Nizガミンサーガ   作:PureFighter00

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はい、構えて。安全コール行きましょう。
「今日も1日ご安全に!」
「「「おう! ご安全に!」」」


新規入場者講習

無策な冒険者は冒険と無謀を履き違えてコロッと死ぬ。これはダンジョンの掟でありゴブリンスレイヤーの世界でもNizガミンでも「祖たる地」リルガミンやミスタラやネバーウィンターナイトでも──どこでも同じだ。恐らく、本作を読むあなたの世界でも。

 

と、言うわけでNizガミンでは、なろう系吟遊詩人のご都合主義英雄詩に頭をヤられた新人冒険者に対する新人教育を励行している。費用はタダだが価値は高い。彼らはすぐに「経験や情報こそが真に価値あるものである」と気付かされるだろう。

 

「組合長のベッセルです。ロードをやっとります。さて、今日から皆さんは「狂王の遺跡」にチャレンジする訳ですが……まず最初に申し上げる事は【初戦は全力で行け】です。次の敵の為に魔法を温存して……とか、たかがコボルドと侮ってはいけません。

ダンジョンに降ります。降りると真っ直ぐな廊下があり、少し進むと右手にドアがあります。運が悪いとドアに辿り着く前にワンダリングモンスターに出くわしますが、ワンダリングモンスターと戦ったらすぐに引き返して全員の体調確認。全くの無傷ならまたダンジョンに降りて「最初の扉」を開けに行きましょう」

「最初の扉にこだわるのは何故ですか?」

「いい質問だね。扉を開けるとそこには必ずモンスターが居て、扉を開けた先のモンスターは必ず宝箱を守っているからだよ。このモンスターを玄室モンスターと言います」

「宝箱か……腕が鳴るな……」

「で、宝箱開けたくなるのは人情だけどちょっと待て。もしも玄室モンスターとの戦いで傷を負ったりしていたら【宝箱を開けるな】 これは強い言葉で使わせて貰うが、宝箱はこの先ダンジョン潜り続ければ千や万の単位で開けることになる──いいか、最初の宝箱開けて毒針で死亡とかマジでやめろ。

特に名前は秘するが、私がこのダンジョンの攻略始めた時……最初の玄室に7〜8名、その先に4〜5名くたばってた。その死者の所属する一党の生き残りがウチに救助を依頼してきたのが冒険者組合発足のに繋がる」

「そんなに……」

「敵はこちらを殺しにきてるんだ。当たり前だろう? 今の君たちは訓練所で用心深く訓練して高いステータスを誇っていると思う。そこの君はサムライか。頑張ったな」

「いや、それほどでも……」

ベッセルはここで破顔する。実にいい笑顔だ。

「そう、それほどでもない。サムライだろうが忍者だろうがなりたてのペーペーで幾千幾万の死体を積み上げていないのであればただのニュービーに過ぎず、我々と同じ迷宮踏破人ではない。諸君にある厳然たる事実を教えよう。君たちがこれから赴くダンジョンで最も強い生き物が居る場所は何処だか分かるかね?」

「さ……最下層……かな?」

「いや、もう君たちはそこに足を踏み入れて危険も感じずキャッキャ騒いでいた──ギルガメッシュの酒場だよ。あそこで和やかに談笑してた十数人の連中が1番強いだろう。今4チームほどダンジョン探索で潜っているし、その中の6人ぐらいは私より強い」

新人たちは生唾を呑んだ。

「今は私も装備外して楽にしているが、それでも今の君たちでは私に勝てない。そんな彼我の戦力差もわからない、気付けないど素人がダンジョンに潜るんだ……そりゃまぁ、死ぬ。あっさり死なぬ様に比較的安全な【教室】で鍛えても良いが、そこでレベル上げても「どの敵がどの程度強いのか」を知らなければやはり死ぬだろう」

「し……死なない様にするにはどうしたら……」

「実家に戻って畑でも耕せ。でもそれはやりたくないからここに来たのだろう? ならば私が言えるのは一つだけだ。

畏れを維持しろ。常に敵は自分たちより強いと思っておけ。楽に倒せたからと驕るな。もしかしたら今倒した敵も何か凄い攻撃方法持っていたのに繰り出す前に死んだのかもしれない。たまたま弱い個体だったのかもしれない、下痢で弱っていたのかもしれない……いつしか君たちが迷宮の隅から隅まで踏破して、これぞ迷宮の主と確信できる敵を有無を言わさず打倒できる様になった時に初めて「一回畏れを解いても良い」でも、一回だぞ?」

「何故一回なんですか?」

「言ったじゃないか。ダンジョン最強生物は我々自身だと。その我々と戦える場所がある。必須ではないがね」

「……せっ……先輩冒険者と戦える……」

「正解にはドッペルゲンガーの様なコピーだがね。レベル3000を超える忍者やサムライの諸先輩方の胸を借りることが出来る」

 

まぁ、このモンスタークローン兵との戦いが実に酷い。レベル差があると一方的に先制されてパシュンパシュンと首が飛ぶか爆発四散し、その仲間を魔法で蘇らせてまた殴り……の壮絶な泥試合をやる羽目になる。

 

「最後に一つ、忠告をしておこう。この迷宮のどこかに君たちが人間やエルフやドワーフである事を辞めることが出来るアイテムがある。或いは迷宮踏破を続けて行くならば必須のアイテムかもしらん。

閾のナントカという話を目にしたら、良く考えるんだ」

「人間を辞めるとどうなるんですか?」

「エルフやホルビトやノームを辞めて、まごうことなき人外になる。ひたすら強さを求めるならば人外になるべきだろう。が、我々冒険者組合では人外を監視して必要とあれば滅ぼせる様に各自研鑽を積んでいる。人外は既にダンジョンの中を闊歩する魔物と変わらない。自分たちが本当に求めているものが何で、自分たちがどうあるべきかを良く考えた上で決めた方が良い。この件については組合員なら真摯に相談相手してくれるだろう」

「……大切な事なんですね」

「とても大切な事さ。死さえも超えることが出来る世界で、数少ない【引き返せない】選択だ」




ゲームに緊張感が無くなるんよね。戦いを楽しみたいなら閾の調律はしない方が良いとは思う。戦闘以外に楽しみが見出せるなら調律してもいいし、すると今度は狂王+5とかがかなり強敵であり続けてしまうし。
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