海賊戦隊の世界で、天下御免の侍戦隊! 作:ウルトラマントリガー
「運転ありがとう、スモーキー」
「どういたしましてにゃ、麗」
魔法特急トラベリオンエクスプレスの運転席に座り、その運転をする魔法猫スモーキーに、転生者である小津麗は感謝の言葉を伝えた。
「え~と、まずはマシンワールドに行って、麗の仲間の一人を降ろして、その後に、ダイノアースに行って、また仲間の一人を降ろして、最後に向かうのが………」
「うん。マジトピアとは違う天空世界。【伝説の戦士が安らぐ聖地】。恐竜を守護する神、究極大獣神と一緒に戦った5人の戦士、恐竜戦隊ジュウレンジャーがいる世界」
「でも、麗。【伝説の戦士が安らぐ聖地】には、その究極大獣神の許しを得た者しか入れないにゃ。入り口ぐらいまでなら行けるけど、その先に進むのはどうするにゃ?」
「なんとかお願いしてみるわ。大丈夫!神様なんだから、きっと話ぐらいは聞いてもらえるはずよ」
「だと、良いんにゃけどにゃ~。神様って、人間とは違う価値観を持ってる奴が多いから、問答無用で攻撃してくるかもよ~?」
「いやいや?そんなまさか~」
○
「フラグだな、ときめくぜ」
「同感。ジュウレンジャーに出てくる神様は、やたらと試練を課してくるからな。しかも、とびきり過酷なやつ」
麗とスモーキーがそんな会話をしているトラベリオンエクスプレスの客車では、麗の転生者仲間である仲代壬琴と石原軍平が、スピーカー越しに聞こえてくる2人の会話に嫌な予感を覚えていた。
「まぁ、そうは言っても、ジュウレンジャーに協力を求めないわけにはいかないし、それが出来るのは麗だけなんだから、頑張ってもらうしかないわな」
「いや、同じ恐竜モチーフの戦隊なんだから、仲代先輩が行くって選択肢は無かったんですか?」
「バカ。俺がジュウレンジャーのところに行ったら、誰がダイノアースで爆竜達とアスカを探すんだよ?お前、やるか?見渡す限りの砂漠の世界で、爆竜達とアスカを探す旅?」
「あ~、それを言うなら、あの広いマシンワールドで炎神達を探す旅も相当ですよ?」
「ちなみに、そうやって、炎神達を集めたら、ダイノアースに迎えに来てくれよ?爆竜や炎神サイズの大きさで、次元間の移動が簡単に出来るのは炎神達ぐらいだからな」
「トラベリオンは人間大の大きさじゃないと乗れませんからね」
壬琴と軍平は自分達のやらなくてはいけないことを再確認すると、深い深いため息を吐いた。
○
「ここが命の泉か」
「ここに命の精霊というのがいるのか?」
神聖な雰囲気が漂う泉の縁に立ち、周りを見渡しながら、そう呟くブラックコンドルの結城凱に臨獣ライオン拳の理央が話しかけた。
そんな彼らの周りには、臨獣カメレオン拳のメレ、ドラゴンレンジャーのブライ、タイムファイヤーの滝沢直人の3人の姿があった。
その場にいる全員、かつての地球を守る為の戦いや、その前後の出来事によって、命を落としているという共通点を持っている。
「クロト!頼む!出てきてくれ!」
ブライがそう呼び掛けると、泉から水柱が吹き出した。かと思えば、その水柱から、身につける衣服だけでなく、その肌までが真っ白な少女が現れた。
「久しぶりね、ブライお兄ちゃん。もう会うことは無いと思っていたのだけど」
「クロト!頼みがあるんだ!」
現れた白い少女に、ブライが用件を伝えようとするが、少女は話を聞く前に首を横に振った。
「ダメよ。ブライお兄ちゃん。ブライお兄ちゃんを生き返らせることはもう出来ないわ。それに、そこにいる人達も」
「ちょっと!話が違うじゃない!」
クロトの言葉を聞いたメレは、凱に詰め寄るが、そんなメレを気にすることなく、凱はその口を開いた。
「ちょっと待ってくれ、クロトちゃん。俺達にはどうしても生き返らなきゃいけない理由があるんだよ」
「どんな理由かしら?」
「地球が………、いや、仲間が危ないんだ。一緒に命を懸けて戦った仲間がな。死んでるからって、それを放っておくわけにはいかねぇんだよ」
「だからといって、あなた達を生き返らせて良い理由にはならないわ。生と死。その境界は絶対なものでなければならない。ブライお兄ちゃんの時は、大獣神にどうしてもとお願いされたから、仕方なかったけれど、本来は死者が生き返るなんてこと、あってはならないのよ」
クロトはそう告げると、その場を去ろうとする。しかし、その瞬間、その場にいくつかの巨大な幻影が現れた。
「クロトよ。我々からも頼む」
「どうか、彼らを生き返らせて欲しい」
「彼らにはその資格があるはずだ」
「今、地球に未曾有の危機が迫っている。その危機から、地球を救う為に、彼らに再び戦うチャンスを」
「クロトや。妾からも頼む」
「私からも頼む。命の精霊クロトよ。彼らに機会を与えてくれ」
無敵将軍、ツバサマル、隠大将軍の三神将。パワーアニマルの神、ガオゴッド。天空聖界マジトピアの長、天空大聖者マジエル。そして、護星界の指導者、マスターヘッド。
命の泉に現れた彼らは、そうクロトに語りかけた。その言葉を聞いて、ため息を吐くクロト。そして、凱に視線を向けると、その口を開いた。
「結城凱。彼らを巻き込んだのは、あなたかしら?」
「神様に無理なお願いをしようって言うんだ。同じく、神様的なのを味方にするのは当然だろ?」
「そうね。参ったわ。私の負けよ」
その言葉の直後、クロトの姿は命の泉を守護する女神の姿に変わった。
「今回の地球の危機を救うまでの間、あなた達に仮の命を与えましょう。仲間と一緒に地球を守りなさい」
女神のその言葉に、ホッとした様子を見せる凱とブライとメレの3人。一方、直人と理央は無表情を崩さないでいた。
「ただし、覚えておきなさい。あなた達はすでに死んだ人間。仮の命を得たとしても、本当に生き返るわけじゃない。もし、そんな状態で死ぬようなことがあれば、その時は魂まで完全に消滅するということを」
女神の忠告に、今度は全員の表情が変わる。だが、それも一瞬のことであった。
「心配すんな。女神様よ。俺達全員、その程度の覚悟は出来てるからよ」
「そう。ならば、もう何も言わないわ」
その凱の言葉に、力強く頷く面々を見て、女神は彼らに仮の命を与えた。
そうして、仮の命を得た凱達を三神将達が地上に転送するのであった。その直後、女神の姿はクロトに戻る。
「いってらっしゃい。お兄ちゃん達。無事に戻ることを祈っているわ」
○
その頃、壬琴をダイノアースに、軍平をマシンワールドに送り届けた麗とスモーキーは、【伝説の戦士が安らぐ聖地】の入り口に辿り着いていた。
「にゃー!だから、言わんこっちゃないにゃー!」
「ちょっ!ちょっと待って!キングブラキオン!話を聞いて!」
だが、トラベリオンエクスプレスから降りた2人を待っていたのは、キングブラキオンによる激しい攻撃であった。
「神様なのに、話も聞いてくれないのー!?」
「昔から、神様は人間に厳しいのがお約束なのにゃー!」
「そんなー!」
「「わぁぁぁぁぁ!?」」
トラベリオンエクスプレスに戻ることも出来ず、キングブラキオンの放つ火球から、走って逃げ回る麗とスモーキー。
「こんなことなら、お兄ちゃん達も連れて来るんだったー!」
麗のそんな後悔の叫びは、誰にも届くことは無かった。