嫁を育てて世界を救え!~異世界転移物語~   作:妖怪せんべえ

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今回は様々な問題があったらめ投稿が遅くなりました。すいません。


14話 七つの海よりキミの海

「よくやってくれた」

 

 ウォーム王国に戻り、作戦の成功を告げるためにブリッツ王のもとを訪れた俺を迎えたのはこの言葉だった。

 

「はい。無傷で、というは訳にはいかなったですが、なんとかやりきれました」

 

 こちらの被害はけして少なくなかったが、目的は完全に達した。これでしばらくの間はドミーナ王国は混乱に包まれる。後は政治的に溶かすなり利用するなりをブリッツ王と決めていこう。

 

「後は王の欠けたドミーナの扱いだが、公平は一度スフィーダ王国に戻るのだろう?」

 

「はい。ドミーナの件は早く行動を開始しないといけないとは理解しているのですが、すみません、こちらにも都合がありまして」

 

「いい、わかっている。急ぐと言っても、2、3日やそこらでどうなる話しでもないだろう。問題は無い。ところで、もう契約を結ぶ事は可能か?」

 

「はい。ただ、ブリッツ王がお書きになった正式な書簡が必要です。それをスフィーダに持ち帰り書面に同意した上で、スフィーダからもこちらに書簡をお渡しします。それに同意した時に、両国の間に正式な協定が結ばれた事になります」

 

「そうか。すぐに用意しよう。こちらとしても早くスフィーダと手を結んで、お前を引き入れたいと考えているのでな。公平がドミーナに寝返った場合の事を考えると恐ろしい」

 

 ふーん。そういう感じで釘を刺すのね。一見すると褒めてるように思えるけど、その実これは裏切ったら許さないと言っているのだろう。こっちは裏切ろうにも裏切れないっての。どんだけ俺の事評価してるんだよ。それに、ここは絶対に裏切らないさ。優秀なトップがいる国は将来が有望だからな。成長に手を貸して、俺の助けになってもらうのさ。

 

「ご冗談を。私だってウォーム王国とは戦いたくありませんよ。目の前でこの国の兵の戦いを見た今ならなおさらに」

 

「ならいいがな。書簡をしたためる。その間ぜひウォーム王国の街並みを見て回ってくれ。王である私が言うのもなんだが、いいところだぞ。勝利祝いに街にあるものは好きに買って構わない。国が保証する」

 

 やったぜ。こっちの世界に来てからずっと働きっぱなしだったからいい機会だ、思いっきり羽をのばそう。美味しいものを食べて、嗜好品を買って、そしてあわよくば奴隷ちゃんなんかを買ったりしちゃって。えへへ。夢が広がりまくリングだぜ。

 

「ありがとうございます!」

 

「喜んでくれたようでなによりだ。すまんが、護衛と支払いの保証証明を兼ねて国の精鋭を1人付ける」

 

「どんな方ですか?」

 

「呪術師のカンナ・クロサレナ。気を付けろよ。見目麗しく肉感的な体をしているが、呪術系血統の頂点に立つクロサレナ一族の長女だ。この間も軍の1人が、彼女の寝込みを襲おうとして呪われた」

 

 なんでそんなのを護衛に付けさせようと思ったんだよ。もっとまともなの付けてくれよ。いくら綺麗な人でも呪われるのは怖いよ。この世界の呪いは多分本当に存在する。間違いない。だってファンタジーだもん。

 

「興味本位ですが、その呪われた兵士はどうなったんですか?」

 

「知らない方が身のためだ」

 

 超怖ええええ。なんだよそれありえねえ。どうなったんだよ。超気になるじゃねえか。断って別の人にしてもらおうかな――

 

「む、来たか。クロサレナ、彼らに街を案内してやってくれ」

 

「……わかったわ……」

 

 ――と、思ったがやっぱりやめよう、うん。絶対にこのままの方がいい。だって超綺麗なんだもん。なんとなく病んでる気がしないでもないけど、そこはきっと呪術師だからだろう。

 

「よ、よろしく! あの……握手……」

 

 カンナはゆっくりとした足取りで俺に近づき、そう言って控えめに手を差し出してきた。

 

「はいはい。今日は街案内よろしく頼むねー」

 

 俺は差し出された手を握り返した。女の子なだけあってカンナの手はとても柔らかかった。ずっと握っていたいけど、それだとただの変態だからな。魔王の称号だけじゃなく変態の称号まで獲得してしまったら末期だ。

 

「ふふふ……ええ……喜んで……うふふ」

 

 

 

「すごいわねー。人がいっぱいいる」

 

 俺の肩に乗って羽を休めていたメアリーが言った。確かに、メアリーの言う通り人が多い。この世界に来て初めてこんなにたくさんの人を見たな。初日から兵団との打ち合わとかで忙しくて街を見て回る時間が無かったからな、人が多いだろうとは思っていたけど、まさかここまでとは。

 

 ウォーム王国は市が栄えてるようだ。多くの人が店先に思い思いの商品を広げて物々交換をしている。結構な規模だし、人の多さも相まってウォームは大国と言っても差し支えないだろう。

 

 これだけの規模で小さな取り引きがあちこちでを行われているのを見るのは初めてであろう騎士長とアンジェは、目を白黒とさせていた。まあ、スフィーダ王国は比較的小国だしな。しょうがないだろう。その内俺が大国にするけどさ。

 

 しかし、ドミーナと争っていたにも関わらず、人々の顔色がいいのはやっぱり大国の貫禄ってやつかね。食料に余裕があるって大事だな。

 

 兵が足りないとか言ってたけど、これだけの人がいるんだ、その辺歩いてる人に兵役を課したら兵が不足してる問題なんてすぐにでも解決しそうなもんだけど、ブリッツ王がやらないという事は何か訳があるんだろう。

 

 それにしても、あのリンゴみたいな果物美味そうだな。

 

「りんご……食べたいの……?」

 

 知らす知らずの内に視線が固定されてたのかカンナが俺に聞いてきた。

 

「ん? ああ、出来れば食べたい」

 

「……待ってて」

 

 そう言ってカンナは小走りでリンゴを売っている小太りのハゲたおっさんのもとへと向かっていった。一言二言何かを話して、こちらに山程のリンゴを抱えて戻ってきた。

 

「はい。……たくさんあるから……好きなだけ食べて……」

 

「あ、ありがとう」

 

 たくさん過ぎるだろう。どう見ても10個以上あるんですけど……。そんないらないっす。きっと客人相手だから気を使ったんだろう。足りないより多い方がいいしな。そういう事にしておこう。

 

「うふふ……いいのよ……ふふふ……」

 

「美味そうだな。俺にもくれよ」

 

 そう言って騎士長がカンナが両手で抱えているリンゴの山に手を伸ばした。

 

「……好きにすればいい……」

 

「アンジェも食いな。みずみずしくて美味いよ」

 

 このリンゴは俺の知っているリンゴとは比べ物にならない程みずみずしくて美味かった。空気や水が綺麗な分作物も美味しく育つのかな。

 

「はい。いただきます」

 

 さーてどーこに案内してもらおうかなー。出来ればドワーフがやってる鍛冶屋を見たいんだけど、ここには無いだろうしなあ。そうだ、行商人が集まる場所に案内してもらうか。他国の品を確認したかったし、丁度いい機会だ。

 

「行商人が集まる場所とかってある? あったらぜひ案内してほしいんだけど」

 

「……なぜ?」

 

「うーん、いろんな国の商品を見てみたいからかな。俺あまりそういうのに詳しくなくてさ。勉強中なんだ」

 

「……わかったわ……なら丁度いい場所がある」

 

 そう言ってカンナはリンゴを抱えたままゆっくりと俺達を先導し始めた。

 

 後ろ姿を見てて思うけど、やっぱりすげえ暗い雰囲気をまとってるな。背後霊でも見えそうな勢いだ。着てる服が黒いのも更に助長している。

 

 ものすごいボインボインなんだからせめて猫背を直してちょ。せっかくのボインが見えないよ。俺泣いちゃうよ?

 

 なんて事を考えていると、街の中心部まで来ていた。いかにも行商人風の人が大きな馬車から荷物を取り出してたり、羊皮紙片手に偉そうな人となんか話してたりと先程までの市とはまた別の取り引きが行われていた。値引き交渉とかしてるみたいだし、あっちは水産が中心だけど、雰囲気的には中央卸売市場みたいな感じだな。

 

「はあー。またすげえもんだな。なんか自信無くなってくるな」

 

 騎士長が驚きと呆れが混ざった声音で言った。そりゃあスフィーダと比べたらデカイけどさ、その態度はお上りさんそのものだよ。

 

「なんでだよ。自分の国を誇ろうぜ? スフィーダだって悪くないだろ」

 

「そりゃそうだけどよ。こんなん見せられたら、なあ?」

 

「さあね。ここの商品は個人でも取り引き出来るの?」

 

 騎士長との話しを打ち切って、俺はカンナに疑問をぶつけた。もし個人でも取り引きが出来るのであれば、いろいろと楽しそうだ。俺の世界のものとか見せたらどんな反応するかな。

 

「出来るわ……欲しいもの、あるの……?」

 

「んー今は特にないかな。将来的に必要になったらここに来るかもしれないから、その時にまたカンナにお願いするよ」

 

「わかったわ……」

 

「あ、俺は武器と防具が欲しいな。ボロくなってきてたし、いい機会だ」

 

「あくまでもブリッツ王の好意なんだから遠慮はしろよ? アンジェも、折れたハルバードの代わりを見つけてくれば?」

 

「そうですね。武器が無いと公平様をお守り出来ませんし、ブリッツ王の好意に甘えます」

 

「うん、そうしな」

 

「うっひゃー、ミスリル鋼の剣だってよ! やべえね初めて見たぜ。こっちはカタリナの鎧かよ。すげえ初めて見るもんばっかだ!」

 

 騎士長……常識の範囲内で頼むよ……。ミスリルとかファンタジー世界だと高価なものなんじゃねえの? やめてくれよ、もっと安い銅の剣とかにしてくれ……。

 

「……この後、あなたは国に戻ってしまうの?」

 

 大人げなくはしゃぐ騎士長を眺めていると、いつの間にか俺の横にぴったりと張り付いていたカンナが言った。

 

「うん。あくまでも拠点はあっちだからね。ドミーナの事もあるし、しばらくは頻繁に行き来するだろうけどね。どしたの? なんかあるの?」

 

「……そう……わかったわ。ただ……知りたかっただけ」

 

 そんな感じで俺達はまったりとしたペースで会話をしていた。しばらくして、ホクホク顔の騎士長がアンジェを伴って戻ってきた。

 

「いやあ、いいもん貰えたぜ。ってなんかしてたん?」

 

 なんのこっちゃと思って騎士長が指指している隣を見ると、カンナが服が触れるくらい俺の近くにいた。はしゃいでる騎士長達を見ながら会話してたから全く気づかなかった。多分カンナは会話してると無意識に人に近づく癖を持っているのだろう。隣を歩いてるとよく手とかがぶつかる人がいるけど、あんな感じだろ。

 

「なんもしとらんよ。それ、ちゃんと常識の範囲内だよな?」

 

 俺は騎士長が手にしていた、光を反射して輝いてる剣を指さして言った。アンジェは遠慮の固まりみたいな人間だから問題無いだろうけど、騎士長は怪しいからな。

 

「おう、鋼の剣だ。ちょいと値は張るが、俺らの働きからしたら妥当だろう」

 

 鋼って、ラインに触れるか触れないかの微妙もん選んできたな。値段知らんからわからんけど、そんなに高くない事を祈ろう。

 

「アンジェはどんなのにしたの?」

 

「銅のハルバードにしました。今の私の力だと、またすぐに折れてしまうので、直しやすい銅にしてみました」

 

 成る程ね。銅ならある程度軟性があるから、鉄よりはポッキリいきづらいだろうし、いいチョイスだ。

 

「なあ、そろそろ腹減らないか? もういい時間だし、飯にしようぜ」

 

 騎士長は新たに手に入れた剣を腰に固定しながら、腹をさするという器用な事をしながら言った。

 

「確かに腹減ったな。カンナ、ご飯食べれる場所に案内してくれる?」

 

「少し行った所にご飯の美味しい酒場があるわ……」

 

 酒場か、いいね。ファンタジーRPGっぽい。冒険に役立つ事を店主が教えてくれるんだよな。なんて事を考えながら酒場へと向かった。

 

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