黒い火花だって愛する相手くらい選びたい 作:狐大総統
今年もよろしくお願いいたします。
今話は短めです。
No side
「なんじゃ、こやつはぁぁあ!!」
黒い火花、自我の確立後、初となる怒りの発露であった。
黒い火花は、産まれてからというもの虎杖悠仁という人間には注視してきたが、周囲の事は些末なことと認識していなかった。
虎杖にぞっこんというのに、なぜ虎杖がどのように呪術師になったかや虎杖が抱えている問題などには目もくれていなかったのである。
虎杖へあれだけの熱量を持っていたというのに、端的に言って最低である。
ただ、黒い火花が視野狭窄に陥っていたのにも理由がある。
誰にでも、幼少期の頃に初恋などをすれば、相手の子が困っていることや過去についてはあまり頓着が無かったことの方が多いだろう。
黒い火花は、まさに似たような状態にあった。
知識はあらゆる生物以上のものを有しているうえ、精神性も膨大な記録という名の記憶の影響によって達観してはいるが、初めて注視したい相手ができたのだ。
黒い火花に余裕があるはずも無かった。
「こ、このようなキショクの悪いものが悠くんの中に寄生しているじゃと…?」
黒い火花はまじまじと宿儺を観察した。
外見で分かることいえば、腕が二本ずつあり、目が二つずつあり、口まで二つあるということ。
その結果、宿儺に対する黒い火花の印象は、脳裏?にあるものが浮かんでいた。
「コヤツ、人間のフリをした昆虫以外のなにものでもないではないか」
黒い火花が言う通り、宿儺には四肢ではなく六肢、目もある意味複眼といえなくもない。ひとつ違う点は、昆虫の口は身体中を動いたりしないことだろうか。
そのような昆虫もどきが愛しい人の体内に棲みついている。
黒い火花の宿儺に対する印象は、昆虫から細分化され、ある分類に振り分けられた。
「寄生虫がぁぁ…!」
おめでとう、両面宿儺。
呪いの王から寄生虫へのジョブチェンジ。
なかなかできることではないだろう。
ここは素直に褒め称えるべきである。
だが、そのようなことは黒い火花に関係ない。
黒い火花は宿儺に対して激昂していた。
虎杖悠仁が宿儺のせいで死刑になるかもしれないというのもあるが、本命の理由は別にあった。
それは…
「妾も悠くんの体内に棲みたいというのにぃぃぃ…!」
ただの同族?嫌悪である。
実に見苦しいものであった。
「ハッ!まさか、これがNTRというやつか…?」
黒い火花、NTRを知る。
ただ、この場合はBSSというやつではないだろうか。
いつのまに、虎杖悠仁と恋仲になったというのだろう。
これでは、あるパイナップルヘアと同種ではないか。
「妾と結婚式まで挙げた悠くんが…!」
挙げていない。
黒い火花の頭?の中だけである。
残念ながら、パイナップルヘアと同種だったようだ。
「子供までいるというのに…!」
いない。
黒い火花の頭?の中だけである。
逆にどのようにして子供を作ったのだろうか。
もしくは、施設から引き取ったのだろうか。
なんにせよ、そのような存在はいないことに変わりはしないが。
「そ、それに加えて、あの寄生虫…!」
黒い火花には、ある野望があった。
虎杖悠仁の全てを自身で作っていきたいという壮大な野望である。
例えるならば、夫の身体を妻の手料理が作ってきたという自負のようなものだろう。これは、夫婦だからこその純愛ともいえる。
ならば、黒い火花の野望も逆説的に純愛といえるのであろう。
だというのに、黒い火花は知ってしまった。
虎杖悠仁の呪力は宿儺から得たものということ。
虎杖悠仁の今の環境は宿儺がいたからこそということ。
さらに、黒い火花が1番許せないこと、それは…
「…よ、よりにもよって、あの寄生虫ぅぅう!悠くんに食べてもらえるじゃとぉぉお!?」
黒い火花は、虎杖に食べてもらうということが性癖的に許せなかった。
食べるというのは、身体を作っていく行為そのものである。
つまり、本当の意味で虎杖悠仁の一部になれるということと同意。
そのような羨まけしからんことを、黒い火花は到底許せるはずもなかった。
また、『食べる』とは人間でいうカップルの男が女に向かって行うことの比喩表現と聞く。
その知識が、黒い火花の嫉妬心を加速させた。
「どうしてくれようか、あの寄生虫ぅう!」
黒い火花はいかにして宿儺を苦しめ、消すかの方法を探っていた。
ちなみに黒い火花がブツブツと呟くなかには、歯を噛み合わせたときに黒閃爆死などがあり、宿儺に対する殺意の本気度が窺えた。
この本気度こそが、黒い火花の純愛の証明といえるだろう。
全くもって虎杖を羨ましいとは思えないが。
黒い火花の純愛話は、次話もやるかもです。
前話で黒い火花があんま出せなかったので。