黒い火花だって愛する相手くらい選びたい 作:狐大総統
side黒い火花
妾が存在し始めたのは千年以上も前、呪術師というものが生まれてからじゃ。そこに意識といったものはなく、ただ現象として存在するだけじゃった。
そのはずじゃったが、ついさきほど妾に意識が芽生えた。
目の前にいる花御とかいう呪霊に一撃を喰らわせるべく、虎杖悠仁という小僧が放った拳が妾を産んだ。
意識が芽生えた理屈は分からない。
加えて、これまで意識が無かった存在だったにも関わらず、これまでの記憶も存在している理由も分からない。
分からないことだらけではあるが、まずは受け入れることとしよう。
存外、意識があるというのも悪くない。
差し当たり、この小僧が妾を扱うに値するかを見極めるとするかの。
…ふむ、顔は今風に言うと「たいぷ外」というやつじゃが、精神のありようは悪くない。これで妾を産んだものが真人とかいうキッショい呪霊筆頭であったり、自称最強のニヤニヤヘラヘラしとる目隠し白髪ド変態男だったりすれば、そやつの体内で黒閃を発生させて自爆させとったが、こやつならええじゃろ。
寧ろ、少し褒美を取らせても良いような気がしてきたのう。
呪術師には珍しい善人じゃしな。
よし、こやつにはアレをできるようにしてやろうかの。
◇◇
No side
「成ったな。」
東堂は満足気に言った。
「今のが『黒閃』…!!」
「呪力の味を理解したんだ」
初めての黒閃に驚いている虎杖へ東堂は説明を始める。
「お前は今まで、口に入れたことのない食材をなんとなく鍋に入れて煮込んでいるような状態だった。
だが、黒閃”を経て、呪力という食材の味を理解した今、シェフとして3秒前の自分とは別次元に立っている。
コングラチュレーション、ブラザー
お前は強くなれる
」
説明し終えると同時に、東堂は違和感を覚えた。
(…!なんだ?今、ブラザーから異様な気配が…。宿儺か?いや、違うな。全く別のものだ。)
東堂は目を疑った。目の前には虎杖が放電するかの如く、黒閃を帯びているのだから。
「ブラザー、その姿は…」
東堂はその現象を起こしている虎杖本人へと問う。
「分からねぇ。初めて感じる感覚だ。けど、いつもより世界が心地良く感じる」
虎杖はただただ落ち着いた声音で東堂へと返答した。
虎杖が足を進めるごとに、その足元からは黒閃が発生する。
(地を踏み締めるときの衝撃が黒閃を発生させている…?ならば、黒閃を帯びているのは大気との摩擦時に起こっているということか…??)
東堂は虎杖に起こっている現象について考察していた。
(…フッ、考えるのは野暮というものだな。ブラザーはいつだって俺の予想を越えてきた男だ。回答を出すにしてもブラザーだからという回答で事足りるだろう)
東堂は一人納得すると、虎杖への評価(カンスト済み)を更に上げた。
(宿儺の器は術師として未成熟と聞いていたが…加えてあの謎の男…その他大勢とは何か違う)
花御は虎杖と東堂への警戒を怠らずに再生を行った。
「!治んのか!!」
「呪霊の体は呪力で出来ている。
俺達とは違い、治癒に高度な反転術式は必要ない。
特級となればあの程度のケガ、わけないさ。
だが、確実に呪力は削れるし、頭を潰せばゲームセットだ」
再生をする花御を見て驚愕する虎杖へ東堂が説明を行うと、虎杖も納得し、共に戦闘を行うため構えた。
「さあ、調理を始めようか!」
「どうやら貴方達には多少本気を出した方がよさそうだ」
そう言うと、花御は広範囲用の攻撃を仕掛けた。
その攻撃は、東堂と虎杖を空中まで押し上げるほどのものだった。
本来であればの話だが。
現実としてあるのは、攻撃が虎杖悠仁に触れた瞬間、多大な質量の樹木による攻撃のうち約9割が削られたことだった。
「な!?」
花御は目の前で何が起こったのかを理解しきれなかった。
「え?」
虎杖も理解できていなかった。
(なるほど。黒閃がカウンターとして作用したのか。黒閃によるオートバリア!さすがはブラザーだ!)
唯一、目の前で何が起こっているのかを理解しているのは、呪術高専京都校が誇るハイセンスゴリラ『東堂葵』のみであった。さらに言えば、超親友の虎杖のこととなれば、虎杖悠仁がなぜ黒閃を帯びているのかの理由を除けば、分からないことの方が少ない。
東堂葵であれば、虎杖が今日履いている下着の色、柄、メーカー、商品名に始まり、虎杖がいつ購入したか、購入の際にいくら支払っていくらお釣りが出たかまで分かる。
なぜなら、虎杖悠二は東堂葵の超親友なのだから!
「なんか良く分からんけど、黒閃が上手く機能した結果?ってことだよな!このまま倒すぞ!東堂!!」
「ああ!」
(今の虎杖悠二には攻撃が効かない…?ならば、先にあの男から!)
花御は攻撃対象を虎杖と東堂の2人から、東堂のみへと変更する。
「…!東堂!」
「問題無い!!」
東堂へ樹木による多彩な攻撃が行われるが、東堂はその全てを躱し切ることに成功する。
花御対東堂と虎杖による戦闘は更に加速していく。
◇◇
「うむうむ。良いのぉ。初々しいのぉ。オートバリアが張られていることに気付かない悠くん、可愛いのぉ♡」
黒い火花は、この短い時間ですっかり虎杖のことを愛していた。
はじめこそ、褒美を取らせようといった上から目線な姿勢だったにも関わらず、今はこのようなことになってしまっている。
これは、虎杖が特級タラシなのか黒い火花が特級でチョロいのか、呪術界の三大ミステリーに入るレベルだろう。
「さてさて、次は何をできるようにしようかのう。悠くんが喜んでくれるといいのう」
黒い火花は、貢ぐということを覚えた。
「今の悠くんが困ってることは、遠・中距離攻撃が無いことかのぉ。花御とかいう呪霊からの攻撃は効かないにしても、あやつまで届かせる方法が無いのが問題じゃな。」
そう言うと、黒い火花は手元に本を出現させ、ページをめくっていく。
タイトルは『悠くんへのぷれぜんと♡黒閃技編』である。作者はもちろん黒い火花だ。
「まあ、あのパイナップル頭のキッショい男の術式を使えば問題は無いじゃろうが、それは妾のプライドが許さん!悠くんには妾からのプレゼントで喜んで欲しいしのう!」
黒い火花は同担拒否過激派だった。
「待っておれよ悠くん!すぐにお主が喜ぶであろうプレゼントを贈るからのう!」
虎杖悠二の周りに、ブラザーとお兄ちゃんとママはいても、尽くすだけじゃなくて貢いでまでくるようなのいたっけ?って思って書いてみました。