「猪野くん。君の好物は何ですか?」
「え? 俺の好きな食べ物ですか?」
「はい。焼き肉で一番好きなものでも構いません」
「そうですね……。牛タン、ですかね。塩の」
「そうですか。店員さん、注文良いですか?」
「いや、そんな悪いっすよ七海さん」
「良いんですよ。今日は君の一級術師昇級祝いなんですから。この特上牛タン塩を2、いえ3人前お願いします」
「あ、ありがとうございます!」
「気にしないでください。貴方は強くなる。私よりも」
「いやぁ、そんな褒められると照れちゃいますよ」
「
「それは重々承知してます。自分の術式ですから」
「自分が誰で何のために戦うのか。だけでなく、自分の好きなもの、好きな事、見たいもの、やりたい事。そういった自分の構成要素をキチンと把握することで自分を見失うリスクも多少は下がるでしょう。……思い出を大切にしてください」
「……。おす」
「ちなみに、これ以上の昇格はオススメしません。特級術師なんて面倒なだけですから」
◇
「いくぜ、後輩ちゃんズ! 七海さんが帰ってくる前に帳をぶっ壊す! 五条悟を助けるぞ!!」
渋谷事変
21:54
とは言ったものの
この帳、クソ硬ェ!
虎杖の経験則。
嘱託式の帳。
帳の結界術を込めた呪具。
そしてバリアである帳の外側に術師本人が居ることで本人への恩恵を無くす縛りでバリアの強度を上げている。
とは言ってもなー、外側に居るって言っても、これだけ大きい帳の外縁ってだけでいったいどれだけ隠れ場所があるんだ? 見つけられる気がしねぇ
「その理屈なら、帳の基はかなり目立つ所にあるんじゃないですか?」
「なるほどなぁ……」
伏黒の発想も妥当だろう。
外側に居るだけでなくわざと目立つ所にいれば縛りは更に強くなって、バリアの強度も更に上がる。
俺じゃすぐに思いつかない発想だ。
虎杖が予めそういうのがあると知っていたとはいえ、咄嗟に出てくる伏黒の地頭の良さもスゲェ
2人とも七海さんが目をかけるだけはある
後輩の才能に、正直ちょっと嫉妬しちまうな
まぁ、これで次の行動は決まったな。
帳の外側かつ近郊で一番目立つのは渋谷Sタワー。
そこの屋上に登り、帳を降ろしている奴がいるなら良し。居なくても上から確認すれば少しは見つけやすいだろ
「ところで一つ質問良いっすか?」
「ん、いいぞ。俺が答えられる事なら何でも聞いてくれよな」
「猪野先輩、なんでそんな派手な格好してるんすか? ハロウィンだから渋谷で仮装してたんすか?」
「おい、虎杖、猪野さんは七海さんと同じ一級術師だぞ。失礼だろ」
「うぉ、猪野先輩一級術師なんすか!? すんません!」
「別にいいぜ、2人は味方だ。効果を教えてどうなるものでもないしな」
猪野琢真の術式
『来訪瑞獣』
顔を隠すことで自らが霊媒となり、
四種の瑞獣の能力を降ろす。
俺は今、いつもはあまり使うなと言っていた『とっておき』を七海さんの指示で着て来ている。
呪具 変面獣相
呪具といっても衣装が簡単に破けない様に強度を上げているだけだけどな。
中国雑伎の一種である複数の覆面を被り踊りと共に覆面を切り替える「変面川劇」から着想を得た四種の瑞獣の姿を模した衣装を俺は重ね着している。
中華の流れを取り入れた衣装は絢爛豪華。渋谷でショーでもしに来たのかと言われても当然の格好だ。
「ま、要するにこの衣装は術式を強化するためのアイテムなんだよ」
「へー、そうなんですね」
ぶっちゃけ10月だから良かったけど、夏だと暑いんだわコレ。
◇
22:01
渋谷Sタワー
その屋上に4人の呪詛師が集まっている。
「術師の奴ら気づくかね」
ダルマ顔。
「ここがここら辺で一番、高い場所だよ?」
キノコのようなデカいオカッパ頭の痩せぎすの男。
「だから気付かれやすいんじゃねぇか、って話してんだよ」
「でも気付かれたところで、だよ」
やぼったい白いセーターを着たモヒカン。
「そうじゃな、ビルの中には改造人間がすし詰めになっておる。そう簡単には来られまい」
数珠を持った老婆。
「それにサプライズもあるしね」
オカッパ頭がニタニタと下卑た笑みを浮かべる。
「まぁな、わざわざ中から登ってくるような阿呆なら……」
呪詛師たちの談笑を遮るように、
ビルの屋上に巨大な翁の面のような人型に近い顔の鳥が現れる。
鳥。伏黒恵の式神「
「飛べる阿呆だったか」
ダルマ顔がニッと笑う。
ワイヤーが鵺と虎杖、ビルの両端に広がり、呪詛師を絡めとる。
オガミ婆とモヒカンの孫
身を寄せ合ってワイヤーの下をくぐる。
キノコ頭 下笠三郎
ワイヤーを飛び越えた。
ダルマ顔 粟坂二良
唯一直撃し、落とされかける。
◇
『帳の基さえ破壊すれば呪詛師は後回しでいいってことですよね』
『だな』
◇
「よし、予定通りだ!」
あった! それっぽいデカい釘!
呪力を込めて、踏み潰す!
けど、打ち込まれた跡は3つあるのにここには1つしかない。
あと2本はどこに……。
吹っ飛びながらも不敵な笑みを浮かべ、腹巻きに帳の基を仕舞い込む粟坂の姿。
あのダルマ顔か!
帳の基を拾ってたからワイヤーから逃げそびれたって訳か
虎杖が鵺と繋がったワイヤーで粟坂を縛り上げる。
「虎杖、そのままソイツから帳の基を奪って壊せ! 伏黒と2人がかりでだ!」
「ええ!? でも先輩、まだ3人「俺、一級! 勝てる!」押忍!!」
虎杖がダルマ顔を巻き付けたワイヤーを持ってビルの外へ飛び出す。
自分で飛んでいったんだ。大丈夫だろ。
「あ、あんた、ずいぶんと派手な格好してるね。渋谷でハロウィン堪能してたの? 羨ましいな」
「ちげーよ」
猪野が足捌きを戦闘用に切り替える。
より流麗に踊る様にステップを踏み、舞う。
「孫よ」
「うん、分かってるよ婆ちゃん」
なんだ? すぐに攻めてこないのか? けど、初手が遅いのはありがたい。俺も
「吉祥、我に有り
正道、我に有り
獣君、畏み申す」
呪詞の詠唱と共に猪野の呪力の性質が変わる。
「来訪瑞獣 一番
紅白のマントがはためき、
まるで生きているかの様に紅白色の獣の面が色づく。
「婆ちゃん、今の」
「あぁ、奇遇よの」
カワイイ後輩もできたことだし、ここは先輩としてバッチしカッコイイとこ見せちゃうぞ
◇
呪術は引き算。
というよりは、戦闘という最短で数秒で生死の決まる世界で悠長な事などしていられない。
呪文の詠唱。 唱えている間に喉を潰されて死。
舞。踊っている間に死。
戦闘で実際に使えるほどの速度で術を繰り出すために、術式を構成する手順をどれだけ簡略化できるかで術師の腕が決まる。
だが、発動条件が厳しいほど、その難易度を対価として術式の効力は上がる。
その威力と速度のバランスの見極めが術師の腕の見せ所でもある。
猪野琢真の衣装である変面獣相は、強力な瑞獣を呼び込むための正装。
あらかじめ見た目を瑞獣に寄せておくことで変身に使用する呪力を減らし、より省力で瑞獣を降ろすことができる。
覆面・仮面とは自分を隠し「何か」に変わる儀式。
「何か」を降ろすと言う形によって成される変身の一種。
その系譜はイタコよりもシャーマニズムにおける神降ろしに近い。
そして個々の手順は簡易ながらも
触媒
演舞
詠唱
3つの術式の構成因子を完遂した来訪瑞獣は、
瑞獣の能力だけでなく、瑞獣そのものを猪野琢真の肉体に降ろす。
◇
変身を遂げた猪野が、呪詛師たちを倒すために一歩前に踏み出す。
直後、猪野の足元が淡く光り、猪野の頬を風が撫でた。
──風?
「どわぁぁぁ!?」
足元から突如発生した突風に押し上げられ、猪野はあっさりと渋谷Sタワーの屋上が吹き飛ばされた。
下笠が屋上に仕掛けておいた罠だった。
「……あっけなかったね。婆ちゃん」
「そうだの」
「え、お、終わり? なら、粟坂さんの応援でも行く? いや、行かなくてもいいけど」
「儂らは降りても戦力になるのに時間がかかる。お主も下に降りれば戦力は半減以下。もし帳を壊されたらその時はトンズラじゃ」
「そ、そっか、あ、頭いいね婆ちゃん」
◇
キノコ頭
術式『強風』
その術式効果は
「目を閉じたくなるほどの強風を辺りに吹かせる」
ただそれだけ。
早々に術式に見切りをつけ、身体を鍛えた。
それも大成しなかった下笠は自身の術式と再度向き合い、
1.術式の効果で直に相手を傷つけない
2.予めマーキングした地点を起点にしなければ術式を発動できない
二つの縛りを結ぶ事で、
術式効果を一点に集中させ強烈な突風を作ることに成功した。
傷つけない縛りの恩恵によって高度に隠蔽されたマーキング地点は並の術師では看破不能。
罠を踏んだ人間に自動で、または風の影響範囲に入った人間に任意で突風を浴びせる。
その出力は成人男性を軽々と10m以上打ち上げるほど。
下笠三郎はこの術によって呪詛師として大成した。
主な仕事は、
飛び降り自殺あるいは転落事故の偽装殺人
術式によって相手を傷つけない縛りは、落下には適応されない。
どれほど強い呪術師を相手にしても、
立地と術式の相性が揃えば、ジャイアントキリングも狙える厄介な呪詛師。
◇
猪野琢真
獬豸の能力の角状の誘導弾にしがみつき渋谷Sタワー屋上に帰還。
「あらら、帰ってきちゃった」
「婆ちゃん、どうする?」
「仕方ないのぅ、粟坂がやられた時の保険もかねて、呼ぶぞ」
「分かったよ、婆ちゃん」
改めて臨戦態勢に入る呪詛師を前に、猪野は凹んでいた。
情けねぇ、俺は今自分が心底情けねぇ
後輩が出来た昂揚とか、
一級術師になったことによる慢心とか、
優秀な後輩が出来た事による焦燥感とか、
色々あったと思う
とにかく俺は冷静じゃなかった
七海さんならあんな罠ひっかからなかった
ちゃんと目を凝らせば罠は見えた
俺が見逃したんだ、ちくしょう
一級術師の名が泣くぜ……
……反省終わり!
コイツらを瞬殺して後輩ちゃんズと合流する
事実に即し、己を律する
慢心は、もう、ない
◇
来訪瑞獣 一番
獬豸
正義・公正を象徴する瑞獣の内の一体。
一角の羊の様な姿を持つと言われている。
「飛べ!」
猪野が人の腕ほどの大きさのドリル状の弾丸を放つ。
孫がオガミ婆を抱えて避ける。
ドリルが軌道を変え、背後から再び孫に迫る。
──誘導弾……。腕で防御、無理だ。呪力が強すぎる
すんでのところ孫が避ける。
ドリルが孫の頬をかすめ、耳が千切れ飛ぶ。
獬豸の能力は
角を模したドリル状の追尾弾。
それに加えて、瑞獣降ろしによる身体能力全般の強化と正の呪力による回復促進効果を持つ。
ドリルが再度、旋回する。
体勢は崩れた。これ以上避けられないだろ、チェックメイトだぜ
風
「うぉっ」
下笠三郎が傘を開き、猪野の方に向けている。
その傘から、先ほど猪野を吹き飛ばした強風が吹き、猪野の体勢を崩す。
制御を失った獬豸のドリルが明後日の方向へ飛んでいく。
いい術式持ってやがる
いくら呪力でパワーを上げられても、重量を操作できる術式じゃねぇと体重は変えられねぇ
呪具
人骨を骨組に使った傘。
実際に親子を素材に使用しており、生地として張られている子供の皮と大人の皮の微妙な風合いの違いがチャームポイント。
呪具としての効果は無いが、傘の両面に強風のマーキングが施されており、2方向に風を起こせる事で突撃と吹き飛ばしの使い分けが可能。
下笠が傘の内側から風を吹かせ、猪野に突進する。
突進を避け、ドリルを片手で制御し、至近距離から投げつける。
下笠の本来の技量では追いきれない速度の一撃。
を傘に仕込んだ風の術式で速度を底上げして躱す。
瞬時に傘を閉じ、猪野の腹部に一撃。
「固っ」
傘は猪野の腹でピタリと止まる。
「そらぁ、なッ!!」
下笠が咄嗟に片手でガードするが、その上から猪野のパンチが殴り抜ける。
「ぐぉ」
腕が折れたな。
「オラァ!」
猪野の追撃の蹴り、間に傘を挟む下笠。
吹き飛ぶ下笠にドリルの追撃を入れようとした所に孫のタックル。
「効かねぇ!」
ドリルの腹で孫の背中を殴打し沈める。
制御の甘くなったドリルを傘で弾き、下笠が猪野へ手をかざす。
さっきの攻防の間に地面に刻まれたマーキングが起動し、猪の足元から強風が吹き出し、再び猪野を屋上の外に追い出す。
くそ、モヒカンは大した事ねぇが、何にしてもあのキノコ頭が厄介だ。
婆もジッとしたままだし、これ以上は時間をかけたくねぇ
上昇する角弾に掴まり渋谷Sタワー上空まで高度を上げた所で、猪野が着ている服を脱ぐ。
脱ぎ捨てられた紅白のマントの下から現れたのは翠緑の鎧
覆面が群青色の強面の男の様な見た目に切り替わる。
「二番! 霊亀!」
巨大な亀の姿をした治水の象徴。
◇
変面獣相および瑞獣川劇の演舞は、戦闘中、意図的に中断しない限り、最初の獬豸の時点から四番の竜、そして覆面を全て脱ぐ終曲までが一つの劇として扱われる。
その間、詠唱の効果は持続するため、一度発動させてしまえば瑞獣はその能力と比較して極めて簡易に切り替えることができる。
ただし、瑞獣降ろしは服装を加味した強化術式であるため、一度脱いだ衣装の瑞獣を再び呼ぶことは出来ない。
◇
猪野は空気中の水分をシャボン玉のように固めて足元に敷いた。
それを足場に空中に留まる。
霊亀の能力は、
呪力を帯びた水の操作。
猪野が
パン
と両手を合わせる。
手の中で水を圧縮する。
これは知ってるか! 呪詛師!
下笠に照準を合わせる猪野。
下笠は傘を広げる事でウィークポイントを隠す。
直後、猪野はオガミ婆に狙いを変えた。
今、この場での一番の不確定要素はテメェだ!
加茂家 相伝 赤血操術
圧縮した血液を音速を超えた弾丸として放つ奥義
それを水分操作で再現した一撃。
「穿血!」
水弾炸裂
咄嗟にオガミ婆を庇い、突き飛ばした孫の腹部に穴が空く。
くそ、外したか
「ず、ずるいぞ空飛ぶなんて!」
下笠の苦し紛れの罵倒の中、孫が膝から崩れ落ちる。
「ば、婆ちゃん……」
「もうええぞ」
呪詞を詠唱し終えたオガミ婆から呪力がたちのぼる。
なんだ、婆の雰囲気が変わったっ!?
「うん」
這いずりながら孫は懐から錠剤ほどの小さな何かを取り出し口に入れる。
させるか!
水を集めて
手に
パン
「穿血!」
「
パキィィン
孫の手の平に命中した穿血は、金属に弾かれた様なカン高い音を出して霧散した。
「……は?」
おいおい、呪力で強化したウォーターカッターを素手で止めるか、普通
「どうじゃ? 孫」
「うん、いいよ、婆ちゃん」
モヒカン頭がみるみるうちに黒髪のガッシリとした体格の男に作り変えられていく。
「今までにない」
◇
降霊術式による変身
あのババア、イタコだったのか!
いや、問題はそこじゃねぇ
なんだコイツ!!
有名な術師か!?
立ち姿だけで分かる……
この男、クソ強ぇ!!
わざわざ俺に呼ぶんだ、飛行系の術……
男が、
跳ねる。
ただそれだけで、猪野の目の前に男は居た。
「ッ!?」
水壁
言葉に出すより早く猪野の前に水の壁が生成されるが、男の拳はそれを貫通する。それどころか、固められた水を掴み更に拳を振り上げる。
距離が近ぇ! 水を集める時間が……ッ
放たれる正拳突き。
お、おおお重ェ!?
男の拳を猪野は両腕でガードするが、その衝撃は全身を突き抜け、水の足場から猪野は転落、男はその反動で屋上に戻る。
「流石は五条悟を一度は倒した男。身体能力だけでもこれほどとはな」
猪野がタワーの影に三度隠れたと同時に
帳が上がった。
「あれ、これ粟坂やられちゃったの」
「で、あろうな」
「ええー」
「これからららら、どっどっどどどど、どうする? 婆ちゃん」
「あの呪術師、見たところ死んでおらんじゃろ。粟坂をヤった奴らも残っておる。オマエは下に降りて1人でも多く術師を殺せ」
「…………」
「……孫?」
ピシャア!!
雷が上方向に伸びた。
翠緑の鎧の中から現れるのは白いフサ飾りの付いた鮮やかな金の染色のほどかされた皮鎧。
覆面は厳つい男面からヒーロー然とした金の覆面に変わっている。
「三番! 麒麟!」
麒麟
黄金の天馬
竜の先触れとして雷を操り、空を駆ける。
まさかこんな事になるなんて、想定外だ! 本当に!
こんな序盤も序盤に麒麟を吐かされるなんて思わなかった。
麒麟と竜は獬豸と霊亀とは別格。
伝ポケと600属ぐらい違ぇ。
俺が麒麟で戦えるのはおよそ10分。
瑞獣川劇によって呼び出される最後の瑞獣「竜」は
命懸けの超究極必殺奥義。
誇張を抜きにして、竜を目にして生き延びた者はいない
でも、竜は五条さんを助ける時に残しておきてぇ
って、ずっとこんな出し惜しみしてばっかだな今の俺!
けど竜を呼んだ後の俺は戦力としてはガタ落ちだ。それは避けたい。
対人殺傷能力なら麒麟でも天井レベルだ。
この10分で決着をつけるっ!!
「もう手加減できねぇからな!!」
麒麟の持つ雷の呪力が猪野の右手に凝縮される。
◇
強力な降霊術の危険性。
その際たるものは呼び込んだ霊を確立された手段で返せなくなる事。
あまりにも強い霊であるために、
召喚術の主導権が
召喚した側から召喚された側に奪われてしまう場合がある。
猪野琢真の強化された来訪瑞獣も、本来は神仏に近い格を持つ神獣を降ろす行為であるため、猪野の身体が徐々に瑞獣に変異してしまう危険性がある。
オガミ婆はその危険性に対して、御霊降ろしをする際に精神と肉体の情報のうち、肉体の情報だけを降ろす事でリスクヘッジしていた。
◇
「焼けろ!!」
ブラフもなく、真っ直ぐ呪力の電撃が男へ走る。
ふい
と
まるで空き缶を捨てるように平然と
強烈な電が猪野と甚爾の間で爆ぜ、肉の焦げる臭いが屋上に漂う。
甚爾はオガミ婆を避雷針代わりにした。
「ま……ご……?」
「誰だよ、オマエ」
ドッ
蹴り飛ばされた肉の弾丸は、あっさりと猪野に避けられる。
あの野郎、雰囲気が変わった──。もっと凶悪な何かに
「まぁ、当たらねぇよな」
天与の暴君 伏黒甚爾
生まれつき全く呪力を持たないかわりに超常的な身体能力を持つ天与呪縛。
フィジカルギフテッド。
生物である以上必ず生成するはずの呪力を全く持たない世界における例外。バグじみた存在である伏黒甚爾の肉体はそのあまりの強力さによって、オガミ婆の孫の魂を侵食し、完全な顕現を果たしてしまっていた。
ジロリと甚爾があたりを見まわし、下笠と目があった。
それは、ただの確認行動だったのかもしれない。
だが、猛獣に目を付けられたと錯覚した下笠の動きは、下笠自身の意思よりも早かった。
下笠三郎の、
呪詛師として、アウトローとしての素質。
自分のために他者を蹴落とす勇気。
殺すと思った時、殺されると思った時、すでに行動は終わっている。
即断即決の気性。
サポート向きの能力でありながらマトモなコンビを組めなかったのは、いざと言う時に一切の躊躇なく自分のために仲間を見捨てるから。
強風は禪院甚爾を掬い上げ、ビルの屋上から追い出した。
下笠三郎が呪詛師として生きながらえてきた理由
自分のために他者を殺す勇気
「お、俺には勇気がある。自分のために他者を蹴落とす勇き……」
蛮勇
「よう」
フィジカルギフテッドの超常的な身体能力は視力にまでおよび、空気の温度差や風の影響によって生まれる気流の境目を面と捉え、足場として空を駆ける。
「ご、ごごごごご、ごめめ」
拳
ゴシャア
甚爾は下笠の持っていた傘を手に取り、眺める。
「まぁ、無いよりはマシか」
◇
渋谷Sタワー屋上が爆発した。
伏黒甚爾が屋上を壁面から蹴り上げたからだった。
大量の瓦礫が猪野に殺到する。
瓦礫の散弾を掻い潜った猪野の眼前に閉じた傘がバットの様に横薙ぎに叩きつけられる。
ガードは間に合ったぞ、けど、なんだよ! コイツ!
猪野と甚爾が空中でぶつかり合う。
空を駆け、電気の呪力を纏った拳と純粋で底無しの膂力が激突する。
武器を使った重い一撃に対して反転術式で底上げした耐久力で対抗し、すぐさま電気の呪力で反撃する。
常人、並の呪霊なら爆散するような電流。しかし甚爾は平然と耐えている。
コイツの身体どうなってんだよ! 瞬間的に放出出来る量じゃ電力が足りなくてマトモなダメージが入らねぇ!
猪野が麒麟の能力によって軽やかに空を駆けるが、伏黒甚爾は当然のようにその動きにピッタリと追随する。
「本当に人間かよテメェ!!」
「よく分かんねぇけど、俺の身体は特別だからな」
「グッ!!」
傘の石突が猪野の腹部を貫通した。
「上半身ばっか気にしやがって、腹がガラ空きだ」
傘を引き抜こうとした甚爾は妙な重さに気がついた。
猪野が傘が抜けない様に腹に力を込めている。
その上で、両手で呪力を練っていた。
「肉を切らせてなんとやらって言うだろ!」
「知らねぇな」
甚爾が猪野に刺した傘のハンドルを蹴り、猪野との距離を離す。
「稲妻はそう簡単には避けられねぇ」
「問題ねぇよ」
猪野の呪力の雷撃が炸裂し、甚爾の身体を穿つ。
腕に当たった電気は甚爾の皮膚を焼き松葉状の火傷跡を残した。
だが逆に言えばそれだけで済んでいる。
頭部を狙ったのを腕で防がれるのは想定範囲内だ。
けど、雷に打たれてピンピンしてるってどんだけ頑丈なんだよ……
まぁいい、それだけアイツが強いってだけの話しだ。
「一度でダメなら何度でもっ」
「じゃあな」
「は!?」
再び電気を溜め始めた猪野に対して、
甚爾は空を蹴り、脇目も振らず地上に落下していった。
◇
俺の動きを見極められる目
問題なし
俺の動きに着いてこられるスピード
問題なし
電気の呪力特性
問題有り
対策呪具
未所持
結論
やってられるか
◇
麒麟の能力
雷の呪力特性
空中歩行能力
アウトプットを可能とする強力な正の呪力による反転術式。
猪野が甚爾の虚を突くために傘を受けたが、ソレ自体は生存に問題はない。
だが、同速に近い相手に対して腹に穴の空いたまま追うのは流石に不可能。
肉を切らせて骨を断とうとしてくる相手なら、肉を切った時点で骨を断たれる前に逃げてしまえば、リソース的に勝利。
もっとも重要なリソースである命を温存するため、伏黒甚爾は躊躇なく逃げ出した。
◇
「猪野くん、随分と苦戦したようですね」
「七海さん! いやぁ、お恥ずかしい。わ、分かりますか? 術式の中断のためにいつもの覆面被ったんですけど」
「服装を見れば分かります、君が麒麟を使わされるなんて相当の手だれだったのでしょう」
「はい、降霊術で呼ばれた物凄く強い霊なんですけど、上手いこと逃げられちゃって。虎杖と伏黒にも注意しておいたんですけど、どれぐらいで呪力切れで帰るか分からないんで、七海さんも気をつけてください」
「ご忠告ありがとうございます」
「七海さんはこれからどちらに?」
「私は五条さんの救出に合流します」
「じゃあ俺も」
「いえ、猪野くんには一つ、別件でお願いしたいことがあります」
「なんですか? 俺ができることならなんでも言ってください!」
「……補助監督が何者かに襲われています。彼らの安否確認と保護を頼みます。反転術式は使えますか?」
「アウトプットもバッチリっすよ! 流石に一回死んだ人の心臓を動かすには麒麟を降ろす必要がありますけど」
「……完璧です。どうかみんなをよろしくお願いします」
「まかせてください七海さん! 俺の目の届く場所で仲間を死なせたりしねぇっすから!」
Q.ストーリーの整合性とかどうなってるの?
A.キャラ強くするだけの二次創作なんで何も考えてないです。
猪野琢真(一級)
コスプレには4千年の歴史がある…。かどうかは別として、神降ろしのための衣装を着用して召喚工程をより複雑にして瑞獣を降ろす解像度を上げる事で、瑞獣そのものを降ろせるようになった。
衣装代はかなり高い。
瑞獣≒聖獣なので降ろしているうちに反転術式が使える様になっていた。
瑞獣そのものが正の呪力を扱えるので反転呪術を持たず、攻撃に回復効果が付く。ドリルや穿血や電撃などの遠隔攻撃を利用して味方を遠距離から回復可能。
本人の地力も一級相当に強くなっている。
来訪瑞獣
一番 獬豸
一本角の生えた羊の様な姿。
能力
身体能力の向上
ツノを模した追尾ドリル弾
二番 霊亀
亀
能力
身体能力の向上、大。特に防御力と攻撃力
呪力を帯びた水を操る能力
耐久力は花御レベル
三番 麒麟
黄金の天馬
能力
身体能力の向上、特大。特に素早さ
電気の呪力特性
空中歩行
強力な反転アウトプット
制限時間10分
霊が温厚なため、術式は中断可能。
耐久力は真人レベル
四番 竜
応竜。龍王の子供で麒麟の親。
水・風・雷を操る嵐の化身。
能力
嵐に関連する天候操作能力
フィジギフ級の身体強度
フルオート反転術式(自分のみ)
飛行
制限時間3分
ざっくり言うと3分間だけ耐久力マコラで攻撃力漏瑚になる。
術式は3分以内に完全終了しておかないと暴走する。
Q.麒麟って土属性じゃないの?
A.一般の認識は雷使うって認識が普及しているから日本ではそっちのイメージが先行してる…的な。龍の先触れということで嵐の前の雷的な感じで。
メタ的に言うと単純に雷の方がカッコイイから
カッシー?天晴れ忘れん
初コロナでダウンしておりました。
かかったことの無い人に一つ言うなら
「風邪やインフルエンザとは別格にヤバい」
そりゃ◯人ウィルスと言われて当然なほどヤバい。
呪霊になったら真人レベル。
たぶん領域を低く見積もって「瞬時にコロナに感染させて最大症状にするだけ」でも大抵の術師はグロッキーになって追撃で死ぬと思う。