勝てないことぐらい分かるだろう?そんなお前に、良い提案がある」
「・・・」
宗丸は、猗窩座の言葉に何も答えない。
そんな彼をよそに、楽し気に猗窩座は続ける。
「お前も鬼にならないか?」
その言葉に、宗丸はぎりりと歯を鳴らし、
「なるわけないでしょ。馬鹿にするのも大概にしろよ」
そう言って、前傾姿勢で居合の構えをとった宗丸の口元からシィィィィ、という音がした。
続けて、淡々と言葉を置くように。
「雷の呼吸 壱ノ型──────」
声色とは反して、荒々しい力が宗丸の中を駆け巡っているように見えた。
そして、爆発的な解放があった。
「──────霹靂一閃」
稲妻と見紛うような速度の居合斬り。
一瞬で猗窩座の背後に回った宗丸。
すれ近いざまに振るった刃には敵の血が付着していたため、それを払いつつ、彼は舌打ちをした。
「浅かったか・・・」
「いいや、見事な太刀筋だ宗丸」
猗窩座はそう言って、自身の首に走る切り傷を指さす。
言葉とは裏腹に、完全な切断に至るまで半分にも満たない傷は、瞬く間に塞がった。
「次はもっと深く踏み込んだほうが良い。だが、そのかわり俺の攻撃もお前に届くかもしれないぞ?どうする宗丸」
その言葉に、宗丸は答えない。
次の攻撃のため、刀身を鞘に納める。
それを見た猗窩座は、露骨に肩を落とした。
「雷の呼吸は、もっと型があったはずだが?またそれか宗丸」
期待外れ、と言わんばかりの冷めきった声色。
挑発なのではなく、心の底から出た言葉であることが分かる。
現に、猗窩座は一撃目を受けたことで完全に見切っているのか、余裕の表情を崩さない。
このまま進めば宗丸は容易く反撃を食らい敗北するだろう。
だが、それでも。
宗丸は先ほどと同じ型を構える。
「雷の呼吸 壱ノ型──────霹靂一閃」
二撃目の雷撃。
だが、猗窩座の間合いの外で急停止し、宗丸は日輪刀を振りぬいた。
すると、猗窩座が突き出していた拳からと四本の指が宙を舞った。
勿論、宗丸は攻撃の手を緩めない。
「雷の呼吸 参ノ型──────聚蚊成雷」
無数の斬撃が猗窩座を取り囲むように襲う。
そして、敵の真上に宗丸が移動すると、
「雷の呼吸 壱ノ型──────霹靂一閃」
自由落下を伴った居合斬り。
だが、猗窩座はそれを──────
「がっかりだ。宗丸」
そう言って、宗丸の攻撃を容易く回避し、彼の腹部へ拳を突き立てた。
──────かに見えた。
しかし、寸前で猗窩座の前腕から先は、斬り落とされていた。