母親を死喰い人に殺されたセルウィン家最後の生き残りは、カロー家の養女になる。   作:蕩けたバター

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魔法薬学の授業です。
ネビルと話したり、薬を作ったりします。


魔法薬学

魔法薬学の教室に着くと、多くのスリザリン生が既に席へ着いており、私達もすぐに空いている席に着いた。

私の前にヘスティアとフローラが座り、私はヘスティアの後ろに座る。

 

 

「とりあえずさっきノットが言っていた範囲の予習をしておきましょう?スネイプ先生はかなり気難しい方だって聞いたわ。」

 

 

「そうね、減点なんてしたらマルフォイになんて言われるか分からないわ。」

 

 

ヘスティア、フローラの言葉に頷き、私は魔法薬学の教科書を開く。

お出来を治す薬を一通り読み直し、ノットが言っていたアスフォデルの球根の粉末やベゾアール石、モンクスフードについて書かれているページを確認し、メモを取っていく。

他にも、生ける屍の水薬、強力な幸運薬であるフェリックス・フェリシス、真実薬のベリタセラムや愛の妙薬の効能について書かれたページも読んでおいた。

これらの薬の認知度は凄まじく、魔法界の上流階級に生まれた者であれば、家庭教師から習うのが当たり前だ。

もしかしたら、スネイプ教授が純血の生まれの生徒にこれらに関する知識について確認する可能性は大いにある。

 

 

そしてこの世に無駄な知識は無い。

知識があればあるほど、人生は豊かになる。

であれば、知るタイミングに拘らず、今知る事の出来る知識をその場で吸収すべきだ。

そんな考えの元、私は様々な魔法薬学に関する知識を復習し、予習し、習得していった。

 

 

授業が始まるとスネイプはゆっくりと話し始める。

 

 

「この授業では杖を振ったり、ばかげた呪文を唱えたりしない。いいかな、魔法薬調合の微妙な科学と芸術的な技を諸君が理解できるとは期待していない。だが、一部の素質のある選ばれた者には伝授してやろう。人の心を操り感覚を惑わせる技を。名声を瓶の中に詰め栄光を醸造し死にすら蓋をする、そういう技を。」

 

 

スネイプはここで一度言葉を切った。

生徒たちは静まり返り、スネイプ教授の言葉の続きを待っていた。

そして、いきなりスネイプはマントを翻し、教壇を降りた。

そして一人の少年の前まで歩き出す。

グレンジャーは、羽根ペンで何かを書いていたポッターにチラリと視線を送る。

 

 

「ところで。諸君の中には自信過剰の者がいるようだ。すでにホグワーツに来る前に力を持っているから授業など聞かなくてもいいというわけか。ミスター・ポッター。その名も高きミスター・ポッター。」

 

 

ハリーが顔を上げるとスネイプは僅かに口角を上げて意地悪な問い掛けを行う。

噂通りだが、入学して間もない生徒に授業範囲外の質問をするなんておかしい。

しかし、授業をまともに受けないポッターはそれ以上におかしい。

きっと育ちが悪いのだろう。

 

 

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えると何になる?」

 

 

ポッターは何も答えず、代わりに横に座っていたグレンジャーが答えたそうに挙手していた。

彼女はマグル生まれの魔法使いだと聞いていたが、随分勤勉な性格のようだ。

 

 

ノットといい、グレンジャーといい、真に学ぶ事が好きな者はまるまる一冊予習する事すら苦ではないというのか。

それに比べて半分読んで予習を辞めてしまった私ときたら、なんて情けないんだろう。

自分の甘さを理解し悔しさを噛み締める。

これからは、もっと勉学に対して真面目に向き合わなければならないな。

 

 

「では、もう1問。ベゾアール石を見つけるにはどこを探せばいい?」

 

 

「分かりません。」

 

 

「これも分からない?では、モンクスフードとウルフベーンの違いは?」

 

 

「わかりません。」

 

 

「まったく。情けない。名前ばかり有名でも仕方ない。そう思わんか、ポッター。」

 

 

スネイプがネチネチと小言を言い、ポッターに皮肉を言う。

予習を当たり前だとは思わないが、せめて授業くらいまともに受けて欲しい。

こんな調子では、何回授業が中断されるか分かったもんじゃない。

 

 

ポッターの隣に座るグレンジャーは相変わらず挙手を続けている。

それも立ち上がってまで。

それを見たポッターはスネイプの目を見てこう言った。

 

 

「ハーマイオニーが判っていると思いますから彼女に質問してみたらどうでしょう?」

 

 

彼の発言にスネイプはグレンジャーを見て「座りなさい」と言い、ポッターから1点減点した。

グリフィンドールから減点されたという事実に、スリザリンの生徒は小さく笑い声を立てる。

 

 

「では、この問の答えが分かる者はいるかな?」

 

 

スネイプの発言に相変わらずグレンジャーは手を挙げているが、スネイプは彼女を無視して私の隣に座るノットを指名した。

ノットは挙手をしていなかったが、指名された。

彼の優秀さは教授陣の中でも有名なのかもしれない。

 

 

「ではそうだな、アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを加えると何になる?」

 

 

「生ける屍の水薬です。」

 

 

「正解だ。ミスター・ノットは非常に勤勉で優秀ですなぁ。スリザリンに10点。では、ベゾアール石を見つけるにはどこを探せば良いか分かる者はいるかね?」

 

 

スネイプはノットを褒め称え、次の問いを全員に行う。

そして彼は前の席に座るマルフォイに目配せをし指名した。

 

 

「では、ミスター・マルフォイ。この答えが分かるかね?」

 

 

「...や、山羊の胃の中です。」

 

 

マルフォイは緊張しながらもすらすらと答える。

 

 

「素晴らしい。きちんと予習をされているようですな。スリザリンに10点。」

 

 

スネイプは満足そうに笑い、スリザリンに加点した。

 

 

「最後に、モンクスフードとウルフベーンの違いが分かる者はいるかな?」

 

 

相変わらずグレンジャーは手を挙げているが、それ以外の生徒は手を挙げていない。

このクラスは積極性に欠けている。

数秒の沈黙の後、私は勇気を出して手を挙げた。

 

 

「ほう?ミス・カロー。」

 

 

他の教授にミス・セルウィンと呼ばれてばかりだからか、スネイプにカローと呼ばれた時少し嬉しくなった。

カロー家の一員として認められたような気がしたからだ。

私は立ち上がり口を開く。

 

 

「はい。モンクスフードとウルフベーンは同じ植物で別名をアコナイトと言います。」

 

 

「左様。スリザリンの生徒は真面目で優秀な者が多いようですな。スリザリンに10点。」

 

 

その後、それらの物質についてスネイプが解説を行い、誰もメモを取らない為、私達は全員叱責された。

自寮に甘いと思っていたが、締めるべきところは締める良き教授だ。

少しだけ、スリザリン贔屓な気もするが。

 

 

「では、今からおできを治す薬を作って貰う。教科書の──」

 

 

ノットのおかげでスリザリンのほとんどの生徒が予習を行っており、彼らは慌てる事なく材料を持ちに行く。

しかし、女子生徒の多くがカエルや角ナメクジに触れる事を恐れており、スムーズに進行する事はほぼ無いだろう。

 

 

「...君は蛇の牙をすり潰してくれ。僕が大鍋に水を入れてくる。」

 

 

「分かった。」

 

 

ノットに言われた通り、私は蛇の牙をすり鉢に入れ、すりこぎで砕き始めた。

その後大鍋に4計量の砕いた蛇の牙の粉を入れ、250度で10秒熱して杖を振り醸造する。

第二工程は、角ナメクジを4本大鍋に入れるところから始まる。

 

 

「...ちょっと、気持ち悪いね。」

 

 

大切に大切に慈しまれてきた純血貴族は、角ナメクジなんて見た事すらないはず。

ヌメヌメしていて、ぴょんぴょんと動く触覚が不気味だ。

掴もうとてして手を伸ばすが、触る寸前で引っ込めてしまう。

いつかは触れるようにならなければいけないが、私には到底無理そうだ。

そんな私の態度に痺れを切らしたのか、彼は袖をまくって苦虫を噛み潰したような表情をしながらも、角ナメクジを掴み、鍋に入れた。

 

 

「僕がやるから、君は他の材料の用意をしてくれ。といっても、カエルの解剖は無理だろう?ヤマアラシの針を持ってきてくれ。」

 

 

「...ごめん、ありがとう。」

 

 

そう言い残して、ヤマアラシの針を持ちに行く。

ノットは意外と紳士的な人だと思いながら、その好意に甘える事にした。

その後、ヤマアラシの針を持って席に向かっている時、突然ガシャンッと大きな音が隣から聞こえた。

慌てて振り返ると、少年の悲痛な叫びが響き、目を閉じて杖を振るった。

 

 

「きゃあああっ!!」

 

 

女子生徒達の悲鳴が聞こえる。

目を開けるとロングボトムが教室の隅に弾き飛ばされ、彼の使っていた大鍋は倒れており、中の液体がジュージューと音を立てて床の上に広がっていた。

 

 

「...え?」

 

 

「何をしているのよ!このウスノロ!」

 

 

ロングボトムはポカンと口を開けたまま固まっている。

そんな彼をパンジーは貶し、それに追従してスリザリン側のテーブルから罵倒が飛び交う。

 

 

しかし、数秒後ログボトムは突然うめき声をあげてうずくまった。

どうやら、腕の一部に液体がかかってしまったようだ。

しかし、私が杖を振って突き飛ばさなければ、全身液体まみれでもっと酷い事になっていただろう。

そんな事を考えていると、私の腕も熱を持ち痛みを感じ始めた。

 

 

「あ、あれ?なんで私まで?!...い、痛い。」

 

 

「え、嘘!先生、ウスノロのロングボトムのせいで、エスメまで薬品を被っているみたいです!」

 

 

パンジーの悲痛な声が響く。

スネイプは慌てた様子で私達の元へやってきて、状態を確認し始めた。

 

 

「バカ者!おおかた、大鍋を火から降ろさないうちに、山嵐の針を入れたんだな?医務室へ連れて行かなければ。」

 

 

私は何とか涙を堪え、未だにうずくまっているロングボトムを立ち上がらせる。

 

 

「君、ポッター、針を入れてはいけないとなぜ言わなかった?彼が間違えば、自分の方がよく見えると考えたな?グリフィンドールはもう一点減点。」

 

 

そうポッターを叱責し、私とロングボトムを連れて医務室へと向かった。

医務室に着くとマダム・ポンフリーに2日連続で医務室に来るとは何事か、と小言を言われ、彼女はスネイプに怒り出した。

私とロングボトムは薬を塗って貰い、痛みはすぐに引いてきたが、念の為午後の授業も休む事になった。

 

 

「...ごめんね、えっとセルウィン。」

 

 

隣のベッドに横になるロングボトムはようやく落ち着きを取り戻したのか、私に謝罪をする。

しかし、私の姓はカローだ。

 

 

「謝罪を受け取るわ。でも、私の姓はカローよ。」

 

 

「あ、そっか。ご、ごめん!カロー!」

 

 

彼の慌てる様が面白くて、私はクスリと笑う。

 

 

「感謝してね?私が貴方を突き飛ばさなければ、貴方は全身失敗薬の液体まみれだった。」

 

 

「そう、だよね。やっぱりあの時僕を突き飛ばしたのはカローだったんだ。本当にありがとう。少しの薬品でこんなに痛いのに、全身なんてとてもじゃないけど想像も出来ないよ。僕、本当に何をやってもダメだね。」

 

 

 

ロングボトムは聖28一族に選ばれた家門の人間で、薬草学に精通している家だった気がする。

しかし、生まれと能力は必ず比例するわけではない。

 

 

「大丈夫、生まれ持った資質や才能、能力は誰しも違う。自分のペースで頑張れ良いの。私だって、真面目で勉強が嫌いでは無いと思っていたけど、ノットやグレンジャーほど勉学に関心があるわけじゃない。だから、不安に思う必要は無いよ。」

 

 

ロングボトムをフォローすれば、彼は申し訳なさそうな顔で頷いた。

彼はマルフォイを始めとしたスリザリン生に馬鹿にされていたからか、自分を蔑んでいるように見える。

しかし、同じ純血が自分は能無しだと諦める様は見ていて気持ちの良いものでは無い。

 

 

「貴方が自分を蔑む程、同じ純血である私達の品位が落ちるの。自分の為だけじゃなくて、私達の為にも少しくらい前向きになっても良いんじゃないかな?」

 

 

「そ、そうだよね。うん、僕頑張ってみるよ。ありがとう、カロー。」

 

 

ロングボトムは私の言葉で励まされたようで、少し元気になったようだ。

そのタイミングで医務室の扉が開く音がしたのでそちらに顔を向けると、マダム・ポンフリーが鋭い目つきで私達を見つめていた。

 

 

「貴方達は何を喋っているのですか?回復する為には、休息が必要だとあれぼと言ったでしょう?!」

 

 

「「ごめんなさい!」」

 

 

私とロングボトムが同タイミングで謝る。

私達は再びベッドに縛りつけられる事になった。

 

 

それから数日後、ついに待ちに待った飛行訓練の日がやってきた。

ホグワーツでは、飛行訓練は1年時にのみ行われる科目で、単位を取得する為の実技試験をも行われるそうだ。

私やフローラ、ヘスティアは幼い頃屋敷の庭で箒に乗る練習をした事があるが、私は地面から5メートルくらい上に浮かぶ事しか出来なかった。

どうやら、空を飛ぶ才能は無いらしい。

 

 

「確か、エスメは箒に乗るのが下手だったわよね?」

 

 

小馬鹿にしたようにフローラが笑う。

彼女の言葉に意外だと言わんばかりの顔をして、ザビニは私を見た。

 

 

「君にも苦手なものがあるんだね。何でも卒なくこなす優等生...で箒には乗れないのか。良ければ俺が手取り足取り教えてあげようか?」

 

 

ザビニの軽口に私は笑みを返してスルーした。

彼は「残念だ」と子犬のように瞳を潤ませ、私を一瞥してから去って行った。

その後飛行訓練では、ロングボトムが箒から振り落とされて大怪我をしたり、ロングボトムの持っていた思い出し玉をマルフォイが空に投げ、ポッターが箒に乗ってそれを取りに行ったりした。

その一部始終を見ていあマクゴナガルが、ポッターをクディッチの選手に選抜した事で、スリザリン内の空気は最悪だった。

 

 

「クソ、ポッターのせいで全てが台無しじゃないか。」

 

 

「あのポッターがシーカーだって?悪夢だ。」

 

 

「チームに所属するのは2年生以上の生徒だけ。わざわざ、ポッターを例外にしてまで選手にするなんて、グリフィンドールはイカれている。」

 

 

スリザリン生はがやがやと文句を言い、それは寮に帰っても続いた。

 

 

「ダンブルドアはグリフィンドール贔屓だ。今回は泣き寝入りするしかない。」

 

 

ノットは顔を顰めて怒りを露わにしており、パンジーもそれに同意を示す。

特にドラコはポッターに会う度に大きな声で悪口を言い、グリフィンドールを煽っていた。

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