12日目
俺達は経験値を求めて、俺とメアリー、アンジェ、カンナの三人プラス一匹で、魔物を狩っていた。
今は、一時的に騎士長とは行動を別にしている。こと戦闘面において、アンジェとカンナ以上のものは見込めないので、彼には別の事を頼んだのだ。俺の家の防衛設備建築の指揮を執ってもらっている。
厳命しているから可能性は低いとは思うが、家の中に入られてしまう事だけはあってはならない。騎士長を向かわせたのは監視の意味も含めている。
更に、土地の安全確保も兼ねて、工房の建築予定地の周辺をメインに魔物の巣に押しかけて滅ぼしていった。
魔物からしたらたまったものではないが、運がなかったと思って諦めてもらうしかない。生態系への影響があるかもしれないけど、大したものじゃないだろう。
「昨日からずっと働きっぱなしだけど、2人共大丈夫?」
「私の方は問題ないんですが……武器が」
「私はまだやれるわ……」
武器か。もはや人が使う武器じゃアンジェに見合わなくなってきてるな。確かに、刃の方はすっかりと欠けてしまって切れ味は期待できそうになかった。力任せに振り下ろして断ち切っているのだろう。
「刃物よりも鈍器にした方がいいかもしれないな。今の状況だと新しいのを買ってもすぐに壊れちゃいそうだ」
「すみません」
「アンジェが謝る事じゃないさ。とりあえず、そうだな、ハンマーでも探すか」
アンジェの力から考えて、並の鈍器じゃすぐに砕けてしまう。近いうちに最低でも鋼鉄製の戦鎚を作らせるか。
「そろそろ経験値貯まったんじゃないのー?」
「ん、確かにそうだな。ハウトゥーファンタジー見して」
メアリーからハウトゥーファンタジーを受け取った。久しぶりの確認になる。経験値の確認だけじゃなく、2人の成長具合も見るかな。
『里中公平 育成能力610 経験値120万 ???』
『呪術師カンナ・クロサレナ 愛情度900 レベル43 育成度630』
『戦乙女アンジェ 愛情度380 レベル51 育成度580』
は? ??? って何? ちょっと何言ってるかわかりませんねえ。最近一気にハウトゥーファンタジーの信頼性が失われてきている気がする。今のところ嘘はないけど、意図的にわかりづらくしている節が感じられる。
なにはともあれ、経験値は十分過ぎる程貯まった。銃を買いに一度家に戻るか。土地の開拓具合も確認したいしな。俺達は馬車に乗り、家を目指して出発した。
開拓が思ったよりも早く進んでいた。エルフ達は早くも仮設の家を作り、土地も耕して小さいながらもしっかりと集落としての生活のスタートダッシュを切ったようだった。
鍛冶工房の建設の方も、2日前に頼んだばかりだというのに、半分程は終わっているように見える。
何よりも驚いたのは俺の家の防衛設備がほとんど完成している事だ。城壁というには心もとないが、大量の丸太で家の周りは囲われ、物見やぐらもついている。
「全体的に早いな……」
嬉しい誤算だ。ここまでくれば後は武装だ。装備を充実させれば、領土を広げに、遠征に行く事が出来るようになる。そうすれば、周辺諸国の現状をハウトゥーファンタジーで読むだけでなく、自分の目でも確認出来るようになる。
「おお、戻ったか」
「騎士長! すごいじゃないか!」
「おう。十分な飯があたってるし、何よりこれの建設を命じたのがお前だというのがデカイみたいだ」
「ん? なぜに俺?」
「お前ははたから見れば救国の英雄様だぞ。その英雄様たってのお願いだ。気合も入るってもんだ。もっとも、俺はお前の俗な部分を知ってるから英雄だとはこれっぽっちも思ってないけどな!」
「最後が余計だよ。しかし、そうか……」
意外なところで影響が出ているな。ひょっとすると、ウォームの方でもそうなのだろうか? これは、ちょっとした事でも大きな影響が出そうだな。立ち振舞いに気をつけないとマズイかも……。めんどくせえ。
「戻ってきたって事はあれだろ? 銃だったか? あれを買うんだろ?」
「そうそう。見たら驚くぞお」
そういう俺も実銃を触るのは初めてだから、とてもワクワクしていた。やっぱりマグナムって男のロマンだよね。他にもパイルバンカーとかオーバードウェポンとか。
騎士長を伴い、俺達は12畳のキングダムへと入った。
どうでもいいけど、いい加減固有名詞考えないと面倒くさいな。俺の家だの、12畳のキングダムだの呼び名がありすぎて統一感がない。国の名前も合わせてその内皆で考えるか。
「はい。じゃあ買います!」
トーラス・レイジングブルを探し、ポチった。すると、天井から俺の太ももに落下してきた。
「痛ったあ! どういう事だよ! ドリフのコントじゃあるまいに!」
「ああ! 大丈夫ですか? 公平様」
「痛そう……」
「ブハハハ! 災難だなあ、おい!」
そうだ。よくよく考えたら俺はお買い物スキルを使うのはこれが初めてだった。買った物がどこからどういう風に出てくるのかわからない以上警戒するべきだった。
クソッタレ。どう考えても天使の嫌がらせだ。今頃天界から俺の姿を見て笑っているに違いない。今度ダスクエリアに行って会ったら一言言ってやる。
「こんな重たいもの人の上に落とすか? 普通……。一歩間違えれば骨折ものだぞ」
「動かないで。呪術をかけるわ……」
そう言ってカンナが俺の太ももに手をかざした。すると、緑色の暖かな光が生まれた。
「おお、すげえ。痛みがひいていく」
「ふふ……」
「こんな便利なもんあるんだったら俺にも使ってくれよ。工事の手伝いしてたら手切っちゃってさ」
「うるさい。あんたなら放っておいても治るでしょ……」
「相変わらず公平と他とで扱いが違い過ぎるだろう……」
「あ、ありがとうカンナ。それじゃ、とりあえず試射してみますか」
この世界の兵器の概念を変えうるだろう武器。これさえあれば、人間は魔物に対抗する事が出来るようになる。強者に虐げられる時代は終わりを告げるんだ。