嫁を育てて世界を救え!~異世界転移物語~   作:妖怪せんべえ

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連続投稿企画は成功に終わりました。皆様のご協力のおかげです。ありがとうございました。


26話 ヘソまがりんちょ

 10日目

 

 

 早朝、俺達は昨日に引き続き、ドミーナの扱いについて協議するために客間にいた。昨日と違うのは、元に戻った、と言っていいのかどうか微妙だが、カンナもいる事だ。

 

 現在は、ブリッツ王の姿はまだ見えないので、予め従者が用意していた紅茶と軽食をつまみながら談笑していた。

 

「全く、カンナには困ったものです。余計な事しかしないです」

 

 すまない、談笑していた、というのは嘘だった。というのも、アンジェは今朝からずっと昨日の出来事を愚痴のように言っているのだ。

 

 確かに、昨日のは正直洒落にならない出来事だったけど、もう済んだ事だし、あれは俺にも落ち度があった。かといってアンジェの言う事も正論なので、否定する事が出来なかった。だから、ここで俺がとれる行動は1つ。即ち誤魔化す、だ。

 

「まあまあ、済んだ事だしもういいじゃないか。それにほら、カンナだって元に戻ったし……?」

 

 最後が疑問形なのには理由がある。カンナのダスクエリアをクリアした事で、俺は彼女の承認欲求を満たした。そこまでいい。それによって当然の結果というべきか、俺は以前よりもカンナを理解したし、カンナまた、俺という存在が占める心のパーセントテージが上がったようだった。

 

 それによってか、アンジェ曰く今までよりも距離感が近いそうだ。物理的な距離はそれ程変わっていないので、精神的な面での事を言っているのだろうけど、こっちとしては特に意識していない。

 

 どうもアンジェはそれが気に食わないらしく、今朝からずっと愚痴を交えてカンナに突っかかっていた。当のカンナはといえば――

 

「悪かったわね……。もうあんな事にはならないつもりよ。これからは2人で公平を護りましょ?」

 

 ――といった具合で余裕たっぷりで答えるもんだから、それもアンジェの神経を逆撫でしていた。

 

 近い内にアンジェのダスクエリアにも入らないと、血を見る事になりそうで怖い。バタバタしててダスクエリアに入る条件とか調べてなかったから、後でしっかりとハウトゥーファンタジーを読んでおかなければ。

 

「なあ、今朝からずっと疑問に思ってたんだけどさ、俺の知らない内にカンナなんかやらかしたの?」

 

「誰だお前? 山田?」

 

「ふざけんじゃねえよ! ちょっと顏が変形したくらいで人の事間違えんな! 俺だよ俺! だいたい何だよ山田って。ありふれすぎだろ!」

 

「お前今山田さんバカにしたな? 謝れよ。全国の山田さんに失礼だろ」

 

「す、すいません山田さん。俺が悪かったっす。これでいいか?」

 

「そうだな。でもよく考えたら山田さんがありふれてるっていうのは事実だから、別にバカにはしてないよな」

 

「俺の謝り損じゃねえか! くそ! なんで朝っぱらこんな下らないコントしないといけないんだ。今は俺の顏の話しをしてるんだろうが!」

 

「冗談だよ。そんなに怒るなよ。腫れが引いたら案外イケメンになってるかもよ?」

 

 騎士長は昨日の時点で顏が残念な事になっていたが、一晩明けて顏が腫れた。そのせいでただでさえ残念な事になってしまっていた顏が、今や見る影もない。てるてる坊主のような顏になっている。

 

「俺にはより酷い事になっている未来しか見えねえよ……」

 

「大丈夫だって。その内良い人が現れるさ。顏なんて関係ないさ!」

 

「お前が言っても説得力ねえんだよ!」

 

 そういえば、もはや忘れかけていたが、転移ボーナスで俺の容姿はこの世界でかなり男前になっているんだっけか。やべえ、騎士長にかける言葉がない……。

 

「失礼ね。公平が言う事は全部正しいわ。訂正しなさい……」

 

「そ、そうですよ。公平様はいつだって正しいんです。謝るべきです」

 

 カンナに続いてアンジェまで……。そんな事で張り合わんでいいから。俺がいつだって正しいとは限らないし、何よりも騎士長が可哀想だろ。

 

「え、俺悪者なの……?」

 

「いや、騎士長は悪くない」

 

「おお、公平……」

 

「悪いのは騎士長の顏だ」

 

「悪いの結局俺じゃねえかよ……」

 

 正直な話し、残念残念と言っているが、実際のところは騎士長の顏はそこまで悪くない。では、何故残念扱いされるのか。それは一重に彼のキャラによるものだろう。世の中には残念なイケメンという言葉がある。彼がまさにそれだ。別にイケメンって程じゃないけど。

 

「ずいぶんと盛り上がってるみたいだな」

 

 待ち人きたれり。ブリッツ王がやっと客間に来た。紅茶一杯きっちりと飲める程の時間は待ったが、会話が楽しかったからそれ程長く感じなかった。

 

「お早うございます、ブリッツ王」

 

「ああ、おはよう。いや、すまんな。遅れてしまった。今回の協議で使う資料の作成に手間取ってしまってな」

 

「いえ、それ程待ってませんから、お構いなく。今日はドミーナの状況把握でしたね」

 

 俺達がスフィーダに戻り、魔物と戦ったり、エルフの村に行き交渉している間に、ウォーム王国はドミーナ王国に再び奇襲を仕掛け、残存兵力を掃討、武装解除させていた。

 

 現在ドミーナはネズミ一匹行き来出来ない程厳重に管理されている。おかげで、こうしてしっかりと話し合いをする事が出来ている。

 

 俺が指示しなくても、こういう事をやってくれるあたり、ブリッツ王は本当に王として優秀だ。取り引き相手として、またとない相手だ。

 

「そうだ。時間がかかった分、わかりやすくまとめてあるはずだ。とりあえず、皆これを読んでくれ。話しはそれからだ」

 

 そう言ってブリッツ王はこの場にいる人間全てに羊皮紙を配った。

 

「今回も協議は長くなる事が予想される。途中、食事休憩などは挟むが、基本的に方針が決定するまでは休めないと考えてくれ」

 

 前回のドミーナの民の扱いでさえ相当な時間がかかったからな、今回は特に重要な議題だし、こりゃ今日中に終わらんかもしれないな。せっかくウォームに来たんだから観光がしたかったんだけど、まだまだ先の話しになりそうだ。

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