第壱節:
次に張見世で働く、はなと同年代ほどの遊女から妹の話を聞いた。
よく俺の話をしていたらしい。自慢の兄だと。自分を守ってくれていたと。
はなの死を聞いた時と同様に、深い悲しみに押し潰されそうになった。
思い出が湧き上がり、胸が痛かった。
俺は静かに涙を流した。
一粒、また一粒と涙が頬を伝い、ポタリポタリと小さな音だけが部屋に響いていた。
◇
第弐節:後悔
壊れた建物の中、月の光が静寂を照らし出していた。
埃が舞い、光がその粒子に反射される度、幻想的な輝きが広がる。
「くそ・・・意識が飛んでた・・・」
弥源次は薄暗い部屋の中で目を覚まし、吐き捨てる。
そしてすぐに体を起こすと、飛び込んできた美しい光景に少しだけ目を細めた。
しかしすぐに、現実に引き戻されることになる。
彼の眉間にしわが寄り、痛みによる苦悶の表情が広がる。
呼吸は乱れ、息を吐き出す度に苦々しい吐息が漏れる。
二の腕から下を失っており出血も多く、弥源次が無い腕を掴むような挙動をすると、手のひらは虚空をなぞった。
彼の額には汗がにじみ出ているが、次第に何かを悟ったような表情を浮かべた。
「彼女らは無事、遊郭から抜け出せただろうか?」
弥源次は自分の生死よりも、羅生門河岸の遊女たちのことを
その後、弥源次は一人薄暗い部屋の中で立ち上がる。
すると、一瞬呼吸を忘れたかのように、ハッとした表情を浮かべた。
「あの子には申し訳ないことをしたな」
俯きながら独り言ちる弥源次。
一人の高級遊女のことを思い出したようだった。
事実、彼女を危険に晒したのは他でもない弥源次である。
「結局、俺が成し得たのは、何人かの遊女を身上げするだけか」
弥源次の言葉がこぼれ、静寂だけが部屋に広がる。
◇
第参節:執念
弥源次は再び鬼たちの前に現れる。
彼の瞳は虚ろで、集中力を保つことが困難になっている様子が伺える。
弥源次はどうやっても妓夫太郎と堕姫には勝てない。
彼もそれは理解している筈だ。
ただし、鬼殺隊として、何より柱として鬼に背を向けることはできなかった。
弥源次が斬った堕姫の首は再び彼女の体にくっつけられており、残酷なまでの無常観を叩きつけてくる。
妓夫太郎は弥源次を見ると不敵に嗤った。
「俺の血鬼術は猛毒を含んでるからなぁ。お前は俺らが何もしなくてももうじき死ぬんだよなぁぁ」
妓夫太郎は弥源次に残酷な運命を宣告する。
しかし、鬼は弥源次の心までは挫くことはできなかった。
弥源次は最期の攻撃のために、限界を迎えた肉体を執念で動かし、構えをとる。
「羽の呼吸・・・陸の型──────
弥源次は妓夫太郎に向けて最後の攻撃を繰り出す。