嫁を育てて世界を救え!~異世界転移物語~   作:妖怪せんべえ

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35話 Re-sublimity

門兵に案内されるままに随分と深い場所まで来た。洞窟の中だというのに、人の顏が判別出来る程に明るかった。何かの魔法石だろうか。壁が淡く光っていた。

 

 道中遭遇したフェンリル達は俺達の事を訝しんだ目で見ていたが、声をかけてくる事も、直接何かをしてくる事もなかった。

 

 戦闘部族だからもっと血気盛んかと思ってたけど、意外と冷静なのか? はたまた嵐の前のなんとやらか。

 

 一体どれ程この洞窟は広いのだろうか、という疑問を持ち始めた時、門兵はその歩みを止めた。どうやら目的の場所に到着したようだ。

 

「この先にフェンリス様がいる。お前1人で行くんだ。残りは私とここでお留守番だ」

 

「それはダメです!」

 

「……容認しかねる」

 

「ではお帰り頂こう。こちらは譲歩するつもりはない」

 

「わかった」

 

 言い返そうとしたアンジェを制して俺は言った。どっちみち交渉するのは俺なんだ。アンジェ達にはいつも護衛を頼んでたけど、今は俺も一応丸腰ではない。なんかあった時に逃げる事くらいは出来るだろう。

 

「そんじゃ、行ってくる。騎士長、後は頼んだ」

 

「おう。気いつけてな」

 

 

 

 そこに辿り着くのにはさほど歩かなかった。アンジェ達と別れて、少し歩を進めたところに、俺の部屋の倍はあろうスペースがあった。

 

 部屋には質素だが頑丈に作られたベッドや食卓テーブルがあり、そこで生活しているという確かな匂いがあった。だけどやはり戦闘部族のようだ。部屋の隅に鎧と槍、刀等が置かれていた。

 

 その中に、彼女はたたずんでいた。彼女はこちらに気付くと、頭についた人とは異なる狼の耳をぴくりとさせた後、ゆっくりとこちらを振り返った。

 

「遠路はるばるお疲れ様でした。どちらでも構いませんわ、おかけになってください」

 

 まず最初に抱いた印象はたおやか。柔らかなその声音は、艷やかな髪――この場合は毛並みと言った方がいいのか――と合わさり、とてもじゃないが戦闘部族と思えなかった。

 

 俺は言われるままに木で作られた椅子に腰掛けた。冷気にさらされて冷えた木が、俺の尻を冷やし、思わず身震いをしてしまった。

 

「人間の方には寒すぎるようですね。火を焚く……という訳にもいきませんので、毛布をお貸し致しますわ。こちらで暖をとってください」

 

「すいません。お言葉に甘えさせてもらいます」

 

 フェンリスが差し出した毛布を受け取り、膝にかけた。ウール、だろうか。まあ、なんでもいい。とにかく動物の毛100%の毛布は暖かった。

 

「それで、お話があるとか」

 

「はい! 俺の国に来てください!」

 

「あらあら。私達は人の子ではないんですよ? 付いて行く振りをして、後ろから食べてしまうかもしれませんよ?」

 

「それは勘弁願いたいですね。でも、その気があるならとっくにやっているでしょう? 俺達は4人だ。群れの全員で襲えばきっと勝てる。けどそれをしない。と、いう事は、あなた方は人間は食べない。違いますか?」

 

「ふふふ。そうですわ」

 

 うーん。なんか上手い事はぐらかされてるな。これが大人の余裕というやつか。

 

 しかし、フェンリルは人間じゃないからなあ。果たしてこれが大人の余裕に当てはまるのか。どちらかというと強者の余裕のように感じる。

 

 正攻法でいってもダメだな。世間話から始めよう。そこから糸口を探して、一気に解いていこう。

 

「フェンリスさん達はどうやって生活してるんですか?」

 

「そうですわねえ……。私達の生活の中心は狩りです。獲物を獲ってきて食べる。それが無くなればまた狩りに出かけて獲物を獲る。フェンリルはずっとそういう生活をしてきました」

 

「それは随分とまた……人間には中々出来ない生活ですね」

 

「かもしれませんわね。でも、私達にはそれが普通でした。最近までは」

 

「と、いうと?」

 

「近くに武装した鳥人族が根付き始めたんです。元々、近くに鳥人族がいる、という事は知っていたのですが、彼らに何が起きたのか。それまでは共生とはいかないまでも、それなりにうまく共存していたのです。ですが――」

 

 そこで、フェンリスは一息吐いてこう続けた。

 

「――ある日突然、彼らは周囲の獲物を狩るようになったのです。最初は、多くの子が生まれたのだろう、そう思っていました。しかし、彼らは日に日に狩る獲物の数が多くなっていき、気がつけば私達の狩場にまで進行してくるようになりました」

 

 なるほど。読めてきたぞ。この流れでいけば恐らく鳥人族のせいで獲物がいなくなっちゃいましたと続くはずだ。

 

「おかげで私達は今までのように満足に獲物を狩る事が出来なくなったのです」

 

 ほらやっぱり。予想通りだ。ていかあれな、俺どんだけ食べるものに困ってる人達に出会うんだよ。なんなの、運命なの? 

 

 いや、そっちの方が交渉しやすいからいいんだけさ。いいんだけさ、なんかこう、釈然としないものが胸の内にあったりなかったり。

 

「それは大変でしたね。では、今は何を食べて生活してるんですか?」

 

「木の実を食べてます。ですが、やはり慣れない事ですのであまりうまくはいっていないようです。今は特に冬ですし。今までの備蓄があるのでなんとかなっていますが、これからの事を考えると……」

 

「ふむ」

 

「愚痴を言うような形になってしまいましたね。初対面の方に、申し訳ないですわ」

 

「いやいやいいんですよ。それよりも。そいつらなんとかしたら俺の国に来てくれますか?」

 

 ううん……、と人差し指を頬に当てて思案するフェンリスは、先程までの大人びた雰囲気と真逆であり、そのギャップに俺のハートが萌え萌えキュンだ。……うわ。気持ち悪……。何を言ってるんだ俺は。

 

「俺の国に来たら肉いっぱい食べれますよ」

 

「私達からは援軍は出せませんよ?」

 

「大丈夫です。俺達だけでなんとかします。だから、約束してください。鳥人族に勝ったら俺の国に来ると」

 

「……わかりました。ただ、ここに残るという子に無理強いは出来ません」

 

「オーケーです。極論すると俺は別にあなたさえ来てくれたらそれでいいんですよ」

 

「ふふふ、まあ……」

 

「それじゃ、早速鳥人族のところに行ってきます」

 

 俺は一言そう言い残してその場を去った。男は背中で語るってね。まだ何も成し遂げてないけど……。

 

 来た道を戻り、アンジェ達の許へ戻ると、俺の姿を確認した3人が、俺に近づいてきた。

 

「大丈夫でしたか?」

 

「何にも問題ない。で、だ。仕事の時間だ」

 

「ええええ。またかよ。俺もうダリいよ。お家帰りたいよお。ママあ」

 

「黙れ騎士長。我々はこれからお隣さんの鳥人族を焼き鳥にしにいきます」

 

「焼き鳥? 食べれんのか?」

 

「さあ? 食えんじゃない? 大抵の肉は焼けば食えるさ」

 

「よしわかった。ちょうど肉が食いたい気分だったんだ。とっとと鳥を丸焼きにしに行こう」

 

「うむ。わかればよろしい。焦がさないように火加減頼むよ、カンナ」

 

「任せてちょうだい……」

 

「ほいじゃ、行きますか」

 

 俺達はまだ見ぬ鳥の肉に期待を馳せて、フェンリルの群れを後にした。

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