ヨウムチャンプルー   作:まっまっマグロ!

3 / 21
右往左往

ムゲンさんが白玉楼に来られてからしばらく経ちました。思い返せば様々なことがこの間に起こりました。ムゲンさんが私の半霊を食べようとしたり、幽々子様が私の半霊を食べようとしたり、私が正式に白玉楼の正式な庭師兼剣術指南役に就任したり、ムゲンさんが用心棒に着任したこと、そして私に役職を譲った祖父の魂魄妖忌が本格的に隠居に入ったことなど数えることさえ面倒臭くなるような数多くの出来事が起こったのです。

 

用心棒という新しい役職に就いたムゲンさんは仕事がないときは居間で惰眠を取り、目付きが悪いなど用心棒として十分に働けるのかと不安だった時期もありましたが、いざというとき(特に自分のため)にはとても頼り甲斐がある人であることがわかりました。

 

彼が今の『用心棒』という役職に就いたのには大きく2つの理由があります。まず、魂魄家の人間ではないこと。これのおかけで私は『剣術指南役』という役職が解かれずにいるのです。というのも、魂魄家の家宝である『白楼剣』は魂魄家の者にしか継承されず、また、ムゲンさんが二刀流の剣術を修得することができなかったからです。そして、二つ目は私よりも腕がたつということです。正直、ムゲンさんは私よりも強いです。出鱈目な様で、何か考えがあるようで、でもやっぱり出鱈目な彼の剣術は恐らく妖怪を相手にしても簡単に負けることはないでしょう。

 

以上の理由からムゲンさんは用心棒になったというよりも、剣術指南役になれなかったので用心棒になったという結果になりました。そしてこれは即ち、私は剣術指南役になったのではなく、剣術指南役がいなかったから、ということになってしまいます。

 

それがとても悔しくて、情けなくて……私はムゲンさんと決闘することにしました。ムゲンさんより弱い自分が嫌でけじめをつけたかったからです。

 

以下、その決闘の内容に関して覚えている限りの記録を残したものです。

~~~~~~~~~~

「よろしくお願いします。」

 

白玉楼の庭の真ん中で相手に向かって礼をする。剣術を学ぶものとして礼儀作法は必須なものであるからだ。

 

「うっす」

 

ムゲンも一応礼は怠らない。こちらにきてから一番最初に、一番しつこく教え込まれきたことだ。しかし、性に合わないのか彼がまともに挨拶をすることはなかった。

 

妖夢は静かに構える。剣術において見本とも言うべき全く無駄のない構え。身体の軸上に楼観剣を置き、ムゲンを睨み付ける。

 

「っしゃー、来い!」

 

対するムゲンは消魂しい声を出しながら構える。体を左が前の半身にし足を開き、腰を落とし、右肩の後ろに刀を構える。例えるなら野球における投手のテイクバック。お世辞にも剣術を学ぶものとしてあるべき姿とは考えられない。

 

隙だらけだ。妖夢はムゲンの構えを見るたびにそう思っていた。半身では背後(この場合では妖夢から見て右側の側面)からの攻撃が死角になりやすい。後ろを大きくする構えでは突きに対する対応がどうしても一歩遅れてしまう。足を大きく開く構えは体重の移動がしにくく、一歩目の歩幅が大きくなってしまうため瞬発的な避けはしにくい。腰を落とす構えは利にかなっているようだが、一太刀入ってしまえば勝敗が決まる真剣での勝負においては相手の刀との距離が短くなるため不利である。

 

この構えは利にかなっていない。

 

そう思っていた。

 

対面してみてようやくわかるムゲンの眼力。「一歩でも動いたら即斬る。」そう語っているようなムゲンの眼。自分が負けるわけがないという自信に溢れ、余裕すらも見えるムゲンの眼。

 

妖夢はここで思い止まる。ムゲンの眼を見るまでは彼の構えの弱点を突き続けることで仕合を有利に進めていこうと考えていた。

 

しかし、ムゲンの眼には負けるかもしれない等という気の迷いは一切見えない。恐らく何か策があるのだろうと妖夢は考えた。

 

(どうする。恐らく背面への横凪ぎの一撃は既に読まれている。それを放った瞬間にムゲンさんは何かの奇策によりこれを防ぎ私に斬りかかってくる。ならば突きは?……これも読まれている。というより、私が既に挙げている彼の弱点は全て対策が考えられていると思って間違いない。あのような構えで数多の闘いを勝ってきたムゲンさんのことだ、恐らくあの構えは相手を誘い込むための罠に違いない……)

 

新たな策を講じる妖夢だが何も思い浮かばない。これまで戦ってきた相手とは訳が違う。自身の浅い経験など通用するはずがない。頭の中を様々な考えが駆け巡り混乱する。

 

「来ねぇなら、こっちから行くぞ!」

 

動かない……いや、動けない妖夢に対ししびれを切らしたムゲンが叫ぶ。

 

右足に体重をのせて、蹴る。ムゲンが飛ぶ。

 

考え事で頭が一杯の妖夢が対応できるはずもなく、慌てて横凪ぎの一撃を放つ。

 

集中できてない状態で放たれる一撃などたかが知れている。

 

ムゲンは刀でそれを受け、尚も突っ込んでくる。

 

妖夢は慌てて楼観剣から左手を放し腰に掛けている白楼剣を抜く。抜いた白楼剣はすぐさまムゲンの喉元を目掛けて突きとして飛び出した。

 

ムゲンが消えた。もちろん、そんなはずはないが、少なくとも妖夢はそう感じた。あの状況で避けられるはずのない喉元への突き。しかし手応えがなかった。

 

第三者から見れば何てことはない。ムゲンがしゃがんで突きをかわしただけだ。突きをかわしたムゲンはそのまま回転した。尻を着いた状態から回転し、尻、腰、背、肩、手と回転の軸をずらしていく。まさしくブレイクダンスにおけるヒップスピン、バックスピン、2000 というオーソドックスな連続技のようである。そして回転と同時に下段、中段、上段と蹴りを繰り出す。

 

未だに頭の中の整理が着かない妖夢に避けるすべはなくムゲンの蹴りをことごとく受けてしまう。そして最後に蹴りにより手に持っていた二振りの刀さえも飛ばされてしまった。

 

ムゲンがハンドスプリングの要領でさ飛び起きながら妖夢に蹴りをいれると、妖夢は不意を突かれ尻餅をついてしまう。

 

「あ……」

 

妖夢が呆気に取られているうちに妖夢に首に冷たい感触が走る。冷たく、硬い刀の感触だ。

 

「俺の勝ちだ。」




何度かんだ言ってはじめての戦闘描写でした。

御指摘、批判、文句色々お待ちしています
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。