「あ」
何故。
「あ、あ」
母ちゃん。
「ぅあああ」
顔が。
「うぎゃああああ!!?」
無いんだよ。
「ぎゃあああああああ!!!」
全霊の力で家から飛び出す。
硬直した脚を無理矢理に動かす痛みを無視しながら…逃げ出した。
「はぁはぁはぁぐっぅあぁ!」
振り向いた母の顔は…優しくなくて。
喜怒哀楽も無く。
何も無かった。
眉も、目も、鼻も、口も。
とんでいた。
真っ白な真っ新な顔。
そんな母の顔でないものが……母の声を使っていた。
それを……思い出すだけで。
脳髄がぐるぐるぐる廻る。
心臓が裂ける痛みが身体中に広がる。
手足が末端からキリキリ冷える。
駆ける足が沼の中みたいに重くなる。
逃げなくては!
早く、此処から!
何処かへ!
アレの居ない所へ!!
いつしか…森を抜け、街を抜け、影る何処か、闇の中を一人駆けていた。
無茶苦茶に走り続けていると……前方に微かな光が見え始めた。
「はぁはぁ!!誰かーーぁー!!!」
「水木!こっちじゃ!」
光の中から声がする。
「親父ぃ!」
躊躇なく光に飛び込む。
目を開く。
「うおぉ!!」
飛び込んだ勢いのまま、身体を起こした。
「水木!」
「……ぁあ、はぁ、うげぇえ…」
……病院の固い床の上…で目覚める。
目眩が酷く世界が歪んで見える。
「はぁ、はぁ…………に…げ切れたのか…?」
「ああ!もう大丈夫じゃ、水木!」
「………はぁ…良かった…」
「奴の姿は見たか!?」
「…んあ、げほっ!ああ見た…ぅ…見たよ」
「どんなじゃった!?」
「顔が、顔が無かった…」
「……顔が無い…」
「それと、そして、とても怖かった…こわい…」
目覚めたというのに、心臓の痛みも末端の冷たさも足の覚束無さも治らずに。
白く明滅する視界の中、一人震えていた。
「そうか、そうか。分かったぞ!奴の正体が!」
「……はぁ、はあ……げほっ…けほ…なんだ…?」
「まぁ、落ち着け…まずは深呼吸じゃ。鬼太郎!何か飲み物を持って来てくれ!」
「はい」
「いや、いい、大丈夫だ…ごほっ…それより、奴は、彼奴は何なんだ?」
「そんな顔色で大丈夫な訳あるか!今は、呼吸を整えるんじゃ」
「はい、みずき、おみず」
小さな手の中の透明なコップには水が波々と入っていた。
「…けほっ…………す、まんな鬼太郎」
受け取って、一息に飲み干す。
ぐぐくっ!!!!?!!!
「ぶばぁっっ!!」
思いきり鬼太郎の顔に向けて水を吐き出してしまう。
いや、違う。
いや、水じゃない。
水じゃなかった。
血。
温く、苦く、腐った、滴る血液。
不味い。
辛い。
不味い。
苦い。
気持ち悪い。
「うげぇええぇ!!」
こんな物……金輪際…要らなかったのに。
どれだけ叫んで、吐き出しても、口の中に錆びた鉄が粘り着いて離れず。
「ねぇ」
鬼太郎が呼ぶ。
「ねえ!」
鬼太郎が大きく呼ぶ。
「けはっ!うげっ!!………うぅぅ…きたろぅ?どうして……うぇぅえ!!」
「ゆめ、の、なか、の、やつ、の、かお、っ、て」
鬼太郎の…大切な友の子の………血に染まる髪が、肉のへばりついた頭が、ゆっくり、と持ち上がる。
「…ゃめろ…」
「そ、れ、っ、て」
血肉だらけの顔を見せよう、とする。
「やめてくれぇ!!」
「こ、ん、な、か、お、かい?」
赫いドス黒い顔には、なんの表情も無い。
部品も無い。
全て抉られ、毟られ、潰されて、奪われていた。
「こ、んあ、ぁかおぉーーーー!!?!!」
「ぅぅうわ、ああああ、ああああああああ!、!!」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
目を開く。
「あああああ!!!!」
あああああ!!!!
「うわっ!どした、水木!?」
「ああああぁああ!!」
あああああぁあ!!
「おい!しっかりしろ!!」
「あああああああ!!」
あああああああ!!
「クソ!!正気に戻れ!!!」
ビビビビビ!!
「……ぁ……ぁ」
「はぁ!良かった!静かにはなったな!」
「おい!水木!大丈夫か?!」
「俺が分かるか?!」
誰かが回る世界の中にいる。
其奴が何か言ってる。
何だ、お前。
誰だ、お前。
何処だ、俺は。
「……ありゃあ…目の焦点があってねぇや…」
「…恨むなよ、水木、こん野郎め!」
ビビビビビビビビビビビビ!!!!!!
パチパチ、爆ける。
白く、眩しく、視界が点滅する。
散らばった意識が、ぐちゃぐちゃのまま纏められる。
頬が熱い。
それだけが分かる。
熱い。熱い。熱い!熱い!!
それだけ感じる。
痛い!痛い!!イテェ!!
ヤメロ!!
ヤメロ!!!
「ヤメロ!!馬鹿野郎!!」
ボコォん!!
しつこく頬を打ち付ける馬鹿の顔面を殴り飛ばした。
「ウゲェ!!!」
「……やりやがったな!!この気狂いがァ!!!」
ゴシャア!!!
鼻面が爆発する。
鉛でも食った様な異様な味が口に広がる。
ぐーーー、と鼻の奥まで鉛の匂いが突き刺さる。
「ぐきゃ!」
鼻と口に冷たく、熱い、液体が、噴き出る。
そして、頭に、それがブチ登る。
「ぐぞっだれぇえ!!」
ゴシャアア!!!
「ぐおおお!!」
…………その後、何発か鉄拳の応酬を続けて…俺も相手の野郎も…泥の上に仲良くひっくり返った。
……顔が二回り大きくなっているのが涙の感触で分かる。
「ぜぇはぁ…いてぇ…」
「ひぃがぁ………ぐっぅう」
「「…………何だって…こんな目に……」」
…………どのクチがァ!!!
「五月蝿ェ!!テメェが言うな水木!!」
「アァ!?テメェが最初に殴ってきたんだ、ろう…が……」
「や…まだ…」
相手の野郎。
俺と一緒に泥の中にいる、男。
斜めに歪んだ眼鏡をそのままにして俺を睨みつける、男。
その顔を、よく知っている。
よく覚えている。
忘れた事など無かった。
其奴は……其奴は……………彼は……知人だった。
友人。
友人だった。
男の名は。
山田、と言う。
「………お前、どうして此処に…」
「何を言い出してんだ…本当にイカれたか?」
「………」
泥の中、必死に辺りを見回す。
……此処は……。
「まさか此処が何処かも分からねェとは言うなよ」
「此処は………………」
………………………
「………いや、言えよ。全く………」
「…正気に戻って残念だったな!!テメェが居んのは地獄の糞溜めでござぁい!」
此処は。
此処は、あの、熱い、アツい、戦場のど真ん中。
其処に俺は還ってきていた…。
「や、まだ……すまん、すまない……許してくれ」
「おっ、漸く自分の馬鹿さ加減に気づいたか!遅えわ!バカ!」
「すまない。すみません」
「……ん…なぁ、お前、大丈夫か?何時もの元気は何処いったよ…」
「………」
「……まっ、こんな処にいりゃあ…そういう時もあるか…」
「…」
「おい、元気の無いところ悪いが…そろそろ移動するぜ」
「……ぁぁ……」
泥の中、二人の男が、ぐらぐら、と頼り無く立ち上がる。
立ち上がって直ぐに、叢の中を蛇の様になって移動を開始した。
ポーーーーー
ポーーーーーー
ビーーーーー
正体不明の鳴き声が、ジャングルのそこかしこから聴こえる。
「……………」
「……………」
先導する山田の泥や汗の染みた汚ない背中を、ぼぉ、と見つめながら…摺り足で進む。
「……………どこまでいくんだ…」
「……さっき言ったろ…この先に穴蔵があんだよ」
「なんでわかる」
「……先生が前に教えてくれた…」
「……せんせい」
あぁ、ねずさんか…。
「もう少しだから…余計なお喋りは止めろ」
「…ああ」
パキパキ、ズズズズ
ズズズズ
草木を踏みつけながら…黙って…足を運ぶ。
「………あっこだな」
「…………」
本当に少ししたら…地面に空いた…穴が見えた。
………穴………いや……周りの木々が薙ぎ倒されている…のを見れば…そこが着弾地点の残骸であろう。
「……こんな所で大丈夫なのか?」
「大丈夫な所が無ェんだから…そんな事考えるだけ無駄だろうが」
…道理ではある。
安全地帯は…命を支払わなくては辿り着けない。
「とにかく。俺ァ眠いんだ…あの穴なら…涼しそうだしな」
「…分かった…分かったよ。行こう」
「おう……目が覚めてきた様だな…寝坊助くんヨ」
「すまない…」
「………どうにも…夢心地だな、水木ィ」
一応、辺り一帯を観察して敵や獣の痕跡を探した。
………しかし、何も居ない。
何の痕もない。
…………何もいなかった。
まるで、ここには俺達しかいないようであった。
…気が済んだ俺達は穴の中へ。
奇跡的に良い具合で出来た穴蔵は快適…とまで言えないが…外よりはマシだった。
「どっこいせっと………はぁ〜」
「………」
「あむ」
クチャクチャクッチャクチャ
山田の咀嚼音が穴蔵に響く。
「……何、食ってんだ…」
こんな所で。
「知らん。ここにあった。多分、何かの根っこだな」
「……腹壊すぞ」
「これ以上壊れたら返品だ」
「…………」「……食うか?」
「いや…いい……腹、減ってない」
「笑えねぇ冗談だな」
「…………」
「はぁ………ところでよ。さっきは如何してあんな風になったんだよ?」
「無駄な正気さが唯一の取り柄だったじゃねぇか」
「……………夢を見ただけだ」
「どんな?」
「……言いたくない……」
「人を散々殴っといて、そりゃねえだろ…」
「それは悪かった…すまない…」
「おう、済まないな。何の夢を見たか言うまで…全然済まないぞ、この話は」
「…………………」
「…………………」
「………言う…言うから…黙って見つめてるな…」
「やる事ねぇんだから…さっさとつまらねぇ話くらいしろってんだよ」
「……化け物が出る夢だ」
「子供か…お前は」
「…其れは…其の化け物は…顔が無いんだ」
「……?首が飛んでるのか?」
「いや、頭は付いてる……ただ、顔の目や口が無いんだよ…」
「…うん?……あっ、『のっぺらぼう』か」
……………は?
「『のっぺらぼう』?」
「違うのか?」「違うってか…知ってるのか?」
「何が?」「今、言った化け物だよ!」
「何で怒ってんだよ…有名じゃねぇか…昔話やら落語やら怪談話やらで聞いた事くらい、お前もあんだろ」
「………いや…そん、な妖怪……」
「そんな訳あるかヨ。だってお前さ、よく婆ちゃんから妖怪の話を聞いたって言ってたろ」
…………ああ。
うん、よく聞かせてくれた。
のっぺらぼう…………。
知らない。
のっぺらぼう………?
知らない?
のっぺらぼう。
いや。
のっぺらぼう!
確かに。
のっぺらぼう!!!!!!
俺は知ってる。知っていたとも。
何故か忘れていた。
今の今まで。
どうやら、頭ん中を弄られていた様だ。
………………くそ。
…………あの。
クソッタレがぁあああああああああ!!!!!!
巫山戯やがって……!!
よくも!!よくも!!!よくも!!!!
母ちゃんと鬼太郎の姿を使いやがって……………。
アノ腐れ外道がぁっ!!!
「ブッ殺してやる!!!」
「急に何だァ!!!?!」
「あっすまん。いや…ありがとう。山田」
「ど、どういたしまして?」
「………久しぶりに会えて良かったよ…」
「……あ?」
「ありがとう、そして、
「……???」
「だが………この命…大事に大切に使わせてもらうよ」
「………また、近いうち逢おう」
「…はぁ…」
「じゃあ、行ってくるよ」
「……行ってらっしゃい?」
亡くした友を…また、置き去りにして俺は穴蔵から飛び出した。
「メヲヒラケ」
ひしゃげたラジオの音声…が…世界に響く。
……凄まじく癪に障る声だ。
「見つけたぜ、糞馬鹿野郎!!」
「……………」
万華鏡の中の様な極彩色の光景の広がる…目に悪い空間。
そこで俺は、のっぺらぼうと対峙した。
野郎は丸裸であった。
人間と同じ様な姿ではあるけれど…細部を見れば……足りない。
人間として…決定的に足りない。
毛が無い。目が無い。鼻が無い。口が無い。耳が無い。爪が無い。臍が無い。性が無い。皺が無い。熱が無い。張が無い。艶が無い。気が無い。影が無い。音が無い。
何一つ、生が無い。
まだ、マネキンの方が…余程、人間らしかった。
人型の肉。
それが俺の前方に佇んでいる。
「オイ!!一刻も早く皆んなを解放しろ!!」
「モウ、サラノウエダ」
また、世界…いや夢の中に響く。
「じゃあ、テメェをブチのめして止めるだけだ!!」
気炎を上げながら野郎に向かって突撃する。
「………」
「…ふゥ…っ!!!」
奥歯を噛み締めながら…爪が食い込む程、固めた拳を振り抜く。
奴は避ける素ぶりすらしない。
フワッ
全力の殴打は、しかして、空ぶる。
…奴をそのまま通り過ぎて。
「…つっ!」
「サラノウエ。オマエモ」
畜生!
奴を見つけたと言うのに!
打つ手が無いとは!!
「………」
睨みつけながら…左手首の時計を確認したが、何も巻き付いていない。
「フエハネムラナイ」
……読まれてる。
………………読んだ?
……………いや、待てよ。
「オイ、テメェ
これは一種の賭けであった。
「…………」
黙った。黙った!!
失策の無言は賭けに勝った事を教えてくれた。
「ふ、ふ、フフフフハハハハハハハ!!!!」
奴は読んだんじゃない!
行動も!思考も!
読めない!!
頭ん中を覗けない!!
ならば!!
そうなりゃあ!!
俺の心が分からぬなら!!!
今までの夢も、奴の見せたものじゃあない!!!
俺の夢だ!
俺が描いていた夢だ!!
…俺の夢に便乗しやがっただけだ!!
「
「そうか!テメェ!!!
「
「へっ!ザマァ見ろ!!間抜けがァ!!」
「…………」
「ダカラ?」
「あ?」
「ダカラナンダ?」
「ドコニイルカ、ワカッタカラナンダ?」
「ムノウ?ダガ、ココニ、トジコメルコトハデキル」
「デハ?」
「ナニガ?ナンノイミガアル?」
「オマエハ、ココデ、チソウニナルダケダ」
「ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ」
抑揚の無い笑い声を上げる、のっぺらぼう。
……………………クソ………。
奴の言う通り、此処から脱出…もしくは、この事を親父達に伝えねば…何の役にも立たぬ。
「ドウシタ?イセイハ?モットアガケバヨイ」
「コノクニノコトバデイウ、マナイタノコイ、ナ、オトコヨ」
「………」
起きなくては。
目覚めなくては。
「デハ、チョウリニハイロウ」
スパン!!
左脚が抜けて、転ぶ。
脚に力が入らない。
冷たい。濡れている。
脚を見る。
…………左の、膝から先が、転がっている。
大量の血液を流しながら…分たれている。
それを確認した……脳は…律儀に…痛覚を拾い上げた。
「ぐぅっううぁぁぁぐぅくくくくくぎぎぎぎ」
悲鳴を歯と腕を噛み締めて押し殺す。
もう、奴に聴かせたく無かったからだ。
「ふ、んふんーーんふん」
奴は態々、鬼太郎の声で鼻唄を唄いながら…此方に近づいてくる。
心臓と血管が爆発しそうな音を出している。
どれだけ踏ん張って、這いずって逃げ出そうとしても。
身体は言う事をきかなかった。
「ふ、ふ、ふーんふーん」
「ぅぅぅぅくくぅぐく」
「ふーんふーんふん」
「あ゛あ゛ぁ!!五月蝿え!!そ…の声で!下手な歌を歌うなァァ!!」
「け、け、け。痛そうだねぇ」
「お前がやっだんだろがぁ!!」
「怒らないでよ。こわい。こわーい」
感情の一切無い声で話しながら、転がってる俺の脚を拾う。
………何する気だ。
「さっき、僕の事、無能って言ってたねぇ」
「……ぞ…う、だろうが…」
「馬鹿だねぇ、水木は。夢を見せる事は出来なくても………夢で暴れるし、脅かせるし、お前達を
「それに僕には心は読み物じゃあない」
「食べ物だから、ね」
「…………ぅぅ、ぅ」
「あっ!ちゃあんと聞いてよ!!」
ぱチョン!!
………奴は持っている俺の足だった物を地面に叩きつけた。
…そんな事して何の意味が……………あ。
あああああああああああああああぁぁあああ!!
「ぐわああああああああああああああ!!!」
「うん。いい声!」
何故!なんでだ!!
もう、切れている方の痛みを。何故!俺が感じれるんだぁ、っ!!!
「言ったでしょ。夢ならでは。
ぱチョン!!
「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」
痛みは重なって響く。
慣れなんて訪れない。
際限なく激しくなる。
痛い痛いいたいいたいいたいいたいいたい!!!!!
神経が焼き切れる…様に感じるだけで。
神経は切れない。
そんな柔じゃない。
痛覚を丁寧に脳に送ってくる。
ぱチョン!!
ぱチョン!!ぱチョン!!
ぐちょぐちょぐちょぐちょ!!!
いっそ、気を失ってしまえば良いのに。
いっそ、眠ってしまえば良いのに。
完全な正気は揺るがなかった。
ぱちゃ!ぶちゃ!
ぱチョン!!ぱチョン!!
ぱチョン!!!
「ふぅ、結構重いや。疲れちゃった」
べちゃ
奴は脚を投げ捨てた。
「…ぁぁ……きゃ…ぐきゃ…ぇぇ…ぅひゃ……」
悪態をつく声も失ってしまった。
「だらしないなぁ……静かになって良かったけれど…」
「そうやってれば…ちゃあんと、食べるからね…大丈夫!お残しはしないから!!」
「水木の魂は食いでがありそうだなぁ!!」
くねくね踊る、のっぺらぼう。
「……ぅげぇひゃ……」
腹の中を吐き出した。
「汚いなぁ」
「………ぁぅい」
「うん?何て言ったの?」
奴を手招きする。
「何々?」
俺の顔の前まで来る。
「……げはっ……ひゅぅ…ひゅう……」
「頑張って!」
「…ごぅ……いっだん…だ…」
「でめぇ…ぉ……べだな……おどりの…ぜいだ…」
「…………………………ふぅん」
「ぐばぁ……ひゅ…」
「そんな事、言って良いんだ?」
「……いい……さ……うしろを…みろ…ばぁが!!」
「辞めよ!!くらし者ぉ!!」
ボゴォンン!!
「きゃあっ!!」
のっぺらぼうの顔面を殴り飛ばしてくれたのは……枕返し、その人だった。
ご拝読ありがとうございました。