第壱節:終式・青銀乱残光(宗丸視点)
鬼が空気を叩くと、すさまじい速度の衝撃波が飛んでくる。
だが、それを避ける。
今度は、拳が駄目ならば、と言わんばかりに鬼の脚技が襲い掛かる。
だが、それも避ける。
回避に自信はあったが、こうして実際に上弦の攻撃を凌ぎ続けていると、思わず口元が緩む。
(・・・行ける・・・この調子で、
そう思った、次の瞬間。
「破壊殺──────」
鬼のその構えを見た時、悪寒が一気に全身を駆け抜けた。
私は鬼の技が繰り出される前に、重心を後ろに傾ける。
しかし、鬼は
「──────終式・青銀乱残光」
それは、不可避とも言える技だった。
鬼の身体から、花火のように全方向に繰り出される無数の暴力。
それに対して、防御も、回避も間に合わなかった。
私の身体の、ありとあらゆる部位の骨が砕かれ、内臓が潰れた。
(・・・これが、上弦・・・現実は甘くなかった・・・か)
鬼の技を受けて空中に投げ出された私の身体は、追い打ちをかけるように無造作に地面にたたき落された。
(・・・これはもう長くない・・・かな?でも・・・)
確かに、聞こえた。
私が知っている声。
(良かった。今の技、ちゃんと見てくれたんだ。それに今すごく怒ってるでしょ?)
私は、声の主の方を見た。
言葉にしなくても、伝わってるはずだ。
後は頼みましたよ──────治郎吉さん。
◇
第弐節:
たった今。
目の前で、仲間がやられた。
勿論、鬼殺隊では見慣れた光景だ。
"いい加減慣れろ"
柱になる前は、何度か言われた記憶がある。
だが、ある日。
"慣れなくて良い。お前の強さはきっと、そこにある"
お館様から頂いたありがたいお言葉。
これが無かったら、オイラはきっと柱になれていない。
だから──────
「よォ、猗窩座。オメェ、オイラを怒らせちまったな?オイラの目の前で、仲間をやりやがったな?絶対許さねえ・・・切り刻んでやるよオラァァァァァァァァ!」
オイラは戦うときは、思う存分感情を爆発させている。
どうやら人間は、気づかないうちに自分の力に制限をかけているらしい。
しかし、オイラの怒りの呼吸は、怒れば怒るほど、その制限を取っ払っていく。
そして、ありがたいことに。
鬼どもは、火に油を注ぐような態度で答えてくれる。
「素晴らしい・・・闘気が何倍にも膨れ上がっている・・・やはりお前は鬼になれ治郎吉!」
その言葉が合図だった。
お互い引き付けあうように、一瞬で距離を詰めると、猗窩座の拳と、オイラの刀が勢いよくぶつかる。
そして二撃、三撃・・・いや、最早数えるのが馬鹿らしくなるほどの技の応酬。
こうして戦っていると、認めたくはないが、実感してしまう。
(一回目の戦いでは、猗窩座は全然本気じゃなかった。その証拠に、技の速度も力も、段違いだ)
だが、俺も変わった。
今まで一つの型を出していた時間で、三つも出せるようになっているし、出力できる力の大きさも全く別物だ。
その証拠に。
「まるで別人のようだ。何があった治郎吉」
「五月蠅ェ!オメェはオイラに叩っ斬られるんだから、黙ってろ!」
オイラはそう言って、脇構えをとる。
「怒りの呼吸 壱ノ型──────
上から下へ、名の通り、天を衝くような一撃。
猗窩座の身体は、胸部からつむじまで、真っ二つに割けた。
「良い攻撃だ。だが、技の型は少ないようだな?それで全部か?」
傷を高速で治癒させながら、猗窩座は構えをとる。
そして。
「──────破壊殺・滅式」
その言葉の後、目の前に巨大な力の塊が、生まれた。
◇
第参節:時間切れ
力と力の衝突があった。
その衝撃は、地を揺らし、木々を軋ませた。
そしてその爆心地にいる男二人に、特段目立った外傷は無かった。
「滅式を耐えるとは・・・見事だ治郎吉・・・!」
「ハァ・・・ハァ・・・とっておきの・・・技だったかァ?悪ィな」
「ああその通りだ。だが治郎吉、お前は自身の大きすぎる力に、身体が耐えれていないようだな。このままでは死んでしまうぞ」
「その前に・・・オメェを殺してやるよ・・・猗窩座ァ」
治郎吉は、ゆらり、と身体を前に出し、横一閃に刃を振るう。
しかし突然、ピタリと刀身が動きを止めた。
「・・・クソッ・・・!」
治郎吉はぎりりと歯を鳴らした。
なぜなら、自身の攻撃は、指二本で敵に容易く止められたからだ。
「そうか・・・もう限界なんだな。では終わりにしよう。
猗窩座の拳が、治郎吉の胴を貫くと鈍い音が響いた。
続けて、ごぼり、と血の塊があふれ出す。
すると、すぐに治郎吉の身体からは力が抜けていった。
猗窩座がゆっくり腕を引き抜くと、既に糸の切れた人形は、地面に倒れ伏した。
「久々に、楽しかったぞ」
鬼の言葉には、心からの敬意が感じられた。
怒柱
ただ、時間制限付きなんです。
鳴柱