クリスマス--- 普段も閑散としている駅前も煌々とイルミネーションに照らされて少しは華やかになったものだ。
聖夜だとかなんだとかもてはやされているこの日ばかりは駅前の人も多い。
そんなとこを狙ってクリスマスケーキを売ろうというのだ、
まったくたいそうなバイトだ。
とか言いながらそんなバイトをしているのは他でもない俺自身なんだけど。
「一番若いんだから大丈夫!よろしく!」と店長に押し付けられ、よくありがちなサンタの恰好をさせられて看板を持たされている。
いつもより少し人通りの多いしクリスマスということもあり
ある程度はお店に誘導できている。
後で店長には何かおごってもらおう。
「すみません、一ついいですか?」
声をかけられたので応対しようとすると、見覚えのある顔だった。
滅茶苦茶に綺麗な女性になった幼馴染がそこに立っていた。
俺に比べて遥かに陽の存在だと思い知らされる。
「なんだ、久しぶりにあったと思ったら、からかいに来たのか?」
「そう、誰かさんがクリぼっちで悲しくサンタの恰好なんてして労働してるって聴いたから」
「で?ケーキ買いに来たのか?」
半分あきれて聞いてみる。
久しぶりに会えてうれしいはずなのに、またぶっきらぼうな態度をとってしまう。
多分顔にも出てる。今すごくひきつってると思う。どうせ実家に彼氏連れ込んでケーキ仲良く食うんだと思うとムッとする。
「そうよ、おひとつ頂いてよろしいかしらサンタさん」
「はぁ」
今すぐこのクソ客を帰らせたい。幸い人通りは少ないし、話し込むこと自体に問題はないが、俺から願い下げたい。
「溜息つくと幸せ逃げちゃうよ~、でケーキくれないのサンタさん?」
あーもうほんとやだ。もうさっさと買って帰って貰おう。うんそうしよう。
「ほら店あっちだから、さっさと買って帰って彼氏と食べな」
そう言い返すと、彼女は少し怒った様子で足早に店に向かって行く。
俺の精一杯な抵抗のつもりだったが、どうやら少し効いたらしい。やったぜ。
そろそろ上がりの時間だ、店の裏に引っ込み普通の服に着替える。
ついに地獄のサンタコスから解放だ。生を実感する。
「お疲れさまでしたー、店長今度なんかおごりで」
そう吐き捨てると足早に店を出て家に向かう。
「あら、サンタさんはもう終わり?」
まだいたのか、彼氏待たせちゃ悪くないかと思いながら口を開く。
「お前こそこんなとこで油売ってていいのか?愛しの彼氏君が家で待ってるんじゃないのか?」
「彼氏がいたらこんなとこであんたなんかと話してないわよ」
「またからかう」
「本当よ。クリぼっちはアナタだけじゃないってこと」
またやはり彼女は少しムッとした表情で答える。なんでさっきからこんなに怒ってるんだよ。
「さっきからなんか怒ってるけどどうした?なんかされた?」
俺は精一杯のフォローのつもりで聴いてみる。
「ええ、今目の前にいるくそボッチにね。流石に鈍感すぎよ、あんた」
彼女は頬を赤くしながら吐露する。
ようやく脳が追いついた。つまりはこいつは俺とケーキが食べたかったってことか。
そもそもクリスマスにわざわざ一緒に過ごしたいって…
「それってつまり、そういうこと?」
今出る精一杯の答えを出してみる。
「言わせるんじゃないわよ、分ってるんなら早く手が冷たいからあっためて」
「分ったよ、じゃここじゃ寒いし、帰ってケーキ食べようか」
そういって彼女の握りつぶせそうなほどに細い手を離さないように握り止める。
--- Marry Xmas