白雪 花澄side
「ぴゃああああああああああぁっ!!!!!」
登校中、バーンッ! と大きな音を立てて後藤先輩が破裂した。
周辺に散らばっているのは後藤先輩の肉片……いや、これ肉片なの?
なんかブヨブヨして……スライムみたいな感触するんだけど。
「このパターンなら、カケラを集めてくっ付ければ元に戻るわ」
『流石は後藤学の権威、喜多博士』
後藤学って何。
喜多博士って何。
「放っておいてもオートで集まって復活するけど……それだとHRに間に合わないし、急いで集めちゃいましょう」
『了解です』
……これって夢?
……うん、ほっぺを抓っても覚めない。
これは……現実なんだ。
残念だけど。
「……はっ!?」
復活した。
ほんとに復活したよ。
この人、人間じゃないよっ!
「大丈夫? ひとりちゃん?」
「あ……は、はい……」
「……………………」
後藤先輩は喜多先輩に肩を支えられ、歩き始める。
「……なんだか、後藤先輩いつもより顔色悪くないですか?」
いや、いつも不健康な色白い顔色してるけど……今はなんていうか、青ざめてるっていうか。
「ひとりちゃん、気分はどう?」
「あ……はい、なんとか……」
肩を支えられているのに、足元がおぼつかない。
明らかに様子がおかしい。
破裂する前は普通にしていたのに。
「復活したてで体力が回復してないのかしら……?」
『保健室に行った方がいいんじゃ』
「あ、いえ……へいきです……」
「ひとりちゃん、無理しないでね?」
階段で先輩たちと別れ、私とお姉様はそれぞれの教室へ向かう。
後藤先輩の事は心配ではあるけど……喜多先輩に任せるしかない。
『花澄、見て』
「ん?」
お姉様に視線を向ける。
スカートのポケットに手を入れて……何かを取り出した。
お姉様の手のひらに乗っているのは……
「……さっきの後藤先輩のカケラ!?」
『こっそり回収しておいた』
それが体調不良の原因なんじゃ!?
「早く返しに行きましょう!」
『ヤダ』
「お姉様!?」
この人は……!
たまに起きるやんちゃ病が発症したのか!
「それで何するつもりですか!?」
絶対に良からぬ事を思い付いたに違いない!
どうにかして止めないとっ……!
『これを取り込んだらどうなるのかなって』
やっぱりロクでもない事だ!
そもそも取り込むって何!?
……待って、後藤先輩のカケラ、なんか……モゴモゴ動いてる?
「お、お姉様……それ、動いてません……?」
お姉様はカケラをジッと眺めている。
ピンク色のジェルは「ずももも……」と音を立ててお姉様の手のひらに少しづつ、吸収されていってる。
そう、お姉様が後藤先輩のカケラを、吸収していってる。
「ちょっ、お姉様!?」
急いでカケラを取り上げようと手を伸ばしたその時だった。
「っ!?」
お姉様の全身が白く発光した。
その光は徐々に広がっていき……次第に学校中を飲み込んだ。
*
喜多 郁代side
「な、なんだったのかしら今の光……?」
「ん……」
突然、視界が真っ白に染まった。
すぐにその現象は収まったけれど……何か嫌な予感がする。
ひとりちゃんは机にグッタリと顔をくっ付けている。
顔色は青ざめたまま。
「マジで大丈夫か後藤? 保健室に行った方がよくね……?」
「んん……」
さっつーの呼びかけにもまともに応えない。
「さっきの謎の光といい、後藤の様子といい……何が起こってるんだ?」
「わかんない……ただ、良くない事が起きてる気がする……」
「喜多先輩! 喜多せんぱーいっ!!」
白雪さんの声だ。
白雪さんが勢いよく教室に入ってくる。
背中には……グッタリとした様子の姫榊ちゃんが背負われていた。
「このバカが……! やらかしました!」
「やらかした?」
さっきの光は姫榊ちゃんの仕業……?
「あれ、その子……姫榊じゃん」
白雪さんは姫榊ちゃんを背中から下ろして座らせる。
グッタリと壁にもたれかかり……その様子はまるで生気を失った……人形のように思えてしまうぐらいに衰弱していた。
「えっと、そちらの方は……?」
「ども〜、佐々木です。喜多と後藤の友達で〜す」
「あっ、どうも……このバカタレの幼馴染の白雪です」
白雪さんが丁寧に頭を下げる。
「……じゃなくて! 喜多先輩!」
「なっ、なに?」
「このアホンダラを……お姉様を、助けてください!」
「……とりあえず、何があったのか説明して?」
白雪さん曰く……興味本意で姫榊ちゃんがひとりちゃんのカケラを回収し、それを取り込んだ……そしたら姫榊ちゃんが発光し、その後……姫榊ちゃんは魂が抜けたような状態になってしまった……らしい。
「肉片を吸収とかバトル漫画かよ」
「どうすれば……お姉様……後藤先輩……」
「……ねえ、姫榊ちゃんの様子……ちょっと見て」
私は姫榊ちゃんを指差す。
さっつーと白雪さんも私の指差した箇所を見る。
「うわっ! これ……」
「お姉様の髪の毛の根元が……ピンク色になってる!?」
姫榊ちゃんの髪型は額の髪を搔き上げている振分髪。
だからおでこや根元がよく見える。
……そう、根元の部分がひとりちゃんの髪色と同じになっている。
しかも、ピンク色の面積は広がりつつある。
「これってさ、漫画とかだと……侵食されていってそうな状況じゃね?」
「侵食……もしかしたら、このままだとお姉様が後藤先輩みたいに!?」
「と、取り返しのつかない事になる前にどうにかしましょう!」
「どうにかって、どうするんですか!?」
こんなケース、初めてだ。
……いや、1つだけ似たケースがあった。
でもあの時とは明らかに違う……あの時は時間が経てば治ったけど、今回はそうはいかなそうだ!
「……取り込んだカケラを取り出す、ってのは?」
「どうやって取り出すんですか佐々木先輩!」
「ん〜……ベタだけど、後藤に姫榊を触れさせてみるとか」
「なりふり構ってられないわ! 何でも試してみましょう!」
私はひとりちゃんの肩を持ち上げ、姫榊ちゃんの前まで持って行く。
そして腕を伸ばし、ひとりちゃんの手を姫榊ちゃんの手に触れさせた途端……
パンッ!!
ひとりちゃんが爆発四散した。
「え……?」
「マジかよ」
そして、即座に破片が集まりひとりちゃんは復活。
ただし、気を失っているのか床に倒れ込んでいる。
「……お姉様は!?」
姫榊ちゃんに視線を移す。
髪の毛の色が……黒一色!
顔色も元に戻ってる!
「元に戻ったっぽいな」
「よっ、よかった〜!」
「ふう〜……一時はどうなるかと思ったわ」
2人が無事で良かった。
……姫榊ちゃんは後でしっかりとお説教しておかないと、ね。