母親を死喰い人に殺されたセルウィン家最後の生き残りは、カロー家の養女になる。   作:蕩けたバター

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皆さんこんにちは!
作者の「蕩けたバター」です。
今作を手に取っていただきありがとうございます。
組み分けの儀式の順番が少し変わっていたりしますが、どうか広い心でお許しいただければ幸いです。
今作の主人公エスメラルダは、少し複雑な生まれの少女です。
彼女がこの先どんな思想を持ち、どんな事を考えて魔法界に影響を与えていくのか。
是非あたたかく見守ってやってください。



カロー家の養女と賢者の石
ホグワーツ入学


母親が死の呪文によって死んだ日、一人の赤ん坊がひとりぼっちになった。

世間ではハリー・ポッターがヴォルデモートを打ち倒し、生き残った男の子と呼ばれ、持て囃されていたが、そんな事は関係ない。

古びた屋敷の中で小さな小さな赤ん坊のの娘は、ひっそりと死にかけていた。

お腹を空かせ、意識は朦朧とし、知能が発達しきっていない赤ん坊だが命の危機は感じていた。

 

 

美しい庭園に咲く花は萎れ、埃ひとつなかった床は汚れており、ハウスエルフは寿命で息絶えてしまった。

そんな屋敷の扉が何者かによって開かれた。

コツコツと屋敷内を歩く音が響く。

そして数分後、赤ん坊の居る部屋の扉が勢い良く開かれた。

 

 

「この子が、レディ・セルウィンの娘...まさか本当に実在していたとはな。」

 

 

現れたのは、20代くらいの若い男性だった。

男性は赤ん坊を優しく抱き上げ、壁に掛けられた肖像画を見上げる。

額縁の中のレディは寂しそうにニコリと微笑んだ。

男性はレディに一礼し、屋敷を出た。

自身が住まう屋敷に着くと、生まれて数ヶ月の赤子2人をあやす妻にこう言った。

 

 

「今日から、この子はカロー家の子だ。ヘスティアとフローラ同様、大切に育てて欲しい。」

 

 

「この子が、レディ・セルウィンの御息女なのね。」

 

 

「そうだ。苦労をかけるが、どうか平等に愛してあげてくれ。」

 

 

男、ミスター・カローは妻に頭を下げる。

そして女、ミセス・カローは夫の要求を受け入れ、3人の子を大切に大切に慈しみながら育て上げた。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

私はエスメラルダ・カロー。

聖28一族のカロー家の養女である。

私には同い年の姉のフローラとヘスティアがいるが、私と2人は誕生日が違う。

疑問に思い、母親に尋ねると私が本当はカロー家と血の繋がりが無い事を教えてくれた。

しかし、カロー夫妻は私を本当の娘のように接してくれており、フローラとヘスティアも私を家族として受け入れてくれている。

だから、本当の父親や母親の事についてあれこれ尋ねる事は無かった。

そんな私も今日、11歳の誕生日を迎えた。

朝起きると、屋敷中が大忙しでバタバタとしていた。

私が起きて来た事に気がついたフローラとヘスティアが私の元に駆け寄って来てくれた。

 

 

「「エスメ、おはよう!」」

 

 

「おはよう、フローラ、ヘスティア。」

 

 

「誕生日おめでとう!エスメ!」

 

 

「これで貴方も11歳ね。」

 

 

そう言って、フローラは私をギュッと抱きしめてくれた。

私も抱きしめ返し、ヘスティアに顔を向けると、彼女は私の頭を撫でてくれた。

なんとも良い気分に浸っていると、ドタバタと屋敷内が騒がしくなった。

その後、家族全員で朝食を済ませ、誕生日プレゼントを受け取った。

 

 

「おめでとう、エスメラルダ。私達からのプレゼントだよ。」

 

 

「ありがとう、お父様、お母様。」

 

 

リボンを解き、包みを開くと小さな箱が2つ入っていた。

箱を開けると、中には中央にルビーがあしらわれた白いリボンのバレッタと美しい装飾の施されたヘアフレグランスが入っていた。

私はお父様とお母様にお礼を言い、フレグランスを髪に吹きかけ、バレッタを髪に飾る。

 

 

「どう?変じゃない?」

 

 

「「とっても素敵よ!エスメ!」」

 

 

「よく似合っているわ、エスメラルダ。」

 

 

家族と共に最高で素敵な誕生日を過ごした。

それから数日後、ダイアゴン横丁で入学用品を購入した。

そして、母の形見である杖を父から譲り受け、私達は3人で魔法の練習をした。

そして今日、私達はホグワーツに入学する。

ロンドン、キングズクロス駅にて───

 

 

「忘れ物は無いかい?」

 

 

「「ええ、大丈夫よ。」」

 

 

父の問いにヘスティアとフローラが即答する。

流石は双子、よく話すタイミングが被る。

 

 

「エスメラルダは大丈夫?といっても、貴方はしっかりしているから、忘れ物なんてしないわよね。」

 

 

「ええ、3回確認したから大丈夫よ。」

 

 

母の問いにニコリと笑う。

私達は今から目の前に止まっている列車に乗って、ホグワーツ魔法魔術学校へ向かう。

 

 

「体に気をつけてね。何かあったら、手紙を送るのよ?」

 

 

「ヘスティア、フローラ、エスメラルダ、無理はせずに頑張りなさい。」

 

 

「ええ、お父様、お母様、行ってくるわ。」

 

 

「お父様、お母様、愛しているわ。」

 

 

フローラとヘスティアが父と母に順番にハグを交わし、抱き合う。

 

 

「行ってきます、お父様、お母様。」

 

 

私も同じように父と母に抱き着き、2人の温もりを感じる。

そして列車に乗り込むと、私達は空いているコンパートメントを探す。

 

 

「結構人が乗っているわね。」

 

 

どのコンパートメントも人が乗っており、かなり奥に進まなければ座れないかもしれない。

 

 

「そうね、この調子だとすぐ埋まってしまいそうだわ。急ぎましょう。」

 

 

フローラの言葉に、私とヘスティアは頷き急ぎ足で歩き始めた。

暫く歩いていると、フローラが足を止めた。

 

 

「ノットだわ。」

 

 

「ノット?知り合い?」

 

 

「ああ、あのノット家の一人息子ね。」

 

 

フローラとカローはノットと呼ばれる少年を知っているらしい。

話を聞くと、お茶会で何度か会った事があるそうだ。

私は体が弱かったから茶会に参加した事はなく、家族以外ではビンセントしか友人がいない。

クラッブ家はカロー家と親しい家門で、幼い頃からよく遊んでいた。

ビンセントは馬鹿で話が合う事は無かったが、食べる事が好きな私はビンセントと一緒にお菓子を食べながら話すのは嫌いじゃなかった。

 

 

「発車まで時間もないし、ここに入りましょ。」

 

 

「そうね。」

 

 

フローラがノックをすると、中から声がした。

 

 

「失礼するわね。御機嫌よう、ノット。」

 

 

フローラが扉を開け、ノットを見つめ挨拶を述べる。

ヘスティアも同じように挨拶を述べていく。

ノットを見た時、私は何故か彼の事が気になって仕方がなかった。

しかし物事には順序というものがある。

まずは顔見知りにならなくては、まともに話すら出来ない。

私も2人を見習って口を開いた。

 

 

「初めまして、ミスター・ノット。私はエスメラルダ・カローと申します。宜しくお願い致します。」

 

 

私が挨拶すると、ノットは一瞬私を見て驚いたような表情をした。

私は何か失礼な事をしてしまったのかと思い、慌てて頭を下げた。

 

 

「顔を上げてくれ。まさか、噂のカロー家の養女に、こんな簡単にお会い出来るとは思っていなかったから、驚いただけだ。」

 

 

「噂?」

 

 

私が訝しげな顔で尋ねると、セオドールは語り始めた。

どうやら、聖28一族に数えられる純血名家のカロー家が養女を迎えたという話は有名だったそうだ。

しかし、等の養女は体が弱いからと社交活動には参加せず、家に引きこもっている。

相当の醜女なのか、はたまた家から出られないほど体が弱いのか、人には言えないような生まれなのかと、様々な憶測が飛び交っていたそうだ。

 

 

「で?実際会ってみた感想は?」

 

 

ヘスティアがノットをじっと見つめ、彼の言葉を待つ。

 

 

「...とても品のあるレディだ。」

 

 

ノットはそう言い、荷物をまとめ窓際に寄って座り直した。

 

 

「それだけ?」

 

 

ヘスティアが咎めるように聞けば彼は「ああ」と頷いた。

そんな彼を「つまらない男ね」と一蹴し、フローラはノットの隣に腰掛け、ヘスティアはノットの前に座った。

フローラとヘスティア、ノットの気遣いに心の中で感謝を述べ、ヘスティアの隣に座る。

 

 

ホグワーツまでの道中、それ以上ノットと話す事は無かった。

ヘスティアとフローラも大人しい性格なので、道中騒がしく話すような事は無く、持参した本を読んで暇を潰した。

列車を降りると、私達は船に乗ってホグワーツ城へ向かう事になった。

夜の湖は少し恐ろしく見えるが、空に浮かぶ月は眩い光を放っていた。

 

 

「きゃあ、魚が跳ねた!」

 

 

魚が跳ねてフローラが驚くと、船がガタンと揺れた。

 

 

「驚きすぎよ、フローラ。」

 

 

「うふふ、フローラって意外と怖がりなのね。」

 

 

私とヘスティアに笑われて、フローラは頬を膨らまして黙り込む。

微笑ましい、穏やかな時間が流れた。

船から落ちてしまうのでは無いかと不安に思ったが、保護魔法が掛けられているのか、船が傾いたり沈むような事は起こらなかった。

 

 

ホグワーツ城に着くと、背の高い大きな男性に案内され私達は城の中に向かう。

城内に入ると、聡明そうな魔女が私達を大広間へと案内する。

大広間に入ると天井には美しい空が広がっていた。

その後全員が大広間に集まると、一人ずつ名前を呼ばれて目の前に置かれた椅子に座っていく。

そして帽子を被り、それぞれに合った寮を選んでくれるのだ。

 

 

「私達は全員スリザリンかしら?」

 

 

「そうね。お父様もお母様もスリザリンだもの。」

 

 

ヘスティアとフローラはスリザリンに入る事が当たり前の事のように小声で話し出す。

 

 

「私は...スリザリンに選ばれるのかな?」

 

 

私の疑問にフローラとヘスティアは顔を見合せて口を噤んだ。

私の本当に親について2人は知らないらしく、純血の魔法使いの娘としか聞かされていないらしい。

そして私も2人と同様の知識しか持ち合わせておらず、自分の両親の所属寮を知らなかった。

一体どの寮に適正があるのだろうか。

 

 

その後順番に名前が呼ばれ、ついに有名な純血貴族の名が呼ばれた。

 

 

「マルフォイ・ドラコ」

 

 

マルフォイは椅子に向かって堂々と歩いて行く。

帽子を被り椅子に座ると、すぐさま寮が告げられた。

 

 

「スリザリンッ!」

 

 

マルフォイは嬉しそうに笑うがすぐに表情を引き締めてスリザリンのテーブルに向かった。

 

 

「流石はマルフォイ家の御曹司ね。」

 

 

「彼の家も聖28一族に選ばれているのよね?」

 

 

「ええ、そうよ。お母様が言っていたでしょう?彼とは仲良くするように、って。」

 

 

母は私やフローラ、ヘスティアに何度も口酸っぱく言っていた。

接する友達は必ず選ぶように、と。

その中でも、聖28一族を始めとした純血の魔法使いとは仲良くするように命じられている。

父はスリザリンに入り、同僚生と親しくするよう話していたが、母は過激では無いが純血主義者なのでマグル生まれの魔法使いとは関わった日には寝込んでしまうかもしれない。

その後、数人の名が呼ばれかの有名な生き残った男の子の名が呼ばれ、広間にざわつき始めた。

 

 

「ポッター・ハリー」

 

 

生き残った男の子。

名前を言ってはいけないあの人を打ち倒した英雄。

魔法界一の有名人。

誰もが一度は耳にした事があるだろう。この魔法界に彼を知らない者はいない。

 

 

「ハリー・ポッターよ。」

 

 

ヘスティアがそう呟くと同時に、ポッターは椅子に座り帽子を被る。

闇の帝王を打ち倒した少年がどの寮に選ばれるのか、それをここに居る全ての人間が気にしていた。

ふと、教職員の席に座る校長...アルバス・ダンブルドアと目が合う。

彼は私をじっと見つめ口角を上げた。

私は言い表せないような不快感を感じ、彼から視線を逸らす。

 

 

「グリフィンドールッ!」

 

 

そう帽子が高々と宣言すると、ポッターはグリフィンドールの席に向かって歩き出す。

グリフィンドールの席はわっと湧き上がり、楽しそうな声が響く。

 

 

「ノット・セオドール」

 

 

英雄の次はコンパートメントで一緒になったノットの番だった。

私は何故か彼の事が気になっており、ついつい視線を送ってしまう。

ノットはたまたま私と目が合ったが、すぐに視線を逸らし、椅子に座って帽子を被った。

帽子はすぐに「スリザリンッ!」と宣言する。

ノットは当たり前だと言わんばかりの表情で、スリザリンの席へ向かう。

 

 

スリザリンの席に着くと、上級生の生徒が直々に歓迎の言葉を述べていた。

聖28一族の中でも、彼の家は高位に位置するようだ。

 

 

「ノット君って、かなり良い家柄なのね。」

 

 

私がそう呟くと、ヘスティアがクスリと笑った。

 

 

「何言ってるの?彼は聖28一族という概念を作ったカンタンケラス・ノットの子孫なのよ?」

 

 

なるほど、道理で彼が歓迎されているわけだ。

スリザリンでは、血筋で地位が決まると聞いた。

その中でも聖28一族、そしてそれに連なる家門の人間はかなり優遇されるらしい。

その次に一般家庭の純血、半純血、マグルの順で尊重されるそうだ。

つまり、マグル生まれは最底辺...スリザリン内での死を意味するという事だ。

私がスリザリンに選ばれたとしても、純血の血筋なので一安心というわけだ。

 

 

その後、ヘスティアとフローラの名前が呼ばれ、2人はスリザリンに組み分けされた。

次は私の番だと思ったが、別の生徒の名前が呼ばれた。

スリザリンの席に座る2人に視線を送ると、2人も意味がわからないといった様子で私を心配そうに見つめていた。

その後、数人の生徒の名が呼ばれ有名なパーキンソンの名も呼ばれ、スリザリンに組み分けされていった。

 

 

「セルウィン・エスメラルダ」

 

 

広間の中がざわつき始める。

どうやら、セルウィンという姓は魔法界の中でかなり有名らしい。

 

 

「セルウィンってあの?」

 

 

「セルウィン家唯一の生き残り?」

 

 

私と同じ名だが、私とは違う姓だ。

同名の人がいるなんて、珍しい事もあるなと思いながらぼんやりと椅子を眺めていた。

 

 

「早くしなさい、ミス・セルウィン」

 

 

そんな声が聞こえて、マクゴナガルの方を見ると私と目が合った。

どうやら私の名を呼んでいたらしい。

しかし、私の姓はカローだ。

セルウィンでは無い。

 

 

「先生、私の姓はセルウィンではなく、カローです。何か勘違いされているようですね。」

 

 

私が堂々と訂正するよう求めるが、マクゴナガルは首を横に振った。

 

 

「いいえ、貴方はミス・セルウィンです。さあ、早く椅子に座りなさい。」

 

 

「いいえ、違います。先生、訂正して下さい。私はカロー家の人間です。」

 

 

わたしが何度訂正を求めても、彼女は頑として首を縦には振らなかった。

私は渋々言われた通り椅子に腰掛ける。

 

 

『ほーう?これはこれは、セルウィン家の血を濃く継いでおる。』

 

 

突然の話し声に驚いて周囲を見るが、だれも私に話しかけてはいない。

 

 

『ほっほっほ、君に話し掛けているのは今君が被っている帽子さ。』

 

 

(なるほど、貴方は話せるのね。)

 

 

落ち着いて帽子に話し掛ける。

 

 

『そうとも。そして私には開心術の魔法が組み込まれており、この帽子を被った者を適した寮へ導く事が出来る。』

 

 

創始者達が作った、世界に一つだけの特別な帽子。

この帽子は私をどの寮に組み分けてくれるのだろうか。

 

 

『さて、君はとても真面目で聡明だ。知識に貪欲で、魔法の才能もあるようだね。』

 

 

それはそうだ。

私はカロー家の人間なのだ。

純血の魔法使いとして、相応の教養は身につけているつもりだ。

 

 

『そして……ふむふむ……君はどうやら両親を亡き者にした魔法使いに強い憎悪を抱いているようだね?...ああ、否定しなくても良い。私には全てが見えている。君が認識出来ない感情も含めてね。』

 

(……私が両親を死に追いやった魔法使いを殺したい、と思っているという事?私はそんな風に思った事はない。自分の本当の両親について知りたいとも思っていないわ。)

 

 

『ほっほっほ、しかし心は素直だ。そして私はそんな君の強い感情を汲み取り、君に最適な寮を選ぶ事が出来るというわけだ。』

 

 

帽子はそう言うとしばらく黙り込むが、すぐに私の耳元で囁いた。

 

 

『君には偉大な事を成し遂げる為の勇気がある。しかし、それとは別に純血の魔法使いに対して強い仲間意識を持っている。さらに、知識にも貪欲だ。グリフィンドールに進めば、君の憎悪は終焉を迎え、偉大になれる。しかし、スリザリンに進めば君は革命を起こすだろう。レイブンクローに進めば、君は多くの知識を得る賢者となるだろう。』

 

 

私はどの寮に進むべきか。

悩んでいると、脳裏にとある少年の姿が浮かび上がった。

帽子はすぐに声高々に宣言した。

 

 

「スリザリンッ!」

 

 

その言葉にスリザリンの席から歓声が上がり、その他のテーブルもざわつき出す。

そして、ダンブルドアを始めとした教職員達は不安気な表情でエスメラルダを見つめていた。

エスメラルダに多くの視線が注がれる中、彼女は足早にスリザリンの席へ向かう。

 

 

「入学おめでとう、ミス・セルウィン。君を歓迎しよう。」

 

 

上級生の先輩に歓迎の言葉を貰い、適当に返事をしてヘスティアの隣に座る。

 

 

「貴方がスリザリンに来るって信じていたわ。でも随分かかったわね?」

 

 

「そうね?帽子も随分悩んでいたみたいだけど?」

 

 

私はどう言うべきか、少し悩んだ。

もしここでグリフィンドールに入るか、レイブンクローに入るか、スリザリンに入るか、悩んでいたと話せば今後の私の地位が下がる可能性がある。

スリザリンとグリフィンドールは仲が悪く、私がグリフィンドールの資質を持っていると分かれば、スリザリンの生徒達からなんと言われるか分からない。

孤立する事が恐ろしかったのだ。

フローラやヘスティアは私を蔑ろにする事は無いかもしれないが、マルフォイやノット、パーキンソン等の上位貴族は違う。

私を排斥しようとするはずだ。

私は少し考えてからこう答えた。

 

 

「実は、レイブンクローの資質を持っていると言われたの。私も読書が趣味だし、多くの知識を得られると言われてしまえば、少し悩んでしまうわ。」

 

 

レイブンクローには半純血やマグル生まれもそれなりに多いが、聡明で優秀な魔法使いが多く在籍している。

代々スリザリンに組み分けされる家柄も、稀にレイブンクローに組み分けされる者がいるという話も聞いた事がある。

これなら無難な回答になるはずだ。

 

 

「そうなの?確かに貴方はいつも本を読んでいるわよね。」

 

 

「確かにエスメはレイブンクローに適正があってもおかしくないわ。」

 

 

2人は納得したのかうんうんと頷いている。

その後、ブレーズ・ザビニがスリザリンに組み分けられ、組み分けの儀式が終了した。

ダンブルドアから祝辞が述べられ、学校生活に関する連絡事項が伝えられ、入学祝いの晩餐会が始まった。

 

 

フローラやヘスティアと話しながら食事をしていると、斜め右に座る少年から声を掛けられた。

確か、純血貴族のドラコ・マルフォイだ。

 

 

「やぁ、カロー...いや、セルウィンと呼ぶべきなのか?」

 

 

呼び方に悩んでいるようだ。

私はマクゴナガルに訂正を求めていたが、実際はセルウィンという姓があるらしい。

個人的にはカロー家の人間として生きてきたので、カローと呼ばれたい。

 

 

「カローで良いわ。」

 

 

私がそう告げると、私の左斜めに座っていた女子生徒が口を挟んだ。

 

 

「カローじゃ誰を呼んでいるか分からないわ。ねぇ、下の名前で呼んでも良いかしら?私はパンジーよ。パンジー・パーキンソン。宜しくね?気軽にパンジーって呼んでちょうだい。」

 

 

パンジーの明るい声につられて私まで楽しくなってくる。

すぐに彼女に微笑み、簡単な自己紹介を始めた。

 

 

「ええ、宜しくねパンジー。私はエスメラルダ・カローよ。エスメと呼んでくれたら嬉しいわ。」

 

 

マルフォイは「確かに」と声を零し、わざとらしく咳払いをしてから自己紹介を始めた。

 

 

「コホン...僕はドラコ・マルフォイだ。宜しく、エスメラルダ。君は確か、カロー家の養女だったよな?体が弱くて茶会に参加出来ないと聞いていたが、体調は大丈夫かい?」

 

 

マルフォイは紳士的に私の体調を気遣い、貴族らしい態度で接してくれた。

彼はきちんとした貴族教育を受けているようだ。

彼の気遣いに礼を言い、私も自己紹介を返した。

 

 

「心配してくれてありがとう、ミスター・マルフォイ。幼い頃は体が弱くて外にも出れなかったんだけど、今は大丈夫よ。私はエスメラルダ・カローよ。これから宜しくね。」

 

 

その後はマルフォイとパンジーから魔法界の話や様々な事を教えて貰った。

ホグワーツの事、授業の事、クィディッチというスポーツの事。

2人が話す内容はどれもこれも新鮮で面白かった。

暫くするとスリザリンの生徒に話しかけられたので話題が途切れたが、すぐに別の話題で盛り上がった。

 

 

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