ヨウムチャンプルー   作:まっまっマグロ!

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夜宵之酔

ところ戻り花見の席、異変を解決した三人娘が異変の首謀者とその友人と向かい合い、杯を傾けていた。紅白の少女は胡散臭い、異変の首謀者の友人を一瞥しながら、黒白の少女は左手に掲げた杯に桜の花弁を入れようと右往左往しながら右手に持った杯を、メイド服を着た少女は異変の首謀者とその友人にお酌をして、自分の位置に戻ってから、それぞれ杯を傾けた。一人は胡座をかき、一人は立ったまま、一人はスカートを気にして横座りをしながら、それぞれの思い思いの格好で酒に口を着けた。

「で、今回の異変の首謀者はあんたとそこにいるお嬢様がやったのね」

左手に持った御猪口を空にし、紅白の少女はたまに我が家を訪れる妖怪をもう一度睨み付けた。

「そういうことになるわね」

相も変わらず掴めない。何を考えているのか、目的、思想、交友どれもわからない。そう考えながら、博麗霊夢は十六夜咲夜の方へ御猪口を突き出した。

 

何を言わずに、しかし顔にはその行為に対する憎悪の念を溢れさせながら十六夜咲夜は博麗霊夢が突き出した御猪口に酒を注いだ。

「とりあえず理由を聞かせてもらえないかしら。あれだけ、人に迷惑をかけておいてその理由がお花見がしたいからだけじゃ納得しようにもできないわ」

十六夜咲夜の言葉を聞き、八雲紫が表情を変えずに、口元だけに笑みを浮かべたまま口を開いた。

「あら、納得していただけないと困りますわ。西行寺幽々子、私の友人は昔から自由気ままな性格で私も困るほどですのよ。その事についてはそこの庭師も言っていましたよね?」

八雲紫はそう言いながら笑顔で御猪口を十六夜咲夜に差し出した。今度は目は笑っていた。しかし、眼にはその笑顔は見受けられなかった。

「紫」

八雲紫のとなりに座る西行寺幽々子が静かに口を開いた。

「全てを話すわ」

静かに、しかし強く。

八雲紫は思いもしない友人の言葉に割って入ろうとしたが、止めた。

 

「桜の木の伝説はご存じかしら?」

 

「桜の木の下で愛を語れば成就するっていうのは聞いたことあるわ」

突然入ってきた博麗霊夢の言葉に西行寺幽々子は笑みを溢した。

「残念ながらそんな爽やかなものではないわ」

幽々子は語り始める。

桜の花は美しく淡い桃色の花。桃色は赤と白を混ぜ合わせた色。赤は血の赤。より多くの血を吸った桜の木は、それはそれは美しい花を咲かせる。

魂を喰らうものは美しい。より多くの生命力を獲るから。

あの桜は妖木。人の魂を喰らい、死に追いやる。

 

「人喰いし桜が美しい花を咲かすなら、あの桜は如何に美しい花を私に見せてくれるのでしょうか?そう思い立つと見てみてみたくなったのよ。あの美しい桜を」

 

西行寺幽々子は話を一度止め、手に持った御猪口を傾け空にした。

そして、また語る。

 

咲かぬ魔の桜。なぜ咲かぬかや。

人を喰う桜を恐れ、人々は生け贄を差し出すことで桜を封印した。

封印された桜を無理に咲かすには春の欠片を与えなければならない。

桜の封印が封印が解け、咲いたとき、封印をかけているものも解き放たれる。

調べ見つけた。ならば実行するのみである。

 

戯曲のように感情を付け、語る。

 

「ということで妖夢とムゲンさんにお願いしたのよ。『桜が見たいわ』って」

突然いつもの柔らかな調子に戻る。誰も口を開かない。『桜が見たい』ただそれだけのために引き起こされたこの異変の深い闇の部分を垣間見、各々静かに御猪口を傾けた。

 

「結局、桜は咲かなかったよな。咲いたらどうなったんだ?」

御猪口に桜の花弁を入れることに成功した霧雨魔理沙は十六夜咲夜に御猪口を差し出しながら訪ねた。

 

「封印された人喰い桜の封印が溶ければ人喰い桜に戻るだけよ。ここだけじゃなく、顕界にも相当な被害が出たと思うわ」

 

八雲紫が答える。霧雨魔理沙はその言葉を聞き、苦虫を潰したような顔になる。

 

「それは嫌だな」

 

その言葉を聞き、博麗霊夢はその場を離れた。霧雨魔理沙は何事にたいしても率直である。彼女に任せておけば事態が大きく悪化することはない。

博麗霊夢は何事にたいしても率直である。しかし、彼女の率直さは人を傷つける。

 

「あんたは今回の異変、知ってたの?」

 

手頃な桜の幹に寄りかかり静かに訪ねる。

 

「俺は八雲紫を招待して、それ以外の奴を斬ろうとしただけだ」

 

幹の裏ではムゲンが独り、杯を傾けていた。

 

「俺は花見がしたかっただけだ。女に囲まれて酒が飲めりゃあ言うことないからな」

 

瓶から酒を並々と注ぎ、杯を夜空に向け大きく掲げる。白く輝く桜の花弁がゆらゆらと落ち、揺れる酒の面に触れた。落ちた花びらは酒面を漂う。ムゲンは杯を傾け、花弁とともに酒を飲み干す。

 

「ひとおもい えだをふり いろをつくも いくすえむざん ゆめのごとくや」

 

「なんだそりゃ」

 

自身の左側から発せられた突然の声に、ムゲンは咄嗟に身体を向けた。

博麗霊夢がしゃがみこみ、桜を見上げていた。

 

「即興なんだから、唄について聞くのは無粋よ」

 

「唄は知らねぇ」

 

「まずあんたは字を読めるようになりなさい。唄はその後よ」

 

互いにぶっきらぼうに返しながら、桜を見上げる。

 

「そろそろ帰りなさい」

 

博麗霊夢が静かに呟く。

 

少女は博麗の巫女として語りかける。

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