第壱節:時間稼ぎ(宗丸視点)
先ほど受けた攻撃は、どうやら致命傷ではなかったようだ。
1対1であの攻撃を受けていたら分からなかったが、鬼は
そんなことより、身体が大きい
でも、やられたわけじゃないはずだ。
きっと生きてる。
しぶといのが治郎吉さんの良いところだ。
だから、今の私がやることは・・・
「・・・さて、時間稼ぎでもしようかな」
あえて鬼に聞こえるように。
私は言ってのけた。
◇
第弐節:霹靂一閃・裏(宗丸視点)
私の言葉の後に浮かんだ、鬼の表情が目に焼き付く。
まるで、虫でも見るかのような目。
だが、そんなもの全く気にならない。
私は畳みかけるように、鬼を煽りつける。
「ふーん・・・そんな目もできるんだ。悪いけど、
「・・・もう喋るな弱者。虫唾が走る。お前には失望した」
鬼がそう言ったかと思えば、次の瞬間には拳が目と鼻の先まで来ていた。
(来ると分かってたよ。動きは直線的だし、やっぱ挑発はしてみるもんだ)
私は、鬼と話している最中にも、すでに技を出す準備動作に入っていた。
そして、最大まで貯められた力は、いつもとは逆方向の──────
「雷の呼吸 壱ノ型──────霹靂一閃・裏」
真後ろに飛びながら放たれる居合切り。
この技は決して、鬼の首を斬ることはできない。
それも当然。
鬼の首とは真逆に体を動かしているのだから。
だが──────
(この技であれば、私は相手が上弦でさえ傷を負わない自信がある)
なんとも後ろ向きな自信なのだろうか。
柱として、恥ずかしいとすら思う。
(でも今は、治郎吉さんが居る。あの人と私がいれば、必ず勝てる・・・!)
鬼の攻撃から逃げるように跳ねた私の体は、先ほどまで立っていた場所から、十三尺(約4メートル)ほど後ろに着地した。
「よく誤解されるけど、私の"最速"という称号はね、純粋な誉め言葉じゃないんだよ。正直、恥ずかしいと思ったこともある。でも事実として、私は柱になる前は結構逃げ腰でね。色んな人を死なせてきた。でも、この"最速"は、今この瞬間のためにあったって今なら言える」
「なるほど・・・弱者の生存戦略というわけか。やはりくだらないな。その"最速"とやらで、やることは治郎吉が来るまで時間稼ぎというわけか」
鬼は額に青筋を浮かばせながらそう言った。
さきほどの私の技で、眼球が横一線割かれたようだが、何もなかったかのように元通りになっている。
さあ、もっと怒れ。
私の