113年前の上弦   作:白澄星火

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第参話:怒柱 朽葉(くちば)治郎吉(じろきち)

第壱節:乱入者

 

宗丸をかばう様に、背丈は6尺(約180cm)を優に超え、背中に大きく結ばた仁王襷(におうだすき)が特徴の男が立っていた。

 

そして、猗窩座の視線は突然の乱入者に釘付けになっていた。

 

「名前を教えてくれ。俺はお前がすごく気になる」

 

猗窩座がそう尋ねると、男は浪人(ろうにん)銀杏(ぎんなん)(くし)で掻き上げ、

 

「オイラは怒柱、治郎吉(じろきち)っつーもんよ!」

 

乱入者──────治郎吉がそう答える。

 

対する猗窩座は、先ほどとは見間違えるほど、表情に愉悦が浮かんだ。

 

「俺は猗窩座。治郎吉、お前ほどの剣士は久々に見たぞ。どうだ?鬼にならないか?」

 

「ハァ?何言ってんだお前?」

 

「やはりお前もそう答えるか・・・では、殺すしかないな」

 

猗窩座はそう言って肩をすくめる。

そして。

 

「破壊殺──────」

 

その言葉と共に、猗窩座が構える。

柱二人は直観で危険を察知したのか、すぐさま後ろに飛んだ。

 

そして、猗窩座が地面を強く踏む。

 

「──────羅針」

 

先ほどまで彼らが立っていた場所には、妖艶な雪の結晶のような紋様が浮かんだ。

 

 

第弐節:均衡

 

宗丸と治郎吉は並び立ち、敵をまっすぐ見据える。

そんな中、宗丸は強張った表情を少し緩め、口を開いた。

 

「助かりました・・・治郎吉さん」

 

「気にすんな!ネンチョーシャとしてトーゼンのことをしたまでよ!」

 

「それにしても上弦の鬼、想像以上です。速さには自信があったのですが、一回の技で見切られました」

 

「きっついなソレ・・・」

 

治郎吉は、先ほどまでの元気が嘘であったかのように、声の調子が低くなる。

 

そんな彼らを他所に、猗窩座は勢いよく飛び出す。

凄まじい速度で繰り出される拳、それを治郎吉は的確に受け止める。

 

そして、隙間を縫うように、宗丸の居合が猗窩座を襲う。

 

そんな柱二人の連携が、猗窩座に傷を負わせていく。

しかし、負傷させても瞬く間に回復され、決定打を入れることはできないでいた。

 

とはいえ、曲りなりにも、上弦の鬼と対等に切り結んでいるように見える。

 

しかし。

 

その均衡も、すぐに崩れることになる。

 

 

第参節:怒り

 

均衡が崩れる契機となったのは、宗丸の負傷であった。

どうやら猗窩座は、戦いの中で治郎吉の技に適応し、宗丸への反撃が可能になったようだ。

 

上弦の鬼である猗窩座にとっては片手間の攻撃ではあるものの、人間からしてみればそんなことは関係ない。

宗丸は腹部を抑えながら吐血し、攻撃を中断した。

 

戦力として劣る方を先に叩き、各個撃破にもっていく戦略なのだろうか。

 

残るは治郎吉のみ。

彼は、仲間の負傷に表情を一変させる。

 

だが、怒りだけでは鬼に勝つことはできない。

 

そして、一度綻んだものが崩れ切るのは、早かった。

 

「破壊殺・脚式──────流閃群光」

 

無常にも、猗窩座の蹴りが治郎吉をはるか遠くまで吹き飛ばした。

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