第壱節:戦う理由
妹を守るために鬼殺隊に身を投じた俺は、最初は紛れもなく妹のためだけに戦っていた。
はなを取り戻したい。はなに幸せになって欲しいという思いが、俺を戦いへと駆り立てていた。
しかし、過酷な任務を重ねる中で、俺の戦う理由は次第に増えていった。
仲間たちの存在は俺にとってかけがえのないものとなっていた。
彼らの存在は俺に力を与え、共に戦うことで勇気を湧き起こさせた。
そして、鬼殺隊の中でも特別な存在であるお館様。
彼の優しさと励ましは、俺の心を温め、新たな希望を与えてくれた。
また、町の人々の姿も、俺にとって大きな意味を持っていた。
彼らの平和な暮らし、普通の営みは、俺にとって尊いものに映り、何かを守り抜くために闘う価値を感じさせてくれた。
俺にもあったのだ。妹以外にも暖かく照らしてくれる存在が。
◇
第弐節:弥源次の最期
弥源次は、目を閉じると、安らかな顔で最期を迎えた。
弥源次が倒れる様子を眺めていた妓夫太郎の瞳に、"ある物"が映る。
それは、子供用の髪留めであった。
鬼は物憂げにそれを見つめていた。
◇
第参節:抱擁
「お兄ちゃん!」
聞きなれた女性の声で弥源次はハッと目を覚ます。
声の主は覗き込むように彼を見つめている。
女性の姿を見て、弥源次は涙を流し、彼女のことを息が止まるほど、ギュッと抱きしめる。
彼らは互いの引き離された時間を埋めるように、存在を確かめ合う。
「ごめんなさい!私、自分で命を絶ったの・・・お兄ちゃんが助けようとしてくれていたのに・・・」
「謝るのは俺だ。遅くなってしまって、はなを苦しめた・・・ダメな兄貴でごめん・・・ごめんな・・・」
「そんなこと言わないで。私のために頑張ってくれたこと、上からずっと見てたよ」
はなはそう言って、弥源次の体を一度離し、彼と顔を見合わせた。
それに応えるように、弥源次ははなの瞳をまっすぐ見つめた。
「離れ離れで全然守ってやれなかったけど、これからはずっと一緒だ」
そして、もう一度、今度は包み込むように抱きしめる。
白く美しい景色の中で、彼らは時間を超えて再会し、過去の後悔や喪失感を埋め合った。
◇
第肆節:微笑みの中で眠りにつく
街は静寂に包まれていた。
遠くから風の音や遠吠えが聞こえるだけで、それ以外は静かな夜の寂寥が漂っている。
妓夫太郎は戦いの疲れを癒すために堕姫の中で眠りに就こうとしていた。
彼は堕姫に寄り添いながら、穏やかな夜の中で思いを巡らせるよう、夜空を見上げる。
「堕姫、お前は鬼になって幸せかぁ?」
妓夫太郎は静かに問いかける。
すると、堕姫は優雅な微笑を浮かべた。
「幸せよ。だっていつまでも美しいままでしょう?」
堕姫の言葉には心からの喜びを感じていることが伝わってくる。
それを聞いた妓夫太郎は満足げに笑みを浮かべ、眠りに就いた。
遊郭に舞う、完。
遊郭に舞う編 完結です。
113年前の上弦討伐より、時系列的には少しだけ後の話です。
ちなみに、なぜこの話を最初に持ってきたかといいますと、個人的に好きだからです。