魔族の薬師が勇者一行に加わるまでの話   作:新人フリーレンファン

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最近、葬送のフリーレンに嵌りました新人読者です。


邂逅

魔物。

身体を魔力粒子で構成された人を襲う危険生物の総称。

そして魔族とは、魔物の中でも人語を話す知恵を持ち人に似た容姿をした個体を指す。

 

神話の大魔法使いフランメによってその様に定義された魔族は一見して人と変わりない姿を持ち、言葉を用いて意思疎通ができるように見えるが、実際のところは猛獣が人の声真似をしているだけのようなものでその本質は魔物と変わらない。

本能で人を欺き襲う、そこに善悪の概念はない。

故にこそ有害であり、例外なく明確な人類の敵だ―――

 

 

 

「ヒンメル。見つけた、魔族だ」

 

エルフの魔法使い、フリーレンの探知魔法が逃げる魔族の姿を発見した。

 

「しかし、本当に彼女が?」

 

フリーレンが魔族だと断言する件の逃走者はつばの広い帽子を深く被った少女の姿をしていて、遠目からでは魔族の特徴である角を確認できない。

 

「うん。気配や角は隠せても魔法までは誤魔化せない。あれは間違いなく魔族の魔法だった」

 

魔族の使う魔法は、人の使う魔法とは明確に異なる。

どちらが強力かという単純な比較の話ではなく異質。

優れた魔法使いたるフリーレンが見間違えるはずもなかった。

 

「なら間違いないね」

 

「急ぎましょう。奴はどうやら街の外縁部ではなく中心方面に向かって逃げてるようです」

 

「住人を人質にするつもりかもしれない。そうなる前に捕えるぞ」

 

「しかし、妙ですね。あの魔族はいったいどうやってこの都市に忍び込んだのでしょう?」

 

疑問を口にしたのは僧侶のハイター。

 

城塞都市ラカージュ。

中央にそびえる巨大な桜の木がシンボルで、また高品質の薬草、魔法薬の産地でもある。

境界に強力な魔物除けの防護結界が張られたこの都市は、魔物の領域に隣接する都市の中でも特に安全で栄えた大都市として名高い。

 

ラカージュの結界の堅牢さは特に有名で、都市の誕生と同時に構築されてからおよそ200年、今に至るまで一度も魔物の類いに破られたことがないと言う。

 

そんな都市に魔物が、ましてや魔族なんて忍び込めるはずがないのだが。

 

「結界の不壊神話は所詮は噂だった? どこかに秘密の抜け道がある? もしくはあの魔族が結界をすり抜ける特異な魔法を扱えるのか」

 

「考えるのは後だハイター」

 

ハイターの思考を止めたのはドワーフの戦士アイゼン。

 

「ああ、なんであれ捕らえた後で聞き出せばいい」

 

魔族を追う一行の先頭を走る空色の髪の青年、勇者ヒンメルがそうまとめる。

 

かくして勇者一行は特にこれといったトラブルもなく逃げる魔族を街の中心、桜木広場にて追い詰め取り押さえた。

 

 

 

 

 

 

追跡劇はあっけなく決着した。

逃げる魔族の足が想定よりはるかに遅く、それ以上に魔族にやる気がなかった。

 

「これで終わりだ。変な角の魔族」

 

「ついてない………終わりとはこんなにもあっけないものなのですね」

 

フリーレンにあっさりと取り押さえられた魔族が小さくそう呟く。

諦観に満ちていながら非常に耳障りの良い、綺麗な声音だった。

そして見目麗しく整った幼くも端正な顔立ち、庇護欲を誘うような全体的に幸薄い雰囲気。

どれもこれも人を油断させ欺くことに特化した、典型的な魔族の特徴である。

 

ともすれば取り押さえているフリーレンの方が悪者に見えかねない構図。

しかし取り押さえた時に帽子が脱げたことであらわになった歪な角が、件の少女の正体が魔族であることを示していた。

 

「遺す言葉はそれでいい?」

 

「待て待て待て」

 

豪奢な服装の初老の男性が慌てた様子でフリーレンを制止する。

騒ぎを察して衛兵を伴って駆けつけたラカージュの領主だ。

 

「何で止めるの? 魔族だよ?」

 

「言われずとも魔族の恐ろしさは知っている。私自身も幾度となく交戦、討伐の経験がある。あるからこそ待って欲しい」

 

「どうして?」

 

「他の魔族と雰囲気がまるで違う。死の気配を全く感じられん。疑うようで悪いが、本当に魔族なのか?」

 

「………………」

 

領主の主張は、魔族に対して過激な思考の持ち主たるフリーレンをして一理あると納得せざるを得なかった。

これまでたくさんの魔族と出会い、滅ぼしてきたからこそ分かる。

確かにこの魔族、これほど間近でも死臭が全くしなかった。

 

「って、あれレアラさんじゃ?」

 

「ウソだろ? レアラさんってあの薬草屋兼薬屋の店主の? 街1番の老舗だ」

 

「彼女が魔族って、何かの間違いだろ?」

 

領主と一緒に駆けつけた護衛、集まって野次馬と化した住人たちが取り押さえられている魔族、レアラの姿を見て一様に信じられないという顔をしている。

 

(無理もない、か)

 

かく言うフリーレンも、たまたま立ち寄った薬屋でレアラが魔族の魔法を使う場面を偶然目撃しなければ気づかなかったのだから。

 

「フリーレン」

 

「ヒンメル………」

 

「分かってるさ。もう2度と間違いはしない。ただ殺すにしても、その前にどうやってこの町に忍び込んだのか聞き出さないと」

 

ヒンメルの悟すようなやんわりとした言葉にフリーレンは渋々と従う。

いつでも殺せるように杖に魔力を込めたまま魔族に問いかける。

 

「ウソをついたら殺す。どうやってこの町の魔族除けの防護結界を潜り抜けて………?」

 

拘束した魔族が笑っていた。

嗤いではなく、笑い。

ごく普通の魔族の浮かべる、ただただ人間を見下しバカにする時に浮かべるそれとはまるで違う。

面白い時に自然と溢れる、まるで人間のような微笑みだった。

 

「何を笑っている? 何がおかしい?」

 

「何がおかしいかですって? 何もかもですよ。見当違いも甚だしい。この状況それ自体が茶番そのものです」

 

嘲らない、偽らない、命乞いをしない。

ただおかしくてたまらないから笑う。

追い詰められた魔族の言動としては相当に珍しい。

少なくともフリーレンはそう感じた。

 

何より笑顔に違和感がなさすぎる。

ただの捨て鉢、やけになっているだけなのか。

 

「そんなに知りたいなら語りましょう。私がいかにして今に至ったのか」

 

笑顔に嫌味を感じないのは、笑いの対象がフリーレンたちではなく自分自身だからだ。

 

「あなた方も全てを知ればきっと笑い出すに違いありません」

 

「それではどうかご静聴を。ワタクシことレアラの、お間抜けな魔族の来歴を」




魔族の例えとして、原作では猛獣が挙げられました。
人を襲う危険生物の代表です。

人が魔族と仲良くするということはつまり、人と人食いグマが同じ檻の中で生活するようなものだと。

ただこれ、危険性を表現する例えとしてはともかく生態的には違うと個人的に感じました。

というのも、一般的な猛獣、即ち人を脅かせる大型肉食動物は大抵子育てをするからです。

クマ、トラ、ライオン、いずれも子育てをしますし、親から狩りの仕方を学びます。

当然親子の概念も情もあるので、人間が子供の頃からお世話して焼いた肉を食べさせて育てられたクマやトラは生肉を食べる習慣がつかず、獲物を狩らなくなる模様。
無論、体格差はあるので危険はなくなりませんしコストも時間もかかるものの一応共存はできるみたいです。
子育てをせず親子の概念がないとされる魔族とは明確な相違点です。
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