ヨウムチャンプルー   作:まっまっマグロ!

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愚公移山

里につき、妖夢とムゲンは別れそれぞれの遣いを果たすべく目的地へと向かった。

 

妖夢は主の和菓子を買うため里へと向かう。

ムゲンは幽々子の友の元へと向かう。

 

 

妖夢は里の菓子職人によって作られた和菓子に見惚れていた。優しく柔らかい色使い、優しく柔らかそうな形。どれをとっても美味しそうな和菓子が頑固そうな老人の手から次々と産み出されていく。その様子が新鮮で面白くて堪らないのである。白玉楼では決して見ることのできなかった景色がそこにはあった。

 

「すみません……」

 

妖夢はおどおどと店に入る。すると、奥から体格がよく、愛想の良さそうな中年の女性が現れた。

 

妖夢は現れた女性の様子に安心したのか、おどおどすることなく注文を済ませた。

 

「冬と春の和菓子を持てるだけください。」という注文に店は騒然としたが、それは妖夢の知るところではない。

 

妖夢の身の丈に会わない大きな風呂敷に包まれた注文の品を受け取り、妖夢は再びメモを取り出す。そこには『そのお店の雪兎饅頭はとっても美味しいからムゲンさんを待つ間お茶していなさい』との主からの伝達が書かれていた。

 

妖夢は表の縁台に座り、雪兎饅頭を待つ。すると奥から、先程まで奥で菓子を作っていた店主と思われる男が現れた。

 

「はい、雪兎饅頭だね」

 

白く柔らかい、滑らかで美しい。妖夢は目の前の饅頭にまた心を奪われていた。

 

次に店主の手に視線を移す。

皮と骨だけのような厳つく細い手だ。

 

「……あっ、ありがとうございます」

 

礼が遅れる。

 

暫しの沈黙のあと、口を開いたのは店主であった。

 

「……嬢ちゃんは西行寺さんのところの遣いかい?」

 

「……はい」

 

「……やっぱりな」

 

「……どうして、そう思ったのですか?」

 

「……そんなに大量の菓子を注文するのは西行寺さんのところだって、知り合いに聞いてたからな。」

 

不器用と人見知りの会話は短く続かない。

 

妖夢はこの経験がない。考えてみれば妖夢の周りに寡黙と言える人は一人もいない。主、その友人、閻魔と死神……そしてムゲン 。自分の半生を省みて、どうしてこうも静かに過ごせないのだろうかと考える。

 

「嬢ちゃん」

 

店主が口を開く。この空気の居心地が良くなかった妖夢からすれば救われた気分たったが、居心地の悪さから早々に立ち去ろうとしていた妖夢からすれば逆に追い討ちをかける結果となった。

 

「はい、何でしょうか?」

 

「嬢ちゃんは茶屋に来るのは初めてか?」

 

ありきたりな質問であった。店主もどうにかしてこの沈黙を破りたいという考えがあったのだろう。その結果、このありきたりな質問が出てきたのだろう。

 

「はい。いつもは屋敷で庭の掃除などをして外に出る機会も少ないので……」

 

「和菓子作るの見てて楽しかったか?」

 

見られていた。

 

「はい。」

 

「中、入ってみるかい?」

 

あまりに突然の誘いに妖夢は目を丸くする。

 

「いいんですか!?」

 

先程まで遠目からしか見れなかった和菓子作りを目の前で見られる。それだけで心が踊る気分だ。

 

「まぁ、遠くから覗かれている方が気が散っちまうからな」

 

そう言いながら店主は笑った。妖夢は顔を赤くしながら店主に会わせてひきつったような笑いを見せた。

 

~~~~

 

先程まで話していた店主の骨ばった手から柔らかく、優しい色をした和菓子が次々と生み出されていく。その様子を見るだけで妖夢は子供のように目を輝かせていた。

 

「そんな風に見ているだけで楽しいかい?」

 

「勿論です。私が住んでいるところではこのような職人の技は見ることができませんから」

 

妖夢はわざと「冥界」や「白玉楼」などの単語を避けた。これらの言葉が顕界の人々に戸惑いを与えることがわかっていたからである。

 

……

 

妖夢は静かに只々和菓子が作られている様子を見ていた。

 

 

 

ところ変わってムゲン。花見の招待状を渡すため里から東へと歩いていた。

 

「じんじゃにいるやくもゆかりにこのかみをわたしてください。」

 

ムゲンでも読めるようにと平仮名のみで書かれた主からのメモを見ながら指定の場所へと向かう。

 

「この上だな」

 

長い石段を見上げながら呟く。

 

「1、2、3……」

 

一段ずつ数えながらムゲンは長い石段を駆け上がっていった。

 

~~~~~~

 

「887、888 、889っと」

 

石段を駆け上がり周りを見渡す。小さく少し古くさいが間違いなく神社がそこにあった。

 

ムゲンは大きく息を吸い、

 

「頼もう!!」

 

吐いた。

 

「何よ、こんな寒いときに……」

 

ぶつぶつと文句を言いながら巫女が出てくる。赤と白を基調とした一風変わった服装だが一目で巫女とわかる。

 

「えーっと……やくもゆかりってのはあんたか?」

 

メモを取りだし主の友人の名前を確認し出てきた巫女に問う。

 

「残念ながら人違いよ。さぁ、帰った帰った。私は早くこたつに入りたいのよ。ほら、しっし」

 

巫女は面倒くさそうに答える。あろうことか客を手で払うような仕草まで見せている。

 

「霊夢、お客さんに失礼なことをしたらダメでしょ?お賽銭はなくとも一応お客さんなんだから」

 

二人の間から声が聞こえる。

 

「どーも。」

 

何もない場所に突然、女が現れた。

 

霊夢と呼ばれた巫女は顔に手を当て、「また、面倒くさいのが来た。」とでも言いたそうな表情をしている。

 

ムゲンは刀に手を当て、身構えている。

 

「こんにちは。八雲紫です。」

 

スカートの裾をつまみ上げ、頭を下げる。さながら西洋の貴族のようである。

 

「あんたがやくもゆかりか。」

 

「はい、私が八雲紫です。で、私にご用というのは?」

 

「うちのお嬢からあんたに花見の招待状がある。」

 

ムゲンは背負っていた風呂敷から主からの招待状を取りだし紫に渡す。

 

招待状に一通り目を通し紫は顔をあげると、ムゲンに一つ尋ねた。

 

「中は?」

 

「見てねぇし、見ても読めねぇよ」

 

「わかりました」

 

「ねぇ、何て書いてあるの?」

 

霊夢は紫に尋ねた。

 

「何てことはないわ。私の古い友人が花見をするから来てほしいってだけよ。しかも料理もお酒も全部準備してくれるらしいわ」

 

「私も行っていい?」

 

霊夢が目を輝かせて訪ねる。

 

「ダメよ。子供は家でロック液でも飲んでなさい。」

 

紫は手で1の形を作り霊夢の口に当てた。

 

「ところで、遣いさん」

 

「ムゲンだ」

 

「ではムゲンさん、幽々子に参加すると伝えておいてください」

 

「わかった」

 

ムゲンは強く紫を睨む。

 

「……ところでよ」

 

「何でしょうか?」

 

「あんた、つぇーのか?」

 

紫は質問を聞き終えると扇で口許を隠し、嬉々とした表情で答えた。

 

「そうですねぇ。少なくとも貴方よりは強いつもりですよ」

 

ムゲンはその答えに鬼気迫るものを感じた。

 

これまで戦い、斬ってきた誰とも違う重圧がムゲンを襲った。

 

「俺よりもつぇーだ?」

 

しかし、相手が強ければ強いほど燃えるのがこの男ムゲンである。

 

「はい。単純に取り決めの無い戦いでは負けるつもりがありません」

 

「上等だコラッ!!その高い鼻っ先へし折ってやる!!」

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