母親を死喰い人に殺されたセルウィン家最後の生き残りは、カロー家の養女になる。   作:蕩けたバター

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少し早いですが2話目です。
賢者の石に関する構想は練ってあるので、スムーズに投稿を続けて早く秘密の部屋に行きたいです。
今回の話では、主に主人公の交友関係について描いています。


スリザリンへようこそ

 

スリザリンのテーブルに相応しい高尚な会話から、普通の少年女のたわいない話まで、様々な話題が飛び交う。

 

 

「それにしても、君は随分たくさん食べるんだな?エスメラルダ。」

 

 

マルフォイは私の食欲旺盛な食いっぷりに圧倒されているようだった。

彼の発言に、フローラとヘスティアが口を揃えて「「デリカシーがないわね」」と言い鼻で笑った。

 

 

「す、すまない。その、とても美味しそうに食べるから驚いたんだ。ほら、お世辞にもこの国の料理は美味しいとは言えないだろう?」

 

 

確かにイギリス料理は不味い事で有名だ。

しかし、ホグワーツにはイギリス料理以外にもフランス料理や菓子パンやスコーン等の軽食も用意されており、全てが不味いわけではない。

 

 

「うーん、イギリス料理以外の物もあるし、私は今のところそれしか口にしていないわね。私は食べる事が好きだから。私の友達のビンセント...クラッブとよく一緒にお菓子を食べてたわ。」

 

 

「ク、クラッブはエスメラルダを知っていたのか?!」

 

 

マルフォイが隣に座って家畜のように料理を貪るビンセントに尋ねると、彼はくちゃくちゃと音を立てながらも頷いた。

私はそんなビンセントを見てすぐにこう言った。

 

 

「音を立てて食べるのは行儀が悪いわ。一度に詰め込む量は考えないとダメよ?ビンセント。」

 

 

「わ、悪い...またやっちまった。」

 

 

「ダメでしょう?マナーくらいしっかり覚えないと。」

 

 

ビンセントは申し訳なさそうに謝るが、食べる手は止まらない。

反省の欠片もない事は分かっていたが、純血らしい高貴な振る舞いを身につけて欲しいものだ。

私と彼のやり取りを見て、マルフォイは手に持っていたパンを床に落とした。

 

 

「なんというか、2人の組み合わせはアンバラスだな。まさか、クラッブに食事マナーを教える人間がいたなんて、驚きだよ。」

 

 

「そうね。賢い猫と違って、野生の獣に芸を教えるのは相当難しいわよ?」

 

 

パンジーの言い得て妙な例えに苦笑しながら、私は彼女の言葉に頷いた。

 

 

ちなみに私の好物はサーモンのクーリビヤックだ。

これは、小麦粉、バター、卵を使って作るブリオッシュ生地で、鮭、鰻、タラ、チョウザメなどの魚を包んで焼いているロシア料理だ。

または、ロシア料理発祥のフランス料理とも表現されている。

ロシアの宮廷料理とされていたり、多くのゲストが集まるパーティーなどでメインディッシュとして作られて、客の目の前で切り分けたりと華がある料理だ。

ホグワーツで働く屋敷下僕にいつかリクエストしたいが、どうやって接点を持てば良いのか分からない。

非常に残念である。

 

 

しょっぱい物を食べると甘い物が欲しくなる。

テーブルを端から端まで見渡すと、上級生と新入生の境目の席に色とりどりのマカロンが置かれている事に気付いた。

しかし、マカロンは随分離れた位置に置かれており、誰かに取ってもらう必要がある。

どうしようかと悩んでいると、褐色色の肌の少年が声を掛けてきた。

 

 

「どうしたんだい?何か取ろうか?」

 

 

確か彼はブレーズ・ザビニ。

一番最後に組み分けが行われた生徒だ。

 

 

「お願いしても良いかしら?マカロンを3つ程取っていただける?」

 

 

私が困った顔で頼むと彼はキザな笑みを浮かべる。

そしてマカロンを皿に盛り、皿を隣の生徒に手渡して私の元まで運ぶよう伝えてくれた。

マカロンが無事に届くと、私は彼に感謝を告げた。

 

 

「ありがとう。私はエスメラルダ・カローよ。宜しくね、ブレーズ。」

 

 

「いえいえ、カロー家の麗しいレディのお役に立てたのであれば光栄だぜ。俺はブレーズ・ザビニ。宜しくな。」

 

 

彼の下心の籠った瞳は好きになれそうにないが、彼の好意はスリザリンらしいと内心思った。

 

 

「そういえばスリザリン寮の寮監はどなたなの?」

 

 

ふと疑問に思った事を口にすると、目の前に座っていたノットが口を開いた。

 

 

「スリザリンの寮監はセブルス・スネイプ教授だ。ほら、あそこの席に座っていらっしゃる黒髪の方だ。」

 

 

彼の視線の先を追っていくと、真面目だが少し偏屈そうな男が食事をしていた。

黒いローブに黒いズボン、全身黒ずくめでとても地味な服装をしている。

 

 

「何の科目を教えている方なの?」

 

 

「魔法薬学を担当されているらしい。確か、ドラコのお父上の後輩ではなかったか?」

 

 

セオドールがドラコに問い掛けると、マルフォイは得意気に自分の事を自慢するかのように話し始めた。

 

 

「ああ、そうだとも。彼は非常に優秀で素晴らしい方だ。特に魔法薬学の腕前が素晴らしいそうだ。父上も在学時から気に掛けていてね、よく屋敷にも招待をしていたよ。」

 

 

マルフォイが懇意にしている教授という事は、おそらく彼もスリザリン出身なのだろう。

であれば、親身になって授業を行ってくれるはずだ。

スネイプ教授の授業に期待を抱きながら、マルフォイの自慢話を聞いていた。

 

 

晩餐会が終わると、私達は寮へ戻って休む事になった。

上級生を先頭に、私達はスリザリン寮へと向かう。

私とヘスティア、フローラ、ノットは最後尾におり、のんびりとスリザリンの列に従って進んで行く。

しかし、暫くすると私の体力が限界を迎えた。

酷い息切れ、動悸が激しくなる。

外に出る時も今日程歩く事は無いため、疲れてしまったのだろう。

 

 

「大丈夫?!エスメ!」

 

 

「エスメ!どうしたの?大丈夫?」

 

 

ヘスティアとフローラがすぐに異変に気付いて私に駆け寄る。

2人の声にノットも私の近くへやって来た。

しかし、私が立ち止まっている間にもスリザリンの列はどんどん離れていく。

上級生を呼ぼうにも、あまりにも距離が離れてしまった。

そしてホグワーツの階段は忙しなく動いている。

彼等に追い付くには、あまりにも距離が遠すぎた。

 

 

「はあ、はあ...ちょっと苦しいだけ。どうしよう、列が...」

 

 

「誰か大人を呼んでこないと。」

 

 

「大広間にまだいるかな?でも大広間までどうやって行くの?」

 

 

フローラとヘスティアが、あーだこーだと悩んで解決策を考えていると、ノットが口を開いた。

 

 

「大広間までの道順は分かる。少し待っていろ、僕が寮監を呼んでくる。」

 

 

「へぇ、あなたって記憶力が良いのね。」

 

 

フローラが感心したように声を零すと、セオドールは無言でその場を離れていった。

少し経って立ち上がろうとするが、ふらふらと体が傾き足元がおぼつかない。

 

 

「無理に立ち上がろうとしないで。エスメ、貴方顔が赤いわ。熱でもあるんじゃない?」

 

 

ヘスティアがそう言うと、フローラの冷たい手が私の額に触れる。

ひんやりとしていて気持ちがいい。

 

 

「本当だわ。エスメ、無理していたのね。無理は美徳では無いのよ?明日から授業も始まるのに。」

 

 

2人が心配そうに話しているのを他所に、私の視界は少しずつ歪んで行く。

熱のせいか、体が重く感じる。

幼い頃よりはマシになったが、体の弱さは健在だった。

全く、何も嬉しくない。

 

 

激しい頭痛、酷くなる動悸に目眩が加わり、目の前がチカチカする。

暫くするとノットの声が聞こえた。

 

 

「こっちです、スネイプ教授!」

 

 

しかし、もう私の視界は何も映さない。

度重なる移動のせいか、大勢の人と関わったからかは分からないが、酷い疲れのせいで目を開く事さえ出来なくなっていた。

ふと見知らぬ男性の声が聞こえ、浮遊感を感じる。

そして遂に私は意識を手放した。

次に目を覚ました時には白い天井が目に入った。

 

 

「あれ?ここ何処?」

 

 

私がそう呟くと、シャッとカーテンが勢いよく開けられ、人の良さそうな女性が私の元へやって来た。

 

 

「あらあら、お目覚め?体調はどうかしら?」

 

 

「だ、大丈夫です。それよりここはどこなんですか?」

 

 

「ここは医務室ですよ。貴方は昨日、寮への帰り道酷い熱で気を失ってしまったんです。確か、ミスター・ノットという生徒がスネイプ先生を呼んで来て、それで貴方がここに運ばれたんですよ。」

 

 

どうやら、彼女はマダム・ポンフリーと呼ばれる校医で、ホグワーツの生徒が怪我や病気にかかった時、治療をする為ホグワーツに勤務しているらしい。

 

 

その後簡単な診察が行われ、熱も下がり、呼吸も正常だと判断された。

 

 

「入学式初日にここへ運ばれてきたのは貴方が初めてです。良いですか?しっかり食べて、よく休むんですよ?貴方は特別体が弱いと聞いていたから、今後が心配ですわ。ああ、それと念の為午前中の授業を休むようにして下さいね?担当教科の先生にはお伝えしてあるから、安心して休みなさい。」

 

 

「すみません。御配慮いただきありがとうございます。」

 

 

幾つか小言を言われ、簡単な食事をしてから寮に戻る為の地図を貰った。

その地図を見ながら何とかスリザリン寮に戻ると、多くの生徒に心配され、スリザリン寮のあたたかさを実感した。

 

 

「大丈夫かい?ノットから聞いたが、体調を崩して倒れたそうじゃないか。これからは、体調が悪くなればすぐ言ってくれ。」

 

 

「心配したの?大丈夫?エスメ!」

 

 

ドラコやパンジーも私を心配していたようで、私の無事を知って少し安心したように笑った。

その後、フローラやヘスティアも私に駆け寄ってきて、私を強く抱き締めた。

 

 

「心配したのよ?エスメ!」

 

 

「エスメ、無理はしないってお父様と約束したでしょう?もう、心配かけないでよ。」

 

 

「うん、ごめんね。心配してくれてありがとう、フローラ、ヘスティア。」

 

 

2人に感謝を告げると、上級生の女子生徒が私の元にやって来た。

 

 

「ミス・セルウィン。少し良いかしら?寮の部屋分けについて説明したいのだけど?」

 

 

「分かりました。お願いします。」

 

 

どうやら、彼女は監督生で女子寮の生徒の面倒を見ているらしい。

基本的にスリザリンは他寮と比べると人数が少ない為、学年が上がれば一人部屋を与えられる生徒もいるらしい。

その基準は聖28一族、純血となっており、ノットやマルフォイのような高位貴族を筆頭に純血の生徒にのみ与えられる特権だそうだ。

 

 

「そうなんですね。」

 

 

「女子生徒だと、貴方やカロー、パーキンソン、グリーングラスが筆頭になるのかしら?さて、貴方の部屋はこの階段を上がって右の部屋よ。ルームメイトは、ヘスティア・カローとフローラ・カローの2人。分かった?」

 

 

「はい、分かりました。ありがとうございます。」

 

 

その後私の部屋に戻り、荷物を整頓する。

教科書を自分用の机に置き、洋服は近くのクローゼットに仕舞う。

シャワーを浴びてから、少し休む事にした。

ナイトドレスに着替え、ベッドに寝転ぶ。

午後から授業に出なければならない。

絶対に起きれるように、ヘスティアとフローラ宛に張り紙をしてから眠りについた。

それから数時間後、大きな声に驚いて目を開くとそこには何故かパンジー・パーキンソンが居た。

 

 

「あ、おはようパンジー。」

 

 

「おはようって、もう昼過ぎよ?早く行かないと、昼ごはんが冷めちゃうわ。」

 

 

ぼんやりとした頭で何とか立ち上がり、のそのそと着替えを始める。

なるべく急がなければ、彼女に迷惑がかかってしまう。

 

 

私のゆっくりとした動きに痺れを切らしたのか、パンジーは突然私の着替えを手伝い、髪を梳かして整え、スコージファイで体を清潔にし、午後の授業に必要な教科書をまとめ、羽根ペンとインクをポケットに入れてくれた。

 

 

「まったくもう!貴方はのんびりしすぎよ。フローラとヘスティアに貴方をどんなに呼んでも起きないと泣き疲れた時は焦ったわ。」

 

 

なるほど、私が眠りから覚めないからフローラ達は声の大きなパンジーをわざわざ呼んできてくれたらしい。

そしてパンジーに身支度を整えさせて貰い、ずっと私は寝ぼけていたのだとようやく気づいた。

 

 

「ごめんね、パンジー。私ずっと寝ぼけてて、急いで動いてるつもりだったんだけど、迷惑かけちゃってごめんね。」

 

 

私は今までの非礼を謝罪する。

パンジー「仕方ないなぁ」と言いつつ、楽しそうに笑って私を許してくれた。、私の手を引いて大広間に向かい、昼食を食べ始める。

既に大広間では多くの生徒が食事をしており、私達はかなり遅くにやって来たようで、少し悪目立ちしてしまった。

 

 

「おや、随分お寝坊さんね?カロー?」

 

 

同寮のミリセント・ブルストロードにからかわれるが、事実なので反論する事は出来ない。

 

 

「カローだと分かりずらいでしょ?エスメラルダで良いわ。宜しくね?ブルストロード。」

 

 

「そう?じゃあ私の事もミリセントで良いわよ。宜しくね、エスメラルダ。」

 

 

「ええ、宜しくねミリセント。」

 

 

こうして些細なやり取りから友人は増えて行く。

それを今日と昨日でよく実感した。

友達を作るのに特別な理由はいらないのだ。

勿論、私が純血名家の血を引いているから、という前提はあるだろうが、私達は会話によって簡単にお互いを知る事が出来る、この世界でも稀な種族なのだから。

 

 

「この後ってなんの授業なの?」

 

 

「確か魔法薬学だったわね。ノット!今日の授業範囲はどこだったかしら?」

 

 

ミリセントが遠くに座るノットを大きな声で呼ぶと、彼は面倒臭そうな顔をしながらも教えてくれた。

 

 

「初回授業はおできを治す薬の作り方だ。使う材料と詳しいレシピは一通り確認しておいた方が良い。先輩方の話では、スネイプ教授はアスフォデルの球根の粉末、ベゾアール石、モンクスフードに関する問題を出される年もあると聞いた。その辺も予習しておけ。」

 

 

「ふーん?相変わらず真面目なのね、ノットは。」

 

 

魔法薬学の教科書は半分程読んでいるが、アスフォデルの球根の粉末も、ベゾアール石も、出て来ていない。

もしかしたら、彼は教科書を一通り読んでいるのではないだろうか?

 

 

「ねぇ、ノット君。もしかして貴方は魔法薬学の教科書をまるまる一冊予習済みなの?」

 

 

私が質問をすれば、彼はすぐに首を縦に振る。

 

 

「へぇ?流石はノット、相変わらず真面目でつまらない男ね。」

 

 

パンジーが鼻で小馬鹿にしたように笑うが、私はノットを好ましく思う。

 

 

「そうかしら?勉強を真面目に取り組もうとしている時点で、とても素晴らしい事だと思うよ。私も見習わなきゃね。」

 

 

「褒めても何も出ないぞ。」

 

 

「別に何かを得ようとして貴方を称賛したわけじゃないよ。」

 

 

そう話すと、彼は何かを考え込むように黙り、何も言わなくなった。

 

 

勉学に、もしくは魔法薬学に強い関心があるからこそなせる所業だ。

彼はとても真面目で、知識に貪欲な人なのだろう。

私自身、彼ほど勉強が好きなわけでは無いが、学ぶ事は好きであり、知識を得る事に喜びを感じるタイプだ。

もしかしたら、彼とは気が合うかもしれない。

 

 

「魔法薬学の席はどうなるのかな?」

 

 

私が疑問を口にすると、ご丁寧にパンジーが授業の席順について説明してくれた。

特別な試験を除いて、席は自由で寮の垣根を越えて好きな席に座る事が出来るそうだ。

午前中の授業を経験している彼女達は、午後の授業の席についても話しており、決まっている生徒が多いらしい。

ちなみに魔法薬学の授業はグリフィンドールと合同だとか。

 

 

「スリザリンの加点チャンスだ。みんな、真面目に頼むぞ。」

 

 

マルフォイがそう言うと、何人かはうんざりしながら、何人かは気合いの籠った声音で返事をした。

気合いの籠った生徒に該当するのはパンジーと優しいデイビスくらいで、他の生徒は面倒くさそうにしている。

マルフォイは寮杯でグリフィンドールを負かして一位を取りたいらしく、スリザリンの士気をあげようと必死だ。

ちなみに私はそんなものはどうでも良く、貢献する気はさらさらない。

 

 

「じゃあみんなほとんど席を決めているの?」

 

 

「私はドラコと約束しているわよ。」

 

 

そうパンジーが言うと、ミリセントも口を開いた。

パンジーはドラコにお熱なので、驚いたりはしないがてっきりドラコは男子生徒と組むと思っていたので、少し驚いた。

 

 

「私はダフネと約束してるわ。ね?ダフネ?」

 

 

ミリセントの問い掛けにグリーングラスは苦笑しながら頷く。

 

 

「ヘスティアとフローラは?一緒に組むの?」

 

 

「そうね。もう約束しちゃったわ。」

 

 

「...そっか。」

 

 

2人の発言に、僅かに期待していたからか裏切られた気分だ。

勝手に期待をしておいて、裏切られたなんて言えるはずもなく、私は涼しい顔をして2人から視線を逸らした。

 

 

「ビンセントはどうするの?」

 

 

パン屑を口の周りにつけたビンセントに問掛けると、彼は「ゴイルと約束している」と言い、また食事をに戻った。

相変わらず、マナーのマの字も知らないんだから呆れながらも、ビンセントにすら遅れを取っているという事実に少し苛立ちが募る。

その後、数人の女子生徒に尋ねたが、皆誰の隣に座るか、どの席が良いか、ある程度決まっているらしい。

 

 

グリフィンドールと合同であれば、他寮の生徒の隣りに座る可能性もあるだろうが、なんせグリフィンドールとは仲が悪い。

メンタルの弱い私に耐えられるとは思えない。

誰でも良いから同寮の生徒の隣に座りたい。

 

 

そんな時、食事を終えて広間を出ていこうとする彼が目に入った。

昨日出会ったばかりの無愛想だが、優しい真面目な少年。

私が気になってやまない少年。

 

 

「ねぇ、ノット君。」

 

 

彼の背中に声を掛けると、彼は立ち止まって振り返った。

 

 

「昨日は助けてくれてありがとう。」

 

 

「別に...当然の事をしただけだ。君が気にする必要は無い。」

 

 

彼は相変わらず無愛想で素っ気無い。

それでも私は彼の優しさを知ったから、とても嬉しかったのだ。

 

 

「それでもお礼が言いたかったの。」

 

 

そう告げると、彼は少しだけ照れたようで視線を逸らした。

そんな姿がとても可愛らしく見えて、自然と口元が緩むのを感じた。

 

 

「そうか。君は律儀な性格なんだな。」

 

 

そう告げ、彼は踵を返そうとした。

しかし、私は彼を逃がさない。

 

 

「ねぇ、良かったら魔法薬学の授業、隣で受けても良いかな?私、魔法薬学の予習はしているけど、心配で。」

 

 

心配というのは嘘では無いが、私の目的は誰かと魔法薬学の授業を一緒に受ける約束をする事だ。

誰でも良い訳では無いが、ある程度見知っている人物の方が作業もスムーズに進むはず。

私はそんな本音を隠して彼に頼む。

彼はおそらく、私の真意なんて見透かしていたのだろう。

 

 

「君が僕と親しく魔法薬学の授業を受けたいようには見えないが...まあ良い。君の頼みを受け入れよう。」

 

 

「ありがとう...ノット君。」

 

 

私が感謝を告げると、彼は大広間を去って行った。

その後、私はヘスティアとフローラと一緒に薬学教室へ向かう事になった。

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