どなたか小説家になろうの方でレビューを書いてください。
ストーリー展開及び文章表現、なんでも構いません。作者の今後のためにどうぞよろしくお願い致します。
カンナが言っていた酒場はさっきの交易地からほど近い場所にあった。主に行商人が訪れるところなのだろう酒場というよりも食事処と言った方がしっくりとくる。そして、例にもれずここも大勢の人で溢れかえっていた。いい加減慣れてもいい頃だと思うんだげど、騎士長はまた驚いていた。アンジェはもう驚かなくなってきているというのに。
俺達はカウンターの目の前の4人がけのテーブルに座った。席順は俺の隣がカンナ、前にアンジェ、その隣が騎士長といった具合だ。
「公平は何を頼むの……?」
カンナに言われてメニューに目を落とした。当たり前の事だけど、慣れ親しんだ料理名は1つも目にする事が出来なかった。
まあでもさっきのリンゴを見るに、名前が全然違うからといってゲテモノが出てくるような事はないだろう。一応この世界にもニワトリみたいな鳥もいるみたいだし。恐らく名称と見た目に違いがあるだけで、根本的な違いはないはずだ。肉は肉だし野菜は野菜だ。
ならば、大体失敗の無い安牌は肉系の食べ物だ。それらの中でも鳥系はほぼ絶対安全だと言い切れる。ならば選ぶのは唯一つだ。
「俺はこのカサミ鳥のナギリ海風にしようかな」
「……他に食べたいのは?」
「んーやっぱ肉かな。牛も食べたいけど、そんなに入らんしなあ」
「じゃあ……私が牛を頼む」
「え、いや、いいよ。悪いし。好きなの頼みなよ」
「いいの。今は牛が食べたい気分なの」
「そっか。なんか悪いね」
カンナは僅かに口角を上げた。一瞬、それが何を意味するのかをわからなかったが、彼女なりの微笑みだったのだろうと理解するのに時間はかからなかった。
「んじゃ、皆決まったな。頼むぞ」
騎士長が、先程から酒や料理を盆に乗せて忙しなく席を回っているウェイトレスに声をかけた。
ウェイトレスは酒と料理で満たされた盆2つを片手で持って、俺達の注文をメモしていた。
見るたびに思うけど、あれとんでもないバランス感覚だよな。片手で盆2つ持つとか俺だったら絶対に出来ない。だけど、ファミレスの店員とかは平然とやってるんだよな。
「あれすごくない?」
ウェイトレスが去っていったのを確認して、俺は騎士長に言った。
「何がだ?」
「盆を片手で2つ持つやつだよ」
「ああ、言われてみれば確かに。どうやってんだろうな」
「手と手首? 的な部分で持ってるってのはわかるんだけど、どうやっても無理だと思うんだ。すごいよな」
「そうだな。でもあの技術ってここでしか役に立たないよな」
「まあ確かに」
「見て……」
服の袖をちょいちょいと引っ張られて見ると、カンナが俺のコップと自分のコップを手のひらと手首で持っていた。
「すげえ! コップとか盆より難易度高いじゃん。よく出来るなあ」
カンナの手首は男としては細い部類に入る俺の手首よりも更に細い。にも関わらず底面積の少ないコップを手首で持てるという事はやはりバランス感覚がいいからだろう。
「うふふ……」
表情の変化が乏しい上に常に暗い雰囲気をまとっているからわかりづらいけど、これは喜んでいると解釈していいのだろうか。
「お待たせしましたー! ご注文の品をお持ちしましたー!」
例のごとく大量の酒と料理を乗せた盆を持ったウェイトレスが俺達の料理を持ってきた。
「こちらがカサミ鳥のナギリ海風でーすっ」
「……」
俺は言葉を失った。皿の上にこんがりといい色に焼けたやたらとデカイまるっとした部位と、切り落とされたキリンのように長い首が置かれていた。要するに、ダチョウような鳥だった。
うまいこと皿の上に立っている顏が俺を見つめていた。シュール過ぎる。こっち見んなよ……。
ナイフで思い切って切って見ると、中から香草が出てきた。ナギリ海風とはつまり、香草を使った丸焼きという事なのだろう。
「うん、うまいな」
切り取って食べてみると、美味かった。一時はどうなる事かと思ったが、これならば普通に全部食べられるだろう。でも、なぜ頭が一緒の皿に乗ってるんだ。
「それは……頭も一美味しいのよ……」
俺の疑問を察したのか、カンナが教えてくれた。確かに、頭が美味しいとされる食べ物は数多くあるけど、いざ食べるとなると中々勇気がいるな。首を持って頭をかじり取ってみた。
豚と鳥を足して2で割ったような食感に香草の香りが乗っていた。食べた事がない味だけど、決してまずくはない。食べ続けていれば、その内好きになりそうな。スルメのような味だった。
「私のも……食べて……」
カンナが牛料理を皿ごと俺に差し出してきた。こちらはオーソドックスなビーフステーキのようなものだった。
「悪いね、そんじゃ一口」
特に面白おかしい奇抜なものではない、見た目通りの味だな。こっちにすればよかったかもしれない。ま、今更だな。
「公平様、私のも食べてみますか?」
「うん、ちょうだい。てか、皆で食べ比べでもするか?」
「お、いい事言うじゃないか。実はさっきからお前のやつが気になってたんだ」
「なんだ。それならそうと早く言えばよかったのに」
「なんとなく遠慮しちまってな。ははは」
その後も飯を食べながらまったりとした時を酒場で過ごした。メアリーも活気がある酒場の雰囲気を気に入ったのか、気持ちよさそうに俺の周りを飛び回っていた。
楽しい時間というのは過ぎるのが早いもので、気がつけばブリッツ王は書簡を完成させて、俺達をスフィーダに送り届ける準備までしていた。
そのせい、いや、そのおかげと言うべきか、王宮へ戻ってさほどもしない内にスフィーダに戻る事になった。
「それじゃ、お世話になりました。また3日後くらいに来ますのでその時までにドミーナの扱いに関する書類を作成しておいていただけると助かります」
「わかった。道中気を付けろよ。知ってると思うが、この辺は魔物が出る事もある」
忙しい合間をぬって俺達を見送りに来てくれたブリッツ王。一国の王がここまでしてくれるとは、余程俺達との関係を重視してくれているのだろう。ありがたい事だ。
「ありがとうございます。なんか馬車の荷物がすごい事になってますけど、どうしたんですか?」
俺達を送り届けてくれる馬車には荷台が2つ付いていて、その両方が荷物でパンパンになっていた。白い布がかけられているせいで中身が何なのかわからない。
「食料が入っている。ウォーム王国からスフィーダ王国への気持ちだ」
「そんな、悪いですよ。ただでさえ先行投資をして頂いているのに、これ以上受け取れませんよ」
「言っただろう? これは気持ちだ。スフィーダ王国、というよりもお前に恩を売っておいて損は無さそうだからな。うまく活用してくれ。そして、利益を倍にして返してくれ」
「打算的ですね。でも、だからこそ信じられる。これからより良い関係を築いていきましょう。それでは」
「ああ、気をつけてな」
ブリッツ王とかたい握手を交わした。今度こそ、お別れだ。俺達は馬車に乗り込んだ。
ブリッツ王は姿が見えなくなるまで手を振り続けてくれた。本当に、個人的にも良い関係を築いていきたいと思う。
惜しむらくはカンナが見送りに来てくれなかった事だ。あんなデカイ乳一回でいいから揉んでみたい。けど、揉んだら呪われるんだろうなあ。
「公平様、スフィーダに着くまで時間があります、少しは寝てください」
「ん、そうするよ」
今日という日は長かった。ドミーナの侵略に始まり、ウォーム王国の観光。めちゃくちゃ疲れた。
そりゃそうだよな、よくよく考えたら俺はこっちの世界に来てからまともに休んだ記憶がない。そろそろ休まないと倒れるかもわからんね。ウォームとの協定が結べたら少し休もう。うん、それがいい。
「おやすみなさい」
アンジェが優しく頭を撫でてくれた。そのおかげか、すぐに俺はまどろみの世界へと引きづられていった――
――ガツン。
「いたっ……!」
馬車が石を踏んだのだろうか。結構大きな衝撃が走った。そのせいで、眠気が一瞬にして覚めてしまった。まさか眠りに落ちる一歩手前で起こされるとは。
「なんだ? 今の声は誰のだ? アンジェ、お前のか?」
騎士長が言った。
「いえ、私は声を出していませんよ。公平様も驚いただけでしたしメアリーでもないです」
「騎士長の聞き間違いじゃないの? 騎士長だってそれなりに疲れてるでしょ。夢の中での出来事とごっちゃになってるんだよ」
「……そうかなぁ?」
騎士長は納得いってない様子だったが、正直そんな事はどうでもよかった。眠たいのだ。
眠気が覚めたとはいっても一瞬の話しだ。油断すればすぐにでも夢の世界に引きづられそうな程には眠い。
「大丈夫です。さあ、膝を貸しますから寝てください」
アンジェが俺の頭を膝へと導いた。馬車はいまだ小さくゴトゴトと揺れていたが、俺は安心したのかすぐに眠りに落ちた。