元レガ主のワイ、二度目の転生はケモ耳美少女だった件   作:アルティメット穢れた血

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 今回は幕間的なエピソードなので短めです。

 イッチの存在により原作とはちょっと異なる形で破滅への序曲を歩み始めるナイツ・オブ・ラウンズのお話し。



揺れる円卓

「あ、あり得ないっ!

 わずか数年でラウンズが2名も死亡するだと……!?」

 

 

 『ディアボロス教団』の最高幹部『ナイツ・オブ・ラウンズ』――

 その第十席ペトスが何者かの手によって殺害されたという報は、ペトスの死から数日後には他のラウンズの面々に伝わった。

 

 前十席の死から2年――

 疑似的とはいえ不老不死を体現しているがゆえに「時間」という概念が希薄な彼らラウンズにとって、その「2年」という時間はあまりにも短かった。

 

 おまけに、教団の最高戦力ともいえる存在が――前任者に引き続きという形とはいえ――どこの見ず知らずな者に短期間で2人も殺害されているのだから、驚愕の声をあげる者が現れるのは別に不思議なことではない。

 

 

 第十一席――『強欲』の二つ名を持つ男、ジャック・ネルソンもそんな1人であった。

 

 

「新参者とはいえ、ペトスもラウンズの座に就くに足る実力の持ち主だった……

 そんじょそこらの魔剣士や冒険者に敗れるはずがない――!」

 

 

 基本的に派閥争いばかりを繰り広げているラウンズは、常にお互いを政敵扱いする間柄でこそあれ――表立って口にすることはないが――その実力や実績は素直に認めている。

 

 ゆえに、今回のペトスの突然の訃報は彼らにとって青天の霹靂とも呼べた。

 

 ネルソンのように下位のラウンズにとってはなおさらである。

 

 

「――現時点でペトスの死に関して詳細な情報は届いているか?」

「も、申し訳ございません。

 なにぶん本当に突然であったため他のラウンズたちの間でも情報が錯綜しているようで……

 まことにどれが正しい情報なのか……」

「なんでもいい!

 とにかく今ある情報をすべて見せろ!」

 

 

 報告に訪れた部下の持つ紙の束をネルソンは奪い取るように手に取ると、早速そこに書かれていた内容に目を通していく。

 

 ――ネルソンはラウンズの座に就いてこそいるが、厳密には「戦士」ではなく「研究者」である。

 そのため、こういう作業は自分でやるほうが手っ取り早いうえに正確なことが多い。

 

 

「――ん?

 おい。“発見・回収されたペトスの死体に一切の外傷はなかった”とはどういうことだ?

 現場では戦闘が行われていたのは確かなのだろう?」

「え、ええ……

 そのようですが……」

 

 

 書類に綴られていた文章において気になる記述を見つけたネルソンは思わず部下に対して問いかけてしまう。

 

 

 ――魔人ディアボロスの肉体から作り出される『ディアボロスの雫』により、ラウンズはその身に疑似的な不老不死を獲得している。

 そのため、彼らを死に至らしめるには生半可な術では事実上不可能だ。

 あえて彼らを殺害する方法の具体例を挙げるとすれば、「肉体に命令を出している脳を再生する前に完膚なきまで破壊する」か「なんらかの圧倒的な力で肉体そのものを木っ端微塵に吹き飛ばす」かのどちらかだろう。

 

 ――蛇足だが、実際にやるならば後者のほうが有効かつ効率的な方法である。

 それほどの力となると周辺地域や環境に与える被害も尋常ではないものとなるため、実行しようとする者は政敵を亡き者としたいラウンズであってもまずやることはないし、やろうとも思わないが。

 

 閑話休題。

 

 ともかく、それほどまでに「ラウンズを殺す」という行為は同じラウンズの者であっても難しいことなのである。

 『ディアボロスの雫』をはじめ教団内での利権に執着する傾向にあるネルソンのような人物の場合は、政治的な理由などもあり特に――

 

 

「――殺害された後に肉体が再生したのか?

 いや、死亡したのならば雫の効果が生きているとはいえ生命活動は停止するはずだから、あり得ん……

 どういうことなのだ……?」

 

 

 魔人ディアボロス、そしてそれに由来する『ディアボロスの雫』をはじめとした不老不死の研究に古くから関わってきた学者としての観点からネルソンは自らの脳から様々な仮説を挙げていくが、結果的にどれもペトスの不可解な死に様の答えを導き出すには至れなかった。

 

 ――余談だが、これによりただでさえ長きにわたる日頃の職務によるストレスで激減していた彼の毛髪はさらに減ることとなった。

 要するにハゲたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の知らぬアーティファクトか?」

 

 

 時を同じくして、『人越の魔剣』の異名を取る第九席モードレッドもペトスのその死に自己の観点から仮説を挙げていた。

 

 彼の愛剣にして二つ名の由来でもある魔剣インビジブルは「斬撃そのものを不可視の刃として飛ばす」という異能を持つアーティファクトである。

 

 魔剣士として力を渇望した果てに太古の遺産であるアーティファクト――いまだに多くの謎を遺している魔導具に手を出したという経緯を持つ彼は、ペトスを殺害たらしめた要因を自分の剣同様なんらかの異能を秘めたそれによるものと結論付けた。

 

 

「対象に一切の外傷を与えず死に至らしめるアーティファクト――

 仮にそうであるとすれば実に興味深い。

 そうは思わんか?」

「はっ。まことに」

 

 

 モードレッドの言葉に彼と向かい合い立っていた部下たちの内の1人――『疾風』の二つ名を持つチルドレン1stであるクアドイが代表して軽く頭を下げつつ返事をする。

 

 ネームドチルドレンにして教団幹部という立場にある彼は卓越した実力と技量を持つ魔剣士であり、それゆえに直接の上司であるモードレッドからの信も厚かった。

 

 

「――クアドイよ。早速だが貴様にひとつ仕事を与える」

「なんなりと」

「ペトスを殺した者に関する情報を集めろ。

 どうやらペトスは贔屓にしていた魔物の密猟団との取引中に襲撃を受けたらしい。

 ペトスの死体が発見された森の中でその密猟団の長と思わしき者の死体も発見されたそうだ。

 こちらの死因は間違いなく魔物に襲われたことのようだが――

 私が思うにこの密猟団がなんらかの情報を持っているはず。まずは密猟団の残党を見つけ出せ。

 投入する人員とその数は貴様に任せる」

「かしこまりました」

 

 

 クアドイは一礼すると部下たちを引き連れてすぐさま部屋を後にする。

 

 それを見送ったモードレッドは椅子に深々と腰かけると、自らがかねてより計画していたある企ての内容を修正する必要が生じたことに少しばかり頭を悩ませることとなった。

 

 

「クアドイとその部下たちを動かせなくなってしまった以上、“黒キ薔薇”の確保には別の者を使わねばならんな……

 有力なのはドエム・ケツハットだが、奴は野心が透けて見える――

 上昇志向は結構だが、我らラウンズすら蹴り落とそうと目論んでいるあの姿勢は好かん――」

 

 

 おまけに本人はそれをこちらに気づかれていないと思い込んでいるのがなおさら駄目だ、と配下の者に対する愚痴をこぼす。

 

 ――しかし、先も述べたがモードレッドは元は剣を振るいその名を馳せてきた「戦士」であって、腹の探り合いや権謀術数を得意とする「策士」ではない。

 謀略――さらには表舞台における政治にも関わる能力は、彼やその部下には残念ながら備わっていなかった。

 

 

「それでもドエム・ケツハットや奴に味方をするオリアナの貴族どもを利用する以外に今は手がないか……

 教団内はおろか、教団に協力する者にも有能な人材が随分と減ったものだ。

 やはり平時が長く続くと人間は自らを内から腐らせるらしい――」

 

 

 モードレッドは人類間の大規模な争いがなくなってしまった世による弊害を1人嘆く。

 そのような世にしたのは他でもなく世界を裏から操っている教団であり、そして自分たちラウンズであるのだが、彼はそれを無意識に棚に上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペトスも随分とあっけないものだ。

 いや、所詮あいつも自分より弱い者しか殺しの標的にできなかった弱者――

 このような最期を迎えるのは必然だったか」

 

 

 ペトスの死に関する情報をまとめた書類に目を通した第五席フェンリルは、新参者の無様な最期を鼻で笑うとそれを破りその場に捨てた。

 

 それを見た彼の部下――『細柳(さいりゅう)』のアイザックは慌ててその紙片を拾い集めると、情報漏洩を防ぐために上司に代わりそれに火をつけて焼却する。

 

 

「――で?

 ペトスを殺したのは獣人――それも銀狼族の者である可能性が高いというのは事実なんだね『細柳』くん?」

「は、はい……!

 ペトスの死体が発見された現場に獣人のものとみられる銀色の毛が複数本見つかりました。

 それを回収して調べたところ極めて高いディアボロス細胞含有量が確認されたことにより――」

 

 

 冷や汗を垂らしながら口早に説明するアイザックに対して、フェンリルは「それ以上はいい」と言わんばかりに手を向ける。

 

 それを見たアイザックは「ひっ!」と軽く悲鳴をあげて口を閉ざしてしまう。

 

 

「今や希少な英雄リリの直系部族のひとつ――

 そういえば、ちょっと前にうちの派閥に属する()()()が俺の許可もなくバカなことをやらかしていたね?」

「お、オルバ子爵のことでしょうか……?」

「ああ、そうだ。そいつだ。

 なんでも“銀狼族の血が欲しいから戦力を貸してくれ”と上申してきたそうじゃないか?

 ――君に」

「っ……!」

 

 

 フェンリルの冷めた瞳がアイザックをとらえる。

 アイザックは一瞬、自分の首が胴体から離れて宙に舞う光景を幻視し思わず息を止めてしまった。

 

 幸い彼の首は繋がったままであり、アイザックは自らの手でそれを確認することで意識を目の前の現実に戻す。

 

 

「なぜ俺に一言報告しなかった?

 銀狼族は今や教団ですら生き残りやその潜伏先を完全には把握できていない――

 話を聞いていれば俺自らが赴くこともやぶさかではなかった」

「と、当初オルバ側から標的は銀狼族であることがこちらに伝えられていなかったのです!

 ただ“英雄の血を引いている疑いのある獣人の里を襲撃するための戦力が欲しい”としか……!」

「チッ……

 できる限り手柄を自分のものにしたいがために正確な情報を伝えてこなかったということか……」

「“悪魔憑き”となった自分の娘を救いたいあまり焦っているのでしょう。

 このままではもう長くはありませんから……」

()()()()()()()()()な」

 

 

 フェンリルのその一言に再びアイザックの体がピタリと止まり、同時にどっと冷や汗が噴き出した。

 

 

「ただの人間に外的処方を行うことで人為的に“悪魔憑き”とする研究だったか?

 “効率的に実験体を確保するための方法”として君の部下が勝手に進めている――」

「わ、私は断じて許可しておりません!

 それは連中が無断でやっていることです!」

 

 

 慌てて声を荒げたアイザックを前にフェンリルはフンと興味なさ気に一度息を吐くと話を続ける。

 

 

「――別にそのことは今はどうでもいいよ。

 件の実験で作り出されているのが本来の“悪魔憑き”とは程遠い“モドキ”であることもな。

 俺が言いたいのは、お前たちのせいで我々フェンリル派は余計な負債を背負い込んでしまったということだ」

「ふ、負債……?」

「わからない?

 ペトスを殺した銀狼族の目的は間違いなく教団に対する復讐さ。同胞を殺されたことに対するね。

 どのような方法でペトスを死に至らしめたのかは知らないけど、相手は今後も教団や俺たちラウンズを狙って仕掛けてくるだろう。

 ――ここまで言えば君でも俺がなにを言いたいのかはわかるでしょ?」

 

 

 フェンリルの2つの瞳の中に再びアイザックの姿がはっきりと映し出される。

 

 それだけで心臓を鷲掴みにされたような気分になったアイザックは、ごくりと唾を飲み込むと恐る恐る口を開いた。

 

 

「不死身であるはずのラウンズを殺すことができるほどの存在が世に解き放たれてしまった……」

「そのとおりだ『細柳』くん。

 これは教団、そしてラウンズにとって稀に見る脅威――なんとしても払わなければならない。

 俺たちフェンリル派がね」

「……えっ?

 我々が、ですか?」

「“負債”と言ったばかりだろう?

 今は隠せているが、この情報はいずれ他のラウンズたちも知ることになる。

 そうなれば俺たちフェンリル派のラウンズ内での地位は文字どおり地に落ちる――

 ペトスの死の件も含んで一連の責任を取らされることになるのは間違いないんだからね。

 だから俺たちの手で内々に処理しなければならないのさ」

「し、しかし……どのように?」

 

 

 相手はラウンズすら葬り去れる実力者ないし未知の力を持つ存在――

 

 そのようなやつをどのように相手取るんだ?

 

 まさか、フェンリル様自らが動かれるのか――?

 

 

 アイザックはすでに滝のように流れ出ている汗を拭いながら上司の次の発言を待った。

 

 

「『細柳』くん、聖教――オルムに情報を流せ。

 “ペトスを殺したのは銀狼族の獣人である可能性が高い”とな」

「――は?」

 

 

 フェンリルの口から出た言葉にアイザックは一瞬呆けてしまう。

 

 しかし、フェンリルの目がまたしても自分のほうに向きかけていることに気づいて慌てて口を開いた。

 

 

「お、オルムということは……“テンプラー”にですか!?

 連中は教団の存在を古くから邪魔者と考えております!

 我々からの情報など“信用に値しない”と突っぱねられるのがオチではないでしょうか!?」

「普通ならそうだろうね。

 だけど、ペトスは表向きは聖教の高位司祭だった人間だ。

 聖教としても自分たちの顔に泥を塗った“異端者”を野放しにしたくはないだろう」

「――――」

 

 

 アイザックはフェンリルの目論見を察した。

 

 彼はテンプラーとペトスを殺した者――銀狼族を相争わせ、共倒れを狙っているのだと。

 

 前者が敗れれば聖教の教団に対する影響力をこれまで以上に削ぐことができ、後者が敗れればフェンリル派の当初の目的が果たせるのでそれでよし――

 

 仮にテンプラーが勝利してしまっても相応の被害が出ることは確実なので、今まで以上に教団に横槍を入れてくることはまずない。

 

 そして銀狼族側が勝利した場合は先に述べた理由だけでなく、教団は漁夫の利を狙えるうえ、あわよくば希少な銀狼族やその血を確保することもできる――

 

 確かに、そう考えればやらない手はない、とアイザックは思った。

 

 

「まあ、これの問題はペトスを殺したやつを確実に始末できる保証はないってことなんだけど――

 こちらの戦力や手駒を無駄に消費するよりははるかにマシだろう?」

「はい。おっしゃるとおりです」

「もしペトスを殺したやつの正体がわかったら“汚名返上”と称して先のオルバってやつをぶつけるとしよう。それで相手の手の内がわかるはずだ。

 手品の種さえわかってしまえば相手が何者であろうと俺の敵じゃない――」

 

 

 そう言うとフェンリルはその顔に不敵な笑みを浮かべ、いつの間にかその場に発生していた霧の中へと消えていった。

 

 1人残されたアイザックはへなへなとその場に尻もちをつき、弱々しくつぶやく。

 

 

「い、生きた心地がしなかった……」

 

 

 しばらくの間そのまま床に座り込んでいたアイザックであったが、足にある程度の力が戻ると上司の命令を急いで実行するためによろよろと立ち上がり移動を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――アイザックとフェンリルのもとに「オルバ子爵とその部下たちが何者かにアジトを襲撃され全滅した」という報が届くのは、それからおよそ2か月後のことである。

 

 フェンリルの目論見は早くも崩れつつあった。




 ネルソン「えっ? ペトスなんで外傷一切負ってないのに死んでんの? 怖っ……」
 モードレッド「もしかしてアーティファクト? やだ……ほしい……!」
 フェンリル「後々責任追及されたらマズいから聖教も巻き込んで秘密裏に処理したろ」

 ロキ「駄目だこいつら……こっちで対策しないと……(他のラウンズを助ける気はない)」
 ヘル「せっかくだし、たまには一緒になんかやらない?(策や案はない)」
 ヨルムンガンド「いいっすねぇ~(協力するとは言ってない)」

 その他ラウンズ「は? ペトス死んだ? かんけーし」

 ???「てめえら……ちょっとは協力しろや……!(#^ω^)ピキピキ」
 ???「どうします? 一度あいつらちょっとお辞儀させます?」

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