第壱節:増援到着
「水柱 鱗滝、ただいま到着しました」
自らをそう名乗った隊士が現れると、鬼殺隊の隊士たちは安堵の表情に包まれた。
背丈は五尺八寸(約175cm)ほどで、体つきはしっかりとしているが、声質や身体の曲線から女性ということが分かる。
青を基調とし、波の形をかたどった柄の上に雲の模様が描かれた羽織を身にまとった彼女の存在は、隊士たちからすれば温かく包み込む母なる海のように見えただろう。
とは言え、左腕は添え木をあてがい、それを包帯で巻いた状態で吊っており、万全では無いことが伺える。
「遅くなって、本当にごめんなさい」
「いいえ、水柱様、よくぞ来てくださいました。本当にありがとうございます。俺たち・・・怖くて・・・怖くて・・・」
「あとは私がやるから、みんなはもう休みなさい」
「水柱様、隊士は見えない力によって、みんなあちらの方角へ連れてかれました。どうか・・・助けてください・・・みんなを・・・」
「うん、柱として、力の限り尽くすよ」
水柱はそう言って、闇の中へ足を踏み入れた。
◇
第弐節:戦地へ(ながれ視点)
昨日、十五歳の誕生日だった。
それと同日に、柱になった。
皆は、この歳で柱になった私を天才だと持て
でも、蓋を開けてみれば皆と同じだ。
死地に近づくにつれ、胸がぎゅうっと張り詰める。
時には逃げ出したい、と思うこともある。
昔から私の中身は変わっていない。
でも、今この瞬間にも鬼に苦しめられている人は絶対に助けたい。
片腕が折れていようが、関係ない。
私は無理矢理、自分を奮い立たせる。
しかし、心のどこかでは、不安が渦巻いていた。
◇
第参節:地獄(ながれ視点)
森の開けた場所に到着し、目に飛び込んできたのは地獄のような光景だった。
地面には血だまりが広がり、隊士の死体が散乱していた。
微かな望みの中で、生存者を探していると、肩がわずかに上下しおり、まだ息がある隊士が目に入る。
私は隊士の近くに移動し、片膝立ちになった後、彼女の体を抱きかかえる。
しかし、彼女の傷と出血から、そう長くないことを悟る。
すると、彼女は最期の願いを告げるべく、私の袖をつかんだ。
「水柱・・・様・・・まだ生きている隊士がいます・・・だから私なんかより、どうか・・・あの子を・・・」
弱々しく、消え入りそうな彼女の声には、一途な願いが込められてる。
そして、視線の先には、血の跡がぽつぽつと、茂みの中まで伸びていた。
彼女は私に願いを告げると、満足したように笑みを浮かべ、静かに息を引き取った。
私は彼女の瞼に手を添えた後、祈りを捧げた。
彼女の死を悼んだ後、早速茂みの中に向かおうと、立ち上がる。
その時だった。
茂みへの通り道を遮るように何者かが現れる。
音もなく現れた"それ"は、口元から鋭い牙を覗かせており、紛れもない鬼であった。
また、十二鬼月という、鬼の上位層である証として、瞳には下参という文字が刻まれていた。