113年前の上弦   作:白澄星火

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第肆話:霹靂一閃・裏

第壱節:時間稼ぎ(宗丸視点)

 

先ほど受けた攻撃は、どうやら致命傷ではなかったようだ。

1対1であの攻撃を受けていたら分からなかったが、鬼は治郎吉(じろきち)さんとの応酬の片手間だったのが幸いした。

 

そんなことより、身体が大きい治郎吉(じろきち)さんが、あんな遠くまで飛ばされた。

 

でも、やられたわけじゃないはずだ。

 

きっと生きてる。

しぶといのが治郎吉さんの良いところだ。

 

だから、今の私がやることは・・・

 

「・・・さて、時間稼ぎでもしようかな」

 

あえて鬼に聞こえるように。

私は言ってのけた。

 

 

第弐節:霹靂一閃・裏(宗丸視点)

 

私の言葉の後に浮かんだ、鬼の表情が目に焼き付く。

 

まるで、虫でも見るかのような目。

 

だが、そんなもの全く気にならない。

私は畳みかけるように、鬼を煽りつける。

 

「ふーん・・・そんな目もできるんだ。悪いけど、(お前ら)みたいな(ごみ)になんと思われようと、屁でもないけどね」

 

「・・・もう喋るな弱者。虫唾が走る。お前には失望した」

 

鬼がそう言ったかと思えば、次の瞬間には拳が目と鼻の先まで来ていた。

 

(来ると分かってたよ。動きは直線的だし、やっぱ挑発はしてみるもんだ)

 

私は、鬼と話している最中にも、すでに技を出す準備動作に入っていた。

そして、最大まで貯められた力は、いつもとは逆方向の──────

 

「雷の呼吸 壱ノ型──────霹靂一閃・裏」

 

真後ろに飛びながら放たれる居合切り。

 

この技は決して、鬼の首を斬ることはできない。

 

それも当然。

鬼の首とは真逆に体を動かしているのだから。

 

だが──────

 

(この技であれば、私は相手が上弦でさえ傷を負わない自信がある)

 

なんとも後ろ向きな自信なのだろうか。

柱として、恥ずかしいとすら思う。

 

(でも今は、治郎吉さんが居る。あの人と私がいれば、必ず勝てる・・・!)

 

鬼の攻撃から逃げるように跳ねた私の体は、先ほどまで立っていた場所から、十三尺(約4メートル)ほど後ろに着地した。

 

「よく誤解されるけど、私の"最速"という称号はね、純粋な誉め言葉じゃないんだよ。正直、恥ずかしいと思ったこともある。でも事実として、私は柱になる前は結構逃げ腰でね。色んな人を死なせてきた。でも、この"最速"は、今この瞬間のためにあったって今なら言える」

 

「なるほど・・・弱者の生存戦略というわけか。やはりくだらないな。その"最速"とやらで、やることは治郎吉が来るまで時間稼ぎというわけか」

 

鬼は額に青筋を浮かばせながらそう言った。

さきほどの私の技で、眼球が横一線割かれたようだが、何もなかったかのように元通りになっている。

 

さあ、もっと怒れ。

私の最速(逃げ足)で、お前を躍らせてやる。

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