【完結】沈黙のピアニスト   作:高科奈紗

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ぼっち鑑定団

 姫榊 花奏side

 

 人生初のリサイタルが終わり、丁度いい時間だったので昼食を摂った。

「オートミールじゃないんだ」とか「ちゃんとした昼食だ……!」とか言われた。

 あの人たちは私をなんだと思っているのだろうか。

 

 そして今は私の部屋でみんな寛いで椅子に座っている。

 

「まさにザ・御馳走! って感じのお昼ご飯でしたね〜」

「高級レストランのコース料理感があったよね〜。高級レストランなんて行ったことないけど」

「ですね〜。……で、午後はどうするの姫榊ちゃん?」

みんなに見せたい物があるので、少し休んだら移動しましょう

「どこに行くの〜?」

お父様の物置部屋です

 

 私は後藤さんに視線を向ける。

 後藤さんは私の視線に気付いたようで、あたふたしだした。

 

特に後藤さんには見せたいので

「わ、私……?」

 

 コクンと頷く。

 

リョウさんもいれば尚よかったんですが

「まあ、あいつだからね〜。……で、なになに、どんなの〜?」

見てからのお楽しみです

 

 左目を閉じて右の人差し指を口の前で立てる。

 

 

 小林さんにお父様の物置を開けたいと言ったら、渋々といった表情で鍵を渡してくれた。

 だが「私も同行します。お嬢様がやんちゃしたら止めなければいけませんので」と言われてしまった。

 私だってもう子供じゃないんだから……。

 

 というわけで、5人でお父様の物置部屋の前までやって来た。

 ここに入るのは……7年振りか。

 鍵を差し込み、回す。

 扉を開く。

 

 *

 

 後藤 ひとりside

 

 姫榊さんが扉を開ける。

 そして中に入る。

 私たちもその後に続く。

 

「な、なにこれ〜!?」

「うわぁー……」

 

 部屋の中に立ち並ぶ弦楽器の数々。

 バイオリンやら何やらが並んでいて……

 

「ぎっ、ギター……!? しっ、しかもこれ……超珍しいヴィンテージギター……!!」

「そんなに珍しいやつなの?」

 

 喜多ちゃんが横に並んで一緒に眺める。

 

「そ、それはもちろん……これはマーチンD-28と言って……アコギの基礎を築いた……まさに、王道の品……しっ、しかも40年代の……!?」

「へ〜……そんなに凄いんだ?」

「多分……価格は、100万ではきかない代物かと……」

「ひゃっく!?」

「……ひゅあぅ!?」

「こ、今度はどうしたの……?」

「こ、これ……D-45じゃ……!?」

「さっきのと違うの?」

「ちちちち違いますよ……! こっちはさらに希少、幻レベルですっ……!」

「……ついでに、お値段は?」

「お、おそらく……1000万は余裕で超えるかと……」

「えええええぇぇっ!?」

楽しそうでなにより

 

 姫榊さんがいつもの表情で佇んでいた。

 

「ひ、姫榊さん……な、なんでこんな代物が……あぁ! J-45まで!?」

お父様は弦楽器を集めるのが好きらしいから

「旦那様、自分ではまともに弾けないくせに集めるのだけは得意ですからね」

「こんなにレア物がいっぱい置いてあったら、花奏ちゃんだけで入るのは危険そうだね〜」

酷くないです?

 

 *

 

 喜多 郁代side

 

「ひとりちゃん、落ち着いた?」

 

 ゼーハーと息をしているひとりちゃんの背中をさすってあげる。

 

「は、はい……なんだか、ドッと疲れました……」

「そりゃあ、あれだけ興奮してたらね〜」

 

 姫榊ちゃんの言ってた意味が分かった気がした。

 これは確かに……リョウ先輩も大喜びしそうだ。

 

「他の楽器も見て回りましょうよ、好きなだけ見てもいいってメイドさんも言ってたし」

「は、はい……えへへ……」

 

 それにしても、色々な種類のギターやらバイオリンやらがあるけど……どれがどれだか全くわからない! 

 

「……あっ」

「ど、どうしました喜多ちゃん……?」

「このバイオリン……テレビで見たことあるかも」

「あ……わ、私も見たことあるかもしれません……」

「何だっけ、名前……スト、なんとか!」

 

 ……思い出せない! 

 喉元まで出掛かってるのに! 

 

「ストラトキャスター、だったかと……」

 

 違う気がするわ、ひとりちゃん。

 

「ストラトフォードじゃなかったっけ?」

 

 そんなタワーみたいな名前じゃなかった気が! 

 

ストライクフリーダム

 

 なにそれ!? 

 

「ストラディバリウスです」

「それです、メイドさん!」

 

 すごくスッキリした気分……! 

 

 

「……ん?」

 

 引き続き、ひとりちゃんと一緒に色々と見て回っていると、姫榊ちゃんが何かを眺めていた。

 姫榊ちゃんの視線の先にあるのは……小さいギター? 

 

「……………………」

 

 私の視線に気付いた姫榊ちゃんはその小さいギターを手に取り、こっちに歩いてきた。

 そして、小さいギターを私の目の前に差し出す。

 

「えっ?」

 

 姫榊ちゃんの意図が読めない。

 ……とりあえず、受け取っておく。

 

「えっと……この小さいギター……?」

「きっ、喜多ちゃん……それ、ウクレレです……」

 

 ウクレレ!? 

 なんでウクレレ……しかも、なんか姫榊ちゃんがジッと見つめてくるんだけど……。

 

「……もしかして、弾いてみてほしいの?」

持たせてみたかっただけ

「それだけ!?」

 

 私からウクレレを受け取り、姫榊ちゃんは元にあった場所に戻す。

 いったい何だったのかしら……? 

 

「アレも姫榊ちゃんのお父さんの?」

 

 フルフルと首を横に振る。

 

「じゃあ、姫榊ちゃんの?」

 

 またもや首を横に振る。

 

「ん〜……誰のなの?」

秘密

 

 姫榊ちゃんはそう書いたメモ用紙を見せて踵を返した。

 ……ほんとに、なんだったのだろうか?

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