海賊戦隊の世界で、天下御免の侍戦隊! 作:ウルトラマントリガー
「これでよしっと。殿様の方は、このまま少し安静にしとけ。天使くんの方は……自分でわかるな?」
「う、うん。ありがとう………あの、何で、貴方が生きてるの?」
「俺も聞きたかった……貴方は、ダイノマインダーの暴走で、トップゲイラーと一緒に死んだはずだ。仲代壬琴さん」
麗さんの魔法で、戦線を離脱した俺達、戦隊転生者達は、一甲さんの提案で、迅雷流がかつて使用していた施設に身を隠していた。
そこの医務室で、傷付いたアラタと俺の治療をしてくれたのは、アバレンジャー本編で壮絶な最期を迎えたはずのアバレキラーこと、仲代壬琴さんだった。
「何で、俺が生きてるかって?フッ。簡単なことだ。俺は、何でも出来るからって、原作の仲代壬琴みたいにひねくれた育ち方をしなかったし、自分の身体を無意味に傷付けなかったんだよ」
仲代さんは、自分が他の人よりも優れているのは、何かしらのスーパー戦隊のメンバーになるからだと、原作知識から理解して、子供の頃から人助けをモットーにして、生きてきたらしい。
そして、自分の手元にダイノマインダーとトップゲイラーの卵がやって来た時、自分は、その当時に活躍していたアバレンジャーのメンバーになるのだと確信して、そのまま、5人目のアバレンジャーになったのだそうだ。
本当ならエヴォリアンのボスになるはずのアバレキラーが、即座に5人目のアバレンジャーになったのか………。
勘違いとは、恐ろしい。
「まぁ、嫌がるトップゲイラーを手懐けたり、デズモゾーリャの半身やら、ダイノマインダーの暴走をどうにかするのは、大変だったけどな。そこら辺は、スティラコに感謝だな」
「なるほど。俺がシュリケンジャーを助けたのと、同じ流れか」
そこに、一甲さんとドギーさんが会話に加わる。
「同じ流れということは、原作知識からくる勘違いから、シュリケンジャーは生存を果たしたということか?」
「ああ。シュリケンジャーの場合は、俺が鷹介に助けられたように、今度は俺がシュリケンジャーを助ける番だと思って、彼の命を救ったんだ。自分が受けた恩を、他人にも贈るのはお約束だと思ってな。まぁ、そのせいで、一鍬にはかなりの迷惑をかけたのだが………」
ドギーさんの問いに対して、一甲さんはそう説明した。ちなみに、サタラクラと一緒に爆発する天空神から脱出する際、一甲さんとシュリケンジャーは一時的に行方不明になったらしく、その間に、一鍬さんは一人で轟雷神を操縦してサンダールを道連れにしたそうだ。
それ、一鍬さんにめちゃくちゃ負担かかってたのでは?
「とりあえず、そこら辺の話しは今は置いておこう。二人とも、こちらに来てくれ」
ドギーさんと一甲さんに連れられて来たのは、モニタールームのようであった。そのモニターには、街で破壊の限りを尽くすゴセイジャー、ゴセイナイト、シンケンジャー、合体戦闘員が映されている。
それを見ているのは、鷲尾さん、麗さん、明石さん、ゴウさん、軍平さんであった。
「あれ?鶴姫さんは?」
アラタがその場を見渡して、姿が見えない鶴姫さんのことを尋ねると、明石さんが答えてくれる。
「この場にいない戦隊転生者の招集に向かった。正直、今回ばかりは総力戦で挑む必要があるからな」
「この場にいるメンバーだけでは、戦力不足は否めないのは事実だからな」
「まいったぜ。いつもなら、過剰戦力なはずのこの面子で、戦力不足とはな……」
明石さんの言葉に、ドギーさんがそう答えると、ゴウさんがため息まじりにそう呟いた。
「ジーザス。よりによって、黒十字王とは………」
「私の読みが甘かったわ。まさか、この時点で、黒十字王が転生してくるなんて」
「ねぇ?黒十字王って、何なの?俺の原作知識に無いってことは、シンケンジャーとのVシネか、ゴセイジャー単独のVシネの敵なの?」
鷲尾さんと麗さんがそう嘆いているのを見たアラタが、その場にいる一同に問いかけてきた。それに答えるのは、俺達の治療をしてくれた仲代さんだ。
「奴は、初代スーパー戦隊の秘密戦隊ゴレンジャーの敵、黒十字軍の首領、黒十字総統が34のスーパー戦隊達が倒してきた敵の怨念を受けて転生した存在だ」
「奴の恐ろしいところは、歴代の悪の組織の怪人を蘇らせて、自身の意のままに操れることだ。さらに、奴自身の戦闘能力が高いのも問題だが、最も厄介なのはその正体である黒十字城の姿となった時だ。その場合、対抗するには、歴代のスーパー戦隊ロボ全てと、ゴレンジャーの大いなる力が必要になる」
「そ、そんな……」
仲代さんと一甲さんの説明を聞いて、戦慄するアラタ。
「奴は、本来なら、ゴーカイジャーがやってきた後に現れるはずだったんだ。ゴーカイジャーとゴセイジャーの春映画の敵だからな。あれ?言えたぞ?」
「もう意味が無いからだろう。原作なんて、完全に崩壊しているからな」
軍平さんが黒十字王の本来の出現時期と、出現作品について口にして、それが言葉になったことに驚いていると、ドギーさんが自らの推測を口にした。
それらの会話がなされている間、モニターに映るシンケンジャーの仲間達の姿を、彼らが街を破壊し、人々を苦しめている様子を見ていた俺は、その場を離れようと踵を返した。
「待ちな」
そんな俺に、仲代さんが話しかけてきた。
「医者として、そんな身体で戦いに行くのは許可出来ないな」
「丈瑠くん。気持ちはわかるが、今は待ってくれ。鶴姫さんが必ず他の戦隊転生者を集めて来てくれる」
さらに、ドギーさんに声を掛けられるが、俺はそのまま歩き始めた。
「おい!丈瑠!」
そんな俺の肩を、軍平さんが掴んだ。
「あいつらは、大切な仲間なんだ………」
俺がそう呟くと、その場が静まりかえる。
「俺が、自分の価値を見失って、外道に墜ちそうになった時に、あいつらは駆けつけて来てくれた。俺に、俺自身が積み重ねたものがあるのだと教えてくれた。俺を救ってくれた」
「丈瑠……」
アラタがそう口にするが、俺はそれに応じることなく、語り続けた。
「今のあいつらに、意識があるかどうかはわからない。だが、意識があるとしてもないとしても、自分達が街を破壊し、人々を傷付けていたと知ったら、きっと苦しむし、悲しむ。だから、あいつらの苦しみや悲しみを少しでも減らしてやる為にも、あいつらを救う為にも、俺は行かなくちゃいけない!」
そこで、彼らに振り向く。
「あいつらに救ってもらった恩を返す為にも、今、俺があいつらを救わなくちゃいけないんだ!」
俺の言葉を聞いた彼らは、一瞬、驚いた表情になるが、すぐに笑みを浮かべて、互いに頷き合うのであった。
そして、アラタが代表するかのように口を開いた。
「行こう!丈瑠!みんなを助けるんだ!」